エピローグ
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
エルディア病院の見慣れた広すぎる病室で、私は左腕に打たれた点滴の針から、Glass shoesと名付けられた点滴薬が入って行くのを感じていた。
魔法のお城でプロポーズをされてから、1週間と少しが経っていた。
翌日からはもうリヴァイさんの家で一緒に暮らしていて、今日漸く、魔法の薬が私に入っている。
気のせいなのかもしれないけれど、魔法の薬が入ってくる左腕から身体が熱くなっていくようだった。
そんな私の隣で、ベッドサイドにわざわざデスクを持ってきたリヴァイさんは、さっきからせっせと何かを一生懸命に書いている。
点滴がすべて落ち終わるまで1時間はかかると言われているし、暇だった私は、身体を起こしてリヴァイさんの手元を覗き込んでみた。
仕事をしているのだと思っていたのだが、日付と天気まで丁寧に記してあるそれは、どうやら日記のようだった。
「リヴァイさん、日記とか書くんですね。」
「ん?あ~…、万が一、その薬で記憶が戻らなかったときの為に
俺の知る限りの記憶を書いてる。お前の真似して、日記にしてみた。」
リヴァイさんは、ペンを走らせながら、日記帳に視線を落としたままで答えた。
Glass shoesが本当に永遠に解けない魔法の薬になるかは、まだ分からないとリヴァイさんの師匠で私の恩師でもあるというエルヴィン先生からも説明があった。
何と言っても、リヴァイさんが私のためにこっそり作っていたというこの薬を一番最初に試すのが私なので、治験のような立ち位置になるらしい。
「それって、リヴァイさん目線で私達の記憶を追えるってことですよね?
見たいです!!」
ワクワクして手を伸ばそうとしたら、リヴァイさんがすぐに日記帳を閉じてしまった。
そして、ベッドの上で点滴を受けている私に届かないように、日記帳を持つ手を遠くに伸ばして離した。
「ダメだ。記憶が戻らなかったら、仕方ねぇから見せてやるだけだ。」
「え~、いいじゃないですか。見せてくださいよ。
むしろ私は、自分の記憶よりも、リヴァイさんがその時どう思ってたのとか
そういうのが知りたいです!!」
「そんな恥ずかしいこと出来るか。記憶を戻すって約束守るために、
仕方ねぇから最終手段として書いてるだけだ。記憶が戻れば、これは抹殺する。」
「そんなのズルいです!リヴァイさん、私の日記読んだってジャンが言ってましたよ!」
「それは、お前の母親に読んでくれと言われたからだ。」
「なら、私にもその日記を読んでくれって、言ってください!」
「記憶が戻らなかったらな。」
リヴァイさんは頑なだった。
ケチだとか、ズルだとか言ってみたけれど、途中から無視を決め込んで日記を遠くの棚に置きに行ってしまった。
リヴァイさんの背中を眺めながら、記憶が戻らなかったフリをして日記を読むという手もあるな、なんてズルい考えが頭を過った。
でも、きっと、私がそれを実行することはないと思う。
だってー。
戻って来たリヴァイさんが、ベッドの縁に座って、点滴の針の刺さる私の左腕を確認する。
問題なかったらしく、少しだけ頬が緩んだ。
リヴァイさんは言葉数は多くはないし、必要なことしか言ってくれないけれど、その表情で気持ちを伝えてくれている。
エレン達は、分かりづらいと言うけれど、私にはとても分かりやすい気がするのだ。
たぶん、リヴァイさんは、とても表情豊かだ。
「隣に座ってください。なんか遠くって、寂しいです。」
甘えると、仕方ないなと言いながらもリヴァイさんが私の隣に腰をおろした。
そのときだって、リヴァイさんはとても優しく私を見つめてくれる。
愛されていると感じられる、リヴァイさんの瞳が私は大好きだ。
「ねぇ、リヴァイさん。」
隣に座ったリヴァイさんの腰に抱き着いた。
「どんなにねだられても、最終手段でしか見せねぇぞ。」
「いいですよ。私、絶対に記憶が戻るから。」
リヴァイさんの腰にギュッと抱きついて、私はニシシと笑う。
「…そうか。」
少し驚いた顔をした後、リヴァイさんが私の頭に手を添えて、自分の肩の辺りに寄り掛からせた。
「あ、でも、その日記は抹殺しないでくださいね。
いつかリヴァイさんが記憶を失ったときに読ませてあげますから。」
「必要ねぇよ、そんなの。」
「あー、自分は記憶障害にはならないと思ってるんでしょう?
