Q3.プロポーズを断ってもいいですか
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気まずい————誰にも話を聞かれたくなくて、会議室に飛び込んだのはいいものの、プロポーズの後の2人きりの空間は気まず過ぎる。
そう感じているのは、私だけなのかもしれない。
兵長さんは、両腕を組んで大きなデスクに軽く腰かけていた。
堂々としたその様子からは、恋人でもない女性にプロポーズをして、その返事を待っている男の姿だとは想像もつかないだろう。
やっぱりあれは聞き間違えで、プロポーズではなかったのかもしれない———。
(そうだ。そうに決まってる。
だって、どうして兵長さんが私にプロポーズなんてするんだろう。)
自分自身の聞き間違えという可能性を失念していたことに気づいた。
料理が得意なだけで、なんとか栄養管理士の資格をとれただけの容姿も性格も平々凡々な私が、どうして、世界中の憧れの的である兵長さんにプロポーズなんてされるのか。
勘違いも甚だしい———そう気づくと、ホッとしたを通り越して、おかしくなってきた。
自分に呆れすぎて出てきそうになっている笑いを堪えていると、リヴァイさんが私の方を向いて口を開いた。
「で?」
「え?で、っていうのは?」
「プロポーズの返事に決まってるだろ。」
参った。やっぱり、アレはプロポーズだった。
聞き間違いではなかったらしい。
「イエスしか、聞き入れるつもりはねぇが。」
堂々としているように見えたのは、そもそも断られるつもりがなかったからだったからのようだ。
確かに、彼は人類最強の兵士と呼ばれるだけあって強い。危険な仕事をしているけれど、死んでしまう可能性は調査兵の中で一番低いのだろう。
それに、調査兵というのは、人類の為に必要な素晴らしい職業だし、万が一のことがあったときの保証もしっかりしている。
永遠を共にする夫婦になるのに理想的な条件ではないかもしれないけれど、この不安定な世界では、優良物件と呼べるだろう。
それに、容姿も恵まれている彼は、兵団の中にも外にも、憧れている女性が多くいる。
そんな彼からのプロポーズなら、ほとんどの女性が「イエス」と答えるのかもしれない。
でも、私は違う。
確かに、それなりにお金を持っていて、将来安泰な職業の人と結婚したいと思っている。
でも、調査兵というのがどんなに保証がしっかりしているのだとしても、私は生涯を共に出来る人と結婚したい。
兵長さんがどんなに強くたって、だからといって、毎回壁外調査に出て生きて帰ってくるということにはならないのだ。
それになにより、私は好きな人と結婚したい。
そしてそれは、少なくとも、兵長さんではない。
「状況もうまくのみこめていない状態でお返事も出来ないんですけど、
もし、兵長さんが本気でその…、結婚をと仰ってるのなら…
返事は…、申し訳ないと、し、か…。」
兵長さんの目が、だんだん細くなっていく。
殺気立っていく。
三白眼がこれでもかというほどに、私を睨んでいる。
・・・・・殺される。
たぶん、私は「ノー」と言ったら殺されると思う。
赤子の手をひねるように容易く、殺される。
うなじを削ぐどころか、首と身体が真っ二つにわかれてしまうに違いない。
惨殺だ。
そして私は、人類最強の兵士が人類最強の殺人鬼になった瞬間を目撃したこの世で最初の人間になるのだ。
残念ながら、その時にはもう、私はこの世に存在していないのだろうけれど———。
「いえっ、あの、私も喜んでノーと言いたいわけではなくて…!
でも、結婚は好きな人とするものだと思うので、
兵長さんもわざわざ私と結婚しなくても、ちゃんと好きになった人と———。」
「お前は俺のことが嫌いなのか?」
「ま、まさか!!そんなことはありません!!
