年下の彼
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ついさっき、春島の気候に入ったらしい。
楽しそうな笑い声や、誰かと誰かが喧嘩をしてる怒声が賑やかなモビー号の甲板に逃げて来た私を柔らかい風が包んだ。
一番賑やかな方を見ると、その中心でエースが笑っていた。
最近、白ひげ海賊団に入団したばかりの私にとって、2番隊の隊長であるエースは、海賊として先輩だ。
でも、歳は私の方が幾つか上だった。
『敬語はやめろよな!!仲良くやろうぜ!!』
わざわざ白髭の親父様が開いてくれた歓迎会の酒の席で、エースは兄弟達にしているように私の肩を組むと、白い歯を見せてニシシと笑った。
エースは、メラメラの実の能力を駆使した戦闘力で白髭海賊団にとても貢献しているけれど、その太陽のような笑顔でも家族を温かく守っている。
だから、エースの周りにはいつも家族が集まっていて、賑やかだ。
でも今は、楽しい輪の中で笑うような気分じゃない。
小さく息を吐いた私は、今来た道を戻るように踵を返す。
ただのんびりと歩くけれど、何処へ向かえばいいかは分からない。
だって、私の部屋のベッドには、今朝までいたマルコさんの香りがまだ濃く残っているから。
気まぐれに抱かれた昨夜。
今日も、目が覚めればマルコさんは消えていて、私に残されたのは、残り香と虚しさだけだった。
気だるげな目の奥には鋭い眼光が隠れていて、私の心は見抜かれてばかりだけれど、私はマルコさんが何を考えているのか分からない。
分かるのは、マルコさんが私を好きなわけじゃないということだけだ。
こんな無意味な関係、止めなきゃいけないって分かってる。
分かってるのにー。
(馬鹿だなぁ…。)
ため息が出る。
海賊なんてこんなものなのだろうか。
広く長いモビー号の船内を真っすぐ真っすぐに歩けば、裏甲板に出た。
賑やかな表甲板とは違って、そこはとても静かだった。
柔らかい春の風に包まれるけれど、温かくはない。
何度目かのため息を吐いて、私は裏甲板の船べりに背中を預けて腰を降ろした。
顔だけを上に向ければ、眩しいくらいの太陽の光が私を照らしていた。
眩しくて目を瞑ると、なんだか眠たくなってきた。
昨日の夜は、マルコさんが寝かせてくれなかったからー。
また思い出して自己嫌悪になる。
(このまま眠ってしまおう。)
そう思って、船べりに寄り掛かった格好で目を閉じる。
瞳に溜まっていた涙が、頬を伝って落ちていくのを感じたけれど、気づかなかったフリをした。
ユラユラと波に揺れるモビー号の船上は、まるで揺りかごのように優しく私を眠りへと誘う。
ウトウトし始めた頃、頬にピトッと冷たいものが当たった。
「ひやぁ…!」
驚いて目を開けた私は、変な悲鳴を上げてしまう。
「ハハッ、悪ぃ、悪ぃ!!」
いつの間にか私の隣に座っていたエースが、棒アイスを両手に持って面白そうに笑う。
どうやら、私はそのアイスを頬に当てられたらしい。
「さっき名前がこっちに行くのが見えたから、
サッチにアイス貰って来たんだ。甘いもん、好きだろ?」
「うん、好き。ありがとう。」
礼を言って受け取れば、エースは嬉しそうにニシシと笑った。
他の人より平熱の高いエースの腕が私の肩に触れて、ジリジリと熱くなってくる。
だから余計に、舌に触れた途端に身体を冷やそうとする、冷たくて甘いアイスが美味しく感じた。
「美味しいね。」
「サッチはバカだが、料理の腕は一流だからな。」
「ふふ、そうだね。」
クスリと笑って、私は太陽を見上げる。
さっきまで眩しかった光が、少し柔らかくなってきた気がする。
快晴だった青い空に、少しだけ雲が浮かび出したせいかもしれない。
冷たくて美味しいアイスを舐めながら、私とエースは他愛のない話をした。
それは、何の意味もないようなくだらないものばかりで、私は馬鹿みたいに口を大きく開けて笑う。
そうすると、大きくて温かいエースの手が、私の髪をクシャリと撫でる。
私の頬に残った涙の痕に気づいているのだろうけれど、そこに触れることは絶対にしない。
