【第九訓】これが『会いたかった』と言えない天邪鬼の愛情表現だ
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名前が振り下ろした刀は、総悟の頬をかすめて稽古場の床につきささった。
稽古場は、シン———と静まり返っていた。
多くの隊士が、真選組で一番の剣豪が殺されると思った。
でも、彼は生きている。
名前が、生かすことを選んでくれたおかげだ。
そう、沖田総悟は、負けたのだ。
彼は、誰の目から見ても〝敗者〟だった。
「相変わらず、総ちゃんは弱いね。」
突き刺した刀を抜きながら、名前が小さく笑う。
「お前こそ。
相変わらず、色気のねぇガキみたいな白パンが良く似合ってるぜイ。」
女性の羞恥心を刺激するようなことを言いながら、総悟が身体を起こす。
だが、起き上がりきる前に、名前に、口に刀の先をねじ込まれる。
「その可愛いお口、二度と生意気なこと言えないように
お姉ちゃんから愛あるお仕置きをしてあげようか。」
「ふぁふぇふほんはははっへひふぁはふぇ。(やれるもんならやってみやがれ。)」
名前が総悟の口から刀を抜いたのと、総悟が飛ぶように起き上がったのはほぼ同時だった。
そして次の瞬間には、決着がついたはずの2人が振りかぶった刀がぶつかり合って高い音を響かせていた。
重なったまま、押しては引いては、力に負けてカタカタと震える刀から、彼らが互いに、今度こそ本気で相手を殺さんとするばかりに力を込めているのがよくわかる。
「局長、副長ッ!2人を止めなくていいんですか!?」
「今度こそ、本当に沖田隊長が殺されちまいますよっ。」
「いや、今度は沖田隊長が名前さんを殺しちまうかもッ!」
若い隊士達が慌て出す。
どうにか止めてくれとせがまれるのだけれど、近藤も土方も動こうとしない。
だって、殺気立てて刀を交える彼らの前に手を出してしまったら、こっちが斬られてしまうではないか。
それに———。
「あんなに楽しそうに剣を振ってるワルガキ共を止めるような
野暮は出来ねぇさ。」
近藤がハッハッハと豪快に笑う。
「え?」
「楽しそう・・・?」
殺し合いをしているではないか———。
若い隊士達は首を傾げながら、真剣勝負を再開してしまった2人に視線を向ける。
どう見ても〝楽しそう〟には見えない。
彼ら、目が本気なのだ。
激しくぶつかり合う刀を、互いに力いっぱいに振りほどいては、また大きく振りかぶる。
総悟が怖い顔で突っ込んでいけば、名前が人間業とは思えない跳力を見せつけて飛び上がれり、それを避ける。
だが、総悟は猛スピードで壁走りをすると、落ちていく名前をそのまま斬ってしまおうとする。
すると、うまく身体を横に倒して華麗に避けた名前が、総悟の右足を掴んだ。
バランスを崩した総悟は、そのまま床に叩きつけられるかと思ったら、右足を力いっぱいに引いて、自らの足を握る名前ごと自分の元へ引き寄せる。そして、床に叩きつけられる前に刀を振り上げれば、名前も同様に刀を振り上げた。
また、刀がぶつかり合う高い音が響いた。
手に汗握る緊迫した場面が、何度も何度も繰り返されるばかりだ。
彼らは、一瞬でも気を抜けば、やられそう———そんな風に思わせるような戦い方をしている。
これのどこが〝楽しそう〟なのか、若い隊士達には分からなかった。
でも、確かに、楽しそうなのだ。
沖田と名前が、ではない。
古巣の隊士達や、土方、近藤が、本当に嬉しそうに頬を緩めているのだ。
「いけー!!いけー!!」
「今度こそ勝ってくださいよ!!」
「男の意地を見せてくれ!!」
「名前ーっ!手加減はすんじゃねぇぞー!!」
古巣の隊士達は、サッカーの試合でも見ているかのように、楽しそうに盛り上がっている。
本当に、心から楽しそうだ。
でも、若い隊士達に見えるのは、相手を殺さんばかりに刀を振りまわす鬼達の斬り合いなのだ。
そんな彼らの隣で、土方が溜息を洩らした。
「アイツら、少しは大人な対応をしあえるようになったかと思ったが、