誰だっていつ、記憶を失うか分からないんですよ。」
「違ぇよ。」
リヴァイさんは可笑しそうに言って、クスリと喉を鳴らした。
私は、疑いの目でリヴァイさんを見つめる。
すると、種明かしをするように、私を見つめてリヴァイさんが言った。
「記憶がなくなったって、俺は何度でも名前を好きになるから。
名前が、俺を好きになってくれたみたいに。」
「…そっか。」
「あぁ、そうだ。」
私達は、頬が緩むのを見られるのがなんとなく恥ずかしくて、お互いの額を重ねて、クスクスと笑い合う。
記憶がなくなるのは、怖くて怖くて仕方がない出来事だった。
もしもまた、そんなことになれば、私は恐怖に震えるのだろう。
でも、隣にリヴァイさんがいて、もう一度、恋に落ちることが出来るのなら、私は幸せだ。
そんな贅沢なことってない。
だって、私は記憶を失ったから、人生で2回、人生最大の恋をしたのだ。
私だけの世界一素敵な魔法使いさんにー。
魔法のお城でプロポーズをされてから、1週間と少しが経っていた。
翌日からはもうリヴァイさんの家で一緒に暮らしていて、今日漸く、魔法の薬が私に入っている。
気のせいなのかもしれないけれど、魔法の薬が入ってくる左腕から身体が熱くなっていくようだった。
そんな私の隣で、ベッドサイドにわざわざデスクを持ってきたリヴァイさんは、さっきからせっせと何かを一生懸命に書いている。
点滴がすべて落ち終わるまで1時間はかかると言われているし、暇だった私は、身体を起こしてリヴァイさんの手元を覗き込んでみた。
仕事をしているのだと思っていたのだが、日付と天気まで丁寧に記してあるそれは、どうやら日記のようだった。
「リヴァイさん、日記とか書くんですね。」
「ん?あ~…、万が一、その薬で記憶が戻らなかったときの為に
俺の知る限りの記憶を書いてる。お前の真似して、日記にしてみた。」
リヴァイさんは、ペンを走らせながら、日記帳に視線を落としたままで答えた。
Glass shoesが本当に永遠に解けない魔法の薬になるかは、まだ分からないとリヴァイさんの師匠で私の恩師でもあるというエルヴィン先生からも説明があった。
何と言っても、リヴァイさんが私のためにこっそり作っていたというこの薬を一番最初に試すのが私なので、治験のような立ち位置になるらしい。
「それって、リヴァイさん目線で私達の記憶を追えるってことですよね?
見たいです!!」
ワクワクして手を伸ばそうとしたら、リヴァイさんがすぐに日記帳を閉じてしまった。
そして、ベッドの上で点滴を受けている私に届かないように、日記帳を持つ手を遠くに伸ばして離した。
「ダメだ。記憶が戻らなかったら、仕方ねぇから見せてやるだけだ。」
「え~、いいじゃないですか。見せてくださいよ。
むしろ私は、自分の記憶よりも、リヴァイさんがその時どう思ってたのとか
そういうのが知りたいです!!」
「そんな恥ずかしいこと出来るか。記憶を戻すって約束守るために、
仕方ねぇから最終手段として書いてるだけだ。記憶が戻れば、これは抹殺する。」
「そんなのズルいです!リヴァイさん、私の日記読んだってジャンが言ってましたよ!」
「それは、お前の母親に読んでくれと言われたからだ。」
「なら、私にもその日記を読んでくれって、言ってください!」
「記憶が戻らなかったらな。」
リヴァイさんは頑なだった。
ケチだとか、ズルだとか言ってみたけれど、途中から無視を決め込んで日記を遠くの棚に置きに行ってしまった。
リヴァイさんの背中を眺めながら、記憶が戻らなかったフリをして日記を読むという手もあるな、なんてズルい考えが頭を過った。
でも、きっと、私がそれを実行することはないと思う。
だってー。
戻って来たリヴァイさんが、ベッドの縁に座って、点滴の針の刺さる私の左腕を確認する。
問題なかったらしく、少しだけ頬が緩んだ。
リヴァイさんは言葉数は多くはないし、必要なことしか言ってくれないけれど、その表情で気持ちを伝えてくれている。
エレン達は、分かりづらいと言うけれど、私にはとても分かりやすい気がするのだ。
たぶん、リヴァイさんは、とても表情豊かだ。
「隣に座ってください。なんか遠くって、寂しいです。」
甘えると、仕方ないなと言いながらもリヴァイさんが私の隣に腰をおろした。
そのときだって、リヴァイさんはとても優しく私を見つめてくれる。
愛されていると感じられる、リヴァイさんの瞳が私は大好きだ。
「ねぇ、リヴァイさん。」
隣に座ったリヴァイさんの腰に抱き着いた。
「どんなにねだられても、最終手段でしか見せねぇぞ。」
「いいですよ。私、絶対に記憶が戻るから。」
リヴァイさんの腰にギュッと抱きついて、私はニシシと笑う。
「…そうか。」
少し驚いた顔をした後、リヴァイさんが私の頭に手を添えて、自分の肩の辺りに寄り掛からせた。
「あ、でも、その日記は抹殺しないでくださいね。
いつかリヴァイさんが記憶を失ったときに読ませてあげますから。」
「必要ねぇよ、そんなの。」
「あー、自分は記憶障害にはならないと思ってるんでしょう?
誰だっていつ、記憶を失うか分からないんですよ。」
「違ぇよ。」
リヴァイさんは可笑しそうに言って、クスリと喉を鳴らした。
私は、疑いの目でリヴァイさんを見つめる。
すると、種明かしをするように、私を見つめてリヴァイさんが言った。
「記憶がなくなったって、俺は何度でも名前を好きになるから。
名前が、俺を好きになってくれたみたいに。」
「…そっか。」
「あぁ、そうだ。」
私達は、頬が緩むのを見られるのがなんとなく恥ずかしくて、お互いの額を重ねて、クスクスと笑い合う。
記憶がなくなるのは、怖くて怖くて仕方がない出来事だった。
もしもまた、そんなことになれば、私は恐怖に震えるのだろう。
でも、隣にリヴァイさんがいて、もう一度、恋に落ちることが出来るのなら、私は幸せだ。
そんな贅沢なことってない。
だって、私は記憶を失ったから、人生で2回、人生最大の恋をしたのだ。
私だけの世界一素敵な魔法使いさんにー。