◇No.46◇胸を焦がしながら夜の終わりを待ちます
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珍しく自室には戻らなかったなまえは、甲板にやって来ました。
イッカクが、酒盛りをしていると言っていたからです。
甲板の中央に、島の特産物を囲んで騒いでいるイッカク達を見つけたなまえは、彼らの元へ向かいました。
すぐに、イッカクがなまえに気づいて、右手を挙げます。
「来た来た!!待ってたぜ!!」
イッカクが手招きをすると、見張り組の船員達もなまえに気がつきました。
彼女の隣に座ったなまえの肩に、早速、腕を回して絡みだしたのは、シャチでした。
楽しい常夏の島で、初日から見張り組になってしまったことを、さっきまでずっと愚痴っていた彼は、お酒を煽るように飲み、完全に面倒な酔っ払いと化しています。
この島をどれだけ楽しみにしていたのか———、シャチは、なまえへとグチグチと喋り始めました。
なまえは無表情で、ぼんやりと月を眺めながら聞き流しているようでした。
他の船員達は、これ幸い、とシャチをなまえに押しつけて、楽しいお酒を満喫し始めました。
「ローの部屋に美しい人がいました。」
月を見上げていたなまえが、何の脈絡もなく、ポツリ、と呟きました。
騒がしく愚痴をこぼすシャチの声にかき消されていてもおかしくないほどの小さな声でしたが、イッカクは、しっかりと拾い上げました。
「行ったのか?」
「今夜はずっと、美しい人と一緒にいると言っていました。」
なまえがそう言うと、肩を組んで、見張りになった悔しさを喚いていたシャチが、また一段と妬ましそうに喋り始めました。
「いいよなぁ~、キャプテンはさぁ。とびきりの美人と一晩中、お楽しみかよぉ。」
「お楽しみですか?ローは今夜は、楽しいですか?」
「あったりまえよ!!
人生で一番のお楽しみだぜ!!」
シャチは興奮気味に言うと、何が面白いのかは分かりませんが、ゲラゲラと笑い始めました。
そんなシャチをチラリと見た後、なまえは自分の胸にそっと手を乗せました。
ずっと焦げ付いているような感覚のあった胸元でしたが、電子部品に何かが刺さってしまったような気がしたのです。
それは、なまえにとって〝また〟でした。
こんな風に、電子部品の故障を感じるのは、初めてではありません。
その度に、船大工のダイ達に見てもらうのですが、何も壊れてはいないと言われます。
それなら、電子部品に何かが刺さるようなこの嫌な感覚は一体何なのでしょう。
その嫌な感覚が、今日はいつもよりも大きいのです。
「ローは、美しい人とお楽しみするのが一番楽しいですか?」
「あったりま———。」
「お前、一回死んどけ。」
イッカクに腰の辺りを蹴られたシャチが、ドンッと鈍い音を立てて吹っ飛んでいきました。
船縁に背中を強打して、そのまま起き上がらなくなりました。
どうやら、酔っ払っていた彼は、激痛のタイミングで眠ってしまったようです。
やっと、甲板に、楽しい賑やかさが訪れました。
「あのな、なまえ。キャプテンが一番楽しいのが、
そんなつまんねぇことなわけねぇだろ?
キャプテンが人生で一番楽しいのは、アタシ達、仲間との冒険に決まってるじゃねぇか。」
イッカクが、さっきまでシャチがしていたように、なまえの肩を組みました。
なまえが、イッカクを見ます。
じっと、ただじっと見つめた後、胸元に手を添えたままで、顔を伏せました。
「私は、バーでローと夜を過ごすのが一番楽しいです。」
ポツリ、となまえが呟いたそれは、たぶん、彼女の〝心の声〟でした。
「あぁ、そうだな。」
イッカクが、なまえの肩を強く抱き寄せました。
今夜、なまえの胸の奥では、小さな火種がジリジリと電子回路を焦がし続けました。
イッカクが、酒盛りをしていると言っていたからです。
甲板の中央に、島の特産物を囲んで騒いでいるイッカク達を見つけたなまえは、彼らの元へ向かいました。
すぐに、イッカクがなまえに気づいて、右手を挙げます。
「来た来た!!待ってたぜ!!」
イッカクが手招きをすると、見張り組の船員達もなまえに気がつきました。
彼女の隣に座ったなまえの肩に、早速、腕を回して絡みだしたのは、シャチでした。
楽しい常夏の島で、初日から見張り組になってしまったことを、さっきまでずっと愚痴っていた彼は、お酒を煽るように飲み、完全に面倒な酔っ払いと化しています。
この島をどれだけ楽しみにしていたのか———、シャチは、なまえへとグチグチと喋り始めました。
なまえは無表情で、ぼんやりと月を眺めながら聞き流しているようでした。
他の船員達は、これ幸い、とシャチをなまえに押しつけて、楽しいお酒を満喫し始めました。
「ローの部屋に美しい人がいました。」
月を見上げていたなまえが、何の脈絡もなく、ポツリ、と呟きました。
騒がしく愚痴をこぼすシャチの声にかき消されていてもおかしくないほどの小さな声でしたが、イッカクは、しっかりと拾い上げました。
「行ったのか?」
「今夜はずっと、美しい人と一緒にいると言っていました。」
なまえがそう言うと、肩を組んで、見張りになった悔しさを喚いていたシャチが、また一段と妬ましそうに喋り始めました。
「いいよなぁ~、キャプテンはさぁ。とびきりの美人と一晩中、お楽しみかよぉ。」
「お楽しみですか?ローは今夜は、楽しいですか?」
「あったりまえよ!!
人生で一番のお楽しみだぜ!!」
シャチは興奮気味に言うと、何が面白いのかは分かりませんが、ゲラゲラと笑い始めました。
そんなシャチをチラリと見た後、なまえは自分の胸にそっと手を乗せました。
ずっと焦げ付いているような感覚のあった胸元でしたが、電子部品に何かが刺さってしまったような気がしたのです。
それは、なまえにとって〝また〟でした。
こんな風に、電子部品の故障を感じるのは、初めてではありません。
その度に、船大工のダイ達に見てもらうのですが、何も壊れてはいないと言われます。
それなら、電子部品に何かが刺さるようなこの嫌な感覚は一体何なのでしょう。
その嫌な感覚が、今日はいつもよりも大きいのです。
「ローは、美しい人とお楽しみするのが一番楽しいですか?」
「あったりま———。」
「お前、一回死んどけ。」
イッカクに腰の辺りを蹴られたシャチが、ドンッと鈍い音を立てて吹っ飛んでいきました。
船縁に背中を強打して、そのまま起き上がらなくなりました。
どうやら、酔っ払っていた彼は、激痛のタイミングで眠ってしまったようです。
やっと、甲板に、楽しい賑やかさが訪れました。
「あのな、なまえ。キャプテンが一番楽しいのが、
そんなつまんねぇことなわけねぇだろ?
キャプテンが人生で一番楽しいのは、アタシ達、仲間との冒険に決まってるじゃねぇか。」
イッカクが、さっきまでシャチがしていたように、なまえの肩を組みました。
なまえが、イッカクを見ます。
じっと、ただじっと見つめた後、胸元に手を添えたままで、顔を伏せました。
「私は、バーでローと夜を過ごすのが一番楽しいです。」
ポツリ、となまえが呟いたそれは、たぶん、彼女の〝心の声〟でした。
「あぁ、そうだな。」
イッカクが、なまえの肩を強く抱き寄せました。
今夜、なまえの胸の奥では、小さな火種がジリジリと電子回路を焦がし続けました。