◇No.57◇仲間だけの花火大会は楽しいです
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華やかな花が散った夜空は、静寂を取り戻していました。
砂浜に溢れていた人達も、波が引いて行くようにいなくなり、月明かりと歩道にある外灯が白い砂を照らすだけです。
誰もいない寂しい夜の海になりかけたそこには今、手持ち花火を振り回す海賊達の笑い声が響いていました。
ローがなまえを連れて海水浴場へ向かった後、ハートの海賊団の仲間達も花火を見に来ていたようでした。
そして、ベポとシャチが用意した手持ち花火で、今度はハートの海賊団開催の彼らだけの花火大会が始まったのです。
勢いよく鮮やかな炎の吹き出す花火を持って走り回る騒がしい仲間達と一緒に、なまえも初めての手持ち花火を楽しんでいました。
引火して怪我でもしたらどうするのだと止めるローの注意も聞かずに、手持ち花火を振り回しては、そばにいるシャチを燃やしかけていました。
手持ち花火の火が消える度に、なまえは、新しい花火をせがみました。
とても気に入ったようです。
それが嬉しくて、ペンギン達も次から次に、彼女に火のついた花火を渡していました。
「なまえ、楽しそうっすね。」
花火大会の時に使っていたシートに座って、なまえの様子を見ていたローの隣に、イッカクが腰を降ろしました。
チラリとイッカクに視線を移すと、仲間達が振り回す手持ち花火の光に照らされたイッカクの表情が、とても明るく光って見えました。
「あぁ。」
嬉しそうなイッカクから目を反らし、ローは短く頷きます。
ローだって、なまえが楽しそうに見えないわけではありませんし、楽しそうななまえを見て嬉しい気持ちにならないと言えば、嘘になります。
手持ち花火を振り回してシャチを全速力で追いかけるなまえは、とても楽しそうですし、夜の海にシャチの悲鳴が響く度に、仲間達が腹を抱えて笑うその様子は、幸せを絵に描いたようだと思っていました。
でも、それだけではない気持ちが、ローの心に侵食していたのです。
鮮やかに輝いては、あっという間に消えてしまう花火を見下ろすとき、なまえは、泣きそうな顔をするのです。
少なくとも、ローには、そう見えていました。
だから、新しい花火が欲しいとせがむなまえが、とても悲しく見えたのです。
「いいじゃないっすか。」
不意に、イッカクが立ち上がりました。
清々しいその声に、ローは思わず顔を上げます。
「アタシには初めての親友が出来て、キャプテンには初めての恋人が出来た。
奇跡みたいだけど、事実なんすよ。アタシ達は、出逢えたんです。
それで、いいじゃないっすか。」
イッカクが、ニシシと白い歯を見せて笑います。
あぁ———。
ローは、気づきました。
彼女もまた、自分と同じ未来への不安や悲しみを感じていて、なまえが泣きそうに見えていたのです。
それでも、彼女は、なまえとの今に感謝をすることを選んだようです。
「俺にも、花火貸せ。」
ローが、手のひらを見せると、イッカクは驚いたように目を見開いた後、嬉しそうに破顔させました。
「なまえーーー!!キャプテンも一緒に花火で遊んでくれるってよ!!」
花火を貸せ、と言ったのに、イッカクは渡しもしないでなまえを呼びます。
すると、シャチを追いかけていたなまえが、ピタリと動きを止めました。
そして———。
「一緒に花火をしましょう!!」
なまえが全速力でローの元へ駆け寄って来ます。
本来なら、空へ飛ばすロケット花火を手に持って———。
導火線に火がついていることに気がついて、ローは目をギョッとさせます。
「待て!!それを捨ててから来い!!投げ捨・・・・ッ!?」
文字通り、人間業ではない脚の速さのなまえは、あっという間にローの元へ辿り着きました。
なまえが、勢いよくローに飛びついた瞬間に、ロケット花火が空へ打ちあがりました。
大きな音を立て、火の粉を上げながら儚い命で、精一杯に叫ぶように花を咲かせます。
それは、大きな打ち上げ花火のように夜空にまでは届きませんでした。
でも、すぐ近くで輝くからこそ、目が眩んだのです。
