Q2.プロポーズから逃げていいですか
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「はぁ…。」
これで何回目のため息だろう。
朝から私の唇から漏れるのは、そればかりなのだ。
まだ調査兵達への朝食が終わったばかりで、これからまだたくさん仕事が残っているというのに、憂鬱が止まらないのだ。
「疲れてるね。昨日、私が夜中に仕事を頼んじゃったせいかな。
ごめんな。」
私の前の席に座るハンジさんが、申し訳なさそうに謝って、雑に髪を掻く。
巨人オタクと呼ばれて研究熱心な彼女は、毎晩のように夜遅くまで巨人についての調べ物をしているらしく、こうして毎朝、調査兵達で賑わう朝食の時間からだいぶ過ぎてから食堂へやってくる。
そして、片付けまですべて終わらせてから朝食をとる私と一緒に、食事をするのだ。
「いえ…!違うんです!!
むしろ、昨日はナイスタイミングだったので、ハンジさん、グッジョブっていうか!!」
「ナイスタイミングって?」
慌てて、顔の前で両手を左右に振って否定した私に、ハンジさんが不思議そうに首を傾げる。
昨晩の突然のプロポーズのことを何と説明すればよいのかもわからないし、誰にも言ってはいけないことのような気がして、私は笑って誤魔化した。
でも、彼女には本当に助けられたのだ。
想定外どころか、世界がひっくり返るプロポーズに私が目を白黒させているところに、来月の献立予定表の一部を変更してほしいと仕事を頼みに来てくれたのが彼女だった。
ひとつのことに夢中になると周りが見えなくなる彼女は「まだ話が終わってない。」と食い下がる兵長さんの姿も見えない様子で、私の首根っこを掴まえて攫ってくれたおかげで、あの理解不能なプロポーズの返事をせずに済んだ———のだけれど、やっぱり、きちんと返事をした方がいいのだろうか。
でも、何て言えばいいのか。
もちろん、返事は【ノー】の一択なのだけれど、その伝え方次第では、今後の仕事にも影響しかねない。
調査兵団No.2の機嫌を損ねてしまったことで、クビにでもされてしまったら、笑えない理由で私は職なしになってしまう。
そもそも、あれは本気だったのだろうか。
兵長さんは、冗談を言うような人には見えないけれど、冗談が引くほど下手そうな人には見える。
もしくは、スープを飲みながら寝惚けていたのじゃないかという疑惑も消えない。
驚き過ぎてほとんど寝ずに考えた答えとしては、それが一番ありえるんじゃないかと思っている。
忙しさで睡眠も十分にとれていない兵長さんは、寝惚けておかしなことを言ってしまったんだ。
もしくは、寝惚けていて相手を間違えたとか———。
むしろ、そうであってほしい。
何かの間違いであってほしい。
結婚相手として、リヴァイ兵長なんて死んでも御免だ。
死ぬまで、あの怖い目に見られながら、隅々まで掃除をさせられる人生なんて、想像するだけで———。
「1秒で泣ける。」
「え?泣くの?」
「あっ、いや…ッ、昨日読んだ雑誌に1秒で泣ける切ない恋の話ってのがあって
それを思い出してたんです。」
「はぁ~、なまえは本当にそういう雑誌の話が好きだよね~。」
ハンジさんが、感心したように息を吐いて言ったあと「私は全く興味ない。」とアハハと笑う。
そうだろうな、ときっと誰もが思っているはずだ。
それに、私からすれば、すぐ隣にとても素敵な男性がいるというのに、巨人ばかりに夢中になっている彼女の心の中の方が感心してしまう。
調査兵の中ではよく話す方のハンジさんだけれど、彼女と恋の話をしたのなんて、一度しかない。
それも、そのときたまたま一緒にいたペトラちゃんと、どんな男性がタイプなのかという話で盛り上がっているところに、ハンジさんがやってきただけで、彼女はほとんど聞き役だった。
「そういえば、この前、ペトラ達と話してた好きな男のタイプの話だけどさ。」
ハンジさんも同じことを思い出していたらしい。
でもまさか、それを彼女の方から話題に出すとは思わなかったから意外だった。
しかもなぜか、恋の話に興味のないはずの彼女が、とても真剣そうな顔をしているのだ。
残念だが、嫌な予感しかしない。
「あれからずっと、なまえの好きな男のタイプを考えてたんだけど。」
「考えなくていいですよ。」
「ちょうどいい男を見つけたんだ!」
私の本心をさらりと流したハンジさんが、瞳をキラッと輝かせる。
好きな男のタイプに、誰がピッタリだと思ったのだろう。
恋に興味のない彼女には見つけられないようにも思える。でも、観察眼に長けている彼女なら、呆気なく見つけてしまうような気もした。
「残念ながら調査兵団にはいなかったんだけど、
駐屯兵団にピッタリの男を見つけたんだ!」
「へぇ。」
ドキリ、とした。
彼女は、本当に見つけてしまったのかもしれない。
「グスタフって知ってるかい!?ピクシス司令の参謀さ!