でも、ひとりきりで弱くなりたいときに限って、私を見つけて隣にいてくれるのはいつもエースだ。
それが心地よくて、私はいつからか、辛いことがあるとエースの姿を探すようになってしまった。
そして、その度にいつも、何も言わない私に向けてくれるエースの屈託のない笑顔に心を救われるのだ。
テンポのいい会話は心地よくて、あっという間に時間は過ぎていく。
さっきまで私を眩しいくらいに照らしていた太陽の光はいつの間にか青い海に沈みだして、刹那な赤で私とエースを包んでいた。
「なぁ。」
「ん~?」
「いつまで、ひとりで泣くつもりだ?」
さっきまでのカラカラと笑う楽しそうな声は消えいた。
頬に触れたエースの手が火傷しそうなくらいに熱くて、私の頬は冷たい風に冷えすぎていたのだと思い知った。
綺麗な黒い瞳で私を真っすぐに見つめるエースを、赤い夕陽が柔らかく包んでいた。
その光景がなんだかとても寂しくさせる。
「どうしたの?私は別に泣いてなんかー。」
「惚れてる女が泣かされてんのに、もう黙って見てられねぇ。
なぁ、早く俺を選んでくれよ。」
エースの表情が歪むのを私は初めて見てしまった。
眉間に刻まれた皴だとか、苦しそうな瞳だとか、私に向けられたエースのすべてが切なくて、胸が痛いくらいに締め付けられた。
私は、太陽のような笑顔を曇らせたいわけじゃない。
大切だから、大好きだから、傷つけたくなんかない。
ポロリ、涙が私の頬を伝って落ちると、エースが私を抱きしめた。
少しずつ冷たくなりはり始めた風に凍えだしていた身体は、心地の良い体温で温まっていくー。
「エース…、」
急ぎ足で加速していく鼓動を教えてくれる胸元に、そっと触れる。
私を抱きしめるエースの腕が、強さを増した。
私は、ゆっくりと口を開いて、気持ちを言葉にする。
それが声になってエースに届けば、私を抱きしめる腕の力は痛いくらいに強くなった。
何も言わなくても分かってくれるエースを好きになれたら、きっと幸せになれること、私も知っているのー。
ずっとずっと前から、気づいていたー。
楽しそうな笑い声や、誰かと誰かが喧嘩をしてる怒声が賑やかなモビー号の甲板に逃げて来た私を柔らかい風が包んだ。
一番賑やかな方を見ると、その中心でエースが笑っていた。
最近、白ひげ海賊団に入団したばかりの私にとって、2番隊の隊長であるエースは、海賊として先輩だ。
でも、歳は私の方が幾つか上だった。
『敬語はやめろよな!!仲良くやろうぜ!!』
わざわざ白髭の親父様が開いてくれた歓迎会の酒の席で、エースは兄弟達にしているように私の肩を組むと、白い歯を見せてニシシと笑った。
エースは、メラメラの実の能力を駆使した戦闘力で白髭海賊団にとても貢献しているけれど、その太陽のような笑顔でも家族を温かく守っている。
だから、エースの周りにはいつも家族が集まっていて、賑やかだ。
でも今は、楽しい輪の中で笑うような気分じゃない。
小さく息を吐いた私は、今来た道を戻るように踵を返す。
ただのんびりと歩くけれど、何処へ向かえばいいかは分からない。
だって、私の部屋のベッドには、今朝までいたマルコさんの香りがまだ濃く残っているから。
気まぐれに抱かれた昨夜。
今日も、目が覚めればマルコさんは消えていて、私に残されたのは、残り香と虚しさだけだった。
気だるげな目の奥には鋭い眼光が隠れていて、私の心は見抜かれてばかりだけれど、私はマルコさんが何を考えているのか分からない。
分かるのは、マルコさんが私を好きなわけじゃないということだけだ。
こんな無意味な関係、止めなきゃいけないって分かってる。
分かってるのにー。
(馬鹿だなぁ…。)
ため息が出る。
海賊なんてこんなものなのだろうか。
広く長いモビー号の船内を真っすぐ真っすぐに歩けば、裏甲板に出た。
賑やかな表甲板とは違って、そこはとても静かだった。
柔らかい春の風に包まれるけれど、温かくはない。
何度目かのため息を吐いて、私は裏甲板の船べりに背中を預けて腰を降ろした。
顔だけを上に向ければ、眩しいくらいの太陽の光が私を照らしていた。
