Q14.泣きたいときは、その胸を貸してもらってもいいんですか?
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厩舎の中で主人を待つ馬達は、丁寧にブラッシングされた毛並みを競うように堂々と前を向いて立っていた。
多少の匂いなんて気にならないくらいに、彼らが美しく見える。
血だらけで腰を抜かして震えている調査兵を兵舎裏に残して、リヴァイ兵長が私の手を引いて連れて来たのは、兵舎奥にある厩舎そばの広場だった。
出張に向かうところなのか、数名の調査兵達が厩舎のそばに集まっている。
強く凛々しい調査兵は、いつだって私の目にはキラキラと輝いて見える。そんな彼らと並んだって、馬達は負けていない。いや、むしろ、共に壁の外へと駆けだしていく同志として強い絆で結ばれている彼らは、隣が良く似合う。
ひとりでは何もできずに、恐怖に屈して腰を抜かせてしまった私の惨めさが余計に際立つようで、思わず握りしめようとしたリヴァイ兵長の手は、そのタイミングで呆気なく離れてしまった。
その瞬間に、お前が感じる惨めさは正解だと言われた気がした私は、その手を追いかける勇気も、資格もなくて、ただ我儘に傷ついて、それに気づかれないように笑った。
なんとなく周りを見れば、大きな木の陰が、私とリヴァイ兵長を隠していた。
「助けて頂いて、ありがとうございました。
リヴァイ兵長が偶々通りかかってくれて、本当によかったです。
あのままだったら、私、顔に青いあざを作ってるところでしたよ。」
アハハ———。
明るく笑ってみたつもりだったけれど、私の耳に届いたのは渇いた虚しい音だけだった。
きっと、表情だって、情けないくらいに引きつった笑みになっていたのだろう。
リヴァイ兵長が、眉を顰めて怖い顔をした。
そして、さっきまで私の手を掴んでいた右手を上げたのだ。そしてその手は、躊躇いもなく私の方に向いていた。
殴られる————瞬間的にそう思ってしまったのは、つい数分前の恐怖が、まだ私の中に居座っていたからなのかもしれない。
思わず、肩に力が入って、強く目を瞑る。
そんな私の頬に触れたのは、ひんやりと冷たいけれど、どこか温かくて優しい手のひらの温もりだった。
(・・・・?)
おずおずと目を開けば、相変わらず、眉を顰めて怖い顔をしているリヴァイ兵長が、食い入るように私を見ていた。
「…悪かった。」
苦し気に、リヴァイ兵長が吐き出したのは、思いもよらない科白だった。
その理由も意図も理解できず、私は、頬の温もりをそのままで、ほんの少し首を傾げた。
何も分からない私とは対照的に、リヴァイ兵長は、小さな首の傾げの理由を理解したようだった。
「俺が来るのが遅れたせいで、怖い思いをさせた。
もっと早く、見つけてやりたかった。」
「…もしかして、私のことを探していたんですか?」
「エルドから、自分の同期の男がなまえを連れてどこかへ行ったと聞いた。
その男の特徴を聞いて、昨日のヤツだと分かったから、また何かされてんじゃねぇかと思って探してた。」
「偶然じゃ、なかったんですね。」
普通に考えればそうだ———と、調査兵達が普段近寄ることのない兵舎裏のことを考えなら思う。
だからこそ、あの彼も、ここなら誰も来ないはずだと目論んで私を連れて行ったのだろう。
まさか、リヴァイ兵長が私を探しているなんて、思いもしないで———。
「怖かっただろう。本当に、悪かった。」
リヴァイ兵長が、もう一度謝る。
本当に申し訳なさそうで、とても悔しそうに顔を顰めている。
でも、リヴァイ兵長は何も悪くない。
「そんな…!探して頂いただけで、とても有難いです。
実際、リヴァイ兵長のおかげで、無傷ですし!
