【第六訓】楽だからってただの通り雨のせいにするな
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どこかから賑やかな声が聞こえた。
それは、いつもの日常のようで、とても懐かしい響きだった気がする。
屯所の裏で仕事をサボって昼寝をしていた総悟は、気だるげにアイマスクを外す。
「は?」
違和感を覚えて頬に触れれば、指がしっとりと濡れた。
まさか、遠い日の夢を見て泣いていたのか———ありえないと思いながら空を見上げれば、清々しいほどの晴れ渡る青空が広がっていた。
照りつける太陽が眩しくて、思わず目を細めたとき、また頬に冷たい何かが落ちて流れた。
「なんだ、通り雨かイ。」
空を見上げながら、総悟は濡れる頬を拭う。
「あ、本当にいた。」
ひとりを除いて誰も来ないはずの屯所裏にある秘密のサボリ場にやってきたのは、山崎退だった。
真選組の監査役であり、パシリの彼がわざわざ自分を探しに来る理由なんて、考えるまでもない。
「副長が、今すぐ稽古場へ来いだそうです。」
「死ねと言っとけ。」
思った通りの用件が面倒で、総悟は、見なかったことにするために、またアイマスクで視界を隠す。
「沖田さん、ちゃんと行ってくださいよ。
今日は一番隊の稽古日ですよ。隊士達はみんな道場に集まってるのに隊長がサボるってどういうことですか。
…まぁ、とっつぁんが連れてきた名前?とかって女の人のせいで、稽古どころじゃなくなってるけど。」
ボソッと最後に山崎が呟いたそれに、アイマスクで隠されていた総悟の目が見開いた。
「お前、今、何つった。」
総悟は、アイマスクを外して、山崎をジロリと見上げる。
殺気なのか、憂いなのか———いつもとは違う力強い瞳に、山崎は思わずたじろぎながらも、なんとか自分が言った言葉を必死に頭の中で再生する。
「えっと…、今日は一番隊の稽古日ですよ。隊士達はみんな———。」
「誰が、稽古場に来てるって言ったかつってんだイ。」
「誰が?あー、とっつぁんが連れてきた女の人のことですか?
へぇ、沖田さんでも女性に興味があるんですね。すごく綺麗な人でしたよ。
透き通るくらい綺麗な白い肌に青いチャイナ服がすごく似合ってて、
確か、姐さんのとこでキャバ嬢をしてたって———。」
「どけ!!」
飛び上がるように起き上がった総悟は、山崎の肩を乱暴に押して倒した。
まさか————。
山崎が言った特徴に、よく当てはまる女を知っているのだ。
でも、まさか、彼女なはずがない。
思いがけずに再会してしまったのは、一週間前。あの時、彼女は、もう自分達には会いたくないと思っているようだった。
それは、あの日、彼女が自らの意思で道場を立ち去ったと同義のはずだ。
それがなぜ、今更また、会いに来るのか。
この屯所に、やってきたのか。
信じられないから、彼女ではないことを、確かめたかっただけだ。
もしも彼女だったとしたら、なぜ今更会いに来たのかと理由を問い詰めたかっただけだ。
(違ぇ———。別に、違ぇから———。)
稽古場まで必死に走っているのは、別に、会いたいからとかじゃないから————。
それは、いつもの日常のようで、とても懐かしい響きだった気がする。
屯所の裏で仕事をサボって昼寝をしていた総悟は、気だるげにアイマスクを外す。
「は?」
違和感を覚えて頬に触れれば、指がしっとりと濡れた。
まさか、遠い日の夢を見て泣いていたのか———ありえないと思いながら空を見上げれば、清々しいほどの晴れ渡る青空が広がっていた。
照りつける太陽が眩しくて、思わず目を細めたとき、また頬に冷たい何かが落ちて流れた。
「なんだ、通り雨かイ。」
空を見上げながら、総悟は濡れる頬を拭う。
「あ、本当にいた。」
ひとりを除いて誰も来ないはずの屯所裏にある秘密のサボリ場にやってきたのは、山崎退だった。
真選組の監査役であり、パシリの彼がわざわざ自分を探しに来る理由なんて、考えるまでもない。
「副長が、今すぐ稽古場へ来いだそうです。」
「死ねと言っとけ。」
思った通りの用件が面倒で、総悟は、見なかったことにするために、またアイマスクで視界を隠す。
「沖田さん、ちゃんと行ってくださいよ。
今日は一番隊の稽古日ですよ。隊士達はみんな道場に集まってるのに隊長がサボるってどういうことですか。
…まぁ、とっつぁんが連れてきた名前?とかって女の人のせいで、稽古どころじゃなくなってるけど。」
ボソッと最後に山崎が呟いたそれに、アイマスクで隠されていた総悟の目が見開いた。
「お前、今、何つった。」
総悟は、アイマスクを外して、山崎をジロリと見上げる。
殺気なのか、憂いなのか———いつもとは違う力強い瞳に、山崎は思わずたじろぎながらも、なんとか自分が言った言葉を必死に頭の中で再生する。
「えっと…、今日は一番隊の稽古日ですよ。隊士達はみんな———。」
「誰が、稽古場に来てるって言ったかつってんだイ。」
「誰が?あー、とっつぁんが連れてきた女の人のことですか?
へぇ、沖田さんでも女性に興味があるんですね。すごく綺麗な人でしたよ。
透き通るくらい綺麗な白い肌に青いチャイナ服がすごく似合ってて、
確か、姐さんのとこでキャバ嬢をしてたって———。」
「どけ!!」
飛び上がるように起き上がった総悟は、山崎の肩を乱暴に押して倒した。
まさか————。
山崎が言った特徴に、よく当てはまる女を知っているのだ。
でも、まさか、彼女なはずがない。
思いがけずに再会してしまったのは、一週間前。あの時、彼女は、もう自分達には会いたくないと思っているようだった。
それは、あの日、彼女が自らの意思で道場を立ち去ったと同義のはずだ。
それがなぜ、今更また、会いに来るのか。
この屯所に、やってきたのか。
信じられないから、彼女ではないことを、確かめたかっただけだ。
もしも彼女だったとしたら、なぜ今更会いに来たのかと理由を問い詰めたかっただけだ。
(違ぇ———。別に、違ぇから———。)
稽古場まで必死に走っているのは、別に、会いたいからとかじゃないから————。