◇7ページ◇おはようのキス
Name change
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起床の時間は、自分の身体がよく覚えていた。
その日も、昨夜セットしておいたスマホのアラームよりも早起きした俺は、扉の向こうから聞こえてくる包丁の音に訝し気に眉を顰めた。
(あぁ…そうか…。)
半分ほど寝ぼけた頭で、すぐに俺は、昨日からこの家にはもう1人の住人がいることを思い出した。
朝っぱらからため息を吐くのも嫌で、二度寝を求める欠伸と共に飲み込んでからベッドから降りた。
部屋から出ると、キッチンカウンターの向こうで朝食を作っているらしい名前が俺に気づいた瞬間、これでもかというほどに嬉しそうな笑顔を見せた。
それを見た俺はまだ、あぁ、本当に惚れてるんだな、とどこか第三者のような感覚だった。
「おはようございます!!」
慌ただしく朝食の準備を中断して、名前はキッチンを飛び出してきた。
そして、朝の挨拶の後、覚える気のない感触がまた唇に一瞬だけ触れた。
おやすみのキスがあるのなら、おはようのキスもある気はしていた俺は、もういちいち驚かなかった。
キスくらいでいちいち騒ぐほどガキではないし、女性経験だって少ないわけじゃない。
それに、明らかに年下の名前が当たり前のようにしているのに、年上の自分が怒ったり文句を言ったりしたくないという、くだらないプライドもあったと思う。
だから、俺は、2回目のキスを、なんでもないことのように受け流した。
「…あぁ。おはよう。」
「リヴァイさんが…!私に、おはようって…!」
名前はまた、朝からどうでもいいことに感動して目をキラキラさせていた。
若いとは素晴らしいことかもしれない。
朝から本当に、元気がいい。
俺も朝が弱いわけではないし、早起きは割と得意な方だ。
だが、人並み以上の低血圧のおかげで、朝のテンションが動く死体みたいだと友人にからかわれる俺とは正反対だった。
「顔を洗ってくる。その間に朝飯を用意しておけ。」
「了解です!」
名前がお決まりの敬礼ポーズで答えたのを冷めた目で見て、俺は洗面所へと向かった。
顔を洗っている間も包丁の音や食器の音が聞こえていた。
朝起きて自分の身支度だけしていれば、朝食が出てくるなんて久しぶりだった。
出来るだけ自炊はしていた俺は、料理をするのが嫌いなわけではないけれど、好きなわけでもなかった。
正直、面倒だとも思っていたし、朝起きてすぐに名前が朝食を作ってくれているのを見たとき、これならもう少し長く眠れるかもしれないと思ったのだ。
でも、それと同時に、どうしても嫌な思い出が蘇ってくるのだ。
だから余計に、俺はこれからもずっと、あの日々に囚われて生き続けるのかーと絶望にも似た感情で、朝の低いテンションに拍車をかけて気分は沈んでいた。
「どうぞ、召し上がれっ。」
ダイニングテーブルには、彩りの良い和食中心の朝食が並んでいた。
椅子を引いて俺が座れば、名前も向かいの席に座って、嬉しそうに笑った。
この日からほとんど毎朝、おはようのキスの後には、ダイニングテーブルの上には美味しい朝食が並んで、椅子に座る俺の前には、底抜けに明るい名前の笑顔があった。
今だから言うけれど、名前の無垢な笑顔は、俺の沈んだ心をこのときから少しずつ持ち上げてくれていたんだ。
自分自身でさえ、それに気づいてはいなかったけれどー。
君の笑顔を探し彷徨う悪夢で、おはようのキスを待っている
朝のリヴァイさんはとても元気がなかったの。
どこか寂しそうでもあった。
私なんかのおはようのキスじゃ、リヴァイさんは独りぼっちの夢の中から起きられないね。
我儘な私の恋に付き合ってくれているリヴァイさんに、私に出来ることって何があるのかな。
せめて、笑わないリヴァイさんの代わりに、私はいつも笑っていよう。