本当に助かりましたよ。ありがとうございましたっ。」
私は、出来る限り明るく務めた。
リヴァイ兵長が感じる必要のない罪の意識を消して欲しかった。それから、私がただ〝可哀想〟だと思われたくなかったんだと思う。
上手く交わすことも出来ずに、男の人を怒らせて、暴言を吐かれるなんて恥ずかしい場面を見られてしまった———そんな羞恥心もあった。
だから、私は何も気にしていないんだとリヴァイ兵長に想わせたかったのだ。
必死な私の思いは実を結んで、ついさっきの渇いた笑いよりも、引きつった笑みよりも、だいぶうまく出来たはずだ。
でも、そんな浅はかな考えなんて、空気を読まないリヴァイ兵長は聞き入れてくれるわけがないのだ。
リヴァイ兵長は、苦し気に眉を顰めると、そのまま私の肩を掴んで強く引き寄せた。
勢いよくぶつかった胸板はすごく硬くて、少しだけ痛かったけれど、私の腰にまわされたリヴァイ兵長の腕は、
とても優しかった。
「怖かっただろう。」
「いえ…っ、そんな…。大丈夫ですよ!」
耳元から聞こえて来た心配そうな低い声に、私はやっぱり、精一杯の明るさで答える。
身長があまり変わらないリヴァイ兵長の心臓は、ちょうど私の心臓と同じ高さにあった。
リヴァイ兵長の心臓の音が、私の胸元を叩くせいで、耳元で大きな音になって響く。
耳が熱くなる。少しだけ、息が苦しいのは、リヴァイ兵長が私を強く抱きしめているせいだ。
「無理しなくていい。」
「無理なんて…っ、してないですよ…!
私も、世界のために戦う調査兵団でお世話になる以上は、強くいなくちゃって
それくらいは思っていたので、これくらいは平気なんです!」
「その心意気は評価する。だが、感じる必要のない恐怖を与えられて平気でいる必要はねぇ。」
「…っ。」
「泣きたいときは泣け。怖ぇときは、叫んででも俺を呼べ。
いつでも胸を貸す。いつでも駆け付ける。なまえには、俺がついてる。」
俺の前では、頑張らないでくれ————。
腰にまわっていたはずのリヴァイ兵長の右手は、いつのまにか私の後頭部に触れていた。
髪に絡んだ幾つもの指が、クシャリと握りしめながら私を引き寄せる。
少しだけ震えるそこから、力強さと悔しさが伝わってきて、胸がギュッと締め付けられる。
「…っ、本当は…、少しだけ…、怖かった、です…。」
おずおずと動き出した私の両手は、躊躇いがちに、リヴァイ兵長の腰に触れた。
その途端に、リヴァイ兵長が片手で私を力強く抱き寄せる。
「当たり前だ。あんな風に理不尽に怒鳴られて、怖くねぇわけがねぇ。
悔しかったよな。なまえは、アイツに好き勝手言われていいわけがねぇのに。」
耳元で低く響く声も、私の髪を撫でる手も、抱きしめる温かい胸も、リヴァイ兵長の持つすべてが優しくて、泣けたのだ。
身体の奥に押し込んで堪えていた涙が、胸元から一気にせり上がってきて、鼻が痛くなって、目頭が熱くなる。
「だって…っ、どうしてあんな風に…っ、言われなくちゃいけないの…っ。
確かに、しっかり断れなかった私も、悪かったと思うけど…っ。
だからって、あんな…っ。」
瞳から零れだした涙と一緒に、なんとか忘れようとしていた悔しさが溢れてしまった。
彼から吐かれた暴言を言葉にすることすら許せなくて、私の声は、声にならずに泣きじゃくる声へと変わっていく。
怖かった。確かに、怖かったのだ。
でも、それよりもなによりも、悔しかった。
私は、自分に自信がない。
特別秀でた才能もなければ、調査兵達のように、厳しい訓練に堪えぬくだけの忍耐力と体力もないし、命を懸ける勇気もない。
誰かの目を引くような容姿もしていないし、自分では〝普通〟だと思っているけれど、彼が言ったように他の誰かから見れば〝普通以下のブス〟かもしれない。
