◇No.56◇貴方が見せてくれた花火は記憶で永遠になります
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ローが、なまえの手を引いて、海水浴場へやって来たときにはもう、花火大会の場所取りをしている観光客が所々にいました。
花火大会なんて、今まで全く興味のなかったローは知りませんでしたが、早く行かないと良い場所はとられてしまう、というシャチの忠告は正しかったのです。
適当な場所を見繕ると、ローは、持ってきたシートを砂浜の上に敷きました。
このシートも、ペンギンが気を遣って用意してくれたものです。
ローに誘われてなまえが花火大会へ行くと知ったベポが早速買ってきてくれた浴衣は、海のような薄い水色にハートの柄が描かれている可愛らしいデザインでした。
とても似合っているその姿に、惚れ直したローでしたが、シートの上には座りづらいようで、手を貸してやり、ゆっくりと腰を降ろさせます。
隣に並んで座ると、なまえが早速、バッグの中から何かを取り出します。
出て来たのは、ハートの海賊団のマークが描かれた二段の弁当箱でした。
見覚えのあるそれは、ローのものです。
機械のなまえは食べることは出来ないので、当然、ローの為に用意したものなのでしょう。
「弁当持ってきたのか。」
「はい、夕飯を食べずに行くのでお弁当が必要だと
イッカクに教えて貰いました。どうぞ、食べてください。」
なまえから弁当箱を受け取ったローは、蓋を開けると、彩りの鮮やかな美味しそうなそれに思わず頬を緩めます。
一段目に入っていたのは、おかずでした。
唐揚げや玉子焼き、鮭の塩焼きという定番おかずに、野菜や飾りが彩りよく添えられています。
次に、ローは、二段目を開きました。
そして、驚きで、目も見開きます。
てっきり、よく作ってくれているようにおにぎりが入っていると想像していたのですが、そこには、白飯がびっしり詰められていました。
そして、白飯の上には、ピンク色のふりかけでハートが描かれ、その横に『ロー、ダイスキ』と海苔で書かれています。
こんな恥ずかしい弁当を見たのは、ローは、人生で初めてでした。
「嬉しいですか?」
ハートを凝視したまま固まってしまったローの顔を、なまえが覗き込んで訊ねます。
周囲には、花火を楽しみにやって来た観光客が少しずつ集まり出していました。
彼らにはきっと、なまえは何を考えているか分からないような無表情に見えるのでしょう。
ですが、ローには、今、彼女が、とても期待に胸を膨らませていることが分かっていました。
「あぁ、嬉しい。
こんな美味そうな弁当を見たのは初めてだ。ありがとな。」
ローは、なまえの前髪をクシャリと撫でます。
彼女の顔が少し動いて、イッカクが綺麗に結ってくれた髪と花飾りが、揺れました。
「それなら、よかったです。
では、次は、あーんをします。」
「は?」
追いついていないローを残したまま、なまえは、箸を取り出すと、まずは唐揚げを挟みました。
そして、ローの口元に持ってきます。
「あーん。」
無表情で、彼氏に唐揚げを食べさせようとしている浴衣の彼女の姿は、とても異様に映っているのでしょう。
きっと、ふりかけで描かれているハートも見られたのです。
近くに座っていた若い女達が「可愛い。」「ラブラブ、いいな~。」と言っている声を、ローは聞いてしまいました。
ローにとって、辱めでしかありません。
きっと、イッカクに教えられたなまえが、真に受けただけなのでしょうが、期待している目をされると、断るなんていう選択肢はありえません。
渋々、ローは遠慮がちに口を開きました。
なまえが食べさせてくれた唐揚げは、恥ずかしさで味を楽しむ余裕はありませんでした。
でも———。
「美味しいですか?」
「あぁ、世界一美味ぇ。」
「よかったです。次は、玉子焼きを食べましょう。」
なまえが、早速、玉子焼きを器用に箸で挟み上げると、また「あーん。」とわざわざ言って、食べさせようとします。
チラチラと見ている周囲の人達には分からないのでしょうが、ローは知っていました。
なまえは、とても楽しそうで、ウキウキしています。
それが可愛くて、可愛くて仕方がありません。
早く食べ終わってしまった方が、辱めを受けるのも短く済むと知っているのに、楽しそうななまえをもっと見ていたいと思ってしまっていました。
「———次は、ご飯を、」
「待て、なまえ。まだ何も飲み込めてねぇ。詰め込み過ぎだ。」
「どうして飲み込まなかったんですか?」
「お前が次から次に口に放り込むからだ。」
「そうですか。困りましたね。」
全く困っていない様子で言ったなまえは、今度は、水筒の冷えたお茶を、ローの口に強引に流し込みました。
思わず咽そうになりながら、ローはなんとか、お茶と一緒に、弁当に入っていたすべての種類のおかずを一気に飲み込みます。
恐らく、イッカクが想像したような弁当風景とは違っているはずです。
いいえ、もしかすると、こうなることが分かっていて、ポーラータング号の船内で、ペンギン達と一緒に面白おかしく笑っているのかもしれません。
