我慢できない≪進撃/Jean≫
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会議から戻る私は、大量の書類を抱えてフラフラしていた。
ハンジさんが新しい実験を思いついたとかで連れ去られたモブリットの分まで、執務室に持って行かなくてはいけなくなったせいだ。
こんな時に限って、我が分隊の長であるミケさんは出張で、副隊長の私に面倒くさい仕事が雪崩れ込んでくる。
マーレとの戦争が静観状態の今のうちに書類仕事を終わらせようということなのだということは分かるのだけれど、それにしても1人で抱えるには仕事量が多すぎる。
(最近、全然ジャンにも会えてないし。)
重たい書類を抱えてフラフラと歩きながら、私は大きくため息を吐いた。
4年前は生意気な新兵だったジャンと恋人になって、しばらく経つ。
瞬時に状況判断を出来るリーダーシップのあるジャンは、巨人化出来るエレンと同期だったこともあって、初めから目立つ存在ではあった。
でも、まさか年下のジャンと恋人になるなんて未だに自分でも信じられない。
付き合おうとか、好きだとか、そういう言葉がないのも原因かもしれない。
目つきが悪い顔をしてるくせに、意外と仲間想いだったりするジャンは、新兵の頃から、ミケ分隊長がボーッとして忘れていた書類仕事を押しつけられ困っていた私のところにサッと現れて手伝ってくれた。
そうしていると、必然的に一緒にいることが多くなって、気づいたら男女の仲になっていた。
(そういえば、ペトラが、今ではジャンは、
新兵にカッコイイとか言われてモテモテだって言ってたなぁ~。)
少し意地悪なところもあるけれど、人間臭くて優しくて、モテモテの恋人は自慢でもある。
そんなジャンともう2週間もまともに会えていない。
それもこれも、あれやこれやと新しい実験を思いつくハンジさんのせいだ。
「キャァ…ッ!」
心の中でハンジさんの悪口を散々言いまくっていたら、罰が当たったのか足元がフラついた。
そもそも覚束なかった私の足は、あっという間にもつれて倒れそうになる。
「わ!大丈夫か…!」
すれ違いざまに私の肩を掴んで支えてくれたのは、同期のエルドだった。
仕事の出来る彼は、倒れそうだった私と一緒に書類までおさえてくれたらしく、廊下に書類をばら撒くという最悪の事態を免れた。
「助かった…、ありがとう~…。」
「またハンジさんとこの書類も押しつけられたのか?」
「ご名答~…。」
「貸せ。半分持ってやるから。」
私の返事を待たずに、エルドは書類の半分以上を取り上げた。
そつのない優しさに感激しつつ、礼を言って、軽くなった書類を抱えて自分の執務室へ向かう。
同期仲間の話をしていると、廊下の離れた先に、会いたかった恋人の横顔を見つけた。
一緒にいるのは、仲のいいマルコ達ではなくて、最近入団して来た新兵の女の子達だった。
彼女達はキラキラした瞳をして、ジャンに話しかけている。
時折、書類に視線を落とすジャンが、彼女達に何かを言う度に、ハートが飛んで見えた。
(へぇ~、本当にモテてるんだ。)
ペトラが言っていたのを疑っていたわけじゃない。
シガンシナ区奪還の功労者でもあった104期は、新兵達の憧れだとよく聞いていたし、ジャンは、それからも調査兵達をリーダーとしてまとめて来た。
仕事もできる男は、どの世代の女性にもモテるものだ。
「最近よく女の子達に囲まれてるな。
名前も心配なんじゃないの?」
エルドが意地悪くニッと口の端を上げた。
「うるさいな。」
ムッと頬を膨らませた私に、エルドが楽しそうに喉を鳴らした。
モテる恋人は自慢だ。でも、不安でもある。
会えない日々が続いていれば余計にー。
そもそも私は、ジャンが自分のことを本当に好きなのか、自信がない。
マルコ達にも恋人だと紹介されているけれど、まるで私だけが好きみたいな気がしてる。
でも、自分のことを本当に好きなのかなんて聞けるわけがない。
だってー。
(やだなァ~…。年下の彼氏に執着してる年上の女なんて。
凄い重い…。)
私のため息なんて気づきもしないで、新兵の女の子のひとりが言った何かが気に入ったのか、ジャンが彼女の髪をクシャリと撫でた。
途端に頬を染めた彼女は、認めたくないけれどとても可愛くて、俗に言う男心をくすぐるタイプだった。
