1. 淡い夢
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俺、ポートガス・D・エースは、永遠に名前を愛すると誓います—————。
色褪せていく写真のように、いつしか薄れていくはずだった遠い記憶が、遠くで私を呼んでいる気がした。
いや、呼んでいるのは、本当に記憶の方だろうか。
もしかすると、私の方が呼んでいるのかもしれない。
こっちに来て、来てって———。
「んー…、うっさいなぁ…。」
眉を顰めて文句を言いながら、温かい布団の中に潜り込んだ。
真冬のこの時期は、熊だけではなくて、人間も冬眠をしたほうがいいんじゃないかと、本気で思っている。
どうしてこんなにも寒いのに、早起きをして仕事に行かないといけないのだろうか————。
(本当にうっさい…。眠れないじゃん…。アラームの音楽は子守歌に変えとこ…。)
ウトウトした意識の中で、朝が苦手な自分のために、聴きなれないロックをアラームに勝手にセットした数日前のイゾウを心底恨んだ。
その間もずっと、ガンガンと激しいシャウトが響いて————。
「遅刻!!!」
ロックミュージシャンも引くほどのシャウトを響かせて、勢いよく身体を起こす。
慌ててスマホの時計を確認すれば、起床予定時間の6時半はとっくに過ぎて、9時を回っていた。
見間違いだと願って、何度も瞬きをしてみたけれど、9の数字が逆立ちをしてくれることはなかった。
鏡を見なくても、顔面が真っ青になっているのがわかるほどに、血の気が引いていく。
就業時間は8時半からとなっている。これはもう、言い逃れのできないほどに完全な遅刻だ———。
それに、言い訳を考える時間すら惜しくて、私はベッドから飛び降りながら、会社に電話を掛けた。
スマホを耳に当てて呼び出し音を聞きながら、r乱暴に開いたクローゼットから適当にハンガーにかかった服を引っ張り出してベッドに投げ捨てた。
顔を洗っている時間もない今、会社に来ていく服を選んでいる余裕なんてあるわけがない。
≪はい、レッドフォース塾です。≫
しばらく呼び出し音が続いた後、電話に出たのは勤めている塾の塾長だった。
「おはようございます、シャンクスさんっ。
すみません、今起きてしまって…っ。本当にすみません…!
今すぐ行きます!!」
≪あぁ、名前か。おはよう。
今から来てくれるのか?≫
「はい!!5分で出ます!!本当にごめんなさい…っ。」
≪そりゃ嬉しいな。今年の最後に名前に会えるなんて。
美味い御節でも用意して待ってるよ。≫
「いえ、そんなっ。シャンクスさんに御節の用意なんて———。
お、せち?」
≪あぁ、御節だっ。≫
首を傾げながらスマホを耳から離した私は、改めて、日付を確認する。
そこに表示されているのは、どう見ても12月31日の大晦日の日付だった。
塾は12月28日から冬休みに入っていて、その日に塾長のシャンクスさんや塾講師の皆と忘年会を開いている———。
(あ。)
数日前に行った忘年会を思い出したのと同時に、そういえば、呼び出し音の途中で、呼び出し先がシャンクスさんのスマホへの直電に切り替わる音が聞こえたような気がするのまで思い出した。
そこまで理解すれば、その後に私を襲うのは、間抜けな勘違いと休日に9時過ぎに起きるというだらしない醜態を晒してしまったという恥ずかしさだった。
「す…っ、すみません…っ!お休みのところを…っ。
今日が休みだってことを忘れてて…っ。」
≪なんだ、そういうことか。
てっきり、気づかないうちに名前と年末デートをする予定でも立ててたのかと
ワクワクしてしまった。≫
スマホの向こうで、シャンクスさんが楽しそうに笑う。
勤め先の上司が、優しく朗らかな人で本当に良かった————、私は苦笑しながらも、胸を撫でおろす。
そして、私は、ついでにすることではないけれど、年末年始の挨拶を交わしてから電話を切った。
(焦って損した気分。)
スマホをベッドの上に投げ捨てて、私の身体も背中からベッドに落とした。
このマンションに越してきて、マルコさんの口利きでシャンクスさんのところで働きだして半年が経つ。
ベッドに寝転がって見上げる天井もすっかり見慣れてしまった。
今日の日まで、なんとかやっていたはずだったのに、最後の最後にやらかしてしまった。
(どうして、今日も仕事だって思っちゃったんだろう。)
あえて自問しながら、両目の上に右腕を乗せて、視界を隠した。
でも、視界は隠せても、自分の気持ちは隠せない。
本当は、わかってる。
私は今日の日が来たことを、認めたくなかったのだ。
唇を噛んでも、真っ暗闇の向こうが滲んでいる気がした。