とっても、心から尊敬しています!!」
「なら問題ねぇじゃねぇか。
嫌いじゃねぇんだから、結婚できるだろ。」
「いや、それは…!嫌いじゃないなら結婚できるんだったら
私は、調査兵団の方達、全員と結婚できてしまいますよっ。」
「あぁ?お前、エルヴィン達とも結婚するつもりなのか。」
「そんなことするつもりはありませんっ。」
「今、自分で言ったじゃねぇか。調査兵団の全員と結婚する、と。」
「そういう意味じゃないです!それに、私が結婚しようとしたって
調査兵の方達のお気持ちもあるし、そもそも全員と結婚なんて出来ないというか…っ。」
「お前と結婚したくねぇ男がいるわけねぇだろ。
お前は、制度も問題なければ、世界中の男と結婚する気か。」
「いえ、そういうわけでは…っ。」
ダメだ、まったく会話が噛み合わない。
というか、何を言ってるのか全く意味が分からない。
それに、これでもかというほどに吊り上がった兵長さんの目が怖くて仕方がない。
どうして私は、意味の分からないプロポーズの返事の為に命の危機に襲われなければならないのか。
そもそも、なぜ私は兵長さんからのプロポーズを受ける羽目になったのだろう。
彼が私と結婚をしたいと望んでいるなんて、やっぱり信じられないのだ。
彼に好意を寄せる女性は沢山いるだろうし、彼女たちはきっと、私なんかよりも人類最強の兵士の隣が釣り合う。
だって、私は、自分で言うのも虚しくなるくらいに平々凡々な容姿で、性格も、すごく悪いわけではないと思うけれど、すごく良いわけではない。
良くも悪くも、特徴のない普通の女なのだ。
ただ、好きな人との結婚にあこがれるだけの、つまらない普通の女だ。
兵長さんではなくたって、私と結婚したら、毎日がつまらなくて仕方がないと思う。
そのことを、兵長さんは分かっているのだろうか。
私のことなんか〝料理をする人〟くらいにしか知らないはずだ。
そう、そうだ、知らないのだ。私たちは、お互いのことを何も———!
「兵長さんのことは、素敵な方だとは思っています…!
でも、その…男性としての兵長さんのことを、知りませんし…
お互いに、何も分からないのに、いきなり結婚するなんて出来ないんじゃ…、ないか、な…と思って…。」
だんだん尻すぼみになっていったのは、兵長さんの三白眼に徐々に力が入っていったのが、嫌というほどに視界に入ってきてしまったからだ。
そのまま、兵長さんは、眉間に深い皴を刻み、口を真一文字に結んでしまった。
睨まれながら、私は悟る———きっと殺されるのだ。
ここは嘘でも「イエス。」と答えるべきだったのだろうか。
今からでも、間に合うだろうか。
いや、でもここで「イエス。」と答えて生きながらえたとしても、いつか私は「やっぱりノーで。」と答えるわけで、そうすればそのときに殺されるのだ。
しかも、一度受け入れてからの「ノー。」は、ここで断るよりも兵長さんを怒らせてしまう気がする。
そして結局、どちらにしろ、私は見るも無残なほどに惨殺されるのだ。
それが嫌なら、好きでもなんでもない彼と結婚するしかないのか。
万事休すだ————。
「分かった。」
「え…!?」
長い沈黙ののちに、兵長さんが発したのは、肯定的な言葉だった。
プロポーズの返事が「ノー」だったことを受け入れてくれたように感じたそれに、私は思い切り歓喜の表情を見せたし、ホッともした。
「お互いによく知りもしねぇで結婚は出来ねぇというお前の気持ちも、分からなくもねぇ。」
「それなら———。」
「だから、今から俺の恋人になれ。」
「兵長さんの…、こい・・・・び、と・・・・?」
まるで、初めての言語を聞いたかのように、私からは音が一文字ずつ漏れた。
それでも兵長さんは構わなかったのか、大きく頷いてくれた。
「そうだ。恋人になって、まずは俺を知れ。」
あぁ、そういうことか————突拍子もない提案だったけれど、断ることが禁止されている想定外のプロポーズよりは、幾らかは納得できた。