彼女は嬉しそうにしながら、自分の髪を撫でたジャンの手を握って何かを言っていた。
もうずっと、私に触れていないジャンの手があの子に触れるー。
私が触れていないジャンの手にあの子が触れるー。
あぁ、若い2人はとてもお似合いだー。
「顔が怖いぞ~。」
「…うっさい。」
からかうエルドに冷たく言ったときだった。
廊下の先にいるジャンが、私のいる方を向いた。
きっと、偶々だ。
目が合ったのは分かったけれど、顔が怖いというエルドのセリフを思い出して、思わず目を反らしてしまった。
ううん、違う。
守ってあげたくなるような可愛らしい彼女達を見ていたジャンに、幾つもの死線をくぐって強くなってしまった私を見て欲しくなかったのだ。
ちょうど角を曲がるところだったから、私は目を反らしたままでジャンの視界から逃げた。
「声掛けなくていいのか?」
「いいの。さっきのエルドの質問だけど、私、最初から分かってたから平気なの。
ジャンの方が年下だし、可愛い女の子が現れたら、そっちに行っちゃうんだろうな~って。
たぶん、もうそろそろだね。」
強がりな私は、下手くそな笑顔まで作ってみせた。
付き合いの長いエルドにはバレバレだと分かっている。
でも、構わないのだ。
騙したいのは、エルドじゃなくて自分自身だからー。
「名前、ちょっと待って。こっち向いてくれるか。」
「ん?なに?」
不思議に思いながら立ち止まって、エルドの方を向いた。
すると、書類を片手に抱え直したエルドが、少し屈んで顔を近づけながら私の耳の辺りに触れた。
「よし、OK。」
エルドが満足気に言う。
よく分からないまま耳に触れていた指が離れた。
首を傾げた私は、また歩き出したエルドの隣に並んだ。
「何がOKなの?何か耳についてた?」
「馬を引き寄せるちょっとしたおまじない。」
ふふっとエルドが楽しそうに言った時だった。
後ろから走ってくる足音が聞こえてきたと思ったら、肩を掴まれた。
「名前さん!!」
驚いて振り返ると、ジャンは名前を呼んだ私じゃなくてエルドを見ていた。
ジャンにとても怖い顔で睨まれているのにエルドは嬉しそうだった。
ハンジさんが新しい実験を思いついたとかで連れ去られたモブリットの分まで、執務室に持って行かなくてはいけなくなったせいだ。
こんな時に限って、我が分隊の長であるミケさんは出張で、副隊長の私に面倒くさい仕事が雪崩れ込んでくる。
マーレとの戦争が静観状態の今のうちに書類仕事を終わらせようということなのだということは分かるのだけれど、それにしても1人で抱えるには仕事量が多すぎる。
(最近、全然ジャンにも会えてないし。)
重たい書類を抱えてフラフラと歩きながら、私は大きくため息を吐いた。
4年前は生意気な新兵だったジャンと恋人になって、しばらく経つ。
瞬時に状況判断を出来るリーダーシップのあるジャンは、巨人化出来るエレンと同期だったこともあって、初めから目立つ存在ではあった。
でも、まさか年下のジャンと恋人になるなんて未だに自分でも信じられない。
付き合おうとか、好きだとか、そういう言葉がないのも原因かもしれない。
目つきが悪い顔をしてるくせに、意外と仲間想いだったりするジャンは、新兵の頃から、ミケ分隊長がボーッとして忘れていた書類仕事を押しつけられ困っていた私のところにサッと現れて手伝ってくれた。
そうしていると、必然的に一緒にいることが多くなって、気づいたら男女の仲になっていた。
(そういえば、ペトラが、今ではジャンは、
新兵にカッコイイとか言われてモテモテだって言ってたなぁ~。)
少し意地悪なところもあるけれど、人間臭くて優しくて、モテモテの恋人は自慢でもある。
そんなジャンともう2週間もまともに会えていない。
それもこれも、あれやこれやと新しい実験を思いつくハンジさんのせいだ。
「キャァ…ッ!」
心の中でハンジさんの悪口を散々言いまくっていたら、罰が当たったのか足元がフラついた。
そもそも覚束なかった私の足は、あっという間にもつれて倒れそうになる。
「わ!大丈夫か…!」
すれ違いざまに私の肩を掴んで支えてくれたのは、同期のエルドだった。
仕事の出来る彼は、倒れそうだった私と一緒に書類までおさえてくれたらしく、廊下に書類をばら撒くという最悪の事態を免れた。
