◇No.10◇恩返しをしているところです
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お昼過ぎ、航海士室で仕事をしているベポの隣に座っていたなまえをローが呼び出しました。
今朝の食堂での出来事から、ローには良い考えがあったのです。
そして、船長室に連れて来ると、なまえを本棚の前に立たせました。
「ここにある以外の医学関連の本と文献のタイトルは全部分かるか?」
「はい、分かります。」
「なら、それをすべてここに書き出せ。」
ローは、なまえに大量の紙と羽ペンを渡して、命令しました。
「はい、分かりました。」
紙と羽ペンを受け取り、なまえは素直に命令を受け入れました。
デスクを使ってもいいと許可を貰った彼女は、早速、作業に取り掛かります。
今朝は最上級に機嫌の悪かったローは、ご機嫌でソファに腰を降ろしてなまえが復元した医学本を読み始めました。
羽ペンが走り、紙がこすれる音がする度に、ローの口の端は無意識に上がっていきます。
前回の島では、せっかくずっと欲しいと思っていた医学本を最高の本屋で手に入れたのに、なまえを助けるときにベポが落として失くしてしまっていました。
それ以外にもまだまだ欲しい医学本もありましたから、またベポに医学本に強い島を探させようと考えていたのです。
それが、島に行かずに手に入るのですから、ご機嫌にならないわけがありません。
なまえに医学に関する本や文献の書き出しを命令してから、どれくらいが経ったでしょうか。
船長室の扉を誰かがノックしました。
医学本から顔を上げたローの許可を得て入って来たのは、ペンギンとシャチでした。
彼らは、デスクでひたすら羽ペンを走らせているなまえの背中を見つけて驚いた顔をしました。
「気にしなくていい。それで、調べたんだろう?
結果はどうだった?」
「えっと…。」
「故障して取り出した箇所については、GPSらしいものは見つからなかったみたいです。
世界政府がこのような事態を想定していたかは分かりませんが、
自慢の殺人兵器の居場所は常に把握していたいでしょうから、
どこかに必ずGPSは埋め込まれているはずだって。」
シャチはチラチラとなまえの背中を見て気にしていましたが、ペンギンはハッキリと答えました。
船長室がいくら広いとは言っても、なまえにその説明が聞こえていないはずはありません。
ですが、彼女がそれに反応することはありませんでした。
「分かった。とりあえず、2日後には島に着く。
そこでコイツを降ろしたら、すぐにその場を離れられるように
他の船員にも伝えておけ。」
「分かりました。」
ペンギンが頷きます。
その隣に立っているシャチは、好奇心が止まらない様子でなまえに声をかけました。
「なぁ、お前、今朝面白いことしたんだろ?
今は何してんだ?」
シャチの大きな声はしっかりなまえに聞こえたはずですが、彼女からは反応がありません。
なぁ!と何度も声をかけますが、駄目です。
その理由に心当たりのあったローが、代わりに声をかけました。
「なまえ、お前に話しかけてるんだ。」
「はい、何でしょうか?」
ローに名前を呼ばれると、なまえが後ろを振り返りました。
「そっか!名前を呼べばよかったんだな!
おい、なまえ!!」
「はい、何でしょうか?」
返事をしてくれたことが嬉しくて、シャチは駆け足でデスクの方へ向かいました。
「なぁ、なまえ。何をしてるんだ?」
「この部屋にある以外のすべての医学関連の書籍をここに書き出しています。」
なまえは、書き終えた紙をまとめてシャチに見せました。
難しい文字や数字の並ぶばかりの紙を覗き込んだシャチは「うへぇ。」と情けない声を漏らしました。
そこへペンギンもやってきて、なまえが持っている紙を手に取って1枚1枚を確認すると、驚いた様子で口を開きます。
「すごいですね。」
「だよな!ウニ達から聞いてたけど、マジで世界中の本を暗記してるなんて驚きだぜ!」
「そっちじゃねぇよ。コレは世界政府が海賊用に作った殺人兵器だぞ。
逃亡するためにプログラムを書きかえられたと言っても、抹殺対象のキャプテンの命令を
こんなに素直にきくなんて、信じられねぇ。今朝もキャプテンを守ったって言うし。」
「あぁ…!それもそうだな!
