◇No.33◇探しています
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どんよりとした雨雲が、いつもよりも早くから空を黒く染めようとしていました。
運よく、土砂降りになるはずだった雨は上がっていました。
今のうちになまえを見つけ出したい——、と街を走り回るハートの海賊団の船員達は、煩わし気に傘を投げ捨て、仲間の名前を大声で叫びます。
情報収集班に任命された船員達も、行き交う人になまえの目撃情報を聞きたいのですが、土砂降りの雨が人を家に閉じ込めてしまったようで、聞き込みすらままなりません。
すべてが、ハートの海賊団にとって不利な方向へと向かっているようでした。
「うわッ!?」
なまえにコートを買った高級ショップに入ろうと、ローが扉を開こうとしたときでした。
いきなり扉が開き、若い男が飛び出して来て、驚いた声を上げました。
ハートの海賊団で偵察班のリーダーをしている彼でした。
「キャプテン!!ちょうどよかった!!新しい情報です!!」
店内に入る前に、仲間から情報を聞けるのは幸運でした。
さすが、偵察を得意とする彼です。
他の船員が聞き込みに苦労している間に、船長に報告すべき情報を的確な場所で手に入れたようでした。
「何だ。」
「グロスの周辺を張ってみたのですが、特におかしな動きはありませんでした。
それでなまえのこの島での行動を洗い直したんです。
そしたら、キャプテンが買ってやったあのコートを欲しがってる女がいたことがわかりました。」
「あの熊みてぇなコートか?」
「それがグロスの愛人らしくて、しかも…。」
急に言いづらそうにした彼に、ローがちゃんと言えと続きを催促します。
数秒あけてから、彼は口を開きました。
「ソイツ、昔、キャプテンが飼ってた女でした。」
「俺が飼ってた…、ガリーナか。」
少し考えて、ローは、少し前にセレブ街で会った懐かしい女を思い出しました。
金持ちの男をカモにして生きているような女です。
このセレブ街で最も成功者のグロスの愛人をしていても、何の不思議もありません。
むしろ、とても納得しました。
名前を聞いた彼が頷き、続けます。
「あの女、昔からキャプテンに執着してたみたいだったので…。」
グロスには全く怪しい動きはなかったが、そこで見つけたローが昔遊んでいた女。
その女が、今回、なまえの行方不明と全く関係ないとは言い切れない——。
彼がそう判断するのは、とても自然な流れでした。
なまえを挑発していたガリーナを思い出したローも、同じように感じました。
いえ、必ず、ガリーナが関わっている——、そう確信しました。
そこへ、タイミングを見計らったように、ローがコートのポケットに入れていた子電伝虫が鳴り出しました。
≪キャプテン!!ヤバイっす!!ヤバイっす!! ≫
出るなり焦ったように叫び出したのは、イッカクでした。
「落ち着け。何があった。」
ローが言うと、子電伝虫の向こうから、イッカクの深呼吸が聞こえてきました。
指示通り、落ち着こうとしているようです。
なまえに限らず、基本的に船長に忠実な彼らは、とても素直です。
≪なまえがいなくなったことを知った途端に、
町の若い男の1人が青い顔してたんで、吐かせたんっす!
ソイツが言うには、昨日、若い女がなまえのことを聞いてきたって!≫
「それで、ソイツは何を喋ったんだ。」
≪なまえはすごいロボットだって教えてやった後に、
それなら無敵だってその女が言うから、
水が弱点で、雨にも濡れたらマズいって喋ちまったらしいっす。≫
「チッ。」
思わずローから舌打ちが漏れれば、イッカクが、自分が締めておきますと答えました。
ですが、そういうことではないのです。
偵察班のリーダーの彼から聞いたグロスの愛人の情報とイッカクからの情報が繋がった今、なまえは高い可能性で屋外にいることが分かりました。
ガリーナは、土砂降りの今日、なまえを雨で濡らし、壊してしまおうと思っているのだろうと推測できるからです。
そして、そうなってしまったのは、恐らく自分のせいだと、気づいてしまいました。
『俺は今から、大好きな人と買い物なんだ。』
嫌味の通じないなまえを煽ってしまって返り討ちにあったガリーナに、自分が言った意地悪なセリフが蘇ります。
なまえの言った『ローの大好きな人』という無垢な自己紹介を否定するどころか、肯定するようなことを言ったことで、ガリーナがなまえのことを『ローの恋人』だと勘違いしてもおかしくないことは分かっていました。
でも、まさかこんなことになるなんて——。
欲しかったコートをなまえがローから買ってもらったことも知ったガリーナは、彼女の弱点まで掴んでしまいました。
ガリーナが今、何を企んでいるのか、考えるの恐ろしいことです。
「ガリーナは今、どこにいる!?」
「グロスがマンションを買い与えてます!!すぐに案内します!!」
ローは、走りました。
運よく雨が止んでいる空ですが、まだ雨雲は鎮座しています。
いつまた土砂降りになるか分かりません。
早くなまえを見つけなければ——。
ハートの海賊団の船大工や機械好きの船員は、確かに腕はいいですが、天才が作った高性能の電子回路を復活させるだけの知識は、残念ながらないのです。
壊れてしまったら、それはつまり、事実上のなまえの死を意味します。
