Q21.私が守ってもいいですか?
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私は、氷水をたっぷり含んだタオルをキツく絞って、そっとリヴァイ兵長の額に乗せた。
自室のベッドで眠るリヴァイ兵長の表情は幾分か落ち着いてきたように見える。
昨日の夜、あれからは本当に大変だった。
何度目かの説明でやっと事態を把握してくれたハンジさんが、大慌てで部屋を飛び出して、ベテランの医療兵を呼んできてくれた。
調査兵団に入団してから、大怪我はしたことはあっても、病気になったことはなかったらしいリヴァイ兵長が熱を出した、とハンジさんも医療兵も目を丸くしていた。
どこから聞きつけたのか、すぐにリヴァイ班のメンバーも部屋に駆けつけた。そして、ここ最近のリヴァイ兵長の行動についてを彼らに説明していた。
それは、私も知らなかった行動で、本当に驚いたと同時に、聞いてる耳も、胸も痛かった。
あの日、私から「大嫌い」と突き放されたリヴァイ兵長は、そんな最低な私のために、早朝訓練の前、昼休憩、仕事が終わった後、とにかく時間を見つけては、裏庭の池の中に入って指輪を探していたそうだ。
真面目なリヴァイ兵長が、任務や訓練、仕事に手を抜くことはない。いつも通り、完璧に任務をこなして、その上で休むことなく、指輪を探していたのだ。
頼りにしている部下達が、少しは休むように伝えても、リヴァイ兵長は頑なだった。
そうして、昨日の昼間にやっと指輪を見つけた。汚れて黒ずんでいた指輪をリヴァイ兵長が綺麗に磨いて、なまえの元に届いたのが昨日の夜だ。
きっと、安心して、張り詰めていた糸が解けてしまったのだろうーーー。
熱が出てしまったのは、疲れと睡眠不足、そして、今朝の血液検査で、あの汚い池の中で細菌感染を起こしてしまっていたことも分かった。
エルヴィン団長の好意で、私は昨日の夜からずっとリヴァイ兵長の看病をさせてもらっている。私の仕事は、リヴァイ班のメンバーが代わってくれるそうだ。
リヴァイ兵長にも、リヴァイ班のみんなにも迷惑をかけてばかりだーーーー。
それでも私は、こうして誠心誠意、心を込めて看病をすることくらいしか、してあげられることがないのだ。
「ごめんなさい…。」
もう何度目かの謝罪が、涙声と共にこぼれた。
ネックレスに通して、胸元で輝く指輪をギュッと握りしめて、早くリヴァイ兵長が元気になりますようにと願いをこめた。
全て私のせいだ。そんな私が泣くのは違う。間違っている。
ーーー自分にそう言い聞かせたところで、悲しいのか悔しいのか、罪悪感から来るのか分からない涙が胸の奥から迫り上がってきて、とうとう一粒、二粒、と頬をこぼれ落ちていく。
不意に、涙でぼやけた視界の中で、何かが動いたのが見えた。
それが、リヴァイ兵長の手だったと気づいた時にはもう、彼の指は私の頬に触れていた。
驚く私に、リヴァイ兵長が言う。
「泣いてるのか…?」
意識が戻ったばかりだからか、声は掠れ小さい。
普段、低く落ち着いた声で部下を引っ張っている姿とは遠く離れたそれに、胸が痛む。
こんなにも身体を壊してしまうまで、無理をさせてしまった。
「…っ。」
なんと謝ればいいのか、考えれば考えるほど、言葉は出なかった。
その代わりに、後から後から涙が溢れてくるから困る。
両手の甲で交互に拭って、必死に涙を止めようとするけれど、無駄だった。
「つらいことでも、あったのか…?」
リヴァイさんの指が、私の涙を拭いながら頬を撫でる。
あぁ、どうしてこの人はーーーーーー。
どうして、こんなにも優しいのだろう。いつだって誰かのため、ばかりだ。
その最たるものが、調査兵団の兵士長として人類の為に戦っている姿なのだろう。
そして、リヴァイ兵長は、あまりにも自分に無頓着過ぎる。
身体を酷使して、体調を崩して、高熱を出して倒れたというのに、彼はきっとそんな自分の今の状況にすら気づいていない。いや、まるで興味がないみたいに、考えてもいないのだ。
目の前で泣いている人がいるーーーーリヴァイ兵長が分かっているのも、わかろうとしているのも、きっと、それだけだ。
言葉が出ない代わりに、私は首を横に振る。
ただ、なんでもない、私は大丈夫なのだと、リヴァイ兵長に伝えたかった。
「お前を泣かせるのは、だれだ…!」
いきなり、リヴァイ兵長が上半身を起こした。
熱の下がらない顔はまだ少し赤いのに、怒りに満ちた三白眼はギラついていて、唇は悔しげに歪んでいた。
本当に、いますぐにでも、存在もしない誰かを殴りに行ってしまいそうな雰囲気だ。
私は、そんなリヴァイ兵長をふわりと抱きしめたのだ。
「…!?」
腕の中で、リヴァイ兵長が驚き、戸惑っているのを感じた。