なんだ、お前。もしかして、キャプテンに惚れてんのか?」
ペンギンの驚きの理由に納得したシャチが、なまえに訊ねました。
本気なのか冗談なのか分かりませんが、自慢の船長が女性にモテることは船員全員が知ることです。
ですから、機械だとしても女性の姿をしている彼女がローに惚れてしまっても不思議ではないと本気で思ったのかもしれません。
「天才博士から、かけられた優しさには、相応のお返しが必要だと教わりました。
私は今、お返しをしているところです。」
なまえが真面目に答えます。
どうやら彼女は、海兵やCP0から追いかけられた挙句にショートを起こして倒れた自分を助けてくれたローに、恩返しをしようとしているようでした。
それならー。
シャチがニッと笑いました。
「わざわざ言ってなかったけどよ!お前の壊れた身体を直したのは
俺達なんだぜ!!」
シャチが自慢気に言いました。
確かに、修理をしているダイとカイの手伝いはしました。
しかし、今の言い方では、まるでシャチがメインになって修理をしたみたいです。
大袈裟に言って何かお返しを期待しているキラキラのシャチの目を、ペンギンの冷めた横目が流します。
ローにいたっては、勝手にしろという様子で、また医学本を読み始めました。
「そうですか。お疲れさまでした。」
なまえはとても真面目にそう言うと、またデスクに向かいました。
それから何度も自分が助けたんだと熱弁しても釣れないなまえの背中に、シャチは頭を抱えて文句を叫び出しました。
どうやら、彼女は、自分の身体を修理してくれたことに対しては、恩を返すつもりはないようです。
「助けたことじゃないのか?」
ペンギンは顎を擦って呟きます。
身体を修理したことは恩返しに入らないのだとしたら、ローの命令に従い、守ろうとまでした理由は何なのでしょうか。
でも、考えられるのはひとつしかありません。
自分を助けた船の船長を、彼女がきちんと理解しているということです。
彼女はこの船の代表に、恩を返そうとしているのでしょう。
だって、確かに、自慢の船長であるローは女性にモテますし、同性から見てもカッコいい男です。
でもまさか、シャチが言っていたように、機械が人間に恋をするなんて、ありえませんから。
今朝の食堂での出来事から、ローには良い考えがあったのです。
そして、船長室に連れて来ると、なまえを本棚の前に立たせました。
「ここにある以外の医学関連の本と文献のタイトルは全部分かるか?」
「はい、分かります。」
「なら、それをすべてここに書き出せ。」
ローは、なまえに大量の紙と羽ペンを渡して、命令しました。
「はい、分かりました。」
紙と羽ペンを受け取り、なまえは素直に命令を受け入れました。
デスクを使ってもいいと許可を貰った彼女は、早速、作業に取り掛かります。
今朝は最上級に機嫌の悪かったローは、ご機嫌でソファに腰を降ろしてなまえが復元した医学本を読み始めました。
羽ペンが走り、紙がこすれる音がする度に、ローの口の端は無意識に上がっていきます。
前回の島では、せっかくずっと欲しいと思っていた医学本を最高の本屋で手に入れたのに、なまえを助けるときにベポが落として失くしてしまっていました。
それ以外にもまだまだ欲しい医学本もありましたから、またベポに医学本に強い島を探させようと考えていたのです。
それが、島に行かずに手に入るのですから、ご機嫌にならないわけがありません。
なまえに医学に関する本や文献の書き出しを命令してから、どれくらいが経ったでしょうか。
船長室の扉を誰かがノックしました。
医学本から顔を上げたローの許可を得て入って来たのは、ペンギンとシャチでした。
彼らは、デスクでひたすら羽ペンを走らせているなまえの背中を見つけて驚いた顔をしました。
「気にしなくていい。それで、調べたんだろう?