遠くで見るよりも、ずっとずっと近くで見られる方が、仲間達と一緒に騒げる方が、楽しい———。
「燃えてる!!なまえが燃えてるうううう!!」
叫んだのは、シャチでした。
ハッとして、なまえの背中を見れば、尻の上あたりが燃えています。
ロケット花火が空に上がるときに、火の粉が飛んだのかもしれません。
「本当です。私が燃えています。」
ローから離れた後、なまえは首を捻って自分の後ろを見ました。
とても冷静です。
ですが———。
「冷静に言ってんじゃねぇっ。」
ローが怒鳴るようにつっこみます。
その通りです。
偶々、なまえが着ていた浴衣は可燃性のあるものだったようで、火の勢いはあっという間に強くなり、背中まで燃え始めました。
なまえが火だるまになるまで、たぶん、あと数秒です。
「水!!水持ってこい!!」
「何言ってんだよ!なまえに水かけたら壊れちまうだろ!!」
「じゃあ、どうすんだよ!?」
ペンギン達は、火だるま寸前の仲間を目の前にパニックでした。
「チッ。」
舌打ちをしたローは、自分の着ているシャツを脱ぐと、それでなまえの背中の火を叩くように包みました。
まだ残る小さな火種は、ローが手で払います。
見た目は派手な火でしたが、すぐに鎮火され、ロー達はホッと胸を撫でおろしました。
「誰だ…。」
なまえの肩に手を乗せたローが、低い声で呟くように言いました。
彼からは、禍々しいオーラが放たれています。
これは、とても強大な敵を前にした時や、憎い仇を前にした時のローです。
思わず、ハートの海賊団の船員達は背筋を凍らせます。
「なまえに、ロケット花火を渡した馬鹿は、どこのどいつだ…!」
ローの怒りの原因を知ったハートの海賊団の船員達は、ある1人の仲間に視線を向けます。
仲間達の視線を集めた船員は、真っ青を通り越して、顔色を真っ白にしました。
いいえ、元から、彼は真っ白です。
「お前か、ベポ。
死ぬ前に言い残すことはあるか。」
「嫌だよっ!!キャプテン!!俺、死にたくない!!」
「それが最期の言葉でいいんだな?」
「いやぁぁぁああああッ!」
ベポが悲鳴を上げて逃げて行きます。
それを、ローが追いかけました。
そのときそのでした。
今度はペンギンが真っ赤な顔で叫びました。
「なまえ…ッ、おま…ッ、丸見え…ッ!!」
「本当です。丸見えです。浴衣が、焦げて落ちたようです。」
なまえが、首を捻って後ろを向きました。
確かに、背中から下が丸見えでした。
羞恥心というものがないなまえは、いたって冷静でしたが、他の誰も冷静ではいられません。
見たい気もしますが、仲間達は慌てて砂浜に視線を落とし、ペンギンはハッとして顔色を真っ青にします。
そして、人間業とは思えない速さでなまえの元へ駆け寄り、自分の腕の中に隠したのは、ローでした。
後ろから抱きしめるようにして、丸見えになっているなまえの白い肌を隠します。
「誰だ。」
まるで、デジャヴのようでした。
禍々しいオーラのローに、ハートの海賊団の船員達は、何度でも背筋を凍らせます。
「なまえの裸を見たやつは、だ———。」
「キャプテン、全員です。
アタシ達みんな、なまえの全裸を見てます。」
冷静だったのは、ハートの海賊団で元紅一点のイッカクでした。
あぁ、確かに——。
事実に気づいて、海に捨てられそうになっているシャチ以外は、ホッと胸を撫でおろします。
「そうっすよ。」
「なまえの裸見たやつを海に捨てようとしたら、
ハートの海賊団、全滅っすよ。」
仲間達が、困ったように笑って言いました。
安心しきった彼らのその顔に、ローはイラついたようでした。
「チッ。」
舌打ちをした後、とんでもないことを言い出しました。
「消せ。」
「へ?」
「記憶を消せ。消せなかったやつを1人ずつ海に沈める。」
「はぁぁああ!?」
無理だと騒ぐ仲間達に、ローは、なまえの裸を見たやつは敵だと怒ります。
ですが、彼らのことを敵にはしたくはないので、記憶を消せと無理難題の命令を出すのです。
当然、仲間達は、無理だけれど敵でもないと必死に首を横に振ります。
不毛なやり取りを何往復かしたときでした。
「クスッ。」
ローのすぐ近くで、誰かが笑った声がしました。
そして、目の前で、仲間達が、目を丸くして、固まっていたのです。
