【第四訓】華やかな世界にも裏には一筋のウ〇筋があるものだ
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煌びやかに輝く歌舞伎町の夜は、男達を馬鹿にする。
女達が美しく着飾れば、男達はまるで何者かにでもなったかのように、汗水垂らしてせっせと働いた金を落としていく。
キャバクラ『すまいる』は、そんな男たちのおかげで、今夜も大繁盛だ。
だから、女達は、真心こめて彼らをもてなすことが出来るのである。
だからきっと、目の前をもっさりブリーフの男が吹っ飛んでいったように見えたのは、松平片栗虎の見間違いだ。
まるで人間がテーブルの上に落ちたようなドーーーーン!!という振動と音も、そのすぐ後にガラガラ、ガシャーンとグラスや皿が割れたような音が響いたのも、片栗虎の聞き間違いだ。
「今日から新しい娘が入ったらしいじゃないのぉ。
かなりの別嬪さんだって、ハナちゃんから聞いてやってきたのよ。
早速、将ちゃんにつけてくれねぇかい。」
大きなソファの中央を陣取る片栗虎は、今夜も両脇にお気に入りのキャバ嬢を侍らせていた。
彼が連れてやってきたのは、この国のトップである第十四代目の征夷大将軍、徳川茂茂である。
将軍という身分の高い立場でありながら庶民思いの優しい人柄である茂茂は、民の暮らしを自らの目で見て知りたいと、時折、片栗虎にお願いをして、歌舞伎町へとやってきているのだ。
いつもならば、護衛の為に真選組の隊士が多くついているのだが、今夜は10番隊の隊長である原田右之助と、彼の直属の部下が数名いるだけだ。
局長である近藤をはじめとする他の隊士達は、今夜、攘夷浪士達が乱を起こし、その大捕り物に駆り出されてしまっている為だ。
自分の護衛は他のものに任せて、本来の仕事を全うするように真選組に命を出したのもまた、茂茂本人である。
「はい、もちろん。
もう、つけておりますよ。」
志村妙が、ニコリと微笑む。
江戸一番の美女とも呼ばれる彼女は、その美しさと並外れた怪力から、キャバクラ『すまいる』のキャバ嬢兼用心棒として雇われている。
身の程知らずの酔っぱらい男達が粗相をやらかせば、彼女の強烈パンチがお見舞いされるというわけだ。
煌びやかな光の陰で物騒な事件も多く起きる歌舞伎町で、このキャバクラがいつまでも賑やかに営業が続けられるのは、最強のキャバ嬢がついているからなのである。
「ほう、それは有難いねぇ。さすが、仕事が早ぇじゃねぇの。
それで、将ちゃん見てない?
この店に来てから、結構すぐに行方不明になったんだけど。」
「えぇ、ですから、この店に来てすぐに、お目当ての別嬪の新人をつけましたから。
よっぽど彼女のことが気に入ったのか、さっき、目の前を楽しく飛び跳ねていきましたよ。」
「いや、俺がさっき見たのは、ぶっ飛ばされた涙目のもっさりブリーフよ。」
「えぇ、ですからそれが、私達の将軍様ですよ。」
お妙が、ニコリと微笑む。
そこに、汚れはまるでなく、江戸一番の美女の名は伊達ではないほどに美しい。
そうなれば、松平虎も煙草をくわえたまま「あ、やっぱり?」と答えるしかなくなるのも仕方がない。
「あ、やっぱり?じゃねェェェェェェェエエエエ!!」
真選組の常識人もツッコミ役も存在しないこの場で、腹から声を張り上げて、見事にツッコミという仕事を全うしたのは、マダオこと長谷川泰三だ。
今日から、派遣会社を経由して『すまいる』のボーイとして働いている。
「晴子おおおおおおおおおお!!
お客様に何てことしやがんだぁぁあああ!!
お前のせいで、また首になっちまったらどうしてくれんだよおおおお!!!
