◇78ページ◇唇に落ちる魔法の夜
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「聞いてる?」
ベッドに座って、結婚式に呼ぶ招待客リストを広げていた私は、ウトウトしていた意識の中で、総ちゃんの声がしてハッとした。
落ちかけていた顔を上げて、目を覚まさせるために小さく頭を振った。
そんな私を、総ちゃんが呆れたように見ていた。
「どうした?最近、寝不足じゃないか?」
「うん…、寝るのがちょっと遅くって…。ごめん。」
「いや、別にいいけどさ。遅くまで何やってんの。」
「えっと…、本読んだり。」
「昼間読めよ。時間ならたくさんあるだろ。」
「うん…、今度からそうする。」
頷いた私に、総ちゃんは大きくため息を吐いた。
結婚式の大切な話をしていたのに、ウトウトしてしまうなんて呆れられたに違いない。
婚約者がいるのに他の男の人とキスだって出来てしまうし、私は本当に最低だ。
きっと、リヴァイさんも私のことを最低で軽くて、簡単な女だと思っている。
無意識にため息が漏れた。
「よし、面倒くさいことは休み。楽しいことしようぜ。」
総ちゃんは私の膝の上に置いていた招待客リストを取り上げて、ベッドサイドの棚に置いた。
そして、私の両肩を押して、そのままベッドに押し倒した。
ニッと口の端を上げた総ちゃんに、私は困ったような笑みを返した。
「結婚してからって約束だったでしょう?」
眉尻を下げたまま、私は言った。
記憶を失う前から、私と総ちゃんは恋人同士だったと聞いている。
そういうこともしたことがあるのかどうかわからないけれど、敢えて聞いたこともない。
でも、記憶を失った私は、そういうことをするのが、正直とても怖い。
総ちゃんが嫌なわけじゃないのだ。
ただ、怖いのだ。
だから、結婚するまでは待ってほしいとお願いしている。
いつもなら、総ちゃんはそれで納得してくれるはずだった。
困ったような笑みを浮かべて、それでも優しく「仕方ねぇな。」って言ってくれたのにー。
私を見下ろす総ちゃんから、スーッと表情が消えた。
「そんなの待ってたらアイツに食われちまうだろ。」
総ちゃんは、私を見下ろしたままで何かを言った。
低いその声は小さくて聞き取れなかった。
「総ちゃん?どうしー。」
どうしたの?-。
そう訊ねようとした私の唇に、総ちゃんが噛みついた。
驚いた私が思わず背中を反らしたその隙を逃さずに、腰に手をまわした。
そして、総ちゃんは、片腕で私の腰を拘束して、もう片方の手でシャツをたくし上げる。
塞がれた唇が酸素を求めて開けば、そこから舌が滑り込んできて咥内を犯された。
お互いの荒い息がベッドの上で、熱気になって煩かった。
総ちゃんの手が、ブラジャーを乱暴に下げて胸に触れた。
嫌だ。触らないで。ダメ、触らないでー。
「ぃ、や…っ、やめて…っ!!」
必死に身体をねじって拘束から逃げながら、総ちゃんの胸元を思いっきり突き飛ばした。
痛そうに眉を顰めて、総ちゃんが私から離れた。
一瞬だけ、ひどく傷ついた顔をした総ちゃんと目が合って、そのまま背を向けられてしまった。
途端に罪悪感に襲われた。
何をしているのだろう、とハッとした。
相手は婚約者だ。こんなに必死に抵抗するなんて、ヒドイことをした。
きっとすごく傷つけたー。
乱れた服をそのままにして、私は慌てて身体を起こした。
「総ちゃん、ごめー。」
「触んな。」
総ちゃんの腕に触れようとした私の手は、冷たい声に驚いてピタリと止まった。
私を見ようとはしない総ちゃんの背中からも、冷たい空気が伝わって来ていた。
「ごめんなさい…。」
傷つけた、そして、怒らせた。
触るなと言われたら、謝ることくらいしか出来なかった。
長い沈黙が続いた。
少しだけ、総ちゃんの肩が動いて私は緊張した。
「俺さ、」
総ちゃんは、私に背を向けたままで話し出した。
戸惑いながら、頷くように相槌を返した。
「昔はすげぇ遊んでたんだ。」
「うん、知ってるよ。つくし達が教えてくれたから。」
「名前と恋人になったから、遊んでた女達は全部切った。」