何も変わっちゃいねぇな。相変わらず、だ。」
呆れたように溜息を吐くのに、土方の口元に浮かんだ苦笑は、とても嬉しそうだった。
稽古場は、シン———と静まり返っていた。
多くの隊士が、真選組で一番の剣豪が殺されると思った。
でも、彼は生きている。
名前が、生かすことを選んでくれたおかげだ。
そう、沖田総悟は、負けたのだ。
彼は、誰の目から見ても〝敗者〟だった。
「相変わらず、総ちゃんは弱いね。」
突き刺した刀を抜きながら、名前が小さく笑う。
「お前こそ。
相変わらず、色気のねぇガキみたいな白パンが良く似合ってるぜイ。」
女性の羞恥心を刺激するようなことを言いながら、総悟が身体を起こす。
だが、起き上がりきる前に、名前に、口に刀の先をねじ込まれる。
「その可愛いお口、二度と生意気なこと言えないように
お姉ちゃんから愛あるお仕置きをしてあげようか。」
「ふぁふぇふほんはははっへひふぁはふぇ。(やれるもんならやってみやがれ。)」
名前が総悟の口から刀を抜いたのと、総悟が飛ぶように起き上がったのはほぼ同時だった。
そして次の瞬間には、決着がついたはずの2人が振りかぶった刀がぶつかり合って高い音を響かせていた。
重なったまま、押しては引いては、力に負けてカタカタと震える刀から、彼らが互いに、今度こそ本気で相手を殺さんとするばかりに力を込めているのがよくわかる。
「局長、副長ッ!2人を止めなくていいんですか!?」
「今度こそ、本当に沖田隊長が殺されちまいますよっ。」
「いや、今度は沖田隊長が名前さんを殺しちまうかもッ!」
若い隊士達が慌て出す。
どうにか止めてくれとせがまれるのだけれど、近藤も土方も動こうとしない。
だって、殺気立てて刀を交える彼らの前に手を出してしまったら、こっちが斬られてしまうではないか。
それに———。
「あんなに楽しそうに剣を振ってるワルガキ共を止めるような
野暮は出来ねぇさ。」
近藤がハッハッハと豪快に笑う。
「え?」
「楽しそう・・・?」
殺し合いをしているではないか———。
若い隊士達は首を傾げながら、真剣勝負を再開してしまった2人に視線を向ける。
どう見ても〝楽しそう〟には見えない。
彼ら、目が本気なのだ。
激しくぶつかり合う刀を、互いに力いっぱいに振りほどいては、また大きく振りかぶる。
総悟が怖い顔で突っ込んでいけば、名前が人間業とは思えない跳力を見せつけて飛び上がれり、それを避ける。
だが、総悟は猛スピードで壁走りをすると、落ちていく名前をそのまま斬ってしまおうとする。
すると、うまく身体を横に倒して華麗に避けた名前が、総悟の右足を掴んだ。
バランスを崩した総悟は、そのまま床に叩きつけられるかと思ったら、右足を力いっぱいに引いて、自らの足を握る名前ごと自分の元へ引き寄せる。そして、床に叩きつけられる前に刀を振り上げれば、名前も同様に刀を振り上げた。
また、刀がぶつかり合う高い音が響いた。
手に汗握る緊迫した場面が、何度も何度も繰り返されるばかりだ。
彼らは、一瞬でも気を抜けば、やられそう———そんな風に思わせるような戦い方をしている。
これのどこが〝楽しそう〟なのか、若い隊士達には分からなかった。
でも、確かに、楽しそうなのだ。
沖田と名前が、ではない。
古巣の隊士達や、土方、近藤が、本当に嬉しそうに頬を緩めているのだ。
「いけー!!いけー!!」
「今度こそ勝ってくださいよ!!」
「男の意地を見せてくれ!!」
「名前ーっ!手加減はすんじゃねぇぞー!!」
古巣の隊士達は、サッカーの試合でも見ているかのように、楽しそうに盛り上がっている。
本当に、心から楽しそうだ。
でも、若い隊士達に見えるのは、相手を殺さんばかりに刀を振りまわす鬼達の斬り合いなのだ。
そんな彼らの隣で、土方が溜息を洩らした。
「アイツら、少しは大人な対応をしあえるようになったかと思ったが、
何も変わっちゃいねぇな。相変わらず、だ。」
呆れたように溜息を吐くのに、土方の口元に浮かんだ苦笑は、とても嬉しそうだった。