まるで、ありえない奇跡を前にして、時間が止まってしまったみたいに———。
砂浜に溢れていた人達も、波が引いて行くようにいなくなり、月明かりと歩道にある外灯が白い砂を照らすだけです。
誰もいない寂しい夜の海になりかけたそこには今、手持ち花火を振り回す海賊達の笑い声が響いていました。
ローがなまえを連れて海水浴場へ向かった後、ハートの海賊団の仲間達も花火を見に来ていたようでした。
そして、ベポとシャチが用意した手持ち花火で、今度はハートの海賊団開催の彼らだけの花火大会が始まったのです。
勢いよく鮮やかな炎の吹き出す花火を持って走り回る騒がしい仲間達と一緒に、なまえも初めての手持ち花火を楽しんでいました。
引火して怪我でもしたらどうするのだと止めるローの注意も聞かずに、手持ち花火を振り回しては、そばにいるシャチを燃やしかけていました。
手持ち花火の火が消える度に、なまえは、新しい花火をせがみました。
とても気に入ったようです。
それが嬉しくて、ペンギン達も次から次に、彼女に火のついた花火を渡していました。
「なまえ、楽しそうっすね。」
花火大会の時に使っていたシートに座って、なまえの様子を見ていたローの隣に、イッカクが腰を降ろしました。
チラリとイッカクに視線を移すと、仲間達が振り回す手持ち花火の光に照らされたイッカクの表情が、とても明るく光って見えました。
「あぁ。」
嬉しそうなイッカクから目を反らし、ローは短く頷きます。
ローだって、なまえが楽しそうに見えないわけではありませんし、楽しそうななまえを見て嬉しい気持ちにならないと言えば、嘘になります。
手持ち花火を振り回してシャチを全速力で追いかけるなまえは、とても楽しそうですし、夜の海にシャチの悲鳴が響く度に、仲間達が腹を抱えて笑うその様子は、幸せを絵に描いたようだと思っていました。
でも、それだけではない気持ちが、ローの心に侵食していたのです。
鮮やかに輝いては、あっという間に消えてしまう花火を見下ろすとき、なまえは、泣きそうな顔をするのです。
少なくとも、ローには、そう見えていました。
だから、新しい花火が欲しいとせがむなまえが、とても悲しく見えたのです。
「いいじゃないっすか。」
不意に、イッカクが立ち上がりました。
清々しいその声に、ローは思わず顔を上げます。
「アタシには初めての親友が出来て、キャプテンには初めての恋人が出来た。
奇跡みたいだけど、事実なんすよ。アタシ達は、出逢えたんです。
それで、いいじゃないっすか。」
イッカクが、ニシシと白い歯を見せて笑います。
あぁ———。
ローは、気づきました。
彼女もまた、自分と同じ未来への不安や悲しみを感じていて、なまえが泣きそうに見えていたのです。
それでも、彼女は、なまえとの今に感謝をすることを選んだようです。
「俺にも、花火貸せ。」
ローが、手のひらを見せると、イッカクは驚いたように目を見開いた後、嬉しそうに破顔させました。
「なまえーーー!!キャプテンも一緒に花火で遊んでくれるってよ!!」
花火を貸せ、と言ったのに、イッカクは渡しもしないでなまえを呼びます。
すると、シャチを追いかけていたなまえが、ピタリと動きを止めました。
そして———。
「一緒に花火をしましょう!!」
なまえが全速力でローの元へ駆け寄って来ます。
本来なら、空へ飛ばすロケット花火を手に持って———。
導火線に火がついていることに気がついて、ローは目をギョッとさせます。
「待て!!それを捨ててから来い!!投げ捨・・・・ッ!?」
文字通り、人間業ではない脚の速さのなまえは、あっという間にローの元へ辿り着きました。
なまえが、勢いよくローに飛びついた瞬間に、ロケット花火が空へ打ちあがりました。
大きな音を立て、火の粉を上げながら儚い命で、精一杯に叫ぶように花を咲かせます。
それは、大きな打ち上げ花火のように夜空にまでは届きませんでした。
でも、すぐ近くで輝くからこそ、目が眩んだのです。
遠くで見るよりも、ずっとずっと近くで見られる方が、仲間達と一緒に騒げる方が、楽しい———。
「燃えてる!!なまえが燃えてるうううう!!」