どんなときも、笑っていようと思う。
でも、やっぱり、おはようのキスはしたいな。
その日も、昨夜セットしておいたスマホのアラームよりも早起きした俺は、扉の向こうから聞こえてくる包丁の音に訝し気に眉を顰めた。
(あぁ…そうか…。)
半分ほど寝ぼけた頭で、すぐに俺は、昨日からこの家にはもう1人の住人がいることを思い出した。
朝っぱらからため息を吐くのも嫌で、二度寝を求める欠伸と共に飲み込んでからベッドから降りた。
部屋から出ると、キッチンカウンターの向こうで朝食を作っているらしい名前が俺に気づいた瞬間、これでもかというほどに嬉しそうな笑顔を見せた。
それを見た俺はまだ、あぁ、本当に惚れてるんだな、とどこか第三者のような感覚だった。
「おはようございます!!」
慌ただしく朝食の準備を中断して、名前はキッチンを飛び出してきた。
そして、朝の挨拶の後、覚える気のない感触がまた唇に一瞬だけ触れた。
おやすみのキスがあるのなら、おはようのキスもある気はしていた俺は、もういちいち驚かなかった。
キスくらいでいちいち騒ぐほどガキではないし、女性経験だって少ないわけじゃない。
それに、明らかに年下の名前が当たり前のようにしているのに、年上の自分が怒ったり文句を言ったりしたくないという、くだらないプライドもあったと思う。
だから、俺は、2回目のキスを、なんでもないことのように受け流した。
「…あぁ。おはよう。」
「リヴァイさんが…!私に、おはようって…!」
名前はまた、朝からどうでもいいことに感動して目をキラキラさせていた。
若いとは素晴らしいことかもしれない。
朝から本当に、元気がいい。
俺も朝が弱いわけではないし、早起きは割と得意な方だ。
だが、人並み以上の低血圧のおかげで、朝のテンションが動く死体みたいだと友人にからかわれる俺とは正反対だった。
「顔を洗ってくる。その間に朝飯を用意しておけ。」
「了解です!」
名前がお決まりの敬礼ポーズで答えたのを冷めた目で見て、俺は洗面所へと向かった。
顔を洗っている間も包丁の音や食器の音が聞こえていた。
朝起きて自分の身支度だけしていれば、朝食が出てくるなんて久しぶりだった。
出来るだけ自炊はしていた俺は、料理をするのが嫌いなわけではないけれど、好きなわけでもなかった。
正直、面倒だとも思っていたし、朝起きてすぐに名前が朝食を作ってくれているのを見たとき、これならもう少し長く眠れるかもしれないと思ったのだ。
でも、それと同時に、どうしても嫌な思い出が蘇ってくるのだ。
だから余計に、俺はこれからもずっと、あの日々に囚われて生き続けるのかーと絶望にも似た感情で、朝の低いテンションに拍車をかけて気分は沈んでいた。
「どうぞ、召し上がれっ。」
ダイニングテーブルには、彩りの良い和食中心の朝食が並んでいた。
椅子を引いて俺が座れば、名前も向かいの席に座って、嬉しそうに笑った。
この日からほとんど毎朝、おはようのキスの後には、ダイニングテーブルの上には美味しい朝食が並んで、椅子に座る俺の前には、底抜けに明るい名前の笑顔があった。
今だから言うけれど、名前の無垢な笑顔は、俺の沈んだ心をこのときから少しずつ持ち上げてくれていたんだ。
自分自身でさえ、それに気づいてはいなかったけれどー。
君の笑顔を探し彷徨う悪夢で、おはようのキスを待っている
朝のリヴァイさんはとても元気がなかったの。
どこか寂しそうでもあった。
私なんかのおはようのキスじゃ、リヴァイさんは独りぼっちの夢の中から起きられないね。
我儘な私の恋に付き合ってくれているリヴァイさんに、私に出来ることって何があるのかな。
せめて、笑わないリヴァイさんの代わりに、私はいつも笑っていよう。
どんなときも、笑っていようと思う。
でも、やっぱり、おはようのキスはしたいな。