◇No.68.◇そこには、生と死がありました
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気づけば、音もなく、雪が降り始めていました。
しんしんと降り積もっていく雪が、肩を濡らし始めた頃、スッと前に出たのは、ローでした。
彼は、何も言わず、ただ静かに、ゆっくりと、男の元へ向かいます。
どうすれば良いのか———互いの気持ちを確認するように顔を見合わせたシャチ達も、戸惑いながら、ローの背中を小走りで追いかけます。
ローが向かったのは、男の元ではありませんでした。
男の横を通り過ぎたローは、大きな碑の前で立ち止まります。
碑は、ちょうどローと同じくらいの高さがあり、その中央には、よく見ると何かが書かれていました。
ですが、降り積もった雪がその文字をほとんど隠してしまっていて、その全容は分かりません。
ローが、おもむろに、雪を払います。その仕草はとても優しく、まるで愛おしい誰かを撫でているかのようで、シャチ達はそれにも驚きました。
もしかすると、ローはこれが、何のために建てられた碑なのかを知っているのでしょうか。
漸く、碑に刻まれた文字が現れると、シャチ達もローの脇から覗き込みました。
【Dedicated to the heroes 】
碑の一番上に刻まれているのは、そんな言葉でした。
そして漸く、シャチ達は、これが、馭者が話していた、あの英雄達を慰める為に建てられた慰霊碑であることを理解したのです。
そして、雪に埋もれてしまっているたくさんの何かが、墓だったことに気が付きました。
ここは、公園ではなく、広大な敷地の墓地だったのです。
慰霊碑に刻まれた言葉は、その後も続きます。
そこに切々と綴られていたのは、英雄達を想い、彼らの死を嘆き悲しみながらも、誇りに思う島民達の追悼の詩でした。
さらにその下には、英雄達のものだと思われる名前も刻まれているようでした。
よく見えるように、ローが両膝を曲げて屈むと、シャチ達も各々、覗き込むようにしたり、屈んだりして、文字を追いかけます。
沢山の名前が書かれていました。すべてを読もうとすれば、それなりの時間がかかってしまうほどの数です。
それは、それほど多くの人数の英雄達が、この島を守るために命を失った、ということでした。
それでも、ローを含め、シャチ達は皆、英雄達の名前を目に焼き付けようとするかのように、ひとつひとつを心の中で読み上げます。
そうして、漸く、最後の名前に辿り着いたときには、想像以上の時間が過ぎていました。
最後の名前は、女性の名でした。
彼女の名前に、シャチ達は、思わず、ドキリとしました。
彼女のファーストネームが、なまえだったからです。
「ーーーーどうして死んだ。」
しばらく、彼女の名前をじっと見つめたあと、ローが訊ねました。
小さなその声は、まるで、自分に問いかけているようでしたが、その質問に答えたのは、ロー自身ではなく、彼らが慰霊碑に刻まれている間ずっと静かに待っていた男でした。
「世界を救うためにーーーー。」
「違ぇ!」
怒りのまま叫んだのと同時に、ローが勢いよく立ち上がりました。
そして、シャチ達が驚いたときにはもう、男は、ローに掴まれた胸ぐらを持ち上げられ、慰霊碑に背中を痛いほどに叩きつけられていました。
しんしんと降り積もっていく雪が、肩を濡らし始めた頃、スッと前に出たのは、ローでした。
彼は、何も言わず、ただ静かに、ゆっくりと、男の元へ向かいます。
どうすれば良いのか———互いの気持ちを確認するように顔を見合わせたシャチ達も、戸惑いながら、ローの背中を小走りで追いかけます。
ローが向かったのは、男の元ではありませんでした。
男の横を通り過ぎたローは、大きな碑の前で立ち止まります。
碑は、ちょうどローと同じくらいの高さがあり、その中央には、よく見ると何かが書かれていました。
ですが、降り積もった雪がその文字をほとんど隠してしまっていて、その全容は分かりません。
ローが、おもむろに、雪を払います。その仕草はとても優しく、まるで愛おしい誰かを撫でているかのようで、シャチ達はそれにも驚きました。
もしかすると、ローはこれが、何のために建てられた碑なのかを知っているのでしょうか。
漸く、碑に刻まれた文字が現れると、シャチ達もローの脇から覗き込みました。
【
碑の一番上に刻まれているのは、そんな言葉でした。
そして漸く、シャチ達は、これが、馭者が話していた、あの英雄達を慰める為に建てられた慰霊碑であることを理解したのです。
そして、雪に埋もれてしまっているたくさんの何かが、墓だったことに気が付きました。
ここは、公園ではなく、広大な敷地の墓地だったのです。
慰霊碑に刻まれた言葉は、その後も続きます。
そこに切々と綴られていたのは、英雄達を想い、彼らの死を嘆き悲しみながらも、誇りに思う島民達の追悼の詩でした。
さらにその下には、英雄達のものだと思われる名前も刻まれているようでした。
よく見えるように、ローが両膝を曲げて屈むと、シャチ達も各々、覗き込むようにしたり、屈んだりして、文字を追いかけます。
沢山の名前が書かれていました。すべてを読もうとすれば、それなりの時間がかかってしまうほどの数です。
それは、それほど多くの人数の英雄達が、この島を守るために命を失った、ということでした。
それでも、ローを含め、シャチ達は皆、英雄達の名前を目に焼き付けようとするかのように、ひとつひとつを心の中で読み上げます。
そうして、漸く、最後の名前に辿り着いたときには、想像以上の時間が過ぎていました。
最後の名前は、女性の名でした。
彼女の名前に、シャチ達は、思わず、ドキリとしました。
彼女のファーストネームが、なまえだったからです。
「ーーーーどうして死んだ。」
しばらく、彼女の名前をじっと見つめたあと、ローが訊ねました。
小さなその声は、まるで、自分に問いかけているようでしたが、その質問に答えたのは、ロー自身ではなく、彼らが慰霊碑に刻まれている間ずっと静かに待っていた男でした。
「世界を救うためにーーーー。」
「違ぇ!」
怒りのまま叫んだのと同時に、ローが勢いよく立ち上がりました。
そして、シャチ達が驚いたときにはもう、男は、ローに掴まれた胸ぐらを持ち上げられ、慰霊碑に背中を痛いほどに叩きつけられていました。