これがまた頭のキレる男でさ、シュッとしたイケメンかは分からないが、
長身で落ち着いてて、性格も穏やか!なまえの好きな男にピッタリだと思わないか!?」
ハンジさんがとても興奮気味に早口で話す。
私の好きなタイプの男ピッタリの人間を見つけたことが、とても嬉しいようだ。
もちろん、私も驚いた。
グスタフさんが私の好きな男のタイプにピッタリだったことではない。
だってそれは、彼のことを思い浮かべながら口にした好きな男のタイプなのだから、ピッタリと当てはまるのは当然なのだ。
私が驚いたのは、たったの2週間で彼女が、彼を見つけてしまったことだ。
「ピクシス司令の参謀さんなら有名ですから、知っていますよ。
精悍な御顔立ちのとても素敵な方だと思います。」
「だろ!なまえの好みにピッタリだと思うんだ!!
それでさ、———。」
「おい、昨日の話の続きをするぞ。」
楽しそうに何かを言おうとしていたハンジさんを遮ったのは、兵長さんの声だった。
いつの間にか私の隣に立っていたらしく、心臓が止まるかと思うほどに驚いた。
この男は、巨人を討伐するだけではなく、気配を消すということが出来るのだろうか。
「やぁ、リヴァイ!おはよう!
昨日の話って何だい?」
「あ?お前が昨日邪魔しやがったプロ———。」
「あーーー!分かりました!!あっちの会議室でしましょう!
しっかり!しっかり話せば分かり合えます、きっと!!」
「・・・・・了解だ。」
口を滑らせかけた兵長さんを遮って、私は近くの会議室へと急いだ。
「プロって?何のプロの話だろ。
まさか…!なまえって巨人プロだったのか?!」
これで何回目のため息だろう。
朝から私の唇から漏れるのは、そればかりなのだ。
まだ調査兵達への朝食が終わったばかりで、これからまだたくさん仕事が残っているというのに、憂鬱が止まらないのだ。
「疲れてるね。昨日、私が夜中に仕事を頼んじゃったせいかな。
ごめんな。」
私の前の席に座るハンジさんが、申し訳なさそうに謝って、雑に髪を掻く。
巨人オタクと呼ばれて研究熱心な彼女は、毎晩のように夜遅くまで巨人についての調べ物をしているらしく、こうして毎朝、調査兵達で賑わう朝食の時間からだいぶ過ぎてから食堂へやってくる。
そして、片付けまですべて終わらせてから朝食をとる私と一緒に、食事をするのだ。
「いえ…!違うんです!!
むしろ、昨日はナイスタイミングだったので、ハンジさん、グッジョブっていうか!!」
「ナイスタイミングって?」
慌てて、顔の前で両手を左右に振って否定した私に、ハンジさんが不思議そうに首を傾げる。
昨晩の突然のプロポーズのことを何と説明すればよいのかもわからないし、誰にも言ってはいけないことのような気がして、私は笑って誤魔化した。
でも、彼女には本当に助けられたのだ。
想定外どころか、世界がひっくり返るプロポーズに私が目を白黒させているところに、来月の献立予定表の一部を変更してほしいと仕事を頼みに来てくれたのが彼女だった。
ひとつのことに夢中になると周りが見えなくなる彼女は「まだ話が終わってない。」と食い下がる兵長さんの姿も見えない様子で、私の首根っこを掴まえて攫ってくれたおかげで、あの理解不能なプロポーズの返事をせずに済んだ———のだけれど、やっぱり、きちんと返事をした方がいいのだろうか。
でも、何て言えばいいのか。
もちろん、返事は【ノー】の一択なのだけれど、その伝え方次第では、今後の仕事にも影響しかねない。
調査兵団No.2の機嫌を損ねてしまったことで、クビにでもされてしまったら、笑えない理由で私は職なしになってしまう。
そもそも、あれは本気だったのだろうか。
兵長さんは、冗談を言うような人には見えないけれど、冗談が引くほど下手そうな人には見える。
もしくは、スープを飲みながら寝惚けていたのじゃないかという疑惑も消えない。
驚き過ぎてほとんど寝ずに考えた答えとしては、それが一番ありえるんじゃないかと思っている。
