◇No.43◇だからやっぱり、彼女は泣くのでしょう
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「裏甲板の真ん中に座り込んで、何やってんだ?」
後ろから肩を掴まれて、漸く、なまえに時間の流れが戻ってきました。
それは、ローが裏甲板から出て行って、10分程が経った頃でした。
釣り上げた大きな魚を自慢したかったシャチが、なまえを探してやってきたのです。
「・・・・私にも、分かりません。」
数秒考えた後、なまえはそう答えながら、首だけを曲げて後ろを振り返りました。
「はぁ?何やってんんだよ、春ボケか・・・・・ハァ!?」
なまえを見下ろしながら、最初は呆れた様に言っていたシャチでしたが、自分を見上げる彼女の表情をしっかりと確認した途端に、これでもかと目を見開いて驚きの声を上げました。
「な…ななななん…ッ!?な…!?」
「どうかしましたか?」
言葉にならない声を上げて驚きを表現するシャチに、なまえは首を傾げました。
この頃には、彼女の表情はもうすっかり、いつもの無表情に戻っていました。
でも、ただひとつだけ、いつもとは違うところがあったのです。
それは———。
「な…ッ、なんで、泣いてんだよ!?何があった!?
どうしたんだよ!?」
床に片膝をついてしゃがんだシャチは、なまえの両肩を握ると、焦ったように訊ねました。
そうなのです。
なまえの大きな瞳からは、涙にしか見えない透明の水のようなものがとめどなく流れ落ちていたのです。
それは白い頬を伝って、顎のあたりまで流れると、彼女の着ている白いつなぎに落ちて濡らしていました。
「泣いていません。」
「嘘つけ!!泣いてんじゃねぇか!!え…!?
ロボットって泣くのか!?お前、泣けたのか!?」
「いいえ、ロボットには心がないので、悲しくもなりません。
なので、泣くことはありません。」
「じゃあ、なんで泣いてんだよ!?」
「私は泣いていません。」
なまえはキッパリと答えます。
でも、確かに、彼女の頬には涙のようなものが流れているのです。
噛み合わない会話と、把握できない状況にパニックになったシャチは「待ってろ!ペンギン、呼んでくる!」と表甲板に走って行ってしまいました。
その間に、なまえはゆっくりと立ち上がろうとして、裏甲板に手をつきました。
すると、裏甲板に水の雫が落ちて、染みが出来たのに気がつきました。
なまえは空を見上げます。
雨だと思ったのです。
ですが、相変わらず、春島の暖かい気候の海域には、柔らかくて気持ちのいい風が吹いていて、雲ひとつない青い空が気持ちがいいくらいに遠くまで広がっています。
首を傾げながら、なまえは立ち上がりました。
そこへ、すぐに、シャチに連れられてペンギンとベポが走ってやって来ました。
そして、なまえの顔を見て驚いた顔をします。
「なまえッ、何があったの!?どうしたの!?」
ベポが、なまえの腕を掴んで心配そうに訊ねます。
それでも、何を心配されているのか分からないなまえは首を傾げます。
「なまえ、自分が泣いてること、気づいてねぇのか?」
ペンギンが、目を細め、なまえを観察するようにしながら言います。
「私は泣いていません。」
なまえは、そう言いながら、自分の頬に触れました。
ほら、泣いていない——。
そう言うつもりだったのかもしれません。
でも、頬に触れたなまえは、手に水のようなものが触れたのに気づきました。
そして、頬から離した自分の濡れた手を見て、少しだけ目を顰めました。
自分の目が壊れて、錯覚を起こしていると思ったのかもしれません。
でもそれは、錯覚でも何でもありません。
確かに、なまえの大きな瞳から、今も絶え間なく、涙のようなものが流れているのです。
「これは何ですか?」
「涙だろ!!泣いたんだよ、お前!!何があったんだよ!?」
シャチが言いました。
いつもは率先してなまえをからかっているシャチですが、とても焦っていて、とても心配そうにしています。
そして、ちょっとした混乱を起こしているようでした。
ですが、ペンギンは冷静な様子で、なまえの様子を観察し、最終的に、濡れる頬に触れました。
涙を拭う、というよりも、流れているその液体を確認するように触れて、濡れた自分の指を観察します。
濡れた指をこすり合わせて感触を確かめたり、匂いを嗅いだりした後、ペンギンは、答えを見つけました。
「オイル漏れだ。」
ペンギンは、とても冷静に言いました。
シャチやベポとは違い、最初から彼が落ち着いていたのは、それは涙ではないと確信していたからでした。
だって、ロボットが泣くだなんて、あり得ないことです。
もし、ロボットの目から、涙のような液体が流れていたら、それは、故障か、雨や海水がかかっただけだとか、そんなことに決まっています。
「オイル漏れ!?アーーーッ、もう、なんだよ…!!