何が起きているのか分からないのだろう。
彼は固まっていた。息も忘れたみたいに、身動き一つしない。
「ありがとうございます。」
「………は?」
「リヴァイ兵長の目が覚めて、ホッとしたんです。
そしたら、涙が出てきただけですよ。」
「あぁ…、そうか。心配させて悪かっーーーー。」
「ありがとうございました。
指輪も、優しさも、目を覚ましてくれたことも、全部。」
そっと柔らかく包み込むだけだった腕で、リヴァイ兵長をギュッと抱きしめた。
その瞬間、固まっていたリヴァイ兵長の身体が、ビクッと小さく揺れるのを感じた。
しばらくそうしていると、リヴァイ兵長がゆっくりと息を吸った。
「あぁ、よかった。
なまえの役に立てたなら、よかった…。」
少し前と同じ、掠れた小さな声だった。
でも、私には、幼い子供のように無垢で、純真な声に聞こえた。
「はい、ありがとうございます。」
リヴァイ兵長を抱きしめなおしながら、私は、その頭にそっと手を添えた。
ゆっくりと手を揺らしながら、優しく頭を撫でる。初めて触れたリヴァイ兵長の髪の毛は、想像していたよりずっと柔らかくてサラサラで、幼い子供どころか、赤ん坊みたいだった。
ベッドのシーツの上に落ちていたリヴァイ兵長の腕がゆっくりと持ち上がると、ゆるゆると私の背中にまわる。そして、誰かを守ってばかりいる手が、おずおずと私のシャツの背中を握りしめた。
「体調はどうですか?つらいところはないですか?」
「…生まれてきて今までで、今が最高に良い気分だ。」
「それならよかったです。」
クスリと笑って、私はリヴァイ兵長の頭を優しく撫でる。
今、私の腕の中で、まるで子供のように甘えているのは、調査兵団の兵士長で、人類最強の兵士と名高い人。部下からの信頼も厚く、皆からとても尊敬されている。
そして、他人に対してあまりにも優しくて、いつもいつも誰かを守ってばかりいて、そのために自分につく傷には興味も示さない。傷だらけの身体で、無傷の誰かが笑っている姿を見て、心から「よかった。」と思う人。自分が我慢すればいい、と多分きっといつも思ってる。
食事を摂ることも忘れるし、睡眠時間だって必要な分をとってくれない。自分に厳しいくせに、自分のことには無頓着。
私はーーーーーー。
(守りたい。リヴァイ兵長を、私が守りたい。)
まるで子供のように純粋で無垢なこの人を、他の誰かが傷つけてしまわないように。
私が守ってあげたい。
リヴァイ兵長を抱きしめながら、私はそんなことを考えていた。
自室のベッドで眠るリヴァイ兵長の表情は幾分か落ち着いてきたように見える。
昨日の夜、あれからは本当に大変だった。
何度目かの説明でやっと事態を把握してくれたハンジさんが、大慌てで部屋を飛び出して、ベテランの医療兵を呼んできてくれた。
調査兵団に入団してから、大怪我はしたことはあっても、病気になったことはなかったらしいリヴァイ兵長が熱を出した、とハンジさんも医療兵も目を丸くしていた。
どこから聞きつけたのか、すぐにリヴァイ班のメンバーも部屋に駆けつけた。そして、ここ最近のリヴァイ兵長の行動についてを彼らに説明していた。
それは、私も知らなかった行動で、本当に驚いたと同時に、聞いてる耳も、胸も痛かった。
あの日、私から「大嫌い」と突き放されたリヴァイ兵長は、そんな最低な私のために、早朝訓練の前、昼休憩、仕事が終わった後、とにかく時間を見つけては、裏庭の池の中に入って指輪を探していたそうだ。
真面目なリヴァイ兵長が、任務や訓練、仕事に手を抜くことはない。いつも通り、完璧に任務をこなして、その上で休むことなく、指輪を探していたのだ。
頼りにしている部下達が、少しは休むように伝えても、リヴァイ兵長は頑なだった。
そうして、昨日の昼間にやっと指輪を見つけた。汚れて黒ずんでいた指輪をリヴァイ兵長が綺麗に磨いて、なまえの元に届いたのが昨日の夜だ。
きっと、安心して、張り詰めていた糸が解けてしまったのだろうーーー。
熱が出てしまったのは、疲れと睡眠不足、そして、今朝の血液検査で、あの汚い池の中で細菌感染を起こしてしまっていたことも分かった。
エルヴィン団長の好意で、私は昨日の夜からずっとリヴァイ兵長の看病をさせてもらっている。私の仕事は、リヴァイ班のメンバーが代わってくれるそうだ。
リヴァイ兵長にも、リヴァイ班のみんなにも迷惑をかけてばかりだーーーー。
それでも私は、こうして誠心誠意、心を込めて看病をすることくらいしか、してあげられることがないのだ。
「ごめんなさい…。」
もう何度目かの謝罪が、涙声と共にこぼれた。
ネックレスに通して、胸元で輝く指輪をギュッと握りしめて、早くリヴァイ兵長が元気になりますようにと願いをこめた。
