◇No.49◇『愛して…』
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『なまえはただ、キャプテンを好きなだけなんだ!』
イッカクの声が、ローの頭にガンガンと響き続けていました。
ローは、賑やかな海岸通りを、息を切らして走ります。
忙しなく目を左右に動かしても、目を凝らしても、華奢な背中はどこにも見当たりません。
どうして、もっと、彼女のことを見ようとしていなかったのか。
後悔ばかりが、彼を襲います。
でも、彼女から目を反らし続けた理由なら、自分自身が嫌というほどに理解しています。
傷つくことも、周りの目も、彼女を愛することで起こりえる弊害のすべてが、ローを臆病にして、心を閉じさせたのです。
ただの弱い男だった———それを認めるのが、ローは死ぬほど嫌でした。
でも、もうそんな意味のない強がりはやめることにしました。
あぁ、本当はもっと早く、彼は自分の気持ちを認めるべきだったのです。
そして、彼女と向き合うべきでした。
そうすれば、彼女は、自分は壊れて仲間に廃棄にされるなんて、そんな悲しい未来を想像せずに済んだのに———。
『俺のことを殺そうとしちまうんだから、壊れたどころか
本来のプログラムが正当に動き出した証拠じゃねぇか。』
『キャプテン…っ、いい加減にしてくれよ…!そんなわけねぇだろ!!』
『ロー、あなたって本当に馬鹿ね。あの娘が敵意を向けたのは、私にだけよ。
それにあれは、ただの可愛いヤキモチじゃないの。』
『アイツにそんな気はねぇ。俺だって——。』
『ねぇ、ロー。あなた、いつまでそうやって目を反らし続けるの?
二度と会えなくなってから、死ぬほど後悔したって、もう遅いのよ。
—————私みたいになりたいの?』
ひどく傷ついたシェリーの儚い笑みを見て、美しい彼女がどうして、行きずりの海賊と不毛な関係を結ぶのか、分かった気がしました。
彼女は、後悔したシーンを何度も繰り返すことで、自分を慰めているのかもしれません。
(俺は…!)
そんなの御免でした。
後悔なんて、コラソンのときでお終いです。
もう二度と、人生に後悔なんて言葉を刻まないと決意して生きて来たはずでした。
まだ間に合う。まだ遅くない。
自分に言い聞かせるように、運命に呪いでもかけるように、ローは心の中で何度もそう繰り返しながら、人で賑わう常夏の観光地を走り続けました。
『キャプテンが、アイツのことを仲間としか思ってないならそれでもいいよ!!
フラれたって、アタシ達がそばにいてやるから!!
でも、機械だからって、突き放さないでやってくれよ…!
アイツがまた、恋が出来るように…!!アイツがまた、誰かを好きになれるように…!!』
なまえがこれからも、ひとりぼっちで生きてくことがないように———。
必死に懇願するイッカクは、なんとか涙を堪え、目を真っ赤にしていました。
ベポも、ペンギンや、シャチも、似たような表情をしていました。
そして、恋なんて実る方が奇跡のようなものなのだから、彼女が悲しい思いをするのならそれは仕方がないのだと言うのです。
それでも、彼女にとって恋を悲しいだけのものにしてしまわないように、どうか追いかけてやってくれと願うのです。
彼らはただの、なまえの友人でした。
面倒な、友人でした。
機械のなまえが〝恋〟をしていると、彼らが心から信じているのが、信じられませんでした。
だって、彼女は、機械なのに———。
ローは、なまえのことを一番理解しているのは、自分だと思っていました。
仲間として受け入れると決めたのはローでしたし、それから彼女に一番懐かれたのも彼でした。
だから、誰よりも彼女のことを、機械ではなく仲間として扱っていると、心のどこかで優越感を抱いていたのです。
でも実際は、自分が一番、彼女のことを〝機械〟として、フィルター越しに見ていたのだと、やっと気づきました。
だから、〝機械〟に惹かれている自分を許せず、認めてやることも出来ず、そして、〝機械〟が自分を愛してくれるわけがないと決めつけました。
〝機械〟を愛してしまった自分を、仲間達が受け入れるとも思えずに、怯えていたのです。
そうやって、自分を守るために、彼女を想うことから、逃げたのです。
でも、もうそんな愚かなことはしません。
後悔なんて、したくありません。
それに———。
『アイツがまた、誰かを好きになれるように…!!』
なまえの幸せをひたすらに願うイッカクの声が蘇ります。
ローは、ギリリと歯を噛みました。
まさか、そんなこと、させません。
彼女が本当に自分に〝恋〟という感情を抱いているのかは、分かりません。
それは、イッカク達の憶測の域を出ていません。
ただし、ローには、確実に分かることが、ひとつだけありました。
それは、自分が、なまえに〝恋〟をしているということです。
臆病になって、情けない姿を晒してしまうくらい、自分の弱い部分が出てしまうくらいに、惚れているのです。
女性として、彼女を想っています。
誰よりも、です。
彼女を追いかける理由に、それ以上に相応しいものなんてありません。
他の誰かになんて、くれてやるもんか————。
ローは、ただひとりの女性を探して走りました。
