◇No.7◇名前をください
Name change
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愛のない島というのがどういうものなのかはわかりませんでしたが、ベポは、彼女を連れて行く島を決めました。
世界地図を広げて、ロー達にも見えるようにその島を指さします。
それは、ここから南へ船を走らせたところにある機械仕掛けの島でした。
工業の発展した島で、特にロボットの製造が有名です。
この島ではロボットが人間達と共に生きている、とベポは噂で聞いたことがありました。
「愛がどうかは分からないけど、心のないロボットがたくさんいる島だと思うよ。
お前もここなら生きていきやすいんじゃないかな。
ここからだと3日くらいで着くし、どうだ?」
ベポは彼女に訊ねました。
この島についての説明を黙って聞いていた彼女が頷きます。
「分かりました。」
「じゃあ、ここで決まりね!!」
「はい、よろしくお願いします。」
「うん、よろしく!!えっと…、お前、名前は?」
「製造番号はH0(エイチゼロ)です。名前はありません。」
彼女が答えました。
こうして話していると、人間と話しているような気がしてしまって、忘れてしまいがちですが、彼女はロボットなのです。
ロボットに名前はつけないという常識があるかはわかりませんが、少なくともベポやロー達は、オペで使う機械に名前は付けていません。
でもー。
「じゃあ、俺が名前をつけてやるよ!!
そうだな・・・、よし!ロボ子!!」
「なんでだよ!!」
「安易すぎるにもほどがある!!」
ベポにとってはとても自信のある名付けだったのですが、ペンギンとシャチから早速ツッコまれてしまいました。
それなら、どんな名前がいいと言うのでしょうか。
凹んだベポから代わりに考えてみてよと言われたペンギンとシャチが頭を捻りますが、出て来たのは「殺人兵器のさっちゃん」だとか「ビーム子」とか、似たり寄ったりのセンスのないものばかりです。
「ねぇ、キャプテンも考えてよ。彼女の名前、何がいいと思う?」
「あと3日しかこの船に乗ってねぇ機械の名前なんか必要ねぇ。」
「でも、彼女はこの船を降りてから1人で生きていくんだよ。
そのときに名前があったほうがいいと思うでしょ?」
「そんなこと俺には関係なー。」
「ねぇ、何がいいと思う?」
「・・・・・おい、ロボ子。お前の名前だ、自分で決めろ。」
結局は、ベポに甘いローです。
ですが、ローだって名付なんてしたことはありません。
そして、とても面倒臭かったのです。
だから、彼女本人に丸投げしました。
彼女は少しだけ考えるような素振りをした後、口を開きました。
「なまえにします。」
彼女が出した名前は、ベポやペンギン達が考えたセンスのない名前とは全く違っていました。
意外としっかりとした名前が返ってきて、むしろ驚いてしまったくらいです。
結局、議論するまでもなく、彼女が決めた名前が一番良かったですし、既に彼女の中ではそれで決定していたようだったので、これからはなまえと呼ぶことになりました。
「ベポは今からこの島への航路を俺に説明しろ。
シャチ、ペンギンは、ソイツをどこか適当な部屋に連れて行っててくれ。」
ローから指示を受けて、シャチとペンギンが彼女を連れて船長室を出て行きます。
その後姿をベポは寂しそうに見送っていました。
そして、扉が閉まると、まるで自問自答でもするように言いました。
「あの子、本当は愛のない島になんて行きたくないんじゃないかな。」
「どうしてそう思うんだ?」
ローは世界地図を広げながら、適当に訊ねます。
彼女が、愛のない島のことをどう思っていようが、ローには関係ないことです。
約3日後、彼女はこの船を降りて、もう二度と会うこともなくなるのですから、当然です。
それは、ベポも同じはずです。