俺を飢え死にさせるつもりかぁぁあああ!?」
長谷川が怒鳴りつけたのは、キャバ嬢の晴子だ。
華奢で、女性らしいシルエットが、スカイブルーのドレスによく似合っている。
彼女が、片栗虎と妙が話題に上げていた新人のキャバ嬢だ。
長谷川と同じ派遣会社に最近入ってきたばかりの新人で、彼が彼女の教育係として、毎回、同じ派遣先に配属されている。そして今回は、この『スマイル』が、新しい派遣先なのだ。
ちなみに、その彼女の足元でのびているもっさりブリーフが、将ちゃんこと、徳川茂茂。この国の第十四代目征夷大将軍である。
「でも長谷が・・・マダオ。これにはのっぴきならない理由があるの。」
「お客様を、もっさりブリーフにしてぶっ飛す仕方のない理由なんてねぇよ!!
で、わざわざマダオって言い直すんじゃねぇ!俺はお前の先輩だぞ!!」
「そうよ、晴子ちゃん。
どんな理由があろうとも、お客様がどんなにもっさりブリーフだろうと、
ぶっ飛ばすのはいけないわ。一体、どうしてそんなことになってしまったの?」
積もった恨みを爆発させる長谷川とは対照的に、妙は諭すように彼女を叱った。
さすが、このキャバクラの古株であり、用心棒だ。
「もっさりブリーフにう〇筋ついてた。」
「即刻、この店から退場させなさい。
二度とこの店に這い上がってこれない身体にしてね。」
「御意。」
妙の命を受け、晴子は丸めた右手を左手で包むポーズで応える。
とても手慣れたように見えたやり取りだったけれど、キャバクラで見る光景ではない。
「御意、じゃねぇぇええええええッ!!」
当然、長谷川は怒った。
だが、もう遅い。
晴子の足元で、もっさりブリーフの将ちゃんが、締め技をかけられて泡を吹いている。
手遅れだ。
「将ちゃぁぁああああああんんん!!」
片栗虎が悲鳴を上げると、騒ぎを聞きつけた店長が慌てて走ってやってきた。
そして、晴子の足元で泡を吹いて倒れている茂茂を見つけて、顔面を真っ青に変える。
「どうして、もっさりブリーフのお客様が晴子の足元で泡吹いて死んでんだ!!」
「違うのよ、晴子ちゃんは少しやりすぎちゃっただけで、
これにはのっぴきならない理由があるの。」
怒鳴られる晴子を店長から庇ったのは、妙だった。
理由とはなんだと訊ねる店長に、妙が答える。
「お客様がもっさりブリーフになったうえに、そこにウ〇筋までつけていたっていうの。
そういう下品なお客様はここはお断りだから、すぐに退場させるように私が言ったのよ。」
「それは、このお客様がそういう店だと勘違いして服を脱いだ挙句
わいせつぶつを新人キャバ嬢に見せつけたということか。」
「えぇ、そういうことだと思うわ。
ねぇ、そうなんでしょう?晴子ちゃん。」
妙が晴子に訊ねる。
お客様に暴力をふるったことは、決して褒められることではない。
でも、仕方がないのかもしれない———頭ごなしに怒鳴られていた晴子に対する風向きは、完全に変わっていた。
妙のおかげだ。
(これなら、今回はクビにならずに済みそうだ…。)
長谷川が、心の中でホッと息を吐く。
そして、晴子が答えた。
「いいえ、そうじゃないわ。」
「いいえ?」
「お酒をつごうとしたら将ちゃんの着物に零しちゃって、
すぐにタオルで拭こうとしたんだけど、ちょうどブツのところだったから
タオル越しにでも租チンに触れるの嫌だなって思って脱いでもらったの。」
「・・・・は?」
「そしたら、もっさりブリーフでこっち見てくるから
あっち向いててって後ろ向いてもらったら、ウン筋ついてて。
気づいたら、吹っ飛ばしてたのよ。」
晴子が飄々と答える。
それは簡潔で、とても分かりやすかった。
「結局、お前かァァァァァァァァアアアア!!」
