◇No.21◇夜が終わりました
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翌日も、ローは医学本に夢中になっていて、夕飯を食べ損ねていました。
壁掛けの時計の針は、10時を少し過ぎたところを指しています。
ですが、昼間に、ペンギンが今後の航路について相談しに来たときに、一度医学本を中断したおかげで、昼食は食べています。
普段なら、夕飯を抜くくらいは大したことなかったローですが、腹の辺りに少し触れると、医学本をデスクの上に置いて船長室を出ました。
向かったのは食堂ではなく、すぐ隣にある船員達の船室のあるフロアです。
まだ寝静まる時間ではないので、船室の向こうからは騒がしい声も聞こえていました。
一番奥の船室の扉の前でローは足を止めました。
料理を作ってもらおうと考えてやって来たローでしたが、この船室の住人は、コックではありません。
ここは、昨晩、とても美味しいおにぎりを作ったなまえの船室でした。
ノックすると、扉の向こうから「はい。」と返事が返ってきました。
ですが、待てど暮らせど、扉は開きませんし、扉の向こうで誰かが動く気配もありません。
自分で開けろ、ということのようです。
ローは、なまえの船室の扉を開きました。
船室の電気はついていましたが、なまえはベッドの上にいました。
仰向けで横になり、天井を見上げていて、扉が開いた後も微動だにしません。
ベッドの脇にローが立つと、ギョロリ、と大きな瞳だけがローの方へ動きました。
「…何やってんだ。」
「寝ています。」
「…いつもそんな風に寝てるのか。」
「はい。ローに、眠れなくてもベッドに入れと言われたので、
こうして天井を見上げながら、夜明けが来るのを待っています。」
「キツイ命令をして悪かったな。」
まさか、眠れない夜を、なまえがこんなにも無意味に過ごしていたとは知りませんでした。
ただ、仲間になったのですから、自分達と同じように朝動いて、夜に寝静まる生活をさせたかっただけでした。
そして、疲れを知らないのだとしても、少しは身体を休めて欲しかったのです。
ですが、そもそもロボットのなまえに、寝るということを無理やりさせるのは間違っていたのかもしれません。
「研究施設では、ひとりきりでずっと、ケージの格子越しに天井を見上げて夜が過ぎるのを待っていました。
ここでは、格子はありません。時々、仲間の声もします。
とても楽しい夜が過ぎていきます。」
なまえは真っすぐにローを見て答えます。
確かに、扉の向こうからは騒がしい海賊達の声がしていました。
でもそれもあと1,2時間もすれば聞こえなくなるでしょう。
それでも、研究施設にいた頃よりもずっといい——。
そう思いながらひとりきりの夜を、過去も今も過ごしていたのだと思うと、なんとも言えない気持ちになります。
「それで、ローはどうしましたか?一緒に寝ますか?」
「腹が減った。何か作れ。」
「そうですか。分かりました。」
なまえがスッと身体を起こしました。
そして、ベッドから降りると船室を出ながら言います。
「今夜も、おにぎりと焼き魚とお味噌汁ですね。
ローは、いつも同じものばかり食べています。偏食家です。」
「うるせぇ。」
なまえの後から船室を出たローは、口を尖らせて文句を言いながら、扉を閉めました。
壁掛けの時計の針は、10時を少し過ぎたところを指しています。
ですが、昼間に、ペンギンが今後の航路について相談しに来たときに、一度医学本を中断したおかげで、昼食は食べています。
普段なら、夕飯を抜くくらいは大したことなかったローですが、腹の辺りに少し触れると、医学本をデスクの上に置いて船長室を出ました。
向かったのは食堂ではなく、すぐ隣にある船員達の船室のあるフロアです。
まだ寝静まる時間ではないので、船室の向こうからは騒がしい声も聞こえていました。
一番奥の船室の扉の前でローは足を止めました。
料理を作ってもらおうと考えてやって来たローでしたが、この船室の住人は、コックではありません。
ここは、昨晩、とても美味しいおにぎりを作ったなまえの船室でした。
ノックすると、扉の向こうから「はい。」と返事が返ってきました。
ですが、待てど暮らせど、扉は開きませんし、扉の向こうで誰かが動く気配もありません。
自分で開けろ、ということのようです。
ローは、なまえの船室の扉を開きました。
船室の電気はついていましたが、なまえはベッドの上にいました。
仰向けで横になり、天井を見上げていて、扉が開いた後も微動だにしません。
ベッドの脇にローが立つと、ギョロリ、と大きな瞳だけがローの方へ動きました。
「…何やってんだ。」
「寝ています。」
「…いつもそんな風に寝てるのか。」
「はい。ローに、眠れなくてもベッドに入れと言われたので、
こうして天井を見上げながら、夜明けが来るのを待っています。」
「キツイ命令をして悪かったな。」
まさか、眠れない夜を、なまえがこんなにも無意味に過ごしていたとは知りませんでした。
ただ、仲間になったのですから、自分達と同じように朝動いて、夜に寝静まる生活をさせたかっただけでした。
そして、疲れを知らないのだとしても、少しは身体を休めて欲しかったのです。
ですが、そもそもロボットのなまえに、寝るということを無理やりさせるのは間違っていたのかもしれません。
「研究施設では、ひとりきりでずっと、ケージの格子越しに天井を見上げて夜が過ぎるのを待っていました。
ここでは、格子はありません。時々、仲間の声もします。
とても楽しい夜が過ぎていきます。」
なまえは真っすぐにローを見て答えます。
確かに、扉の向こうからは騒がしい海賊達の声がしていました。
でもそれもあと1,2時間もすれば聞こえなくなるでしょう。
それでも、研究施設にいた頃よりもずっといい——。
そう思いながらひとりきりの夜を、過去も今も過ごしていたのだと思うと、なんとも言えない気持ちになります。
「それで、ローはどうしましたか?一緒に寝ますか?」
「腹が減った。何か作れ。」
「そうですか。分かりました。」
なまえがスッと身体を起こしました。
そして、ベッドから降りると船室を出ながら言います。
「今夜も、おにぎりと焼き魚とお味噌汁ですね。
ローは、いつも同じものばかり食べています。偏食家です。」
「うるせぇ。」
なまえの後から船室を出たローは、口を尖らせて文句を言いながら、扉を閉めました。