◇No.18◇サミシイですか?
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春島に吹く柔らかい風に、少し肌寒さを感じるようになった頃、なまえは、細い路地裏にいました。
ハートの海賊団がこの島に上陸したのは、今朝のことです。
先日、船長であるローに言われていた通り、なまえはイッカクと共に船を降り、服や靴、日常生活に必要な様々なものを買いに行きました。
両手で抱えられないほどのショップ袋は、ベポとシャチがポーラータング号まで運んでくれたので、それから、なまえとイッカクは自由行動でした。
なまえのリクエストで本屋にやって来たまではよかったのですが、『愛について』の本を読み漁っているうちに、イッカクの姿が見えなくなっていたのです。
それになまえが気づいたのは、1時間程前でした。
下船時、ローから『イッカクから離れないように。』と指示を受けています。
本屋中を探し回り、それでも見つからず、街に出て来て30分程が経過しようとしていますが、イッカクはどこにもいません。
そして辿り着いたのが、裏通りをさらに奥に進んだところにあるこの細い路地裏の道でした。
「怪我をしていますか?」
ドラム缶の影に隠れて、子猫が震えていました。
大きな真っ黒な瞳がなまえを見上げますが、逃げる気配はありません。
前足に怪我をしているから、動けないのでしょう。
べっとりとついた血は、固まり出していて、白と茶の毛に絡まっています。
「ここにいたら危ないです。私と一緒に帰りましょう。
ベポが助けてくれます。」
なまえが手を差し伸べると、子猫はビクッと震えました。
ですが、逃げる脚力も気力もない子猫は、簡単になまえの手に捕らえられてしまいます。
腕の中にそっと抱きしめたなまえは、そこで漸く、子猫が震えていることに気が付きました。
「震えていますか?寒いんですか?」
心のないなまえには、恐怖で震えるということが分かりません。
ですが、温度を感じることは出来ませんが、気温によって人間が暑さや寒さを感じることは知っていました。
それに、実際、細い路地裏の上に見える細長い空は赤くなり始めていて、確かに風も冷たくなってきています。
怪我をしている子猫は、余計に寒かったかもしれません。
なまえは、一度、子猫をドラム缶の上に置くと、買ったばかりの白いカーディガンを脱ぎました。
そして、その白いカーディガンで子猫を包んでから、ゆっくりと抱き上げます。
「これで温かいですか?大丈夫ですか?」
なまえが訊ねると、子猫が大きな瞳で不安そうに見上げました。
「ミャァ…。」
弱々しい声で、子猫が答えました。
どうやら、なまえには敵意はないということは、理解したようです。
「そうですか。それは大変ですね。」
なまえが子猫の言葉を理解したのかは分かりません。
ですが、大きく頷きながら言って、なまえは来た道を戻って歩き出しました。
そして、細い路地裏を出たところで、声をかけられました。
「君、そんな薄暗いところで何してたの?若い女性が危ないよ。」
声をかけて来たのは、白いシャツの似合う爽やかな印象の若い男性でした。
「友達を探しに来ました。
それから、怪我をしている子猫を見つけました。」
「子猫?」
なまえに言われて、男性は初めて、腕の中に抱かれている子猫に気づいたようでした。
「怪我してたの?まだ子猫なのに、可哀想に…。」
男性が、なまえの腕の中に抱かれている子猫を覗き込んで、とても心配そうにしました。
新しく現れた人間が怖かったのか、子猫の震えが強くなりました。
なまえは、ガタガタと震える子猫を見下ろして訊ねます。
「どうしましたか?まだ寒いですか?」
「震えてるの?俺の診療所、この裏通りを抜けたところにあるんだ。
そこで、傷を診てから、温かいスープでも飲ませてあげよう。」
男性はそう言いながら、裏通りの向こうを指さしました。
なまえは、そんな男性の顔をジッと見てから、間をあけて答えました。
「・・・わかりました。あなたの診療所へ案内してください。」
「よかった。じゃあ、こっち。おいで。」
男性はホッとしたように頬むと、なまえの腰に腕を回して歩き出しました。
促されるようになまえも男性の隣を歩きます。
「俺の名前は、シンっていうんだ。今から行く診療所で医者をしてるんだよ。」
「はい、知ってます。」
「今日、初めて会ったのに?面白いね、君。」
爽やかな若い男性、シンがクスクスと笑います。
「君は?この島の娘じゃないだろう?」
「私の名前は、なまえです。海賊をしています。」
「海賊?君みたいな華奢で弱そうな子がそんなこと言っても
誰も信じないよ。君って本当に面白いね。」
シンは、堪えられない、とばかりにアハハと楽しそうに笑いました。
白い歯が覗いて輝いています。
「やぁ、シン!昨日はありがとな!お前のお陰で、身体もだいぶ楽になったぜ!」
「それはよかったです。もう無理しないでくださいよ。」
「あら、シン。今日はとても綺麗な娘を連れてるのね。恋人かしら?