長谷川が絶望も含めて、怒鳴り声を上げた。
将ちゃんは、何も悪くなかった。
もしも、何か悪いところがあるのなら、拭き残しに気づけなかったことくらいだ。
泡を吹いて気を失っているはずの将ちゃんの瞳から、涙が一筋流れた。
それはまるで、彼がもっさりブリーフに残したウ〇筋のように————。
女達が美しく着飾れば、男達はまるで何者かにでもなったかのように、汗水垂らしてせっせと働いた金を落としていく。
キャバクラ『すまいる』は、そんな男たちのおかげで、今夜も大繁盛だ。
だから、女達は、真心こめて彼らをもてなすことが出来るのである。
だからきっと、目の前をもっさりブリーフの男が吹っ飛んでいったように見えたのは、松平片栗虎の見間違いだ。
まるで人間がテーブルの上に落ちたようなドーーーーン!!という振動と音も、そのすぐ後にガラガラ、ガシャーンとグラスや皿が割れたような音が響いたのも、片栗虎の聞き間違いだ。
「今日から新しい娘が入ったらしいじゃないのぉ。
かなりの別嬪さんだって、ハナちゃんから聞いてやってきたのよ。
早速、将ちゃんにつけてくれねぇかい。」
大きなソファの中央を陣取る片栗虎は、今夜も両脇にお気に入りのキャバ嬢を侍らせていた。
彼が連れてやってきたのは、この国のトップである第十四代目の征夷大将軍、徳川茂茂である。
将軍という身分の高い立場でありながら庶民思いの優しい人柄である茂茂は、民の暮らしを自らの目で見て知りたいと、時折、片栗虎にお願いをして、歌舞伎町へとやってきているのだ。
いつもならば、護衛の為に真選組の隊士が多くついているのだが、今夜は10番隊の隊長である原田右之助と、彼の直属の部下が数名いるだけだ。
局長である近藤をはじめとする他の隊士達は、今夜、攘夷浪士達が乱を起こし、その大捕り物に駆り出されてしまっている為だ。
自分の護衛は他のものに任せて、本来の仕事を全うするように真選組に命を出したのもまた、茂茂本人である。
「はい、もちろん。
もう、つけておりますよ。」
志村妙が、ニコリと微笑む。
江戸一番の美女とも呼ばれる彼女は、その美しさと並外れた怪力から、キャバクラ『すまいる』のキャバ嬢兼用心棒として雇われている。
身の程知らずの酔っぱらい男達が粗相をやらかせば、彼女の強烈パンチがお見舞いされるというわけだ。
煌びやかな光の陰で物騒な事件も多く起きる歌舞伎町で、このキャバクラがいつまでも賑やかに営業が続けられるのは、最強のキャバ嬢がついているからなのである。
「ほう、それは有難いねぇ。さすが、仕事が早ぇじゃねぇの。
それで、将ちゃん見てない?
この店に来てから、結構すぐに行方不明になったんだけど。」
「えぇ、ですから、この店に来てすぐに、お目当ての別嬪の新人をつけましたから。
よっぽど彼女のことが気に入ったのか、さっき、目の前を楽しく飛び跳ねていきましたよ。」
「いや、俺がさっき見たのは、ぶっ飛ばされた涙目のもっさりブリーフよ。」
「えぇ、ですからそれが、私達の将軍様ですよ。」
お妙が、ニコリと微笑む。
そこに、汚れはまるでなく、江戸一番の美女の名は伊達ではないほどに美しい。
そうなれば、松平虎も煙草をくわえたまま「あ、やっぱり?」と答えるしかなくなるのも仕方がない。
「あ、やっぱり?じゃねェェェェェェェエエエエ!!」
真選組の常識人もツッコミ役も存在しないこの場で、腹から声を張り上げて、見事にツッコミという仕事を全うしたのは、マダオこと長谷川泰三だ。
今日から、派遣会社を経由して『すまいる』のボーイとして働いている。
「晴子おおおおおおおおおお!!
お客様に何てことしやがんだぁぁあああ!!
お前のせいで、また首になっちまったらどうしてくれんだよおおおお!!!
