◇No.11◇彼らは自由ではありません
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ロボットの犬を散歩させている男の子が、ベポの横を駆け抜けていきました。
魚屋に出来ている人だかりをシャチが覗きに行けば、ハチマキを巻いたロボットがマグロの解体ショーをしているところだったようです。
そこは、とても活気に満ち溢れた島でした。
いたるところで、ロボットが生き生きと働いていて、街を行き交う人間達もみんな笑顔です。
この島にいるロボットのほとんどは、メタリック色のいかにもロボットで、働き先によっていろんな形をしていました。
なまえのように人間の姿をしているものも少しはいるようでしたが、やはり、どこかロボット感があります。
ですが、人間の生活の中にロボット達はとても自然に馴染んでいました。
ロボットが人間と共に生きているという噂は本当だったようです。
「やっぱりここにしてよかった!なまえ、今日からここで元気に暮らせよ!」
「はい、これからは自由に生きます。」
「それがいい!!」
ベポがニシシッと笑います。
その隣を歩くなまえも首を左右に動かして、街で生きているロボットや人間達を観察しているようでした。
機械仕掛けの島に上陸したのは、ここで下船する約束のなまえ以外に、ベポとペンギンとシャチ、そして、ローも一緒です。
予定では、島に到着した時点でなまえだけを降ろすはずでした。
海兵やCP0からの追ってがやって来ている可能性があったからです。
しかし、なまえがこれから生きていくかもしれない島をちゃんと自分の目で確かめたいというベポの強い希望に負けたローにより、上陸するのは少人数の自分達だけという条件で許可が下りたのです。
一応、先に偵察部隊を島に降ろし、海兵やCP0が待ち伏せはしていないのは確認済みです。
ベポは、彼女がここで生きていくために働く場所を見つけてやりたいと言っています。
それでも、ローは、出来るだけ早くなまえをどこかに預けて船に戻りたいと考えていました。
「ここにいるロボットは自由ですか?」
「自由なんじゃねぇのか。」
ペンギンが答えると、なまえは「そうですか。」と頷きます。
そして、また視線を忙しなく動かして街で働くロボット達の観察を始めました。
自由に生きるということを知らないなまえは、彼らの生きている姿を見て彼女なりに自由に生きるということを学ぼうとしているのかもしれません。
少し歩いていると、小さな喫茶店がありました。
看板も扉も古い木で出来ています。お洒落な古木というよりも、経年劣化で古くなってしまったとう感じです。
きちんと掃除もしていないのか、窓は白く濁っていて中の様子を確認することは出来ません。
あまり繁盛しているようには見えませんでしたが、ベポ達がその小さな喫茶店に興味を持ったのは、古い扉に貼紙がしてあったからです。
≪ウェイトレス募集。住み込みあり。≫
喫茶店の古い扉にはそう書かれていました。
これは、今からここで生きていこうとしているなまえにとってはとても嬉しい募集です。
ペンギンが、今にも外れてしまいそうな壊れかけの扉をゆっくりと開くと、キキキーッと錆たような耳に痛い音が聞こえました。
順番ずつに中に入ったペンギン達は、店内を見渡しますが、外観の印象とあまり変わりませんでした。
広いとは言えない店内に、カウンター席が5つとテーブル席が2つありました。
掃除は行き届いていないようで、とても埃っぽいです。
一応、カウンターには花瓶を飾っているようですが、ちゃんと水をやっていないのか、萎れた白い花が首をもたげています。
壁際にある棚には、水槽も置いていました。
それなりに大きくて立派な水槽でしたが、白カビでガラスが曇っているし、水も入れ替えていないのか濁っています。
なんとか目を凝らして水槽の中を覗いて、漸く、熱帯魚の姿が確認出来る程度です。
「いらっしゃい!!」
カウンターの奥からカフェのオーナーと思われる小柄な男性が出て来ました。
歳はそこそこいっているようですが、気さくな雰囲気の人の良さそうなおじさんです。
「そこのテーブル席で良いですか?」
「いや、俺達は客じゃねぇんだ。」
「客じゃない?じゃあ、一体、何だって言うんだい?」
ペンギンが答えると、おじさんはあからさまに眉を顰めて、不審そうにジロジロと見始めました。
そのときです。
ベポが驚いた様子で叫びました。
「なまえ、何やってるの!?」
慌てて駆け寄ったベポの先では、なまえが棚に置かれていた水槽を両手で抱えて持ち上げていました。
それを見て一番驚いたのは、店のオーナーのおじさんでした。
「あんた!!何やってんだ!!!!熱帯魚泥棒か!!!」
おじさんは真面目に叫んでいましたが、もしも本当に熱帯魚泥棒なら、さすがにこんなに堂々と盗みません。
なまえは水槽を抱えたままで、自分の元へ駆け寄って来たベポを見上げて口を開きました。
「ポーラータング号から見た魚達は、海を自由に泳いでいました。
ここの魚は檻にいます。彼らは自由ではありません。
今から海に連れていきます。海で自由に生きなければなりません。」
そういうことかとベポはなまえの行動を納得しましたが、オーナーのおじさんはそうはなりません。
怖い顔をしてなまえの元へ駆け寄ります。
そして、なまえから水槽を奪い返そうとしました。
「何言ってんだ!!それはうちの大事な熱帯魚なんだ!!!