すげぇ、ビビッたじゃねぇかぁ~~~。」
シャチがホッとしたように息を吐いて、しゃがみ込みました。
ベポも「よかった。」と胸を撫でおろします。
すぐに、ペンギンが、船大工たちを呼んで、オイル漏れの原因を探しあててくれました。
電子回路が一部ショートして、破損していたのが原因だったようです。
すぐに直してもらい、なまえの涙は止まりました。
当然です。
彼女は、ロボットなのです。
涙を流すなんて、そんなこと、あるわけがないのですから。
後ろから肩を掴まれて、漸く、なまえに時間の流れが戻ってきました。
それは、ローが裏甲板から出て行って、10分程が経った頃でした。
釣り上げた大きな魚を自慢したかったシャチが、なまえを探してやってきたのです。
「・・・・私にも、分かりません。」
数秒考えた後、なまえはそう答えながら、首だけを曲げて後ろを振り返りました。
「はぁ?何やってんんだよ、春ボケか・・・・・ハァ!?」
なまえを見下ろしながら、最初は呆れた様に言っていたシャチでしたが、自分を見上げる彼女の表情をしっかりと確認した途端に、これでもかと目を見開いて驚きの声を上げました。
「な…ななななん…ッ!?な…!?」
「どうかしましたか?」
言葉にならない声を上げて驚きを表現するシャチに、なまえは首を傾げました。
この頃には、彼女の表情はもうすっかり、いつもの無表情に戻っていました。
でも、ただひとつだけ、いつもとは違うところがあったのです。
それは———。
「な…ッ、なんで、泣いてんだよ!?何があった!?
どうしたんだよ!?」
床に片膝をついてしゃがんだシャチは、なまえの両肩を握ると、焦ったように訊ねました。
そうなのです。
なまえの大きな瞳からは、涙にしか見えない透明の水のようなものがとめどなく流れ落ちていたのです。
それは白い頬を伝って、顎のあたりまで流れると、彼女の着ている白いつなぎに落ちて濡らしていました。
「泣いていません。」
「嘘つけ!!泣いてんじゃねぇか!!え…!?
ロボットって泣くのか!?お前、泣けたのか!?」
「いいえ、ロボットには心がないので、悲しくもなりません。
なので、泣くことはありません。」
「じゃあ、なんで泣いてんだよ!?」
「私は泣いていません。」
なまえはキッパリと答えます。
でも、確かに、彼女の頬には涙のようなものが流れているのです。
噛み合わない会話と、把握できない状況にパニックになったシャチは「待ってろ!ペンギン、呼んでくる!」と表甲板に走って行ってしまいました。
その間に、なまえはゆっくりと立ち上がろうとして、裏甲板に手をつきました。
すると、裏甲板に水の雫が落ちて、染みが出来たのに気がつきました。
なまえは空を見上げます。
雨だと思ったのです。
ですが、相変わらず、春島の暖かい気候の海域には、柔らかくて気持ちのいい風が吹いていて、雲ひとつない青い空が気持ちがいいくらいに遠くまで広がっています。
首を傾げながら、なまえは立ち上がりました。
そこへ、すぐに、シャチに連れられてペンギンとベポが走ってやって来ました。
そして、なまえの顔を見て驚いた顔をします。
「なまえッ、何があったの!?どうしたの!?」
ベポが、なまえの腕を掴んで心配そうに訊ねます。
それでも、何を心配されているのか分からないなまえは首を傾げます。
「なまえ、自分が泣いてること、気づいてねぇのか?」
ペンギンが、目を細め、なまえを観察するようにしながら言います。
「私は泣いていません。」
なまえは、そう言いながら、自分の頬に触れました。
ほら、泣いていない——。
そう言うつもりだったのかもしれません。
でも、頬に触れたなまえは、手に水のようなものが触れたのに気づきました。
そして、頬から離した自分の濡れた手を見て、少しだけ目を顰めました。
自分の目が壊れて、錯覚を起こしていると思ったのかもしれません。
でもそれは、錯覚でも何でもありません。
確かに、なまえの大きな瞳から、今も絶え間なく、涙のようなものが流れているのです。
「これは何ですか?」
「涙だろ!!泣いたんだよ、お前!!何があったんだよ!?」
シャチが言いました。
いつもは率先してなまえをからかっているシャチですが、とても焦っていて、とても心配そうにしています。
そして、ちょっとした混乱を起こしているようでした。
ですが、ペンギンは冷静な様子で、なまえの様子を観察し、最終的に、濡れる頬に触れました。
涙を拭う、というよりも、流れているその液体を確認するように触れて、濡れた自分の指を観察します。
濡れた指をこすり合わせて感触を確かめたり、匂いを嗅いだりした後、ペンギンは、答えを見つけました。
「オイル漏れだ。」
ペンギンは、とても冷静に言いました。
シャチやベポとは違い、最初から彼が落ち着いていたのは、それは涙ではないと確信していたからでした。
だって、ロボットが泣くだなんて、あり得ないことです。
もし、ロボットの目から、涙のような液体が流れていたら、それは、故障か、雨や海水がかかっただけだとか、そんなことに決まっています。
「オイル漏れ!?アーーーッ、もう、なんだよ…!!
すげぇ、ビビッたじゃねぇかぁ~~~。」
シャチがホッとしたように息を吐いて、しゃがみ込みました。
ベポも「よかった。」と胸を撫でおろします。
すぐに、ペンギンが、船大工たちを呼んで、オイル漏れの原因を探しあててくれました。
電子回路が一部ショートして、破損していたのが原因だったようです。
すぐに直してもらい、なまえの涙は止まりました。
当然です。
彼女は、ロボットなのです。
涙を流すなんて、そんなこと、あるわけがないのですから。