だって、あれこれと世話を焼いてしまうくらいに、彼らも、船長の初めてのデートが、嬉しくて、楽しみで仕方がありませんでしたから。
花火大会なんて、今まで全く興味のなかったローは知りませんでしたが、早く行かないと良い場所はとられてしまう、というシャチの忠告は正しかったのです。
適当な場所を見繕ると、ローは、持ってきたシートを砂浜の上に敷きました。
このシートも、ペンギンが気を遣って用意してくれたものです。
ローに誘われてなまえが花火大会へ行くと知ったベポが早速買ってきてくれた浴衣は、海のような薄い水色にハートの柄が描かれている可愛らしいデザインでした。
とても似合っているその姿に、惚れ直したローでしたが、シートの上には座りづらいようで、手を貸してやり、ゆっくりと腰を降ろさせます。
隣に並んで座ると、なまえが早速、バッグの中から何かを取り出します。
出て来たのは、ハートの海賊団のマークが描かれた二段の弁当箱でした。
見覚えのあるそれは、ローのものです。
機械のなまえは食べることは出来ないので、当然、ローの為に用意したものなのでしょう。
「弁当持ってきたのか。」
「はい、夕飯を食べずに行くのでお弁当が必要だと
イッカクに教えて貰いました。どうぞ、食べてください。」
なまえから弁当箱を受け取ったローは、蓋を開けると、彩りの鮮やかな美味しそうなそれに思わず頬を緩めます。
一段目に入っていたのは、おかずでした。
唐揚げや玉子焼き、鮭の塩焼きという定番おかずに、野菜や飾りが彩りよく添えられています。
次に、ローは、二段目を開きました。
そして、驚きで、目も見開きます。
てっきり、よく作ってくれているようにおにぎりが入っていると想像していたのですが、そこには、白飯がびっしり詰められていました。
そして、白飯の上には、ピンク色のふりかけでハートが描かれ、その横に『ロー、ダイスキ』と海苔で書かれています。
こんな恥ずかしい弁当を見たのは、ローは、人生で初めてでした。
「嬉しいですか?」
ハートを凝視したまま固まってしまったローの顔を、なまえが覗き込んで訊ねます。
周囲には、花火を楽しみにやって来た観光客が少しずつ集まり出していました。
彼らにはきっと、なまえは何を考えているか分からないような無表情に見えるのでしょう。
ですが、ローには、今、彼女が、とても期待に胸を膨らませていることが分かっていました。
「あぁ、嬉しい。
こんな美味そうな弁当を見たのは初めてだ。ありがとな。」
ローは、なまえの前髪をクシャリと撫でます。
彼女の顔が少し動いて、イッカクが綺麗に結ってくれた髪と花飾りが、揺れました。
「それなら、よかったです。
では、次は、あーんをします。」
「は?」
追いついていないローを残したまま、なまえは、箸を取り出すと、まずは唐揚げを挟みました。
そして、ローの口元に持ってきます。
「あーん。」
無表情で、彼氏に唐揚げを食べさせようとしている浴衣の彼女の姿は、とても異様に映っているのでしょう。
きっと、ふりかけで描かれているハートも見られたのです。
近くに座っていた若い女達が「可愛い。」「ラブラブ、いいな~。」と言っている声を、ローは聞いてしまいました。
ローにとって、辱めでしかありません。
きっと、イッカクに教えられたなまえが、真に受けただけなのでしょうが、期待している目をされると、断るなんていう選択肢はありえません。
渋々、ローは遠慮がちに口を開きました。
なまえが食べさせてくれた唐揚げは、恥ずかしさで味を楽しむ余裕はありませんでした。
でも———。
「美味しいですか?」
「あぁ、世界一美味ぇ。」
「よかったです。次は、玉子焼きを食べましょう。」
なまえが、早速、玉子焼きを器用に箸で挟み上げると、また「あーん。」とわざわざ言って、食べさせようとします。
チラチラと見ている周囲の人達には分からないのでしょうが、ローは知っていました。
なまえは、とても楽しそうで、ウキウキしています。
それが可愛くて、可愛くて仕方がありません。
早く食べ終わってしまった方が、辱めを受けるのも短く済むと知っているのに、楽しそうななまえをもっと見ていたいと思ってしまっていました。
「———次は、ご飯を、」
「待て、なまえ。まだ何も飲み込めてねぇ。詰め込み過ぎだ。」
「どうして飲み込まなかったんですか?」
「お前が次から次に口に放り込むからだ。」
「そうですか。困りましたね。」
全く困っていない様子で言ったなまえは、今度は、水筒の冷えたお茶を、ローの口に強引に流し込みました。
思わず咽そうになりながら、ローはなんとか、お茶と一緒に、弁当に入っていたすべての種類のおかずを一気に飲み込みます。
恐らく、イッカクが想像したような弁当風景とは違っているはずです。
いいえ、もしかすると、こうなることが分かっていて、ポーラータング号の船内で、ペンギン達と一緒に面白おかしく笑っているのかもしれません。
だって、あれこれと世話を焼いてしまうくらいに、彼らも、船長の初めてのデートが、嬉しくて、楽しみで仕方がありませんでしたから。