でも、ベポはとても悲しそうな顔で閉まったばかりの扉を見つめていました。
「なまえって名前はね、あの子が本屋で最後に読んでた本に出てくるヒロインの名前なんだ。
大切な仲間に囲まれて、愛してる人に心から愛された女の子の、名前なんだよ。」
どんな気持ちでなまえにするって言ったんだろうー。
消えてしまいそうなベポの声は、泣いているようでした。
彼女のために、心を痛めているのでしょう。
それは、もしかすると、とても滑稽なことなのかもしれません。
だって、彼女は心のないロボットなのです。
いくら他人が彼女を可哀想だと思ったところで、彼女本人は悲しみをほんのひとかけらだって感じません。
それをベポも分かっています。
目の前で、彼女の身体の一部が人を殺す道具に変わったのを見たのです。
彼女は、正真正銘の殺人兵器です。
だから余計に、ベポは胸が痛いのです。
そんな彼女が望んだのが、愛して愛された優しい女性の名前だったからー。
「最後に読んだ本だから、頭に残ってただけだ。」
「そうかもしれないけど、でも…、悲しいよ。」
「俺達には関係ない。
どうでもいいから、早くこの島までの航路を説明しろ。」
「アイアイキャプテン…。」
浮かない顔で、ベポが返事をしました。
ベポの少しわかりづらい下手くそな航路の説明を聞きながら、ローはチラリと扉の方に視線を向けます。
彼女が、どういうつもりでなまえという名前を出したのかは、誰にも分かりません。
ローの言う通り、最後に読んだ本に出て来た名前だから記憶に新しく残っていただけなのでしょうか。
それとも、ベポの心配しているように、心のないロボットのはずの彼女に何か思うことがあったのでしょうか。
何も問題がなければ、ポーラータング号は3日後に、機械仕掛けの島に到着します。
そして、ハートの海賊団の航海士はとても優秀です。
予定通り、3日後、彼女はこの島を降りることになるでしょう。
そのとき、ロボットだらけで愛が生まれそうにない島に降りた彼女は、どんな顔をしているのでしょうか。
何を、思うのでしょうか。
何かを、思うことはあるのでしょうか。
「それで、この島には本屋はあるのか?」
「あるとは思うけど、医学本があるかは分かんないよ。」
「ベポがアイツの代わりに捨てて来た俺の医学本は
いつになったら手に入るか知りてぇな。」
「ごめんって、キャプテェェェンっ。」
ベポがローに抱き着いて謝ります。
常套手段です。
こうすれば、ローは呆れた様にため息を吐きながらも、頭を優しく撫でてて許してくれるのをベポは野生の勘で覚えているのです。
あの女を船から降ろしたら今度こそ本の島に行くと決めて、ローは今日もベポの頭を優しく撫でました。
世界地図を広げて、ロー達にも見えるようにその島を指さします。
それは、ここから南へ船を走らせたところにある機械仕掛けの島でした。
工業の発展した島で、特にロボットの製造が有名です。
この島ではロボットが人間達と共に生きている、とベポは噂で聞いたことがありました。
「愛がどうかは分からないけど、心のないロボットがたくさんいる島だと思うよ。
お前もここなら生きていきやすいんじゃないかな。
ここからだと3日くらいで着くし、どうだ?」
ベポは彼女に訊ねました。
この島についての説明を黙って聞いていた彼女が頷きます。
「分かりました。」
「じゃあ、ここで決まりね!!」
「はい、よろしくお願いします。」
「うん、よろしく!!えっと…、お前、名前は?」
「製造番号はH0(エイチゼロ)です。名前はありません。」
彼女が答えました。
こうして話していると、人間と話しているような気がしてしまって、忘れてしまいがちですが、彼女はロボットなのです。
ロボットに名前はつけないという常識があるかはわかりませんが、少なくともベポやロー達は、オペで使う機械に名前は付けていません。
でもー。
「じゃあ、俺が名前をつけてやるよ!!