あれから、3年が経った。
明日、エースは20になる。
私を愛していないエースが、20になる———。
色褪せていく写真のように、いつしか薄れていくはずだった遠い記憶が、遠くで私を呼んでいる気がした。
いや、呼んでいるのは、本当に記憶の方だろうか。
もしかすると、私の方が呼んでいるのかもしれない。
こっちに来て、来てって———。
「んー…、うっさいなぁ…。」
眉を顰めて文句を言いながら、温かい布団の中に潜り込んだ。
真冬のこの時期は、熊だけではなくて、人間も冬眠をしたほうがいいんじゃないかと、本気で思っている。
どうしてこんなにも寒いのに、早起きをして仕事に行かないといけないのだろうか————。
(本当にうっさい…。眠れないじゃん…。アラームの音楽は子守歌に変えとこ…。)
ウトウトした意識の中で、朝が苦手な自分のために、聴きなれないロックをアラームに勝手にセットした数日前のイゾウを心底恨んだ。
その間もずっと、ガンガンと激しいシャウトが響いて————。
「遅刻!!!」
ロックミュージシャンも引くほどのシャウトを響かせて、勢いよく身体を起こす。
慌ててスマホの時計を確認すれば、起床予定時間の6時半はとっくに過ぎて、9時を回っていた。
見間違いだと願って、何度も瞬きをしてみたけれど、9の数字が逆立ちをしてくれることはなかった。
鏡を見なくても、顔面が真っ青になっているのがわかるほどに、血の気が引いていく。
就業時間は8時半からとなっている。これはもう、言い逃れのできないほどに完全な遅刻だ———。
それに、言い訳を考える時間すら惜しくて、私はベッドから飛び降りながら、会社に電話を掛けた。
スマホを耳に当てて呼び出し音を聞きながら、r乱暴に開いたクローゼットから適当にハンガーにかかった服を引っ張り出してベッドに投げ捨てた。
顔を洗っている時間もない今、会社に来ていく服を選んでいる余裕なんてあるわけがない。
≪はい、レッドフォース塾です。≫
しばらく呼び出し音が続いた後、電話に出たのは勤めている塾の塾長だった。
「おはようございます、シャンクスさんっ。
すみません、今起きてしまって…っ。本当にすみません…!
今すぐ行きます!!」
≪あぁ、名前か。おはよう。
今から来てくれるのか?≫
「はい!!5分で出ます!!本当にごめんなさい…っ。」
≪そりゃ嬉しいな。今年の最後に名前に会えるなんて。
美味い御節でも用意して待ってるよ。≫
「いえ、そんなっ。シャンクスさんに御節の用意なんて———。
お、せち?」
≪あぁ、御節だっ。≫
首を傾げながらスマホを耳から離した私は、改めて、日付を確認する。
そこに表示されているのは、どう見ても12月31日の大晦日の日付だった。
塾は12月28日から冬休みに入っていて、その日に塾長のシャンクスさんや塾講師の皆と忘年会を開いている———。
(あ。)
数日前に行った忘年会を思い出したのと同時に、そういえば、呼び出し音の途中で、呼び出し先がシャンクスさんのスマホへの直電に切り替わる音が聞こえたような気がするのまで思い出した。
そこまで理解すれば、その後に私を襲うのは、間抜けな勘違いと休日に9時過ぎに起きるというだらしない醜態を晒してしまったという恥ずかしさだった。
「す…っ、すみません…っ!お休みのところを…っ。
今日が休みだってことを忘れてて…っ。」
≪なんだ、そういうことか。
てっきり、気づかないうちに名前と年末デートをする予定でも立ててたのかと
ワクワクしてしまった。≫
スマホの向こうで、シャンクスさんが楽しそうに笑う。
勤め先の上司が、優しく朗らかな人で本当に良かった————、私は苦笑しながらも、胸を撫でおろす。
そして、私は、ついでにすることではないけれど、年末年始の挨拶を交わしてから電話を切った。
(焦って損した気分。)
スマホをベッドの上に投げ捨てて、私の身体も背中からベッドに落とした。
このマンションに越してきて、マルコさんの口利きでシャンクスさんのところで働きだして半年が経つ。
ベッドに寝転がって見上げる天井もすっかり見慣れてしまった。
今日の日まで、なんとかやっていたはずだったのに、最後の最後にやらかしてしまった。
(どうして、今日も仕事だって思っちゃったんだろう。)
あえて自問しながら、両目の上に右腕を乗せて、視界を隠した。
でも、視界は隠せても、自分の気持ちは隠せない。
本当は、わかってる。
私は今日の日が来たことを、認めたくなかったのだ。
唇を噛んでも、真っ暗闇の向こうが滲んでいる気がした。
あれから、3年が経った。
明日、エースは20になる。
私を愛していないエースが、20になる———。