でも、料理をすることは好きで、調理師という資格を取った。
仕事として、調査兵達の健康に気を遣いながら、精一杯やっているつもりだ。
まだ足りないところもあるかもしれないけれど、私の努力を見ようともしていない彼に、すべてを否定されるのは許せない。
私はただ、悔しくて、だから、彼の暴力に屈したことを認めたくなかった。
それは、イコール、彼の暴言にも負けたことになるような気がしたのだ。
でも、リヴァイ兵長はちゃんと知っていた。
私の恐怖も、悔しさも———。
「なまえは悪くねぇ。お前は頑張った。負けてなんかなかった。
アイツに涙を見せねぇように、必死に堪えたんだろ。」
「…っ。」
「お前は強かった。あんなクソ野郎よりずっと、お前の方が強かった。
よく頑張ったな。」
リヴァイ兵長が、私の頭を優しく撫でる。
母親とも父親とも違う。だから私も、彼らにそうしていたように、縋りついて、子供みたいに泣き喚いたりはしない。
でも、なぜだろう。
リヴァイ兵長の腕の中は、今このとき、私の知るどこよりも温かくて、すごく、安心するのだ。
躊躇いがちに触れていただけだったはずの手が、いつの間にか強く抱き着いていた。
リヴァイ兵長が、部下に呼ばれる頃には、その肩が私の涙で湿ってしまうくらいには、頬をすり寄せて泣いていた。
「すぐに戻る。何かあれば、エルヴィンに声をかけろ。
俺からもアイツに、なまえを死ぬ気で守れと伝えてある。」
団長にとんでもない指示を出したことをサラリと告げたリヴァイ兵長が、自分の班の部下達と出張へ向かうその後姿を、追いかけたかった。
それくらいには、頭を撫でてくれた温かい手と、私が傷つくことを絶対に言わない低い声の優しさに、絆されていたかもしれない。
多少の匂いなんて気にならないくらいに、彼らが美しく見える。
血だらけで腰を抜かして震えている調査兵を兵舎裏に残して、リヴァイ兵長が私の手を引いて連れて来たのは、兵舎奥にある厩舎そばの広場だった。
出張に向かうところなのか、数名の調査兵達が厩舎のそばに集まっている。
強く凛々しい調査兵は、いつだって私の目にはキラキラと輝いて見える。そんな彼らと並んだって、馬達は負けていない。いや、むしろ、共に壁の外へと駆けだしていく同志として強い絆で結ばれている彼らは、隣が良く似合う。
ひとりでは何もできずに、恐怖に屈して腰を抜かせてしまった私の惨めさが余計に際立つようで、思わず握りしめようとしたリヴァイ兵長の手は、そのタイミングで呆気なく離れてしまった。
その瞬間に、お前が感じる惨めさは正解だと言われた気がした私は、その手を追いかける勇気も、資格もなくて、ただ我儘に傷ついて、それに気づかれないように笑った。
なんとなく周りを見れば、大きな木の陰が、私とリヴァイ兵長を隠していた。
「助けて頂いて、ありがとうございました。
リヴァイ兵長が偶々通りかかってくれて、本当によかったです。
あのままだったら、私、顔に青いあざを作ってるところでしたよ。」
アハハ———。
明るく笑ってみたつもりだったけれど、私の耳に届いたのは渇いた虚しい音だけだった。
きっと、表情だって、情けないくらいに引きつった笑みになっていたのだろう。
リヴァイ兵長が、眉を顰めて怖い顔をした。
そして、さっきまで私の手を掴んでいた右手を上げたのだ。そしてその手は、躊躇いもなく私の方に向いていた。
殴られる————瞬間的にそう思ってしまったのは、つい数分前の恐怖が、まだ私の中に居座っていたからなのかもしれない。
思わず、肩に力が入って、強く目を瞑る。
そんな私の頬に触れたのは、ひんやりと冷たいけれど、どこか温かくて優しい手のひらの温もりだった。
(・・・・?)