眩しくて目を瞑ると、なんだか眠たくなってきた。
昨日の夜は、マルコさんが寝かせてくれなかったからー。
また思い出して自己嫌悪になる。
(このまま眠ってしまおう。)
そう思って、船べりに寄り掛かった格好で目を閉じる。
瞳に溜まっていた涙が、頬を伝って落ちていくのを感じたけれど、気づかなかったフリをした。
ユラユラと波に揺れるモビー号の船上は、まるで揺りかごのように優しく私を眠りへと誘う。
ウトウトし始めた頃、頬にピトッと冷たいものが当たった。
「ひやぁ…!」
驚いて目を開けた私は、変な悲鳴を上げてしまう。
「ハハッ、悪ぃ、悪ぃ!!」
いつの間にか私の隣に座っていたエースが、棒アイスを両手に持って面白そうに笑う。
どうやら、私はそのアイスを頬に当てられたらしい。
「さっき名前がこっちに行くのが見えたから、
サッチにアイス貰って来たんだ。甘いもん、好きだろ?」
「うん、好き。ありがとう。」
礼を言って受け取れば、エースは嬉しそうにニシシと笑った。
他の人より平熱の高いエースの腕が私の肩に触れて、ジリジリと熱くなってくる。
だから余計に、舌に触れた途端に身体を冷やそうとする、冷たくて甘いアイスが美味しく感じた。
「美味しいね。」
「サッチはバカだが、料理の腕は一流だからな。」
「ふふ、そうだね。」
クスリと笑って、私は太陽を見上げる。
さっきまで眩しかった光が、少し柔らかくなってきた気がする。
快晴だった青い空に、少しだけ雲が浮かび出したせいかもしれない。
冷たくて美味しいアイスを舐めながら、私とエースは他愛のない話をした。
それは、何の意味もないようなくだらないものばかりで、私は馬鹿みたいに口を大きく開けて笑う。
そうすると、大きくて温かいエースの手が、私の髪をクシャリと撫でる。
私の頬に残った涙の痕に気づいているのだろうけれど、そこに触れることは絶対にしない。
でも、ひとりきりで弱くなりたいときに限って、私を見つけて隣にいてくれるのはいつもエースだ。
それが心地よくて、私はいつからか、辛いことがあるとエースの姿を探すようになってしまった。
そして、その度にいつも、何も言わない私に向けてくれるエースの屈託のない笑顔に心を救われるのだ。
テンポのいい会話は心地よくて、あっという間に時間は過ぎていく。
さっきまで私を眩しいくらいに照らしていた太陽の光はいつの間にか青い海に沈みだして、刹那な赤で私とエースを包んでいた。
「なぁ。」
「ん~?」
「いつまで、ひとりで泣くつもりだ?」
さっきまでのカラカラと笑う楽しそうな声は消えいた。
頬に触れたエースの手が火傷しそうなくらいに熱くて、私の頬は冷たい風に冷えすぎていたのだと思い知った。
綺麗な黒い瞳で私を真っすぐに見つめるエースを、赤い夕陽が柔らかく包んでいた。
その光景がなんだかとても寂しくさせる。
「どうしたの?私は別に泣いてなんかー。」
「惚れてる女が泣かされてんのに、もう黙って見てられねぇ。
なぁ、早く俺を選んでくれよ。」
エースの表情が歪むのを私は初めて見てしまった。
眉間に刻まれた皴だとか、苦しそうな瞳だとか、私に向けられたエースのすべてが切なくて、胸が痛いくらいに締め付けられた。
私は、太陽のような笑顔を曇らせたいわけじゃない。
大切だから、大好きだから、傷つけたくなんかない。
ポロリ、涙が私の頬を伝って落ちると、エースが私を抱きしめた。
少しずつ冷たくなりはり始めた風に凍えだしていた身体は、心地の良い体温で温まっていくー。
「エース…、」
急ぎ足で加速していく鼓動を教えてくれる胸元に、そっと触れる。
私を抱きしめるエースの腕が、強さを増した。
私は、ゆっくりと口を開いて、気持ちを言葉にする。
それが声になってエースに届けば、私を抱きしめる腕の力は痛いくらいに強くなった。
何も言わなくても分かってくれるエースを好きになれたら、きっと幸せになれること、私も知っているのー。
ずっとずっと前から、気づいていたー。
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