そうだな・・・、よし!ロボ子!!」
「なんでだよ!!」
「安易すぎるにもほどがある!!」
ベポにとってはとても自信のある名付けだったのですが、ペンギンとシャチから早速ツッコまれてしまいました。
それなら、どんな名前がいいと言うのでしょうか。
凹んだベポから代わりに考えてみてよと言われたペンギンとシャチが頭を捻りますが、出て来たのは「殺人兵器のさっちゃん」だとか「ビーム子」とか、似たり寄ったりのセンスのないものばかりです。
「ねぇ、キャプテンも考えてよ。彼女の名前、何がいいと思う?」
「あと3日しかこの船に乗ってねぇ機械の名前なんか必要ねぇ。」
「でも、彼女はこの船を降りてから1人で生きていくんだよ。
そのときに名前があったほうがいいと思うでしょ?」
「そんなこと俺には関係なー。」
「ねぇ、何がいいと思う?」
「・・・・・おい、ロボ子。お前の名前だ、自分で決めろ。」
結局は、ベポに甘いローです。
ですが、ローだって名付なんてしたことはありません。
そして、とても面倒臭かったのです。
だから、彼女本人に丸投げしました。
彼女は少しだけ考えるような素振りをした後、口を開きました。
「なまえにします。」
彼女が出した名前は、ベポやペンギン達が考えたセンスのない名前とは全く違っていました。
意外としっかりとした名前が返ってきて、むしろ驚いてしまったくらいです。
結局、議論するまでもなく、彼女が決めた名前が一番良かったですし、既に彼女の中ではそれで決定していたようだったので、これからはなまえと呼ぶことになりました。
「ベポは今からこの島への航路を俺に説明しろ。
シャチ、ペンギンは、ソイツをどこか適当な部屋に連れて行っててくれ。」
ローから指示を受けて、シャチとペンギンが彼女を連れて船長室を出て行きます。
その後姿をベポは寂しそうに見送っていました。
そして、扉が閉まると、まるで自問自答でもするように言いました。
「あの子、本当は愛のない島になんて行きたくないんじゃないかな。」
「どうしてそう思うんだ?」
ローは世界地図を広げながら、適当に訊ねます。
彼女が、愛のない島のことをどう思っていようが、ローには関係ないことです。
約3日後、彼女はこの船を降りて、もう二度と会うこともなくなるのですから、当然です。
それは、ベポも同じはずです。
でも、ベポはとても悲しそうな顔で閉まったばかりの扉を見つめていました。
「なまえって名前はね、あの子が本屋で最後に読んでた本に出てくるヒロインの名前なんだ。
大切な仲間に囲まれて、愛してる人に心から愛された女の子の、名前なんだよ。」
どんな気持ちでなまえにするって言ったんだろうー。
消えてしまいそうなベポの声は、泣いているようでした。
彼女のために、心を痛めているのでしょう。
それは、もしかすると、とても滑稽なことなのかもしれません。
だって、彼女は心のないロボットなのです。
いくら他人が彼女を可哀想だと思ったところで、彼女本人は悲しみをほんのひとかけらだって感じません。
それをベポも分かっています。
目の前で、彼女の身体の一部が人を殺す道具に変わったのを見たのです。
彼女は、正真正銘の殺人兵器です。
だから余計に、ベポは胸が痛いのです。
そんな彼女が望んだのが、愛して愛された優しい女性の名前だったからー。
「最後に読んだ本だから、頭に残ってただけだ。」
「そうかもしれないけど、でも…、悲しいよ。」
「俺達には関係ない。
どうでもいいから、早くこの島までの航路を説明しろ。」
「アイアイキャプテン…。」
浮かない顔で、ベポが返事をしました。
ベポの少しわかりづらい下手くそな航路の説明を聞きながら、ローはチラリと扉の方に視線を向けます。
彼女が、どういうつもりでなまえという名前を出したのかは、誰にも分かりません。
ローの言う通り、最後に読んだ本に出て来た名前だから記憶に新しく残っていただけなのでしょうか。
それとも、ベポの心配しているように、心のないロボットのはずの彼女に何か思うことがあったのでしょうか。
何も問題がなければ、ポーラータング号は3日後に、機械仕掛けの島に到着します。
そして、ハートの海賊団の航海士はとても優秀です。
予定通り、3日後、彼女はこの島を降りることになるでしょう。
そのとき、ロボットだらけで愛が生まれそうにない島に降りた彼女は、どんな顔をしているのでしょうか。
何を、思うのでしょうか。
何かを、思うことはあるのでしょうか。
「それで、この島には本屋はあるのか?」
「あるとは思うけど、医学本があるかは分かんないよ。」
「ベポがアイツの代わりに捨てて来た俺の医学本は
いつになったら手に入るか知りてぇな。」
「ごめんって、キャプテェェェンっ。」
ベポがローに抱き着いて謝ります。
常套手段です。
こうすれば、ローは呆れた様にため息を吐きながらも、頭を優しく撫でてて許してくれるのをベポは野生の勘で覚えているのです。
あの女を船から降ろしたら今度こそ本の島に行くと決めて、ローは今日もベポの頭を優しく撫でました。