結果はどうだった?」
「えっと…。」
「故障して取り出した箇所については、GPSらしいものは見つからなかったみたいです。
世界政府がこのような事態を想定していたかは分かりませんが、
自慢の殺人兵器の居場所は常に把握していたいでしょうから、
どこかに必ずGPSは埋め込まれているはずだって。」
シャチはチラチラとなまえの背中を見て気にしていましたが、ペンギンはハッキリと答えました。
船長室がいくら広いとは言っても、なまえにその説明が聞こえていないはずはありません。
ですが、彼女がそれに反応することはありませんでした。
「分かった。とりあえず、2日後には島に着く。
そこでコイツを降ろしたら、すぐにその場を離れられるように
他の船員にも伝えておけ。」
「分かりました。」
ペンギンが頷きます。
その隣に立っているシャチは、好奇心が止まらない様子でなまえに声をかけました。
「なぁ、お前、今朝面白いことしたんだろ?
今は何してんだ?」
シャチの大きな声はしっかりなまえに聞こえたはずですが、彼女からは反応がありません。
なぁ!と何度も声をかけますが、駄目です。
その理由に心当たりのあったローが、代わりに声をかけました。
「なまえ、お前に話しかけてるんだ。」
「はい、何でしょうか?」
ローに名前を呼ばれると、なまえが後ろを振り返りました。
「そっか!名前を呼べばよかったんだな!
おい、なまえ!!」
「はい、何でしょうか?」
返事をしてくれたことが嬉しくて、シャチは駆け足でデスクの方へ向かいました。
「なぁ、なまえ。何をしてるんだ?」
「この部屋にある以外のすべての医学関連の書籍をここに書き出しています。」
なまえは、書き終えた紙をまとめてシャチに見せました。
難しい文字や数字の並ぶばかりの紙を覗き込んだシャチは「うへぇ。」と情けない声を漏らしました。
そこへペンギンもやってきて、なまえが持っている紙を手に取って1枚1枚を確認すると、驚いた様子で口を開きます。
「すごいですね。」
「だよな!ウニ達から聞いてたけど、マジで世界中の本を暗記してるなんて驚きだぜ!」
「そっちじゃねぇよ。コレは世界政府が海賊用に作った殺人兵器だぞ。
逃亡するためにプログラムを書きかえられたと言っても、抹殺対象のキャプテンの命令を
こんなに素直にきくなんて、信じられねぇ。今朝もキャプテンを守ったって言うし。」
「あぁ…!それもそうだな!
なんだ、お前。もしかして、キャプテンに惚れてんのか?」
ペンギンの驚きの理由に納得したシャチが、なまえに訊ねました。
本気なのか冗談なのか分かりませんが、自慢の船長が女性にモテることは船員全員が知ることです。
ですから、機械だとしても女性の姿をしている彼女がローに惚れてしまっても不思議ではないと本気で思ったのかもしれません。
「天才博士から、かけられた優しさには、相応のお返しが必要だと教わりました。
私は今、お返しをしているところです。」
なまえが真面目に答えます。
どうやら彼女は、海兵やCP0から追いかけられた挙句にショートを起こして倒れた自分を助けてくれたローに、恩返しをしようとしているようでした。
それならー。
シャチがニッと笑いました。
「わざわざ言ってなかったけどよ!お前の壊れた身体を直したのは
俺達なんだぜ!!」
シャチが自慢気に言いました。
確かに、修理をしているダイとカイの手伝いはしました。
しかし、今の言い方では、まるでシャチがメインになって修理をしたみたいです。
大袈裟に言って何かお返しを期待しているキラキラのシャチの目を、ペンギンの冷めた横目が流します。
ローにいたっては、勝手にしろという様子で、また医学本を読み始めました。
「そうですか。お疲れさまでした。」
なまえはとても真面目にそう言うと、またデスクに向かいました。
それから何度も自分が助けたんだと熱弁しても釣れないなまえの背中に、シャチは頭を抱えて文句を叫び出しました。
どうやら、彼女は、自分の身体を修理してくれたことに対しては、恩を返すつもりはないようです。
「助けたことじゃないのか?」
ペンギンは顎を擦って呟きます。
身体を修理したことは恩返しに入らないのだとしたら、ローの命令に従い、守ろうとまでした理由は何なのでしょうか。
でも、考えられるのはひとつしかありません。
自分を助けた船の船長を、彼女がきちんと理解しているということです。
彼女はこの船の代表に、恩を返そうとしているのでしょう。
だって、確かに、自慢の船長であるローは女性にモテますし、同性から見てもカッコいい男です。
でもまさか、シャチが言っていたように、機械が人間に恋をするなんて、ありえませんから。