返しなさい!!」
「海に帰しますか?」
「そんなわけないだろ!!私に返しなさい!!」
「それではダメです。海に帰します。彼らは自由に生きます。」
「アンタ、頭がおかしいのか!?いいから返しなさい!!」
なまえとオーナーのおじさんが、水槽を挟んで、返せ、返さないの攻防が繰り広げます。
女性だからすぐに取り返せると思ったのかもしれませんが、なまえはロボットで、しかも、殺人兵器です。
とても強い力を持っています。
なまえが片手で大きな水槽を持ち上げてしまったので、小柄なおじさんは手が届かなくなってしまいました。
必死にジャンプをしますが、どうしても届きません。
小柄なおじさんが、必死にジャンプして水槽に触れようとしている姿は、傍から見るととても可愛いのですが、それを愉しんでいる時間は、ロー達にはありません。
「なまえ、水槽を棚に上に戻せ。」
ローが命令を出すと、なまえが水槽を持ち上げたままで視線を向けました。
「…どうしてですか?彼らは檻にいます。」
「それがソイツらの運命だ。お前がどうこうすることじゃねぇ。」
「運命とは何ですか?濁った水と汚い檻の中で一生を終えるために生まれたということですか?」
「そうだ。ソイツラはそれでいい。」
「…分かりました。」
なまえが納得したのかはわかりません。
ですが、今日もなまえはローの命令に充実でした。
持ち上げていた水槽を棚の上に戻すと、オーナーのおじさんが安心したように息を吐きました。
「それで、アンタ達は一体何しに来たんだ?」
「この娘をここでウェイトレスとして働かせてあげてほしいんだ。」
「はぁ?」
ベポの答えに、オーナーのおじさんが思いっきり眉を顰めます。
それも仕方がないのかもしれません。
だって、今まさに、このカフェにとって迷惑なことをしようとしていたのがなまえなのですから。
それにー。
「うちは人間はお断りだよ。ロボットを雇いたいんだ。」
「その娘、ロボットなんだ。」
「全く、もっとマシな嘘はつけないのかね。」
オーナーのおじさんが呆れたように息を吐きます。
なまえがロボットだと信じられないのは、想定済みです。
だって、どこからどう見てもなまえは人間ですし、ベポ達でさえも、時々、本物の人間の女性に見えてしまうくらいですから。
ですが、なまえは正真正銘のロボットです。
それを証明するために、数日前にロー達にも見せた様に右手を銃に変えてもらいました。
これで、この店に悪いやつらがやって来たときの用心棒にもなるというベポ渾身のアピールがうまくいったのかはわかりませんが、なまえがロボットだと信じたおじさんは、即採用してくれました。
「それじゃ、元気でね。」
「はい、お世話になりました。」
頭を下げたなまえに、ベポは小さく手を振りました。
初めて見た本格的なロボットでしたし、ここ数日はずっとそばにいましたから、少しだけ、寂しかったかもしれません。
でも、一緒にいることをローは許してはくれないでしょうし、仲間達の身を危険に晒すことはベポも望んではいません。
それに、せっかく研究所から逃げて来たのですから、これからは楽しく生活して欲しいとも思っていました。
海賊と一緒に生活して、海兵達に追いかけられる理由を付け加える必要はないのです。
ここで別れるのが、お互いに良いことなのだと納得していました。
魚屋に出来ている人だかりをシャチが覗きに行けば、ハチマキを巻いたロボットがマグロの解体ショーをしているところだったようです。
そこは、とても活気に満ち溢れた島でした。
いたるところで、ロボットが生き生きと働いていて、街を行き交う人間達もみんな笑顔です。
この島にいるロボットのほとんどは、メタリック色のいかにもロボットで、働き先によっていろんな形をしていました。
なまえのように人間の姿をしているものも少しはいるようでしたが、やはり、どこかロボット感があります。
ですが、人間の生活の中にロボット達はとても自然に馴染んでいました。
ロボットが人間と共に生きているという噂は本当だったようです。
「やっぱりここにしてよかった!なまえ、今日からここで元気に暮らせよ!」
「はい、これからは自由に生きます。」
「それがいい!!」
ベポがニシシッと笑います。
