◇No.29◇逃げるのはまだ早いです
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偵察班のリーダーから報告を受けたローが、幹部組のペンギン達となまえを連れて船を降りたのは、空を染めていた紫色に黒が混ざり始めた頃でした。
向かっているのは、昨日、火の海となった廃れた町です。
「なまえ、お前、熊みたいだな。」
シャチが、新しいコートを羽織っているなまえを見て、とても失礼な感想を言いました。
今日の昼間、なまえがローから買ってもらったのは、毛皮のコートでした。
本当はカーディガンを買う約束でしたが、今後も冬島を訪れるので、どうせならとコートを買うことにしたのです。
ですが、お洒落をしたこともなく、その知識すらないなまえは『好きなものを買ってやる。』とローに言われても、何を選べばいいか分かりません。
ローもまた、女に服を買ってやったことはあっても、似合うものを選んでやったことはありませんでした。
結局、セレブの街で一番高いコートを買えば間違いない、という結論に至ったローが見つけたのが、高級ショップのガラスケースにディスプレイされているこの毛皮のコートだったのです。
薄い赤毛と白がまだらになっていて、超有名デザイナー達が集結して作った世界に数点しかない貴重なコートという説明でしたが、無駄にモフモフしたそれの良さが、ローにはいまいちわかりませんでした。
でも、とりあえず、それが、恐らく世界で一番高いコート、ということでしたので、一番良いコートなのだろう、とローの認識はそんなものでした。
ですが、シャチの感想は的を得ている、と感じました。
「私は熊ですか?ベポと同じです。」
「わぁ!本当だな!俺となまえは一緒だ!熊だ!!」
「はい、私は熊です。同じです。」
いやいや違うだろ——。
すかさず入ったペンギンのツッコみも無視して、なまえとベポは仲良く手を繋いで、熊同盟を名乗り出しました。
買うコートを間違った気がしていたローでしたが、とりあえず、白いセーターだけよりもだいぶ見た目も暖かくなりましたし、ロボットのなまえと白熊のベポが、楽しそうに熊同盟を組めたので、これで良しということにしました。
凍える寒空の下、しばらく歩いてロー達が辿り着いたのは、火の粉から逃れた集落でした。
エレン達が身を隠している空き家はすぐに分かりました。
まだ電気は通っていたらさいく、窓から明かりが漏れている家が、一軒しかなかったからです。
玄関前の階段を上がっていると、騒がしい声と共に家の扉が開き、中年の夫婦が出て来ました。
ロー達を見つけて、一瞬だけギョッとした顔をした彼らでしたが、すぐに気を取り直したように階段を駆け下りようとして、玄関から飛び出して来たカルラに引き留められました。
カルラは、旦那の方の腕を掴むと、焦った様子で叫びました。
「お願いです…!もう少し頑張って…!!なんとかしますから…!!」
「なんとかって、どうするんだよ!?もう無理だ…!!」
「それでも…!!私達が諦めてしまったら…、
アッカーマンさん達が頑張ったことが無駄になってしまう…!
そんなの、嫌なんです…っ。」
「悪いが…!!俺達はこんなところで凍えながら野垂れ死ぬのは御免なんだ!!」
カルラの手を振りほどいた旦那は、妻と一緒に階段を駆け下ります。
ですが、すぐにまた旦那の方がローに腕を掴まれて、階段の途中で立ち止まるしかなくなりました。
そこで漸く、カルラは、ロー達の存在に気づいたようで、驚いたように目を見開きました。
「なんだ…!?お前達に、引き留められる筋合いなんか——。」
「逃げるのはまだ早ぇ。」
ローは、怯える旦那に、ハッキリとそう告げました。
向かっているのは、昨日、火の海となった廃れた町です。
「なまえ、お前、熊みたいだな。」
シャチが、新しいコートを羽織っているなまえを見て、とても失礼な感想を言いました。
今日の昼間、なまえがローから買ってもらったのは、毛皮のコートでした。
本当はカーディガンを買う約束でしたが、今後も冬島を訪れるので、どうせならとコートを買うことにしたのです。
ですが、お洒落をしたこともなく、その知識すらないなまえは『好きなものを買ってやる。』とローに言われても、何を選べばいいか分かりません。
ローもまた、女に服を買ってやったことはあっても、似合うものを選んでやったことはありませんでした。
結局、セレブの街で一番高いコートを買えば間違いない、という結論に至ったローが見つけたのが、高級ショップのガラスケースにディスプレイされているこの毛皮のコートだったのです。
薄い赤毛と白がまだらになっていて、超有名デザイナー達が集結して作った世界に数点しかない貴重なコートという説明でしたが、無駄にモフモフしたそれの良さが、ローにはいまいちわかりませんでした。
でも、とりあえず、それが、恐らく世界で一番高いコート、ということでしたので、一番良いコートなのだろう、とローの認識はそんなものでした。
ですが、シャチの感想は的を得ている、と感じました。
「私は熊ですか?ベポと同じです。」
「わぁ!本当だな!俺となまえは一緒だ!熊だ!!」
「はい、私は熊です。同じです。」
いやいや違うだろ——。
すかさず入ったペンギンのツッコみも無視して、なまえとベポは仲良く手を繋いで、熊同盟を名乗り出しました。
買うコートを間違った気がしていたローでしたが、とりあえず、白いセーターだけよりもだいぶ見た目も暖かくなりましたし、ロボットのなまえと白熊のベポが、楽しそうに熊同盟を組めたので、これで良しということにしました。
凍える寒空の下、しばらく歩いてロー達が辿り着いたのは、火の粉から逃れた集落でした。
エレン達が身を隠している空き家はすぐに分かりました。
まだ電気は通っていたらさいく、窓から明かりが漏れている家が、一軒しかなかったからです。
玄関前の階段を上がっていると、騒がしい声と共に家の扉が開き、中年の夫婦が出て来ました。
ロー達を見つけて、一瞬だけギョッとした顔をした彼らでしたが、すぐに気を取り直したように階段を駆け下りようとして、玄関から飛び出して来たカルラに引き留められました。
カルラは、旦那の方の腕を掴むと、焦った様子で叫びました。
「お願いです…!もう少し頑張って…!!なんとかしますから…!!」
「なんとかって、どうするんだよ!?もう無理だ…!!」
「それでも…!!私達が諦めてしまったら…、
アッカーマンさん達が頑張ったことが無駄になってしまう…!
そんなの、嫌なんです…っ。」
「悪いが…!!俺達はこんなところで凍えながら野垂れ死ぬのは御免なんだ!!」
カルラの手を振りほどいた旦那は、妻と一緒に階段を駆け下ります。
ですが、すぐにまた旦那の方がローに腕を掴まれて、階段の途中で立ち止まるしかなくなりました。
そこで漸く、カルラは、ロー達の存在に気づいたようで、驚いたように目を見開きました。
「なんだ…!?お前達に、引き留められる筋合いなんか——。」
「逃げるのはまだ早ぇ。」
ローは、怯える旦那に、ハッキリとそう告げました。