「うん、嬉しいよ。ありがとう。」
「でも、結婚するまで俺とは出来ねぇんだよな。」
「…ごめん。」
「なら、他の女としてくるけど、いい?」
「え…?」
「俺は女切ったけど、女の方はまだ遊んでくれって連絡してくるんだよ。
浮気でも不倫でもなんでもいいからってさ。」
私に背を向けたまま、総ちゃんは淡々と話していた。
悲しそうでもないし、楽しそうでもない。
でも、気軽に言っている感じもしない。
あぁ、きっと、本気なのだと思った。
何て答えればいいのだろう。
でも、私に、嫌だって言う権利はあるのだろうか。
昨日の夜、リヴァイさんとキスをしてしまったのに。
「なぁ、今から、他の女とシてきていい?」
「わかった。」
「…なにが?」
「他の女の人とシてきても、いいよ。」
「本当に?」
「うん、総ちゃんがそうしたいなら、いいよ。」
私は、ベッドの上に落ちた自分の手を見下ろしながら言った。
仕方がないと思った。
男の人はそういうことをしたいと思うだろうし、私と恋人になるまでは夜な夜なたくさんの女の人達と遊んでいた総ちゃんならきっと尚更だ。
私と恋人になって、きっとたくさん我慢してくれたのだ。
それくらい、許してやるべきだ。
「なんだよ、それ。」
総ちゃんが何かを呟いた。
でも、聞こえなかった。
今の状況で聞き返すのは、怒らせてしまいそうで出来ずにいると、総ちゃんが振り返った。
怒っていると思っていたけれど、眉尻を下げている総ちゃんは、困ったような顔をしていただけだった。
私の知っている総ちゃんの優しい微笑みだった。
「バカ。本気にすんなよ。他の女となんかするわけねぇーじゃん。」
総ちゃんはそう言って、私の肩を抱いて自分の胸元に抱き寄せた。
ふわりと、リヴァイさんと同じ紅茶の香りが包んだ。
だから、リヴァイさんとのキスを思い出してしまって、私は総ちゃんの胸元に頬を押しつけた。
「そっか。冗談だったんだ。」
「ホッとした?」
「うん。ホッとした。」
私の返事を聞いて、総ちゃんがまた低い声で小さく呟いた。
嘘吐きー。
今度はちゃんと聞こえたけれど、聞こえないフリをした。
だって、私は嘘吐きだからー。
ベッドに座って、結婚式に呼ぶ招待客リストを広げていた私は、ウトウトしていた意識の中で、総ちゃんの声がしてハッとした。
落ちかけていた顔を上げて、目を覚まさせるために小さく頭を振った。
そんな私を、総ちゃんが呆れたように見ていた。
「どうした?最近、寝不足じゃないか?」
「うん…、寝るのがちょっと遅くって…。ごめん。」
「いや、別にいいけどさ。遅くまで何やってんの。」
「えっと…、本読んだり。」
「昼間読めよ。時間ならたくさんあるだろ。」
「うん…、今度からそうする。」
頷いた私に、総ちゃんは大きくため息を吐いた。
結婚式の大切な話をしていたのに、ウトウトしてしまうなんて呆れられたに違いない。
婚約者がいるのに他の男の人とキスだって出来てしまうし、私は本当に最低だ。
きっと、リヴァイさんも私のことを最低で軽くて、簡単な女だと思っている。
無意識にため息が漏れた。
「よし、面倒くさいことは休み。楽しいことしようぜ。」
総ちゃんは私の膝の上に置いていた招待客リストを取り上げて、ベッドサイドの棚に置いた。
そして、私の両肩を押して、そのままベッドに押し倒した。
ニッと口の端を上げた総ちゃんに、私は困ったような笑みを返した。
「結婚してからって約束だったでしょう?」
眉尻を下げたまま、私は言った。
記憶を失う前から、私と総ちゃんは恋人同士だったと聞いている。
そういうこともしたことがあるのかどうかわからないけれど、敢えて聞いたこともない。
でも、記憶を失った私は、そういうことをするのが、正直とても怖い。
総ちゃんが嫌なわけじゃないのだ。
ただ、怖いのだ。
だから、結婚するまでは待ってほしいとお願いしている。
いつもなら、総ちゃんはそれで納得してくれるはずだった。
困ったような笑みを浮かべて、それでも優しく「仕方ねぇな。」って言ってくれたのにー。
私を見下ろす総ちゃんから、スーッと表情が消えた。
「そんなの待ってたらアイツに食われちまうだろ。」
