◇No.53◇君と永遠に生きていく未来を夢に見ました
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ベッド奥にある窓の向こうは、夜を越えて、そろそろ白くなり始めていました。
朝まで続きそうだった宴から抜けて、船長室に帰ったローとなまえは、ベッドのヘッドボードに寄りかかって並んで座り、両者譲らずの世界一どうでもいい恋人同士の戦いを続けています。
まだ、どちらが一番星に相応しいかを、決められずにいるのです。
究極の負けず嫌いとロボット故の頑固のせいで、なかなかどちらも折れません。
ですが、体力面では、完全になまえの勝ちです。
なぜなら、彼女は睡眠も必要なければ、疲れを知らないのです。
ローとしては、何でも自分を優先してくれていたなまえなら、いつかは折れると思っていたのですけれど、当てが外れたというのもありました。
まさか、彼女がここまで〝命令〟という特権を欲しがるのは、意外過ぎました。
これがペンギンやシャチ達なら、力づくでも勝ちを奪うローでしょうが、結局、なまえには甘い彼は、勝ちを譲ってやることにしました。
「じゃあ、命令を出します。」
「なんだ?」
仕方なさそうにしながらも、なまえの腰を抱き寄せて訊ねたローの目元は優しく下がっています。
なまえは、真っすぐにローを見て、命令を出しました。
「死なないでください。」
思ってもいなかった命令に、ローの表情が強張ります。
まるで、時間が止まったようでした。
「私とずっと、生きてください。
———ひとりに、しないで。」
なまえの手は、ローの腕をギュッと握っていました。
真っすぐにローを見上げる瞳は、命令ではなくて、懇願しているようでした。
強く掴まれた腕から、じんじんと痛みが伝わってきます。
それは、彼女の不安と恐怖が感じている痛みなのかもしれません。
一番星を必死に探しているときから、彼女がこの命令をローに言うつもりだったのだと思うと、胸が苦しくて仕方がありません。
だって、いつかは、この船に乗っている全員が、半永久的に生き続けられるロボットの彼女を残して死んでいくのです。
海賊という生業の彼らですから、それは、想像しているよりもずっと早いかもしれません。
どちらにしろ、いつかは必ず、彼女は独りになります。
それは、彼女がロボットで、自分達が人間である限り、避けられない現実なのです。
あぁ、一体、彼女はいつから、仲間やローが、自分を残して死んでいくことを恐れていたのでしょう。
一瞬、息を呑んだローでしたが、懇願するようななまえの瞳を安心させるように、優しく目を細めました。
「命令なら仕方がねぇな。お前の為に、永遠に生きてやる。」
ローが、なまえの頬を撫でます。
なまえはしばらく黙ったままローを見つめた後、コクリと頷きました。
そして、ローの腰に抱き着いて、胸に顔を埋めます。
「約束です。」
「あぁ、約束だ。」
なまえの背中に手をまわしたローは、彼女の頭を優しく撫でながら言います。
「約束を破ったら、」
「破ったら?」
「私が泣きます。」
「…そうか。それはマズいな。
俺はお前を泣かせたくねぇし、お前の親友にもぶん殴られる。」
「そうです。イッカクも怒ります。
———だから、死なないで。」
「あぁ、死なねぇ。
お前を残して死なねぇから、もうそんな心配しなくていい。」
ローの腰に抱き着いたまま、彼の胸元でなまえが頷きました。
正しいことを知っている機械のなまえは、今のローの約束が守られることがないことは、知っているはずです。
いつか嘘になることを、分かっているはずです。
それを、ローも理解していました。
奇跡を信じる、何てことも出来ないほどに途方もない約束です。
いつか必ず、なまえは、独りになります。
今夜、世界で一番、悲しい約束に、ローは、なまえを強く抱きしめて、涙を堪えました。
未来のどこかで、愛おしい人を残して死んでいく日のことを想像してしまったのです。
そして、ローは誓いました。
君が生きていく未来の幸せを、俺が必ず守るから
ベッドに入り、ローがなまえを包み込むように抱きしめました。
「眠りますか。」
「あぁ。」
「分かりました。私も眠ります。」
「寝れるのか?」
「目を閉じます。」
「そうか。それがいい。」
なまえが、ローの腕の中で目を閉じます。
いつも彼女は、天井を見上げていました。
そこにある自由を見ていたのです。
でも今、彼女は、ローの腕の中で自由です。
そして、目を閉じても、独りぼっちにはなりません。
漸く、大好きなローと過ごす夜が戻ってきました。
その夜、柔らかな幸せそうな寝顔で眠っていたのは、ローだけではなかったのです。
彼らが覚悟を決めて受け入れた愛には、たくさんの障害が待っています。
夢で見たような何の心配もない幸せな未来を迎える為には、彼らは沢山のことを乗り越えなければなりません。
たとえば、生きたまま身を斬られるような、そんな苦悩をなんとか乗り越えたとしても、最後に2人は、ただ傷ついただけで終わるのでしょう。
だって、2人が共に生きる未来が来ることがあれば、それは奇跡なのです。