まるで、それが彼の人生であるかのように、生まれてからずっと待ち焦がれていたのは彼女だと信じてしまうほどの想いを胸に抱いて————。
イッカクの声が、ローの頭にガンガンと響き続けていました。
ローは、賑やかな海岸通りを、息を切らして走ります。
忙しなく目を左右に動かしても、目を凝らしても、華奢な背中はどこにも見当たりません。
どうして、もっと、彼女のことを見ようとしていなかったのか。
後悔ばかりが、彼を襲います。
でも、彼女から目を反らし続けた理由なら、自分自身が嫌というほどに理解しています。
傷つくことも、周りの目も、彼女を愛することで起こりえる弊害のすべてが、ローを臆病にして、心を閉じさせたのです。
ただの弱い男だった———それを認めるのが、ローは死ぬほど嫌でした。
でも、もうそんな意味のない強がりはやめることにしました。
あぁ、本当はもっと早く、彼は自分の気持ちを認めるべきだったのです。
そして、彼女と向き合うべきでした。
そうすれば、彼女は、自分は壊れて仲間に廃棄にされるなんて、そんな悲しい未来を想像せずに済んだのに———。
『俺のことを殺そうとしちまうんだから、壊れたどころか
本来のプログラムが正当に動き出した証拠じゃねぇか。』
『キャプテン…っ、いい加減にしてくれよ…!そんなわけねぇだろ!!』
『ロー、あなたって本当に馬鹿ね。あの娘が敵意を向けたのは、私にだけよ。
それにあれは、ただの可愛いヤキモチじゃないの。』
『アイツにそんな気はねぇ。俺だって——。』
『ねぇ、ロー。あなた、いつまでそうやって目を反らし続けるの?
二度と会えなくなってから、死ぬほど後悔したって、もう遅いのよ。
—————私みたいになりたいの?』
ひどく傷ついたシェリーの儚い笑みを見て、美しい彼女がどうして、行きずりの海賊と不毛な関係を結ぶのか、分かった気がしました。
彼女は、後悔したシーンを何度も繰り返すことで、自分を慰めているのかもしれません。
(俺は…!)
そんなの御免でした。
後悔なんて、コラソンのときでお終いです。
もう二度と、人生に後悔なんて言葉を刻まないと決意して生きて来たはずでした。
まだ間に合う。まだ遅くない。
自分に言い聞かせるように、運命に呪いでもかけるように、ローは心の中で何度もそう繰り返しながら、人で賑わう常夏の観光地を走り続けました。
『キャプテンが、アイツのことを仲間としか思ってないならそれでもいいよ!!
フラれたって、アタシ達がそばにいてやるから!!
でも、機械だからって、突き放さないでやってくれよ…!
アイツがまた、恋が出来るように…!!アイツがまた、誰かを好きになれるように…!!』
なまえがこれからも、ひとりぼっちで生きてくことがないように———。
必死に懇願するイッカクは、なんとか涙を堪え、目を真っ赤にしていました。
ベポも、ペンギンや、シャチも、似たような表情をしていました。
そして、恋なんて実る方が奇跡のようなものなのだから、彼女が悲しい思いをするのならそれは仕方がないのだと言うのです。
それでも、彼女にとって恋を悲しいだけのものにしてしまわないように、どうか追いかけてやってくれと願うのです。
彼らはただの、なまえの友人でした。
面倒な、友人でした。
機械のなまえが〝恋〟をしていると、彼らが心から信じているのが、信じられませんでした。
だって、彼女は、機械なのに———。
ローは、なまえのことを一番理解しているのは、自分だと思っていました。
仲間として受け入れると決めたのはローでしたし、それから彼女に一番懐かれたのも彼でした。
だから、誰よりも彼女のことを、機械ではなく仲間として扱っていると、心のどこかで優越感を抱いていたのです。
でも実際は、自分が一番、彼女のことを〝機械〟として、フィルター越しに見ていたのだと、やっと気づきました。
だから、〝機械〟に惹かれている自分を許せず、認めてやることも出来ず、そして、〝機械〟が自分を愛してくれるわけがないと決めつけました。
〝機械〟を愛してしまった自分を、仲間達が受け入れるとも思えずに、怯えていたのです。
そうやって、自分を守るために、彼女を想うことから、逃げたのです。
でも、もうそんな愚かなことはしません。
後悔なんて、したくありません。
それに———。
『アイツがまた、誰かを好きになれるように…!!』
なまえの幸せをひたすらに願うイッカクの声が蘇ります。
ローは、ギリリと歯を噛みました。
まさか、そんなこと、させません。
彼女が本当に自分に〝恋〟という感情を抱いているのかは、分かりません。
それは、イッカク達の憶測の域を出ていません。
ただし、ローには、確実に分かることが、ひとつだけありました。
それは、自分が、なまえに〝恋〟をしているということです。
臆病になって、情けない姿を晒してしまうくらい、自分の弱い部分が出てしまうくらいに、惚れているのです。
女性として、彼女を想っています。
誰よりも、です。
彼女を追いかける理由に、それ以上に相応しいものなんてありません。
他の誰かになんて、くれてやるもんか————。
ローは、ただひとりの女性を探して走りました。
まるで、それが彼の人生であるかのように、生まれてからずっと待ち焦がれていたのは彼女だと信じてしまうほどの想いを胸に抱いて————。