叫んだのは、シャチでした。
ハッとして、なまえの背中を見れば、尻の上あたりが燃えています。
ロケット花火が空に上がるときに、火の粉が飛んだのかもしれません。
「本当です。私が燃えています。」
ローから離れた後、なまえは首を捻って自分の後ろを見ました。
とても冷静です。
ですが———。
「冷静に言ってんじゃねぇっ。」
ローが怒鳴るようにつっこみます。
その通りです。
偶々、なまえが着ていた浴衣は可燃性のあるものだったようで、火の勢いはあっという間に強くなり、背中まで燃え始めました。
なまえが火だるまになるまで、たぶん、あと数秒です。
「水!!水持ってこい!!」
「何言ってんだよ!なまえに水かけたら壊れちまうだろ!!」
「じゃあ、どうすんだよ!?」
ペンギン達は、火だるま寸前の仲間を目の前にパニックでした。
「チッ。」
舌打ちをしたローは、自分の着ているシャツを脱ぐと、それでなまえの背中の火を叩くように包みました。
まだ残る小さな火種は、ローが手で払います。
見た目は派手な火でしたが、すぐに鎮火され、ロー達はホッと胸を撫でおろしました。
「誰だ…。」
なまえの肩に手を乗せたローが、低い声で呟くように言いました。
彼からは、禍々しいオーラが放たれています。
これは、とても強大な敵を前にした時や、憎い仇を前にした時のローです。
思わず、ハートの海賊団の船員達は背筋を凍らせます。
「なまえに、ロケット花火を渡した馬鹿は、どこのどいつだ…!」
ローの怒りの原因を知ったハートの海賊団の船員達は、ある1人の仲間に視線を向けます。
仲間達の視線を集めた船員は、真っ青を通り越して、顔色を真っ白にしました。
いいえ、元から、彼は真っ白です。
「お前か、ベポ。
死ぬ前に言い残すことはあるか。」
「嫌だよっ!!キャプテン!!俺、死にたくない!!」
「それが最期の言葉でいいんだな?」
「いやぁぁぁああああッ!」
ベポが悲鳴を上げて逃げて行きます。
それを、ローが追いかけました。
そのときそのでした。
今度はペンギンが真っ赤な顔で叫びました。
「なまえ…ッ、おま…ッ、丸見え…ッ!!」
「本当です。丸見えです。浴衣が、焦げて落ちたようです。」
なまえが、首を捻って後ろを向きました。
確かに、背中から下が丸見えでした。
羞恥心というものがないなまえは、いたって冷静でしたが、他の誰も冷静ではいられません。
見たい気もしますが、仲間達は慌てて砂浜に視線を落とし、ペンギンはハッとして顔色を真っ青にします。
そして、人間業とは思えない速さでなまえの元へ駆け寄り、自分の腕の中に隠したのは、ローでした。
後ろから抱きしめるようにして、丸見えになっているなまえの白い肌を隠します。
「誰だ。」
まるで、デジャヴのようでした。
禍々しいオーラのローに、ハートの海賊団の船員達は、何度でも背筋を凍らせます。
「なまえの裸を見たやつは、だ———。」
「キャプテン、全員です。
アタシ達みんな、なまえの全裸を見てます。」
冷静だったのは、ハートの海賊団で元紅一点のイッカクでした。
あぁ、確かに——。
事実に気づいて、海に捨てられそうになっているシャチ以外は、ホッと胸を撫でおろします。
「そうっすよ。」
「なまえの裸見たやつを海に捨てようとしたら、
ハートの海賊団、全滅っすよ。」
仲間達が、困ったように笑って言いました。
安心しきった彼らのその顔に、ローはイラついたようでした。
「チッ。」
舌打ちをした後、とんでもないことを言い出しました。
「消せ。」
「へ?」
「記憶を消せ。消せなかったやつを1人ずつ海に沈める。」
「はぁぁああ!?」
無理だと騒ぐ仲間達に、ローは、なまえの裸を見たやつは敵だと怒ります。
ですが、彼らのことを敵にはしたくはないので、記憶を消せと無理難題の命令を出すのです。
当然、仲間達は、無理だけれど敵でもないと必死に首を横に振ります。
不毛なやり取りを何往復かしたときでした。
「クスッ。」
ローのすぐ近くで、誰かが笑った声がしました。
そして、目の前で、仲間達が、目を丸くして、固まっていたのです。
まるで、ありえない奇跡を前にして、時間が止まってしまったみたいに———。