ですが、彼らならもしかしたら———。
仲間達も、そんな期待をしてしまいそうになる、今夜は、そんな愛に溢れた夜でした。
朝まで続きそうだった宴から抜けて、船長室に帰ったローとなまえは、ベッドのヘッドボードに寄りかかって並んで座り、両者譲らずの世界一どうでもいい恋人同士の戦いを続けています。
まだ、どちらが一番星に相応しいかを、決められずにいるのです。
究極の負けず嫌いとロボット故の頑固のせいで、なかなかどちらも折れません。
ですが、体力面では、完全になまえの勝ちです。
なぜなら、彼女は睡眠も必要なければ、疲れを知らないのです。
ローとしては、何でも自分を優先してくれていたなまえなら、いつかは折れると思っていたのですけれど、当てが外れたというのもありました。
まさか、彼女がここまで〝命令〟という特権を欲しがるのは、意外過ぎました。
これがペンギンやシャチ達なら、力づくでも勝ちを奪うローでしょうが、結局、なまえには甘い彼は、勝ちを譲ってやることにしました。
「じゃあ、命令を出します。」
「なんだ?」
仕方なさそうにしながらも、なまえの腰を抱き寄せて訊ねたローの目元は優しく下がっています。
なまえは、真っすぐにローを見て、命令を出しました。
「死なないでください。」
思ってもいなかった命令に、ローの表情が強張ります。
まるで、時間が止まったようでした。
「私とずっと、生きてください。
———ひとりに、しないで。」
なまえの手は、ローの腕をギュッと握っていました。
真っすぐにローを見上げる瞳は、命令ではなくて、懇願しているようでした。
強く掴まれた腕から、じんじんと痛みが伝わってきます。
それは、彼女の不安と恐怖が感じている痛みなのかもしれません。
一番星を必死に探しているときから、彼女がこの命令をローに言うつもりだったのだと思うと、胸が苦しくて仕方がありません。
だって、いつかは、この船に乗っている全員が、半永久的に生き続けられるロボットの彼女を残して死んでいくのです。
海賊という生業の彼らですから、それは、想像しているよりもずっと早いかもしれません。
どちらにしろ、いつかは必ず、彼女は独りになります。
それは、彼女がロボットで、自分達が人間である限り、避けられない現実なのです。
あぁ、一体、彼女はいつから、仲間やローが、自分を残して死んでいくことを恐れていたのでしょう。
一瞬、息を呑んだローでしたが、懇願するようななまえの瞳を安心させるように、優しく目を細めました。
「命令なら仕方がねぇな。お前の為に、永遠に生きてやる。」
ローが、なまえの頬を撫でます。
なまえはしばらく黙ったままローを見つめた後、コクリと頷きました。
そして、ローの腰に抱き着いて、胸に顔を埋めます。
「約束です。」
「あぁ、約束だ。」
なまえの背中に手をまわしたローは、彼女の頭を優しく撫でながら言います。
「約束を破ったら、」
「破ったら?」
「私が泣きます。」
「…そうか。それはマズいな。
俺はお前を泣かせたくねぇし、お前の親友にもぶん殴られる。」
「そうです。イッカクも怒ります。
———だから、死なないで。」
「あぁ、死なねぇ。
お前を残して死なねぇから、もうそんな心配しなくていい。」
ローの腰に抱き着いたまま、彼の胸元でなまえが頷きました。
正しいことを知っている機械のなまえは、今のローの約束が守られることがないことは、知っているはずです。
いつか嘘になることを、分かっているはずです。
それを、ローも理解していました。
奇跡を信じる、何てことも出来ないほどに途方もない約束です。
いつか必ず、なまえは、独りになります。
今夜、世界で一番、悲しい約束に、ローは、なまえを強く抱きしめて、涙を堪えました。
未来のどこかで、愛おしい人を残して死んでいく日のことを想像してしまったのです。
そして、ローは誓いました。
君が生きていく未来の幸せを、俺が必ず守るから
ベッドに入り、ローがなまえを包み込むように抱きしめました。
「眠りますか。」
「あぁ。」
「分かりました。私も眠ります。」
「寝れるのか?」
「目を閉じます。」
「そうか。それがいい。」
なまえが、ローの腕の中で目を閉じます。
いつも彼女は、天井を見上げていました。
そこにある自由を見ていたのです。
でも今、彼女は、ローの腕の中で自由です。
そして、目を閉じても、独りぼっちにはなりません。
漸く、大好きなローと過ごす夜が戻ってきました。
その夜、柔らかな幸せそうな寝顔で眠っていたのは、ローだけではなかったのです。
彼らが覚悟を決めて受け入れた愛には、たくさんの障害が待っています。
夢で見たような何の心配もない幸せな未来を迎える為には、彼らは沢山のことを乗り越えなければなりません。
たとえば、生きたまま身を斬られるような、そんな苦悩をなんとか乗り越えたとしても、最後に2人は、ただ傷ついただけで終わるのでしょう。
だって、2人が共に生きる未来が来ることがあれば、それは奇跡なのです。
ですが、彼らならもしかしたら———。
仲間達も、そんな期待をしてしまいそうになる、今夜は、そんな愛に溢れた夜でした。