◇No.16◇女友達が出来ました
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その日、ベポはなまえを連れて甲板にやってきました。
釣りを知らないというので、教えてやろうと思ったのです。
青い空には雲ひとつなく、春島の柔らかい気候に入ったこともあり、ポーラータング号の甲板には、日向ぼっこをしている船員が多くいました。
ベポはなまえを船縁の方へと連れて行きます。
そこでは、数人の船員が既に船縁に座って釣りをしていました。
「隣いいか?」
ベポが声をかけると、釣りをしていた船員が振り返りました。
ハートの海賊団で、今まで唯一の女性だったイッカクです。
まぁ、今も、なまえを“女性”と表現してもいいのかは分かりませんが。
イッカクに話しかけたのは、口の悪い彼女ですが、同性ですし、何度かなまえも話したことのある船員なので、ハートの海賊団の仲間になった初めの一歩として仲良くなってくれたら——というベポの企みもあったからです。
「あぁ…、アンタか。
別に構わないけど。」
ベポの隣に立っているなまえを見て、イッカクが答えます。
釣り竿と餌箱を抱えていたので、なまえも釣りをするつもりなのだとすぐに理解したようです。
ベポは、敢えて、なまえをイッカクの隣に座らせました。そして、その隣にベポも座ります。
それから、なまえの釣り針に餌をつけてやり、釣り針の投げ方を教えてやりました。
後輩が出来たことが嬉しいのか、なまえのことがとにかく気に入っているベポは、とても面倒見のいい先輩に見えます。
2人が、イッカクの隣で釣りを始めて15分程が経過しました。
穏やかな波の音が聞こえています。
この暖かさと静かさは、お昼寝するのには、とても良さそうです。
分かりやすく言えば、小さな引きさえなく、釣れそうな雰囲気は皆無でした。
「聞いたよ。」
不意にイッカクが口を開きました。
視線は釣り糸の下がる先を見ていますが、なまえに声をかけたようでした。
元々姉御肌なところもありますから、誰も喋らない空気を変えようと思ったのかもしれません。
なまえがイッカクの方を向くと、それを待っていたように、彼女は続けました。
「キャプテンの危ないところを、アンタが助けてくれたんだってね。 」
「ローは、私にコートをかけてくれました。私の知る中で、世界一優しい人です。
恩返しは迷惑になってしまったので、もうしません。
これからは私が助けてあげます。私がローに手を差し伸べます。」
「へぇ。言うじゃん。」
イッカクの口の端が、無意識に上がって小さな笑みを作りました。
「キャプテンを呼び捨てしてんのは気に入らねぇけど。
その心意気は認めてやるよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「アンタのこと、勘違いしてたみたいだ。感心したよ。
少しだけ、だからな。調子には乗るなよ。」
素直ではないところがありますから、これでもイッカクにとっての精一杯のお褒めの言葉でした。
どうやら、頑なになまえを否定し続けていた彼女ですが、ローへの恩返しのために自分の身を犠牲にしようとしたことを知り、考えが変わったようです。
こうして隣で釣りをすることを許してくれているのですから、イッカクはなまえのことを『仲間』として認めてくれたということなのでしょう。
「はい、分かりました。」
なまえはイッカクの方を向いて答えます。
機械的なその返事に、イッカクは少しだけ眉を顰めました。
仲間と認めたからこそ、プログラムされた言葉を吐いただけのように聞こえるソレが気に入らなかったのです。
「アンタさ…、あぁ、なまえだったな。
で、アタシのことは覚えたわけ?」
「はい、覚えました。」
「なら、言ってみなよ。私の名前は?」
「ハートの海賊団、その他大勢です。」
「はァァァァァアアッ!?てめぇ、もう一度言ってみやがれ!!」
以前と全く変わらない失礼な認識に、短気なイッカクがブチギレました。
飛び上がるように立ち上がったイッカクは、身体を屈めてなまえの胸ぐらを掴み上げます。
強引に顔を上に向けさせられたなまえを、イッカクが怖い顔で睨みました。
せっかく、なまえのことを認めようとしてくれていたのに、全てが水の泡になってはいけません。
ベポが慌てて立ち上がり、イッカクの肩を掴んで止めに入ります。
「違うんだよ!!なまえも悪気があったわけじゃなくて…っ。」
「悪気がなかったら、何言ってもいいってのか!?」
「そうじゃなくて…っ。ほら、なまえも謝って!!」
「謝る理由がありません。」
「クッソ!!コイツ、アタシをどんだけバカにしたら気が済むんだ!?