忙しさで睡眠も十分にとれていない兵長さんは、寝惚けておかしなことを言ってしまったんだ。
もしくは、寝惚けていて相手を間違えたとか———。
むしろ、そうであってほしい。
何かの間違いであってほしい。
結婚相手として、リヴァイ兵長なんて死んでも御免だ。
死ぬまで、あの怖い目に見られながら、隅々まで掃除をさせられる人生なんて、想像するだけで———。
「1秒で泣ける。」
「え?泣くの?」
「あっ、いや…ッ、昨日読んだ雑誌に1秒で泣ける切ない恋の話ってのがあって
それを思い出してたんです。」
「はぁ~、なまえは本当にそういう雑誌の話が好きだよね~。」
ハンジさんが、感心したように息を吐いて言ったあと「私は全く興味ない。」とアハハと笑う。
そうだろうな、ときっと誰もが思っているはずだ。
それに、私からすれば、すぐ隣にとても素敵な男性がいるというのに、巨人ばかりに夢中になっている彼女の心の中の方が感心してしまう。
調査兵の中ではよく話す方のハンジさんだけれど、彼女と恋の話をしたのなんて、一度しかない。
それも、そのときたまたま一緒にいたペトラちゃんと、どんな男性がタイプなのかという話で盛り上がっているところに、ハンジさんがやってきただけで、彼女はほとんど聞き役だった。
「そういえば、この前、ペトラ達と話してた好きな男のタイプの話だけどさ。」
ハンジさんも同じことを思い出していたらしい。
でもまさか、それを彼女の方から話題に出すとは思わなかったから意外だった。
しかもなぜか、恋の話に興味のないはずの彼女が、とても真剣そうな顔をしているのだ。
残念だが、嫌な予感しかしない。
「あれからずっと、なまえの好きな男のタイプを考えてたんだけど。」
「考えなくていいですよ。」
「ちょうどいい男を見つけたんだ!」
私の本心をさらりと流したハンジさんが、瞳をキラッと輝かせる。
好きな男のタイプに、誰がピッタリだと思ったのだろう。
恋に興味のない彼女には見つけられないようにも思える。でも、観察眼に長けている彼女なら、呆気なく見つけてしまうような気もした。
「残念ながら調査兵団にはいなかったんだけど、
駐屯兵団にピッタリの男を見つけたんだ!」
「へぇ。」
ドキリ、とした。
彼女は、本当に見つけてしまったのかもしれない。
「グスタフって知ってるかい!?ピクシス司令の参謀さ!
これがまた頭のキレる男でさ、シュッとしたイケメンかは分からないが、
長身で落ち着いてて、性格も穏やか!なまえの好きな男にピッタリだと思わないか!?」
ハンジさんがとても興奮気味に早口で話す。
私の好きなタイプの男ピッタリの人間を見つけたことが、とても嬉しいようだ。
もちろん、私も驚いた。
グスタフさんが私の好きな男のタイプにピッタリだったことではない。
だってそれは、彼のことを思い浮かべながら口にした好きな男のタイプなのだから、ピッタリと当てはまるのは当然なのだ。
私が驚いたのは、たったの2週間で彼女が、彼を見つけてしまったことだ。
「ピクシス司令の参謀さんなら有名ですから、知っていますよ。
精悍な御顔立ちのとても素敵な方だと思います。」
「だろ!なまえの好みにピッタリだと思うんだ!!
それでさ、———。」
「おい、昨日の話の続きをするぞ。」
楽しそうに何かを言おうとしていたハンジさんを遮ったのは、兵長さんの声だった。
いつの間にか私の隣に立っていたらしく、心臓が止まるかと思うほどに驚いた。
この男は、巨人を討伐するだけではなく、気配を消すということが出来るのだろうか。
「やぁ、リヴァイ!おはよう!
昨日の話って何だい?」
「あ?お前が昨日邪魔しやがったプロ———。」
「あーーー!分かりました!!あっちの会議室でしましょう!
しっかり!しっかり話せば分かり合えます、きっと!!」
「・・・・・了解だ。」
口を滑らせかけた兵長さんを遮って、私は近くの会議室へと急いだ。
「プロって?何のプロの話だろ。
まさか…!なまえって巨人プロだったのか?!」