「助かった…、ありがとう~…。」
「またハンジさんとこの書類も押しつけられたのか?」
「ご名答~…。」
「貸せ。半分持ってやるから。」
私の返事を待たずに、エルドは書類の半分以上を取り上げた。
そつのない優しさに感激しつつ、礼を言って、軽くなった書類を抱えて自分の執務室へ向かう。
同期仲間の話をしていると、廊下の離れた先に、会いたかった恋人の横顔を見つけた。
一緒にいるのは、仲のいいマルコ達ではなくて、最近入団して来た新兵の女の子達だった。
彼女達はキラキラした瞳をして、ジャンに話しかけている。
時折、書類に視線を落とすジャンが、彼女達に何かを言う度に、ハートが飛んで見えた。
(へぇ~、本当にモテてるんだ。)
ペトラが言っていたのを疑っていたわけじゃない。
シガンシナ区奪還の功労者でもあった104期は、新兵達の憧れだとよく聞いていたし、ジャンは、それからも調査兵達をリーダーとしてまとめて来た。
仕事もできる男は、どの世代の女性にもモテるものだ。
「最近よく女の子達に囲まれてるな。
名前も心配なんじゃないの?」
エルドが意地悪くニッと口の端を上げた。
「うるさいな。」
ムッと頬を膨らませた私に、エルドが楽しそうに喉を鳴らした。
モテる恋人は自慢だ。でも、不安でもある。
会えない日々が続いていれば余計にー。
そもそも私は、ジャンが自分のことを本当に好きなのか、自信がない。
マルコ達にも恋人だと紹介されているけれど、まるで私だけが好きみたいな気がしてる。
でも、自分のことを本当に好きなのかなんて聞けるわけがない。
だってー。
(やだなァ~…。年下の彼氏に執着してる年上の女なんて。
凄い重い…。)
私のため息なんて気づきもしないで、新兵の女の子のひとりが言った何かが気に入ったのか、ジャンが彼女の髪をクシャリと撫でた。
途端に頬を染めた彼女は、認めたくないけれどとても可愛くて、俗に言う男心をくすぐるタイプだった。
彼女は嬉しそうにしながら、自分の髪を撫でたジャンの手を握って何かを言っていた。
もうずっと、私に触れていないジャンの手があの子に触れるー。
私が触れていないジャンの手にあの子が触れるー。
あぁ、若い2人はとてもお似合いだー。
「顔が怖いぞ~。」
「…うっさい。」
からかうエルドに冷たく言ったときだった。
廊下の先にいるジャンが、私のいる方を向いた。
きっと、偶々だ。
目が合ったのは分かったけれど、顔が怖いというエルドのセリフを思い出して、思わず目を反らしてしまった。
ううん、違う。
守ってあげたくなるような可愛らしい彼女達を見ていたジャンに、幾つもの死線をくぐって強くなってしまった私を見て欲しくなかったのだ。
ちょうど角を曲がるところだったから、私は目を反らしたままでジャンの視界から逃げた。
「声掛けなくていいのか?」
「いいの。さっきのエルドの質問だけど、私、最初から分かってたから平気なの。
ジャンの方が年下だし、可愛い女の子が現れたら、そっちに行っちゃうんだろうな~って。
たぶん、もうそろそろだね。」
強がりな私は、下手くそな笑顔まで作ってみせた。
付き合いの長いエルドにはバレバレだと分かっている。
でも、構わないのだ。
騙したいのは、エルドじゃなくて自分自身だからー。
「名前、ちょっと待って。こっち向いてくれるか。」
「ん?なに?」
不思議に思いながら立ち止まって、エルドの方を向いた。
すると、書類を片手に抱え直したエルドが、少し屈んで顔を近づけながら私の耳の辺りに触れた。
「よし、OK。」
エルドが満足気に言う。
よく分からないまま耳に触れていた指が離れた。
首を傾げた私は、また歩き出したエルドの隣に並んだ。
「何がOKなの?何か耳についてた?」
「馬を引き寄せるちょっとしたおまじない。」
ふふっとエルドが楽しそうに言った時だった。
後ろから走ってくる足音が聞こえてきたと思ったら、肩を掴まれた。
「名前さん!!」
驚いて振り返ると、ジャンは名前を呼んだ私じゃなくてエルドを見ていた。
ジャンにとても怖い顔で睨まれているのにエルドは嬉しそうだった。
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