まずは恋人になって、お互いを知ってから、プロポーズの返事をすればいい、ということなのだろう。
それなら、ほとぼりが冷めた頃に「ノー」の返事をすれば、意味不明の結婚を回避———。
「そして、ちょうどいいタイミングで、結婚すればいい。」
———できなかった。
なんてことだ、いつの間にか結婚は決定事項になっていた。
ちょうどいいタイミングって、どんなタイミングだ。
そう感じているのは、私だけなのかもしれない。
兵長さんは、両腕を組んで大きなデスクに軽く腰かけていた。
堂々としたその様子からは、恋人でもない女性にプロポーズをして、その返事を待っている男の姿だとは想像もつかないだろう。
やっぱりあれは聞き間違えで、プロポーズではなかったのかもしれない———。
(そうだ。そうに決まってる。
だって、どうして兵長さんが私にプロポーズなんてするんだろう。)
自分自身の聞き間違えという可能性を失念していたことに気づいた。
料理が得意なだけで、なんとか栄養管理士の資格をとれただけの容姿も性格も平々凡々な私が、どうして、世界中の憧れの的である兵長さんにプロポーズなんてされるのか。
勘違いも甚だしい———そう気づくと、ホッとしたを通り越して、おかしくなってきた。
自分に呆れすぎて出てきそうになっている笑いを堪えていると、リヴァイさんが私の方を向いて口を開いた。
「で?」
「え?で、っていうのは?」
「プロポーズの返事に決まってるだろ。」
参った。やっぱり、アレはプロポーズだった。
聞き間違いではなかったらしい。
「イエスしか、聞き入れるつもりはねぇが。」
堂々としているように見えたのは、そもそも断られるつもりがなかったからだったからのようだ。
確かに、彼は人類最強の兵士と呼ばれるだけあって強い。危険な仕事をしているけれど、死んでしまう可能性は調査兵の中で一番低いのだろう。
それに、調査兵というのは、人類の為に必要な素晴らしい職業だし、万が一のことがあったときの保証もしっかりしている。
永遠を共にする夫婦になるのに理想的な条件ではないかもしれないけれど、この不安定な世界では、優良物件と呼べるだろう。
それに、容姿も恵まれている彼は、兵団の中にも外にも、憧れている女性が多くいる。
そんな彼からのプロポーズなら、ほとんどの女性が「イエス」と答えるのかもしれない。
でも、私は違う。
確かに、それなりにお金を持っていて、将来安泰な職業の人と結婚したいと思っている。
でも、調査兵というのがどんなに保証がしっかりしているのだとしても、私は生涯を共に出来る人と結婚したい。
兵長さんがどんなに強くたって、だからといって、毎回壁外調査に出て生きて帰ってくるということにはならないのだ。
それになにより、私は好きな人と結婚したい。
そしてそれは、少なくとも、兵長さんではない。
「状況もうまくのみこめていない状態でお返事も出来ないんですけど、
もし、兵長さんが本気でその…、結婚をと仰ってるのなら…
返事は…、申し訳ないと、し、か…。」
兵長さんの目が、だんだん細くなっていく。
殺気立っていく。
三白眼がこれでもかというほどに、私を睨んでいる。
・・・・・殺される。
たぶん、私は「ノー」と言ったら殺されると思う。
赤子の手をひねるように容易く、殺される。
うなじを削ぐどころか、首と身体が真っ二つにわかれてしまうに違いない。
惨殺だ。
そして私は、人類最強の兵士が人類最強の殺人鬼になった瞬間を目撃したこの世で最初の人間になるのだ。
残念ながら、その時にはもう、私はこの世に存在していないのだろうけれど———。
「いえっ、あの、私も喜んでノーと言いたいわけではなくて…!
でも、結婚は好きな人とするものだと思うので、
兵長さんもわざわざ私と結婚しなくても、ちゃんと好きになった人と———。」
「お前は俺のことが嫌いなのか?」
「ま、まさか!!そんなことはありません!!
