◇No.30◇これは私のコートです
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「申し訳ございません。」
深々と頭を下げた女性店員の後ろにある空っぽになったガラスケースを呆然と見つめ、ガリーナは言葉をなくしました。
ケチなグロスが部屋にやってきて、欲しいと言っていた毛皮のコートを買ってやると言い出したのは、今朝のことでした。
すべて自分の思い通りだと、グロスはとてもご機嫌で、今日はとても太っ腹だったのです。
ローとの運命的な再会の後、屈辱的な目に合って、最低最悪な気分が抜けなかったガリーナは、毛皮のコートを手に入れさえすれば、また機嫌を戻すことも出来ると思っていました。
それなのに、その毛皮のコートが、既に売れてしまったというのです。
信じられませんでした。
だって——。
「この前は、きっとそんなにすぐに売れないから大丈夫って
言ったじゃない!!!」
ガリーナが声を荒げると、ショップにいた他の客がビクッと肩を揺らしました。
そして、好奇心旺盛な視線がガリーナに集まりだします。
普段なら「見てんじゃないわよ!」なんて文句を言うところでしたが、ローを取り戻し損ねた上、毛皮のコートまで手に入れることが出来ず、爆発寸前だったガリーナは、周りの目を気にする余裕はありませんでした。
「ないなら仕方がないさ。また他の物を——。」
「私はアレがよかったの!!アレじゃなきゃ嫌なの!!」
ガリーナが大声で駄々をこねると、グロスは、どうしたもんかと途方に暮れたような顔をしました。
すると、ボディーガードのひとりが、少し遠慮がちに口を開きました。
「では、毛皮のコートを購入した方から
グロス様が購入するというのはどうでしょうか。」
「わぁ!!そうしましょう!!それがいい!!」
ボディーガードの提案に、グロスはギョッとしていましたが、ガリーナは嬉しそうに両手を叩きました。
そして、早速、女性店員に、毛皮のコートを買っていった客は誰だったかを訊ねました。
ですが、名前は教えられない、と首を横に振られてしまいます。
それならば、特徴だけでもいいから教えてくれとガリーナが言うと、女性店員は眉をハの字に曲げました。
「申し訳ありません。個人情報になりますので、どうしてもお答えできないんです。」
「どうしてよ!!私が知りたいって言ってるんだから、教えなさいよ!!」
どんな我儘も通してきたガリーナは、どんどん声のトーンが上がります。
どうしようもなくなり、女性店員はショップのオーナーに相談をしにいきました。
そして、数分後、戻って来た女性店員は、やはり申し訳なさそうに頭を下げました。
超高級ブランドショップとして、お客様の個人情報を守ることはとても大切な業務のひとつなのです。
ですが、ひとつだけ、ガリーナに情報を教えてあげることにしたようでした。
「毛皮のコートをお買い求めになられたお客様は、この島の方ではございませんでしたが、
もうしばらくこの島で遊んでいくと仰っておりました。」
「へぇ。」
ガリーナは、満足気に口の端を上げました。
それは、この街を歩き回っていれば、いつかきっとあの毛皮のコートを着ている身の程知らずと出逢えるということです。
毛皮のコートを見つけたら、どんな値段に釣り上げられても買ってやるとグロスに約束させ、ガリーナは早足で店内を出て行きました。
深々と頭を下げた女性店員の後ろにある空っぽになったガラスケースを呆然と見つめ、ガリーナは言葉をなくしました。
ケチなグロスが部屋にやってきて、欲しいと言っていた毛皮のコートを買ってやると言い出したのは、今朝のことでした。
すべて自分の思い通りだと、グロスはとてもご機嫌で、今日はとても太っ腹だったのです。
ローとの運命的な再会の後、屈辱的な目に合って、最低最悪な気分が抜けなかったガリーナは、毛皮のコートを手に入れさえすれば、また機嫌を戻すことも出来ると思っていました。
それなのに、その毛皮のコートが、既に売れてしまったというのです。
信じられませんでした。
だって——。
「この前は、きっとそんなにすぐに売れないから大丈夫って
言ったじゃない!!!」
ガリーナが声を荒げると、ショップにいた他の客がビクッと肩を揺らしました。
そして、好奇心旺盛な視線がガリーナに集まりだします。
普段なら「見てんじゃないわよ!」なんて文句を言うところでしたが、ローを取り戻し損ねた上、毛皮のコートまで手に入れることが出来ず、爆発寸前だったガリーナは、周りの目を気にする余裕はありませんでした。
「ないなら仕方がないさ。また他の物を——。」
「私はアレがよかったの!!アレじゃなきゃ嫌なの!!」
ガリーナが大声で駄々をこねると、グロスは、どうしたもんかと途方に暮れたような顔をしました。
すると、ボディーガードのひとりが、少し遠慮がちに口を開きました。
「では、毛皮のコートを購入した方から
グロス様が購入するというのはどうでしょうか。」
「わぁ!!そうしましょう!!それがいい!!」
ボディーガードの提案に、グロスはギョッとしていましたが、ガリーナは嬉しそうに両手を叩きました。
そして、早速、女性店員に、毛皮のコートを買っていった客は誰だったかを訊ねました。
ですが、名前は教えられない、と首を横に振られてしまいます。
それならば、特徴だけでもいいから教えてくれとガリーナが言うと、女性店員は眉をハの字に曲げました。
「申し訳ありません。個人情報になりますので、どうしてもお答えできないんです。」
「どうしてよ!!私が知りたいって言ってるんだから、教えなさいよ!!」
どんな我儘も通してきたガリーナは、どんどん声のトーンが上がります。
どうしようもなくなり、女性店員はショップのオーナーに相談をしにいきました。
そして、数分後、戻って来た女性店員は、やはり申し訳なさそうに頭を下げました。
超高級ブランドショップとして、お客様の個人情報を守ることはとても大切な業務のひとつなのです。
ですが、ひとつだけ、ガリーナに情報を教えてあげることにしたようでした。
「毛皮のコートをお買い求めになられたお客様は、この島の方ではございませんでしたが、
もうしばらくこの島で遊んでいくと仰っておりました。」
「へぇ。」
ガリーナは、満足気に口の端を上げました。
それは、この街を歩き回っていれば、いつかきっとあの毛皮のコートを着ている身の程知らずと出逢えるということです。
毛皮のコートを見つけたら、どんな値段に釣り上げられても買ってやるとグロスに約束させ、ガリーナは早足で店内を出て行きました。