◇77ページ◇魔法のキス
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「何見てるの?」
バイタルチェックに来た看護師のピークちゃんが、私の手元を覗き込んだ。
マーレ病院から1週間前に研修で来たばかりらしい彼女は、アンカさんが指導係になったことで、この病室にもよく顔を出すからすぐに仲良くなった。
「この病院の名簿だよ。」
「だよね。私も渡されたから知ってる。
なんで、そんなもの見てるの?」
「うん、ちょっとね。」
そう言いながら、私はページをめくる。
暇つぶしを探そうとこの病室をブラブラしていて、本棚に病院の医師や看護師達の名簿を見つけた。
しかも写真つきだったから、ナイル先生やアンカさん、顔見知りを見つけるのが楽しかった。
でも、いないのだ。
リヴァイ先生だけが、どこを探しても見つからない。
見逃したのかと思って、同じ名簿を繰り返し読んでこれで3回目だ。
やっぱり、リヴァイ先生の名前はない。
「誰か探してるの?」
バイタルチェックが終わった後も、まだページをペラペラとめくっている私の手元をピークちゃんが覗き込んだ。
もうそろそろ諦めて来た私は、小さく息を吐いた。
「リヴァイ先生がいないの。」
「リヴァイ先生?」
「そう、何科なのかな~と思って探してるんだけど、見つからなくって。」
私は困ったように首をすぼめた。
そんな私を見ながら、ピークちゃんが不思議そうに首を傾げる。
「私、その名簿に載ってる全員覚えたけど、
リヴァイなんて名前の医者はいなかったよ。」
「え?」
「名前、間違えてるんじゃない?」
「そんなことないよっ。確かに免許証にはリヴァイ・アッカーマンって書いてあったもの!」
「免許証?なんで、医者の免許証なんて見る機会があるの?」
「医師免許じゃなくて、車の免許証だよ。」
「もっと不思議なんだけど。」
訝し気にピークちゃんが首を傾げた。
「偶々、拾ったの。」
「へぇ。まぁ、この病院にはいないから、他の病院から来たヘルプの医者かもね。」
「そうなのかなぁ?違うと思うけど…。」
「なんで?」
「だって、毎晩…、」
「毎晩?」
「ううん、何でもないの…!」
思わず口が滑りそうになって、私は慌てて誤魔化した。
アンカちゃんが言うには、引くくらいにIQが高いというピークちゃんは、訝し気に私をジッと見ていたけれど、それ以上問い詰めることはしなかった。
「さぁ、待ちに待った心臓の検査だよ。」
腕時計を確認したピークちゃんに促されて、私はベッドから降りた。
一緒に扉へ向かって歩きながら、ピークちゃんが訊ねる。
「急に心臓の検査したいって言いだしたんだって?
気になることでもあるの?」
「なんか最近、心臓が痛いの。」
「痛い?どんな風に?」
「キュッてなったり、ギューッて苦しくなったり。」
私は、シャツの心臓の辺りをギュッと握りしめた。
最近、特にまた痛みが増してきている気がする。
しかもそれは、夜になると顕著に現れるのだ。
だから、リヴァイ先生と紅茶を飲んでいる場合ではないのかもしれない。
でも、大好きな紅茶を飲みながら、リヴァイさんの話を聞く時間は失いたくなくてー。
「それは心配だね。」
「え、何が?」
「だから、心臓が苦しくなることが。」
「あ、そっか。」
「大丈夫?最近、すごくボーッとしてるけど。」
ピークちゃんがそう言いながら、病室の扉を開いた。
ボーッとしてるのはたぶん元からだと言いながら、病室を出た私は、ピークちゃんが扉を閉めるのをなんとなく見ていた。
そして、気づいた。
この病室の扉にも、横壁にも、ネームプレートが貼っていない。
「ねぇ、ピークちゃん。この病室のネームプレートは?」
「あぁ、ここは貼らないんだって。この病室を使う患者さんは
嫌がる人が多いから、希望がない限りは貼らないらしいよ。」
「じゃあ、私が入院してきたときも、最初からここにネームプレートはなかったの?」
「ないよ。なんで?」
「…ねぇ、さっき、私がリヴァイ先生のことを訊いたこと、
誰にも内緒にしてくれる?」
「・・・・・まぁ、言う相手もいないし。別にいいけど。」
ピークちゃんは私の顔をジッと見て、少し間をあけてからそう言うと、背を向けて歩き出した。
その背を追いかけるように視線を向けた私は、もう一度、何も書かれていない病室の扉を見上げた。
『あ、そういえば、どうして私の名前知ってたんですか?』
『あー…、ここに入る前に病室のプレートで見た。』
数日前、リヴァイさんと交わした会話が蘇る。
でも、ここに私の名前はない。
それならどうして、リヴァイさんは私の名前を知っていたのだろう。
「名前~、置いて行くよ~。」