とっても、心から尊敬しています!!」
「なら問題ねぇじゃねぇか。
嫌いじゃねぇんだから、結婚できるだろ。」
「いや、それは…!嫌いじゃないなら結婚できるんだったら
私は、調査兵団の方達、全員と結婚できてしまいますよっ。」
「あぁ?お前、エルヴィン達とも結婚するつもりなのか。」
「そんなことするつもりはありませんっ。」
「今、自分で言ったじゃねぇか。調査兵団の全員と結婚する、と。」
「そういう意味じゃないです!それに、私が結婚しようとしたって
調査兵の方達のお気持ちもあるし、そもそも全員と結婚なんて出来ないというか…っ。」
「お前と結婚したくねぇ男がいるわけねぇだろ。
お前は、制度も問題なければ、世界中の男と結婚する気か。」
「いえ、そういうわけでは…っ。」
ダメだ、まったく会話が噛み合わない。
というか、何を言ってるのか全く意味が分からない。
それに、これでもかというほどに吊り上がった兵長さんの目が怖くて仕方がない。
どうして私は、意味の分からないプロポーズの返事の為に命の危機に襲われなければならないのか。
そもそも、なぜ私は兵長さんからのプロポーズを受ける羽目になったのだろう。
彼が私と結婚をしたいと望んでいるなんて、やっぱり信じられないのだ。
彼に好意を寄せる女性は沢山いるだろうし、彼女たちはきっと、私なんかよりも人類最強の兵士の隣が釣り合う。
だって、私は、自分で言うのも虚しくなるくらいに平々凡々な容姿で、性格も、すごく悪いわけではないと思うけれど、すごく良いわけではない。
良くも悪くも、特徴のない普通の女なのだ。
ただ、好きな人との結婚にあこがれるだけの、つまらない普通の女だ。
兵長さんではなくたって、私と結婚したら、毎日がつまらなくて仕方がないと思う。
そのことを、兵長さんは分かっているのだろうか。
私のことなんか〝料理をする人〟くらいにしか知らないはずだ。
そう、そうだ、知らないのだ。私たちは、お互いのことを何も———!
「兵長さんのことは、素敵な方だとは思っています…!
でも、その…男性としての兵長さんのことを、知りませんし…
お互いに、何も分からないのに、いきなり結婚するなんて出来ないんじゃ…、ないか、な…と思って…。」
だんだん尻すぼみになっていったのは、兵長さんの三白眼に徐々に力が入っていったのが、嫌というほどに視界に入ってきてしまったからだ。
そのまま、兵長さんは、眉間に深い皴を刻み、口を真一文字に結んでしまった。
睨まれながら、私は悟る———きっと殺されるのだ。
ここは嘘でも「イエス。」と答えるべきだったのだろうか。
今からでも、間に合うだろうか。
いや、でもここで「イエス。」と答えて生きながらえたとしても、いつか私は「やっぱりノーで。」と答えるわけで、そうすればそのときに殺されるのだ。
しかも、一度受け入れてからの「ノー。」は、ここで断るよりも兵長さんを怒らせてしまう気がする。
そして結局、どちらにしろ、私は見るも無残なほどに惨殺されるのだ。
それが嫌なら、好きでもなんでもない彼と結婚するしかないのか。
万事休すだ————。
「分かった。」
「え…!?」
長い沈黙ののちに、兵長さんが発したのは、肯定的な言葉だった。
プロポーズの返事が「ノー」だったことを受け入れてくれたように感じたそれに、私は思い切り歓喜の表情を見せたし、ホッともした。
「お互いによく知りもしねぇで結婚は出来ねぇというお前の気持ちも、分からなくもねぇ。」
「それなら———。」
「だから、今から俺の恋人になれ。」
「兵長さんの…、こい・・・・び、と・・・・?」
まるで、初めての言語を聞いたかのように、私からは音が一文字ずつ漏れた。
それでも兵長さんは構わなかったのか、大きく頷いてくれた。
「そうだ。恋人になって、まずは俺を知れ。」
あぁ、そういうことか————突拍子もない提案だったけれど、断ることが禁止されている想定外のプロポーズよりは、幾らかは納得できた。
まずは恋人になって、お互いを知ってから、プロポーズの返事をすればいい、ということなのだろう。
それなら、ほとぼりが冷めた頃に「ノー」の返事をすれば、意味不明の結婚を回避———。
「そして、ちょうどいいタイミングで、結婚すればいい。」
———できなかった。
なんてことだ、いつの間にか結婚は決定事項になっていた。
ちょうどいいタイミングって、どんなタイミングだ。