少し褒めてやったら、調子に乗りやがっ・・・・・!?」
なまえの顔を殴ろうとした途端、イッカクは船縁の上で足を滑らせてしまいました。
あ——、と思ったときにはもう、彼女の身体は船の外へ弾き飛ばされていました。
「イッカ——。」
「ハートの海賊団、その他大勢!!!」
ベポよりも先に、なまえがイッカクに手を伸ばして叫びました。
でも、あと数センチ届かずに、イッカクの身体は背中から海へと落ちていきます。
そして、大きな水飛沫が上がり、イッカクの姿は海の中へと消えて、見えなくなってしまいました。
「ハートの大勢!!!」
そう叫んだなまえは、ベポが止める暇もなく、海へ飛び込んでしまいました。
機械である彼女が『ハートの海賊団、その他大勢』ときちんと言えなかったくらいですから、電子回路が間に合わないくらいに、彼女は焦っていたのでしょう。
大切な仲間が、海に飲み込まれてしまったから——。
釣りを知らないというので、教えてやろうと思ったのです。
青い空には雲ひとつなく、春島の柔らかい気候に入ったこともあり、ポーラータング号の甲板には、日向ぼっこをしている船員が多くいました。
ベポはなまえを船縁の方へと連れて行きます。
そこでは、数人の船員が既に船縁に座って釣りをしていました。
「隣いいか?」
ベポが声をかけると、釣りをしていた船員が振り返りました。
ハートの海賊団で、今まで唯一の女性だったイッカクです。
まぁ、今も、なまえを“女性”と表現してもいいのかは分かりませんが。
イッカクに話しかけたのは、口の悪い彼女ですが、同性ですし、何度かなまえも話したことのある船員なので、ハートの海賊団の仲間になった初めの一歩として仲良くなってくれたら——というベポの企みもあったからです。
「あぁ…、アンタか。
別に構わないけど。」
ベポの隣に立っているなまえを見て、イッカクが答えます。
釣り竿と餌箱を抱えていたので、なまえも釣りをするつもりなのだとすぐに理解したようです。
ベポは、敢えて、なまえをイッカクの隣に座らせました。そして、その隣にベポも座ります。
それから、なまえの釣り針に餌をつけてやり、釣り針の投げ方を教えてやりました。
後輩が出来たことが嬉しいのか、なまえのことがとにかく気に入っているベポは、とても面倒見のいい先輩に見えます。
2人が、イッカクの隣で釣りを始めて15分程が経過しました。
穏やかな波の音が聞こえています。
この暖かさと静かさは、お昼寝するのには、とても良さそうです。
分かりやすく言えば、小さな引きさえなく、釣れそうな雰囲気は皆無でした。
「聞いたよ。」
不意にイッカクが口を開きました。
視線は釣り糸の下がる先を見ていますが、なまえに声をかけたようでした。
元々姉御肌なところもありますから、誰も喋らない空気を変えようと思ったのかもしれません。
なまえがイッカクの方を向くと、それを待っていたように、彼女は続けました。
「キャプテンの危ないところを、アンタが助けてくれたんだってね。 」
「ローは、私にコートをかけてくれました。私の知る中で、世界一優しい人です。
恩返しは迷惑になってしまったので、もうしません。
これからは私が助けてあげます。私がローに手を差し伸べます。」
「へぇ。言うじゃん。」
イッカクの口の端が、無意識に上がって小さな笑みを作りました。
「キャプテンを呼び捨てしてんのは気に入らねぇけど。
その心意気は認めてやるよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「アンタのこと、勘違いしてたみたいだ。感心したよ。
少しだけ、だからな。調子には乗るなよ。」
素直ではないところがありますから、これでもイッカクにとっての精一杯のお褒めの言葉でした。
どうやら、頑なになまえを否定し続けていた彼女ですが、ローへの恩返しのために自分の身を犠牲にしようとしたことを知り、考えが変わったようです。
こうして隣で釣りをすることを許してくれているのですから、イッカクはなまえのことを『仲間』として認めてくれたということなのでしょう。
「はい、分かりました。」
なまえはイッカクの方を向いて答えます。
機械的なその返事に、イッカクは少しだけ眉を顰めました。
仲間と認めたからこそ、プログラムされた言葉を吐いただけのように聞こえるソレが気に入らなかったのです。
「アンタさ…、あぁ、なまえだったな。
で、アタシのことは覚えたわけ?」
「はい、覚えました。」
「なら、言ってみなよ。私の名前は?」
「ハートの海賊団、その他大勢です。」
「はァァァァァアアッ!?てめぇ、もう一度言ってみやがれ!!」
以前と全く変わらない失礼な認識に、短気なイッカクがブチギレました。
飛び上がるように立ち上がったイッカクは、身体を屈めてなまえの胸ぐらを掴み上げます。
強引に顔を上に向けさせられたなまえを、イッカクが怖い顔で睨みました。
せっかく、なまえのことを認めようとしてくれていたのに、全てが水の泡になってはいけません。
ベポが慌てて立ち上がり、イッカクの肩を掴んで止めに入ります。
「違うんだよ!!なまえも悪気があったわけじゃなくて…っ。」
「悪気がなかったら、何言ってもいいってのか!?」
「そうじゃなくて…っ。ほら、なまえも謝って!!」
「謝る理由がありません。」
「クッソ!!コイツ、アタシをどんだけバカにしたら気が済むんだ!?
少し褒めてやったら、調子に乗りやがっ・・・・・!?」
なまえの顔を殴ろうとした途端、イッカクは船縁の上で足を滑らせてしまいました。
あ——、と思ったときにはもう、彼女の身体は船の外へ弾き飛ばされていました。
「イッカ——。」
「ハートの海賊団、その他大勢!!!」
ベポよりも先に、なまえがイッカクに手を伸ばして叫びました。
でも、あと数センチ届かずに、イッカクの身体は背中から海へと落ちていきます。
そして、大きな水飛沫が上がり、イッカクの姿は海の中へと消えて、見えなくなってしまいました。
「ハートの大勢!!!」
そう叫んだなまえは、ベポが止める暇もなく、海へ飛び込んでしまいました。
機械である彼女が『ハートの海賊団、その他大勢』ときちんと言えなかったくらいですから、電子回路が間に合わないくらいに、彼女は焦っていたのでしょう。
大切な仲間が、海に飲み込まれてしまったから——。