総ちゃんは、私を見下ろしたままで何かを言った。
低いその声は小さくて聞き取れなかった。
「総ちゃん?どうしー。」
どうしたの?-。
そう訊ねようとした私の唇に、総ちゃんが噛みついた。
驚いた私が思わず背中を反らしたその隙を逃さずに、腰に手をまわした。
そして、総ちゃんは、片腕で私の腰を拘束して、もう片方の手でシャツをたくし上げる。
塞がれた唇が酸素を求めて開けば、そこから舌が滑り込んできて咥内を犯された。
お互いの荒い息がベッドの上で、熱気になって煩かった。
総ちゃんの手が、ブラジャーを乱暴に下げて胸に触れた。
嫌だ。触らないで。ダメ、触らないでー。
「ぃ、や…っ、やめて…っ!!」
必死に身体をねじって拘束から逃げながら、総ちゃんの胸元を思いっきり突き飛ばした。
痛そうに眉を顰めて、総ちゃんが私から離れた。
一瞬だけ、ひどく傷ついた顔をした総ちゃんと目が合って、そのまま背を向けられてしまった。
途端に罪悪感に襲われた。
何をしているのだろう、とハッとした。
相手は婚約者だ。こんなに必死に抵抗するなんて、ヒドイことをした。
きっとすごく傷つけたー。
乱れた服をそのままにして、私は慌てて身体を起こした。
「総ちゃん、ごめー。」
「触んな。」
総ちゃんの腕に触れようとした私の手は、冷たい声に驚いてピタリと止まった。
私を見ようとはしない総ちゃんの背中からも、冷たい空気が伝わって来ていた。
「ごめんなさい…。」
傷つけた、そして、怒らせた。
触るなと言われたら、謝ることくらいしか出来なかった。
長い沈黙が続いた。
少しだけ、総ちゃんの肩が動いて私は緊張した。
「俺さ、」
総ちゃんは、私に背を向けたままで話し出した。
戸惑いながら、頷くように相槌を返した。
「昔はすげぇ遊んでたんだ。」
「うん、知ってるよ。つくし達が教えてくれたから。」
「名前と恋人になったから、遊んでた女達は全部切った。」
「うん、嬉しいよ。ありがとう。」
「でも、結婚するまで俺とは出来ねぇんだよな。」
「…ごめん。」
「なら、他の女としてくるけど、いい?」
「え…?」
「俺は女切ったけど、女の方はまだ遊んでくれって連絡してくるんだよ。
浮気でも不倫でもなんでもいいからってさ。」
私に背を向けたまま、総ちゃんは淡々と話していた。
悲しそうでもないし、楽しそうでもない。
でも、気軽に言っている感じもしない。
あぁ、きっと、本気なのだと思った。
何て答えればいいのだろう。
でも、私に、嫌だって言う権利はあるのだろうか。
昨日の夜、リヴァイさんとキスをしてしまったのに。
「なぁ、今から、他の女とシてきていい?」
「わかった。」
「…なにが?」
「他の女の人とシてきても、いいよ。」
「本当に?」
「うん、総ちゃんがそうしたいなら、いいよ。」
私は、ベッドの上に落ちた自分の手を見下ろしながら言った。
仕方がないと思った。
男の人はそういうことをしたいと思うだろうし、私と恋人になるまでは夜な夜なたくさんの女の人達と遊んでいた総ちゃんならきっと尚更だ。
私と恋人になって、きっとたくさん我慢してくれたのだ。
それくらい、許してやるべきだ。
「なんだよ、それ。」
総ちゃんが何かを呟いた。
でも、聞こえなかった。
今の状況で聞き返すのは、怒らせてしまいそうで出来ずにいると、総ちゃんが振り返った。
怒っていると思っていたけれど、眉尻を下げている総ちゃんは、困ったような顔をしていただけだった。
私の知っている総ちゃんの優しい微笑みだった。
「バカ。本気にすんなよ。他の女となんかするわけねぇーじゃん。」
総ちゃんはそう言って、私の肩を抱いて自分の胸元に抱き寄せた。
ふわりと、リヴァイさんと同じ紅茶の香りが包んだ。
だから、リヴァイさんとのキスを思い出してしまって、私は総ちゃんの胸元に頬を押しつけた。
「そっか。冗談だったんだ。」
「ホッとした?」
「うん。ホッとした。」
私の返事を聞いて、総ちゃんがまた低い声で小さく呟いた。
嘘吐きー。
今度はちゃんと聞こえたけれど、聞こえないフリをした。
だって、私は嘘吐きだからー。