その隣を歩くなまえも首を左右に動かして、街で生きているロボットや人間達を観察しているようでした。
機械仕掛けの島に上陸したのは、ここで下船する約束のなまえ以外に、ベポとペンギンとシャチ、そして、ローも一緒です。
予定では、島に到着した時点でなまえだけを降ろすはずでした。
海兵やCP0からの追ってがやって来ている可能性があったからです。
しかし、なまえがこれから生きていくかもしれない島をちゃんと自分の目で確かめたいというベポの強い希望に負けたローにより、上陸するのは少人数の自分達だけという条件で許可が下りたのです。
一応、先に偵察部隊を島に降ろし、海兵やCP0が待ち伏せはしていないのは確認済みです。
ベポは、彼女がここで生きていくために働く場所を見つけてやりたいと言っています。
それでも、ローは、出来るだけ早くなまえをどこかに預けて船に戻りたいと考えていました。
「ここにいるロボットは自由ですか?」
「自由なんじゃねぇのか。」
ペンギンが答えると、なまえは「そうですか。」と頷きます。
そして、また視線を忙しなく動かして街で働くロボット達の観察を始めました。
自由に生きるということを知らないなまえは、彼らの生きている姿を見て彼女なりに自由に生きるということを学ぼうとしているのかもしれません。
少し歩いていると、小さな喫茶店がありました。
看板も扉も古い木で出来ています。お洒落な古木というよりも、経年劣化で古くなってしまったとう感じです。
きちんと掃除もしていないのか、窓は白く濁っていて中の様子を確認することは出来ません。
あまり繁盛しているようには見えませんでしたが、ベポ達がその小さな喫茶店に興味を持ったのは、古い扉に貼紙がしてあったからです。
≪ウェイトレス募集。住み込みあり。≫
喫茶店の古い扉にはそう書かれていました。
これは、今からここで生きていこうとしているなまえにとってはとても嬉しい募集です。
ペンギンが、今にも外れてしまいそうな壊れかけの扉をゆっくりと開くと、キキキーッと錆たような耳に痛い音が聞こえました。
順番ずつに中に入ったペンギン達は、店内を見渡しますが、外観の印象とあまり変わりませんでした。
広いとは言えない店内に、カウンター席が5つとテーブル席が2つありました。
掃除は行き届いていないようで、とても埃っぽいです。
一応、カウンターには花瓶を飾っているようですが、ちゃんと水をやっていないのか、萎れた白い花が首をもたげています。
壁際にある棚には、水槽も置いていました。
それなりに大きくて立派な水槽でしたが、白カビでガラスが曇っているし、水も入れ替えていないのか濁っています。
なんとか目を凝らして水槽の中を覗いて、漸く、熱帯魚の姿が確認出来る程度です。
「いらっしゃい!!」
カウンターの奥からカフェのオーナーと思われる小柄な男性が出て来ました。
歳はそこそこいっているようですが、気さくな雰囲気の人の良さそうなおじさんです。
「そこのテーブル席で良いですか?」
「いや、俺達は客じゃねぇんだ。」
「客じゃない?じゃあ、一体、何だって言うんだい?」
ペンギンが答えると、おじさんはあからさまに眉を顰めて、不審そうにジロジロと見始めました。
そのときです。
ベポが驚いた様子で叫びました。
「なまえ、何やってるの!?」
慌てて駆け寄ったベポの先では、なまえが棚に置かれていた水槽を両手で抱えて持ち上げていました。
それを見て一番驚いたのは、店のオーナーのおじさんでした。
「あんた!!何やってんだ!!!!熱帯魚泥棒か!!!」
おじさんは真面目に叫んでいましたが、もしも本当に熱帯魚泥棒なら、さすがにこんなに堂々と盗みません。
なまえは水槽を抱えたままで、自分の元へ駆け寄って来たベポを見上げて口を開きました。
「ポーラータング号から見た魚達は、海を自由に泳いでいました。
ここの魚は檻にいます。彼らは自由ではありません。
今から海に連れていきます。海で自由に生きなければなりません。」
そういうことかとベポはなまえの行動を納得しましたが、オーナーのおじさんはそうはなりません。
怖い顔をしてなまえの元へ駆け寄ります。
そして、なまえから水槽を奪い返そうとしました。
「何言ってんだ!!それはうちの大事な熱帯魚なんだ!!!