島中の女の子達が泣くわね。」
「アハハ、違いますよ。そこで初めて会ったばかりなんです。
彼女が恋人になってくれたら、私も嬉しいですけどね。」
彼は、この島でも評判の好青年で、爽やかな若い医師でした。
なまえと一緒に歩いて診療所へ向かう途中も、島の住人達が彼に声をかけていました。
ハートの海賊団がこの島に上陸したのは、今朝のことです。
先日、船長であるローに言われていた通り、なまえはイッカクと共に船を降り、服や靴、日常生活に必要な様々なものを買いに行きました。
両手で抱えられないほどのショップ袋は、ベポとシャチがポーラータング号まで運んでくれたので、それから、なまえとイッカクは自由行動でした。
なまえのリクエストで本屋にやって来たまではよかったのですが、『愛について』の本を読み漁っているうちに、イッカクの姿が見えなくなっていたのです。
それになまえが気づいたのは、1時間程前でした。
下船時、ローから『イッカクから離れないように。』と指示を受けています。
本屋中を探し回り、それでも見つからず、街に出て来て30分程が経過しようとしていますが、イッカクはどこにもいません。
そして辿り着いたのが、裏通りをさらに奥に進んだところにあるこの細い路地裏の道でした。
「怪我をしていますか?」
ドラム缶の影に隠れて、子猫が震えていました。
大きな真っ黒な瞳がなまえを見上げますが、逃げる気配はありません。
前足に怪我をしているから、動けないのでしょう。
べっとりとついた血は、固まり出していて、白と茶の毛に絡まっています。
「ここにいたら危ないです。私と一緒に帰りましょう。
ベポが助けてくれます。」
なまえが手を差し伸べると、子猫はビクッと震えました。
ですが、逃げる脚力も気力もない子猫は、簡単になまえの手に捕らえられてしまいます。
腕の中にそっと抱きしめたなまえは、そこで漸く、子猫が震えていることに気が付きました。
「震えていますか?寒いんですか?」
心のないなまえには、恐怖で震えるということが分かりません。
ですが、温度を感じることは出来ませんが、気温によって人間が暑さや寒さを感じることは知っていました。
それに、実際、細い路地裏の上に見える細長い空は赤くなり始めていて、確かに風も冷たくなってきています。
怪我をしている子猫は、余計に寒かったかもしれません。
なまえは、一度、子猫をドラム缶の上に置くと、買ったばかりの白いカーディガンを脱ぎました。
そして、その白いカーディガンで子猫を包んでから、ゆっくりと抱き上げます。
「これで温かいですか?大丈夫ですか?」
なまえが訊ねると、子猫が大きな瞳で不安そうに見上げました。
「ミャァ…。」
弱々しい声で、子猫が答えました。
どうやら、なまえには敵意はないということは、理解したようです。
「そうですか。それは大変ですね。」
なまえが子猫の言葉を理解したのかは分かりません。
ですが、大きく頷きながら言って、なまえは来た道を戻って歩き出しました。
そして、細い路地裏を出たところで、声をかけられました。
「君、そんな薄暗いところで何してたの?若い女性が危ないよ。」
声をかけて来たのは、白いシャツの似合う爽やかな印象の若い男性でした。
「友達を探しに来ました。
それから、怪我をしている子猫を見つけました。」
「子猫?」
なまえに言われて、男性は初めて、腕の中に抱かれている子猫に気づいたようでした。
「怪我してたの?まだ子猫なのに、可哀想に…。」
男性が、なまえの腕の中に抱かれている子猫を覗き込んで、とても心配そうにしました。
新しく現れた人間が怖かったのか、子猫の震えが強くなりました。
なまえは、ガタガタと震える子猫を見下ろして訊ねます。
「どうしましたか?まだ寒いですか?」
「震えてるの?俺の診療所、この裏通りを抜けたところにあるんだ。
そこで、傷を診てから、温かいスープでも飲ませてあげよう。」
男性はそう言いながら、裏通りの向こうを指さしました。
なまえは、そんな男性の顔をジッと見てから、間をあけて答えました。
「・・・わかりました。あなたの診療所へ案内してください。」
「よかった。じゃあ、こっち。おいで。」
男性はホッとしたように頬むと、なまえの腰に腕を回して歩き出しました。
促されるようになまえも男性の隣を歩きます。
「俺の名前は、シンっていうんだ。今から行く診療所で医者をしてるんだよ。」
「はい、知ってます。」
「今日、初めて会ったのに?面白いね、君。」
爽やかな若い男性、シンがクスクスと笑います。
「君は?この島の娘じゃないだろう?」
「私の名前は、なまえです。海賊をしています。」
「海賊?君みたいな華奢で弱そうな子がそんなこと言っても
誰も信じないよ。君って本当に面白いね。」
シンは、堪えられない、とばかりにアハハと楽しそうに笑いました。
白い歯が覗いて輝いています。
「やぁ、シン!昨日はありがとな!お前のお陰で、身体もだいぶ楽になったぜ!」
「それはよかったです。もう無理しないでくださいよ。」
「あら、シン。今日はとても綺麗な娘を連れてるのね。恋人かしら?
島中の女の子達が泣くわね。」
「アハハ、違いますよ。そこで初めて会ったばかりなんです。
彼女が恋人になってくれたら、私も嬉しいですけどね。」
彼は、この島でも評判の好青年で、爽やかな若い医師でした。
なまえと一緒に歩いて診療所へ向かう途中も、島の住人達が彼に声をかけていました。