おずおずと目を開けば、相変わらず、眉を顰めて怖い顔をしているリヴァイ兵長が、食い入るように私を見ていた。
「…悪かった。」
苦し気に、リヴァイ兵長が吐き出したのは、思いもよらない科白だった。
その理由も意図も理解できず、私は、頬の温もりをそのままで、ほんの少し首を傾げた。
何も分からない私とは対照的に、リヴァイ兵長は、小さな首の傾げの理由を理解したようだった。
「俺が来るのが遅れたせいで、怖い思いをさせた。
もっと早く、見つけてやりたかった。」
「…もしかして、私のことを探していたんですか?」
「エルドから、自分の同期の男がなまえを連れてどこかへ行ったと聞いた。
その男の特徴を聞いて、昨日のヤツだと分かったから、また何かされてんじゃねぇかと思って探してた。」
「偶然じゃ、なかったんですね。」
普通に考えればそうだ———と、調査兵達が普段近寄ることのない兵舎裏のことを考えなら思う。
だからこそ、あの彼も、ここなら誰も来ないはずだと目論んで私を連れて行ったのだろう。
まさか、リヴァイ兵長が私を探しているなんて、思いもしないで———。
「怖かっただろう。本当に、悪かった。」
リヴァイ兵長が、もう一度謝る。
本当に申し訳なさそうで、とても悔しそうに顔を顰めている。
でも、リヴァイ兵長は何も悪くない。
「そんな…!探して頂いただけで、とても有難いです。
実際、リヴァイ兵長のおかげで、無傷ですし!
本当に助かりましたよ。ありがとうございましたっ。」
私は、出来る限り明るく務めた。
リヴァイ兵長が感じる必要のない罪の意識を消して欲しかった。それから、私がただ〝可哀想〟だと思われたくなかったんだと思う。
上手く交わすことも出来ずに、男の人を怒らせて、暴言を吐かれるなんて恥ずかしい場面を見られてしまった———そんな羞恥心もあった。
だから、私は何も気にしていないんだとリヴァイ兵長に想わせたかったのだ。
必死な私の思いは実を結んで、ついさっきの渇いた笑いよりも、引きつった笑みよりも、だいぶうまく出来たはずだ。
でも、そんな浅はかな考えなんて、空気を読まないリヴァイ兵長は聞き入れてくれるわけがないのだ。
リヴァイ兵長は、苦し気に眉を顰めると、そのまま私の肩を掴んで強く引き寄せた。
勢いよくぶつかった胸板はすごく硬くて、少しだけ痛かったけれど、私の腰にまわされたリヴァイ兵長の腕は、
とても優しかった。
「怖かっただろう。」
「いえ…っ、そんな…。大丈夫ですよ!」
耳元から聞こえて来た心配そうな低い声に、私はやっぱり、精一杯の明るさで答える。
身長があまり変わらないリヴァイ兵長の心臓は、ちょうど私の心臓と同じ高さにあった。
リヴァイ兵長の心臓の音が、私の胸元を叩くせいで、耳元で大きな音になって響く。
耳が熱くなる。少しだけ、息が苦しいのは、リヴァイ兵長が私を強く抱きしめているせいだ。
「無理しなくていい。」
「無理なんて…っ、してないですよ…!
