翌日、空には雨雲が漂いどんよりしているにも関わらず、セレブ街は、巨大カジノを中心にとても大賑わいでした。
今ならカジノは大勝ち出来る——。
そんな噂が広まりだしたせいです。
お金持ち達は、さらに大金を求めて意気揚々とカジノへ入り、まずはビギナーズラックでそれなりに勝って味をしめます。
そして、噂は本当だったと信じた後、大金を賭けてしまい真っ青な顔で出てくるのです。

「人間って愚かだな～。
　欲を出さなきゃ、勝って帰れたのに。」

シャチが感慨深げに言いました。
彼は今、ペンギンと一緒にカジノの入口にある噴水の縁に座り、カジノの入口を眺めていました。

「その愚かな人間のお陰で、キャプテンの作戦通りだ。」

ペンギンが満足気に言います。
そう、すべてが、ローの作戦通りに事が進んでいました。
ありえない噂が流れ出したのも、その噂を本物だと信じさせるために最初だけは大金を手にできるように仕向けているのも、裏でハートの海賊団の船員達が手をまわしているからです。
勝ち逃げされる可能性を心配した船員もいましたが、絶対にそんなことにはならないと言い切ったのがローでした。
そして実際に今、愚かな人間達が欲を溢れ出させ、カジノに大金を捨てていました。
まさかそれが海賊達の仕業だとも知らないカジノのオーナーであるグロスは、金持ち達が大金を賭けまくる状況を疑うこともせず、ご機嫌だという報告も偵察班から入っています。

「このまま馬鹿な金持ちがカジノに金を捨てていってくれれば、
　この島を出る頃には、俺達は億万長者だ。」

シャチがニシシと笑いました。
すべてが、計画通りに進んでいました。
そんなの彼らの頭上を分厚い雨雲が覆っていきます。
それは、雨雲が覆い尽くそうとしている空は、作戦通りだと踊る彼らとは対照的に、とても不吉な色をしていました。