返しなさい!!」
「海に帰しますか?」
「そんなわけないだろ!!私に返しなさい!!」
「それではダメです。海に帰します。彼らは自由に生きます。」
「アンタ、頭がおかしいのか!?いいから返しなさい!!」
なまえとオーナーのおじさんが、水槽を挟んで、返せ、返さないの攻防が繰り広げます。
女性だからすぐに取り返せると思ったのかもしれませんが、なまえはロボットで、しかも、殺人兵器です。
とても強い力を持っています。
なまえが片手で大きな水槽を持ち上げてしまったので、小柄なおじさんは手が届かなくなってしまいました。
必死にジャンプをしますが、どうしても届きません。
小柄なおじさんが、必死にジャンプして水槽に触れようとしている姿は、傍から見るととても可愛いのですが、それを愉しんでいる時間は、ロー達にはありません。
「なまえ、水槽を棚に上に戻せ。」
ローが命令を出すと、なまえが水槽を持ち上げたままで視線を向けました。
「…どうしてですか?彼らは檻にいます。」
「それがソイツらの運命だ。お前がどうこうすることじゃねぇ。」
「運命とは何ですか?濁った水と汚い檻の中で一生を終えるために生まれたということですか?」
「そうだ。ソイツラはそれでいい。」
「…分かりました。」
なまえが納得したのかはわかりません。
ですが、今日もなまえはローの命令に充実でした。
持ち上げていた水槽を棚の上に戻すと、オーナーのおじさんが安心したように息を吐きました。
「それで、アンタ達は一体何しに来たんだ?」
「この娘をここでウェイトレスとして働かせてあげてほしいんだ。」
「はぁ?」
ベポの答えに、オーナーのおじさんが思いっきり眉を顰めます。
それも仕方がないのかもしれません。
だって、今まさに、このカフェにとって迷惑なことをしようとしていたのがなまえなのですから。
それにー。
「うちは人間はお断りだよ。ロボットを雇いたいんだ。」
「その娘、ロボットなんだ。」
「全く、もっとマシな嘘はつけないのかね。」
オーナーのおじさんが呆れたように息を吐きます。
なまえがロボットだと信じられないのは、想定済みです。
だって、どこからどう見てもなまえは人間ですし、ベポ達でさえも、時々、本物の人間の女性に見えてしまうくらいですから。
ですが、なまえは正真正銘のロボットです。
それを証明するために、数日前にロー達にも見せた様に右手を銃に変えてもらいました。
これで、この店に悪いやつらがやって来たときの用心棒にもなるというベポ渾身のアピールがうまくいったのかはわかりませんが、なまえがロボットだと信じたおじさんは、即採用してくれました。
「それじゃ、元気でね。」
「はい、お世話になりました。」
頭を下げたなまえに、ベポは小さく手を振りました。
初めて見た本格的なロボットでしたし、ここ数日はずっとそばにいましたから、少しだけ、寂しかったかもしれません。
でも、一緒にいることをローは許してはくれないでしょうし、仲間達の身を危険に晒すことはベポも望んではいません。
それに、せっかく研究所から逃げて来たのですから、これからは楽しく生活して欲しいとも思っていました。
海賊と一緒に生活して、海兵達に追いかけられる理由を付け加える必要はないのです。
ここで別れるのが、お互いに良いことなのだと納得していました。