少なくとも、海賊としての人生は終わりでしょう。
生き返るには、天才博士の力が必要なのですから——。
運よく、土砂降りになるはずだった雨は上がっていました。
今のうちになまえを見つけ出したい——、と街を走り回るハートの海賊団の船員達は、煩わし気に傘を投げ捨て、仲間の名前を大声で叫びます。
情報収集班に任命された船員達も、行き交う人になまえの目撃情報を聞きたいのですが、土砂降りの雨が人を家に閉じ込めてしまったようで、聞き込みすらままなりません。
すべてが、ハートの海賊団にとって不利な方向へと向かっているようでした。
「うわッ!?」
なまえにコートを買った高級ショップに入ろうと、ローが扉を開こうとしたときでした。
いきなり扉が開き、若い男が飛び出して来て、驚いた声を上げました。
ハートの海賊団で偵察班のリーダーをしている彼でした。
「キャプテン!!ちょうどよかった!!新しい情報です!!」
店内に入る前に、仲間から情報を聞けるのは幸運でした。
さすが、偵察を得意とする彼です。
他の船員が聞き込みに苦労している間に、船長に報告すべき情報を的確な場所で手に入れたようでした。
「何だ。」
「グロスの周辺を張ってみたのですが、特におかしな動きはありませんでした。
それでなまえのこの島での行動を洗い直したんです。
そしたら、キャプテンが買ってやったあのコートを欲しがってる女がいたことがわかりました。」
「あの熊みてぇなコートか?」
「それがグロスの愛人らしくて、しかも…。」
急に言いづらそうにした彼に、ローがちゃんと言えと続きを催促します。
数秒あけてから、彼は口を開きました。
「ソイツ、昔、キャプテンが飼ってた女でした。」
「俺が飼ってた…、ガリーナか。」
少し考えて、ローは、少し前にセレブ街で会った懐かしい女を思い出しました。
金持ちの男をカモにして生きているような女です。
このセレブ街で最も成功者のグロスの愛人をしていても、何の不思議もありません。
むしろ、とても納得しました。
名前を聞いた彼が頷き、続けます。
「あの女、昔からキャプテンに執着してたみたいだったので…。」
グロスには全く怪しい動きはなかったが、そこで見つけたローが昔遊んでいた女。
その女が、今回、なまえの行方不明と全く関係ないとは言い切れない——。
彼がそう判断するのは、とても自然な流れでした。
なまえを挑発していたガリーナを思い出したローも、同じように感じました。
いえ、必ず、ガリーナが関わっている——、そう確信しました。
そこへ、タイミングを見計らったように、ローがコートのポケットに入れていた子電伝虫が鳴り出しました。
≪キャプテン!!ヤバイっす!!ヤバイっす!! ≫
出るなり焦ったように叫び出したのは、イッカクでした。
「落ち着け。何があった。」
ローが言うと、子電伝虫の向こうから、イッカクの深呼吸が聞こえてきました。
指示通り、落ち着こうとしているようです。
なまえに限らず、基本的に船長に忠実な彼らは、とても素直です。
≪なまえがいなくなったことを知った途端に、
町の若い男の1人が青い顔してたんで、吐かせたんっす!
ソイツが言うには、昨日、若い女がなまえのことを聞いてきたって!≫
「それで、ソイツは何を喋ったんだ。」
≪なまえはすごいロボットだって教えてやった後に、
それなら無敵だってその女が言うから、
水が弱点で、雨にも濡れたらマズいって喋ちまったらしいっす。≫
「チッ。」
思わずローから舌打ちが漏れれば、イッカクが、自分が締めておきますと答えました。
ですが、そういうことではないのです。
偵察班のリーダーの彼から聞いたグロスの愛人の情報とイッカクからの情報が繋がった今、なまえは高い可能性で屋外にいることが分かりました。
ガリーナは、土砂降りの今日、なまえを雨で濡らし、壊してしまおうと思っているのだろうと推測できるからです。
そして、そうなってしまったのは、恐らく自分のせいだと、気づいてしまいました。
『俺は今から、大好きな人と買い物なんだ。』
嫌味の通じないなまえを煽ってしまって返り討ちにあったガリーナに、自分が言った意地悪なセリフが蘇ります。
なまえの言った『ローの大好きな人』という無垢な自己紹介を否定するどころか、肯定するようなことを言ったことで、ガリーナがなまえのことを『ローの恋人』だと勘違いしてもおかしくないことは分かっていました。
でも、まさかこんなことになるなんて——。
欲しかったコートをなまえがローから買ってもらったことも知ったガリーナは、彼女の弱点まで掴んでしまいました。
ガリーナが今、何を企んでいるのか、考えるの恐ろしいことです。
「ガリーナは今、どこにいる!?」
「グロスがマンションを買い与えてます!!すぐに案内します!!」
ローは、走りました。
運よく雨が止んでいる空ですが、まだ雨雲は鎮座しています。
いつまた土砂降りになるか分かりません。
早くなまえを見つけなければ——。
ハートの海賊団の船大工や機械好きの船員は、確かに腕はいいですが、天才が作った高性能の電子回路を復活させるだけの知識は、残念ながらないのです。
壊れてしまったら、それはつまり、事実上のなまえの死を意味します。
少なくとも、海賊としての人生は終わりでしょう。
生き返るには、天才博士の力が必要なのですから——。