俺を飢え死にさせるつもりかぁぁあああ!?」
長谷川が怒鳴りつけたのは、キャバ嬢の晴子だ。
華奢で、女性らしいシルエットが、スカイブルーのドレスによく似合っている。
彼女が、片栗虎と妙が話題に上げていた新人のキャバ嬢だ。
長谷川と同じ派遣会社に最近入ってきたばかりの新人で、彼が彼女の教育係として、毎回、同じ派遣先に配属されている。そして今回は、この『スマイル』が、新しい派遣先なのだ。
ちなみに、その彼女の足元でのびているもっさりブリーフが、将ちゃんこと、徳川茂茂。この国の第十四代目征夷大将軍である。
「でも長谷が・・・マダオ。これにはのっぴきならない理由があるの。」
「お客様を、もっさりブリーフにしてぶっ飛す仕方のない理由なんてねぇよ!!
で、わざわざマダオって言い直すんじゃねぇ!俺はお前の先輩だぞ!!」
「そうよ、晴子ちゃん。
どんな理由があろうとも、お客様がどんなにもっさりブリーフだろうと、
ぶっ飛ばすのはいけないわ。一体、どうしてそんなことになってしまったの?」
積もった恨みを爆発させる長谷川とは対照的に、妙は諭すように彼女を叱った。
さすが、このキャバクラの古株であり、用心棒だ。
「もっさりブリーフにう〇筋ついてた。」
「即刻、この店から退場させなさい。
二度とこの店に這い上がってこれない身体にしてね。」
「御意。」
妙の命を受け、晴子は丸めた右手を左手で包むポーズで応える。
とても手慣れたように見えたやり取りだったけれど、キャバクラで見る光景ではない。
「御意、じゃねぇぇええええええッ!!」
当然、長谷川は怒った。
だが、もう遅い。
晴子の足元で、もっさりブリーフの将ちゃんが、締め技をかけられて泡を吹いている。
手遅れだ。
「将ちゃぁぁああああああんんん!!」
片栗虎が悲鳴を上げると、騒ぎを聞きつけた店長が慌てて走ってやってきた。
そして、晴子の足元で泡を吹いて倒れている茂茂を見つけて、顔面を真っ青に変える。
「どうして、もっさりブリーフのお客様が晴子の足元で泡吹いて死んでんだ!!」
「違うのよ、晴子ちゃんは少しやりすぎちゃっただけで、
これにはのっぴきならない理由があるの。」
怒鳴られる晴子を店長から庇ったのは、妙だった。
理由とはなんだと訊ねる店長に、妙が答える。
「お客様がもっさりブリーフになったうえに、そこにウ〇筋までつけていたっていうの。
そういう下品なお客様はここはお断りだから、すぐに退場させるように私が言ったのよ。」
「それは、このお客様がそういう店だと勘違いして服を脱いだ挙句
わいせつぶつを新人キャバ嬢に見せつけたということか。」
「えぇ、そういうことだと思うわ。
ねぇ、そうなんでしょう?晴子ちゃん。」
妙が晴子に訊ねる。
お客様に暴力をふるったことは、決して褒められることではない。
でも、仕方がないのかもしれない———頭ごなしに怒鳴られていた晴子に対する風向きは、完全に変わっていた。
妙のおかげだ。
(これなら、今回はクビにならずに済みそうだ…。)
長谷川が、心の中でホッと息を吐く。
そして、晴子が答えた。
「いいえ、そうじゃないわ。」
「いいえ?」
「お酒をつごうとしたら将ちゃんの着物に零しちゃって、
すぐにタオルで拭こうとしたんだけど、ちょうどブツのところだったから
タオル越しにでも租チンに触れるの嫌だなって思って脱いでもらったの。」
「・・・・は?」
「そしたら、もっさりブリーフでこっち見てくるから
あっち向いててって後ろ向いてもらったら、ウン筋ついてて。
気づいたら、吹っ飛ばしてたのよ。」
晴子が飄々と答える。
それは簡潔で、とても分かりやすかった。
「結局、お前かァァァァァァァァアアアア!!」
長谷川が絶望も含めて、怒鳴り声を上げた。
将ちゃんは、何も悪くなかった。
もしも、何か悪いところがあるのなら、拭き残しに気づけなかったことくらいだ。
泡を吹いて気を失っているはずの将ちゃんの瞳から、涙が一筋流れた。
それはまるで、彼がもっさりブリーフに残したウ〇筋のように————。