全て私のせいだ。そんな私が泣くのは違う。間違っている。
ーーー自分にそう言い聞かせたところで、悲しいのか悔しいのか、罪悪感から来るのか分からない涙が胸の奥から迫り上がってきて、とうとう一粒、二粒、と頬をこぼれ落ちていく。
不意に、涙でぼやけた視界の中で、何かが動いたのが見えた。
それが、リヴァイ兵長の手だったと気づいた時にはもう、彼の指は私の頬に触れていた。
驚く私に、リヴァイ兵長が言う。
「泣いてるのか…?」
意識が戻ったばかりだからか、声は掠れ小さい。
普段、低く落ち着いた声で部下を引っ張っている姿とは遠く離れたそれに、胸が痛む。
こんなにも身体を壊してしまうまで、無理をさせてしまった。
「…っ。」
なんと謝ればいいのか、考えれば考えるほど、言葉は出なかった。
その代わりに、後から後から涙が溢れてくるから困る。
両手の甲で交互に拭って、必死に涙を止めようとするけれど、無駄だった。
「つらいことでも、あったのか…?」
リヴァイさんの指が、私の涙を拭いながら頬を撫でる。
あぁ、どうしてこの人はーーーーーー。
どうして、こんなにも優しいのだろう。いつだって誰かのため、ばかりだ。
その最たるものが、調査兵団の兵士長として人類の為に戦っている姿なのだろう。
そして、リヴァイ兵長は、あまりにも自分に無頓着過ぎる。
身体を酷使して、体調を崩して、高熱を出して倒れたというのに、彼はきっとそんな自分の今の状況にすら気づいていない。いや、まるで興味がないみたいに、考えてもいないのだ。
目の前で泣いている人がいるーーーーリヴァイ兵長が分かっているのも、わかろうとしているのも、きっと、それだけだ。
言葉が出ない代わりに、私は首を横に振る。
ただ、なんでもない、私は大丈夫なのだと、リヴァイ兵長に伝えたかった。
「お前を泣かせるのは、だれだ…!」
いきなり、リヴァイ兵長が上半身を起こした。
熱の下がらない顔はまだ少し赤いのに、怒りに満ちた三白眼はギラついていて、唇は悔しげに歪んでいた。
本当に、いますぐにでも、存在もしない誰かを殴りに行ってしまいそうな雰囲気だ。
私は、そんなリヴァイ兵長をふわりと抱きしめたのだ。
「…!?」
腕の中で、リヴァイ兵長が驚き、戸惑っているのを感じた。
何が起きているのか分からないのだろう。
彼は固まっていた。息も忘れたみたいに、身動き一つしない。
「ありがとうございます。」
「………は?」
「リヴァイ兵長の目が覚めて、ホッとしたんです。
そしたら、涙が出てきただけですよ。」
「あぁ…、そうか。心配させて悪かっーーーー。」
「ありがとうございました。
指輪も、優しさも、目を覚ましてくれたことも、全部。」
そっと柔らかく包み込むだけだった腕で、リヴァイ兵長をギュッと抱きしめた。
その瞬間、固まっていたリヴァイ兵長の身体が、ビクッと小さく揺れるのを感じた。
しばらくそうしていると、リヴァイ兵長がゆっくりと息を吸った。
「あぁ、よかった。
なまえの役に立てたなら、よかった…。」
少し前と同じ、掠れた小さな声だった。
でも、私には、幼い子供のように無垢で、純真な声に聞こえた。
「はい、ありがとうございます。」
リヴァイ兵長を抱きしめなおしながら、私は、その頭にそっと手を添えた。
ゆっくりと手を揺らしながら、優しく頭を撫でる。初めて触れたリヴァイ兵長の髪の毛は、想像していたよりずっと柔らかくてサラサラで、幼い子供どころか、赤ん坊みたいだった。
ベッドのシーツの上に落ちていたリヴァイ兵長の腕がゆっくりと持ち上がると、ゆるゆると私の背中にまわる。そして、誰かを守ってばかりいる手が、おずおずと私のシャツの背中を握りしめた。
「体調はどうですか?つらいところはないですか?」
「…生まれてきて今までで、今が最高に良い気分だ。」
「それならよかったです。」
クスリと笑って、私はリヴァイ兵長の頭を優しく撫でる。
今、私の腕の中で、まるで子供のように甘えているのは、調査兵団の兵士長で、人類最強の兵士と名高い人。部下からの信頼も厚く、皆からとても尊敬されている。
そして、他人に対してあまりにも優しくて、いつもいつも誰かを守ってばかりいて、そのために自分につく傷には興味も示さない。傷だらけの身体で、無傷の誰かが笑っている姿を見て、心から「よかった。」と思う人。自分が我慢すればいい、と多分きっといつも思ってる。
食事を摂ることも忘れるし、睡眠時間だって必要な分をとってくれない。自分に厳しいくせに、自分のことには無頓着。
私はーーーーーー。
(守りたい。リヴァイ兵長を、私が守りたい。)
まるで子供のように純粋で無垢なこの人を、他の誰かが傷つけてしまわないように。
私が守ってあげたい。
リヴァイ兵長を抱きしめながら、私はそんなことを考えていた。