私も、世界のために戦う調査兵団でお世話になる以上は、強くいなくちゃって
それくらいは思っていたので、これくらいは平気なんです!」
「その心意気は評価する。だが、感じる必要のない恐怖を与えられて平気でいる必要はねぇ。」
「…っ。」
「泣きたいときは泣け。怖ぇときは、叫んででも俺を呼べ。
いつでも胸を貸す。いつでも駆け付ける。なまえには、俺がついてる。」
俺の前では、頑張らないでくれ————。
腰にまわっていたはずのリヴァイ兵長の右手は、いつのまにか私の後頭部に触れていた。
髪に絡んだ幾つもの指が、クシャリと握りしめながら私を引き寄せる。
少しだけ震えるそこから、力強さと悔しさが伝わってきて、胸がギュッと締め付けられる。
「…っ、本当は…、少しだけ…、怖かった、です…。」
おずおずと動き出した私の両手は、躊躇いがちに、リヴァイ兵長の腰に触れた。
その途端に、リヴァイ兵長が片手で私を力強く抱き寄せる。
「当たり前だ。あんな風に理不尽に怒鳴られて、怖くねぇわけがねぇ。
悔しかったよな。なまえは、アイツに好き勝手言われていいわけがねぇのに。」
耳元で低く響く声も、私の髪を撫でる手も、抱きしめる温かい胸も、リヴァイ兵長の持つすべてが優しくて、泣けたのだ。
身体の奥に押し込んで堪えていた涙が、胸元から一気にせり上がってきて、鼻が痛くなって、目頭が熱くなる。
「だって…っ、どうしてあんな風に…っ、言われなくちゃいけないの…っ。
確かに、しっかり断れなかった私も、悪かったと思うけど…っ。
だからって、あんな…っ。」
瞳から零れだした涙と一緒に、なんとか忘れようとしていた悔しさが溢れてしまった。
彼から吐かれた暴言を言葉にすることすら許せなくて、私の声は、声にならずに泣きじゃくる声へと変わっていく。
怖かった。確かに、怖かったのだ。
でも、それよりもなによりも、悔しかった。
私は、自分に自信がない。
特別秀でた才能もなければ、調査兵達のように、厳しい訓練に堪えぬくだけの忍耐力と体力もないし、命を懸ける勇気もない。
誰かの目を引くような容姿もしていないし、自分では〝普通〟だと思っているけれど、彼が言ったように他の誰かから見れば〝普通以下のブス〟かもしれない。
でも、料理をすることは好きで、調理師という資格を取った。
仕事として、調査兵達の健康に気を遣いながら、精一杯やっているつもりだ。
まだ足りないところもあるかもしれないけれど、私の努力を見ようともしていない彼に、すべてを否定されるのは許せない。
私はただ、悔しくて、だから、彼の暴力に屈したことを認めたくなかった。
それは、イコール、彼の暴言にも負けたことになるような気がしたのだ。
でも、リヴァイ兵長はちゃんと知っていた。
私の恐怖も、悔しさも———。
「なまえは悪くねぇ。お前は頑張った。負けてなんかなかった。
アイツに涙を見せねぇように、必死に堪えたんだろ。」
「…っ。」
「お前は強かった。あんなクソ野郎よりずっと、お前の方が強かった。
よく頑張ったな。」
リヴァイ兵長が、私の頭を優しく撫でる。
母親とも父親とも違う。だから私も、彼らにそうしていたように、縋りついて、子供みたいに泣き喚いたりはしない。
でも、なぜだろう。
リヴァイ兵長の腕の中は、今このとき、私の知るどこよりも温かくて、すごく、安心するのだ。
躊躇いがちに触れていただけだったはずの手が、いつの間にか強く抱き着いていた。
リヴァイ兵長が、部下に呼ばれる頃には、その肩が私の涙で湿ってしまうくらいには、頬をすり寄せて泣いていた。
「すぐに戻る。何かあれば、エルヴィンに声をかけろ。
俺からもアイツに、なまえを死ぬ気で守れと伝えてある。」
団長にとんでもない指示を出したことをサラリと告げたリヴァイ兵長が、自分の班の部下達と出張へ向かうその後姿を、追いかけたかった。
それくらいには、頭を撫でてくれた温かい手と、私が傷つくことを絶対に言わない低い声の優しさに、絆されていたかもしれない。