「ごめんなさいっ、待ってっ。」
私は、ピークちゃんの背中を追いかけた。
バイタルチェックに来た看護師のピークちゃんが、私の手元を覗き込んだ。
マーレ病院から1週間前に研修で来たばかりらしい彼女は、アンカさんが指導係になったことで、この病室にもよく顔を出すからすぐに仲良くなった。
「この病院の名簿だよ。」
「だよね。私も渡されたから知ってる。
なんで、そんなもの見てるの?」
「うん、ちょっとね。」
そう言いながら、私はページをめくる。
暇つぶしを探そうとこの病室をブラブラしていて、本棚に病院の医師や看護師達の名簿を見つけた。
しかも写真つきだったから、ナイル先生やアンカさん、顔見知りを見つけるのが楽しかった。
でも、いないのだ。
リヴァイ先生だけが、どこを探しても見つからない。
見逃したのかと思って、同じ名簿を繰り返し読んでこれで3回目だ。
やっぱり、リヴァイ先生の名前はない。
「誰か探してるの?」
バイタルチェックが終わった後も、まだページをペラペラとめくっている私の手元をピークちゃんが覗き込んだ。
もうそろそろ諦めて来た私は、小さく息を吐いた。
「リヴァイ先生がいないの。」
「リヴァイ先生?」
「そう、何科なのかな~と思って探してるんだけど、見つからなくって。」
私は困ったように首をすぼめた。
そんな私を見ながら、ピークちゃんが不思議そうに首を傾げる。
「私、その名簿に載ってる全員覚えたけど、
リヴァイなんて名前の医者はいなかったよ。」
「え?」
「名前、間違えてるんじゃない?」
「そんなことないよっ。確かに免許証にはリヴァイ・アッカーマンって書いてあったもの!」
「免許証?なんで、医者の免許証なんて見る機会があるの?」
「医師免許じゃなくて、車の免許証だよ。」
「もっと不思議なんだけど。」
訝し気にピークちゃんが首を傾げた。
「偶々、拾ったの。」
「へぇ。まぁ、この病院にはいないから、他の病院から来たヘルプの医者かもね。」
「そうなのかなぁ?違うと思うけど…。」
「なんで?」
「だって、毎晩…、」
「毎晩?」
「ううん、何でもないの…!」
思わず口が滑りそうになって、私は慌てて誤魔化した。
アンカちゃんが言うには、引くくらいにIQが高いというピークちゃんは、訝し気に私をジッと見ていたけれど、それ以上問い詰めることはしなかった。
「さぁ、待ちに待った心臓の検査だよ。」
腕時計を確認したピークちゃんに促されて、私はベッドから降りた。
一緒に扉へ向かって歩きながら、ピークちゃんが訊ねる。
「急に心臓の検査したいって言いだしたんだって?
気になることでもあるの?」
「なんか最近、心臓が痛いの。」
「痛い?どんな風に?」
「キュッてなったり、ギューッて苦しくなったり。」
私は、シャツの心臓の辺りをギュッと握りしめた。
最近、特にまた痛みが増してきている気がする。
しかもそれは、夜になると顕著に現れるのだ。
だから、リヴァイ先生と紅茶を飲んでいる場合ではないのかもしれない。
でも、大好きな紅茶を飲みながら、リヴァイさんの話を聞く時間は失いたくなくてー。
「それは心配だね。」
「え、何が?」
「だから、心臓が苦しくなることが。」
「あ、そっか。」
「大丈夫?最近、すごくボーッとしてるけど。」
ピークちゃんがそう言いながら、病室の扉を開いた。
ボーッとしてるのはたぶん元からだと言いながら、病室を出た私は、ピークちゃんが扉を閉めるのをなんとなく見ていた。
そして、気づいた。
この病室の扉にも、横壁にも、ネームプレートが貼っていない。
「ねぇ、ピークちゃん。この病室のネームプレートは?」
「あぁ、ここは貼らないんだって。この病室を使う患者さんは
嫌がる人が多いから、希望がない限りは貼らないらしいよ。」
「じゃあ、私が入院してきたときも、最初からここにネームプレートはなかったの?」
「ないよ。なんで?」
「…ねぇ、さっき、私がリヴァイ先生のことを訊いたこと、
誰にも内緒にしてくれる?」
「・・・・・まぁ、言う相手もいないし。別にいいけど。」
ピークちゃんは私の顔をジッと見て、少し間をあけてからそう言うと、背を向けて歩き出した。
その背を追いかけるように視線を向けた私は、もう一度、何も書かれていない病室の扉を見上げた。
『あ、そういえば、どうして私の名前知ってたんですか?』
『あー…、ここに入る前に病室のプレートで見た。』
数日前、リヴァイさんと交わした会話が蘇る。
でも、ここに私の名前はない。
それならどうして、リヴァイさんは私の名前を知っていたのだろう。
「名前~、置いて行くよ~。」
「ごめんなさいっ、待ってっ。」
私は、ピークちゃんの背中を追いかけた。