◇73ページ◇琥珀色の月の魔法
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仕事を終えて研究棟を出た頃には、クリスマス・イヴはもうあと30分程度しか残っていなかった。
新薬の開発が最後の大詰めを迎えていて、連日残業が続いている。
ここ最近はほとんど徹夜のような状態で、今日は、クリスマス・イヴだからと早かったくらいだ。
これから飲みに行くからと正面玄関の方へ向かったエルド達と別れた俺は、駐車場へ向かうために中庭を歩いていた。
真冬の空気は舞う埃が宝石のように見えるくらいに澄んで綺麗で、夜空には幾千の星とまん丸の月が輝いていた。
残念ながら、ホワイトクリスマスではないようだが、琥珀色の月が淡く照らす夜空の下で、恋人達は幸せな時間を過ごしたに違いない。
そんなことを思いながら夜空を見上げていると、少し離れたところにあるベンチに座って、俺と同じように夜空を見上げている横顔を見つけた。
儚げな瞳に、ただひたすらに月を映そうとしているようだった。
どうして今日はこんなにも会ってしまうんだろうー。
ツイているのか、いないのか。
自分でも分からなくて、頭を掻いた。
(こんな時間に何やってんだ、アイツは…。)
コートを着ていても凍えるような寒さだ。
それなのに、名前は、小花柄のロングワンピースの薄手のパジャマ姿だった。
もう二度と関わっちゃいけないー。
自分に言い聞かせるようにして、踵を返した。
そのはずだったのに、気づいたら俺は、返した踵を戻して名前のいるベンチへ歩みを進めていた。
「おい。」
「ひゃあ…!」
俺が声をかけると、名前はとてつもなく間抜けな悲鳴を上げた。
そして、俺を見て、また大きく目を見開いた。
「あ…!リヴァイ先生!!」
名前は、俺を見て驚いた顔をしたままで言った。
今度は、目を見開いたのは俺の方だった。
「なぜ…俺の名前を知ってる?」
俺の声は、緊張していた。
もしかして、思い出したんじゃー。
そんな飽きもしない期待は、呆気なく裏切られる。
「昼間にぶつかったときに、リヴァイ先生の免許証が私の財布に紛れ込んじゃって…。
それで勝手に名前とか見ちゃいました。ごめんなさい。」
「…!」
今度は別の意味で驚いて、俺はすぐにバッグの中から自分の財布を取り出した。
中身を確認してみると、確かに免許証が入ってない。
「リヴァイ先生は、今までお仕事ですか?」
「あぁ、今終わったところだ。」
たぶん、名前は、白衣を着ていた俺のことを医者だと勘違いしているんだろうと思ったけれど、そのままにした。
否定をしたって、しなくたって、もう関わり合うこともないのだから必要ない。
「遅くまでお疲れ様です。もう帰るんですか?
それともどこか遊びに行くんですか?」
「行くかよ。何時だと思ってだ。」
「それならちょうどよかった。」
名前はそう言うと、ベンチから立ち上がった。
そして、俺の手首を掴んだ。
驚いた俺に、名前は笑顔で言う。
「今から一緒に夜更かししましょう!」
「は?」
「ほら、こっちですよ!」
名前が楽しそうに俺の手を引いて、笑う。
無邪気なその声は、まるで魔法の呪文を唱えるように、今すぐ離れなさい!と指令を出す理性を無視して、俺の心と身体を操った。
新薬の開発が最後の大詰めを迎えていて、連日残業が続いている。
ここ最近はほとんど徹夜のような状態で、今日は、クリスマス・イヴだからと早かったくらいだ。
これから飲みに行くからと正面玄関の方へ向かったエルド達と別れた俺は、駐車場へ向かうために中庭を歩いていた。
真冬の空気は舞う埃が宝石のように見えるくらいに澄んで綺麗で、夜空には幾千の星とまん丸の月が輝いていた。
残念ながら、ホワイトクリスマスではないようだが、琥珀色の月が淡く照らす夜空の下で、恋人達は幸せな時間を過ごしたに違いない。
そんなことを思いながら夜空を見上げていると、少し離れたところにあるベンチに座って、俺と同じように夜空を見上げている横顔を見つけた。
儚げな瞳に、ただひたすらに月を映そうとしているようだった。
どうして今日はこんなにも会ってしまうんだろうー。
ツイているのか、いないのか。
自分でも分からなくて、頭を掻いた。
(こんな時間に何やってんだ、アイツは…。)
コートを着ていても凍えるような寒さだ。
それなのに、名前は、小花柄のロングワンピースの薄手のパジャマ姿だった。
もう二度と関わっちゃいけないー。
自分に言い聞かせるようにして、踵を返した。
そのはずだったのに、気づいたら俺は、返した踵を戻して名前のいるベンチへ歩みを進めていた。
「おい。」
「ひゃあ…!」
俺が声をかけると、名前はとてつもなく間抜けな悲鳴を上げた。
そして、俺を見て、また大きく目を見開いた。
「あ…!リヴァイ先生!!」
名前は、俺を見て驚いた顔をしたままで言った。
今度は、目を見開いたのは俺の方だった。
「なぜ…俺の名前を知ってる?」
俺の声は、緊張していた。
もしかして、思い出したんじゃー。
そんな飽きもしない期待は、呆気なく裏切られる。
「昼間にぶつかったときに、リヴァイ先生の免許証が私の財布に紛れ込んじゃって…。
それで勝手に名前とか見ちゃいました。ごめんなさい。」
「…!」
今度は別の意味で驚いて、俺はすぐにバッグの中から自分の財布を取り出した。
中身を確認してみると、確かに免許証が入ってない。
「リヴァイ先生は、今までお仕事ですか?」
「あぁ、今終わったところだ。」
たぶん、名前は、白衣を着ていた俺のことを医者だと勘違いしているんだろうと思ったけれど、そのままにした。
否定をしたって、しなくたって、もう関わり合うこともないのだから必要ない。
「遅くまでお疲れ様です。もう帰るんですか?
それともどこか遊びに行くんですか?」
「行くかよ。何時だと思ってだ。」
「それならちょうどよかった。」
名前はそう言うと、ベンチから立ち上がった。
そして、俺の手首を掴んだ。
驚いた俺に、名前は笑顔で言う。
「今から一緒に夜更かししましょう!」
「は?」
「ほら、こっちですよ!」
名前が楽しそうに俺の手を引いて、笑う。
無邪気なその声は、まるで魔法の呪文を唱えるように、今すぐ離れなさい!と指令を出す理性を無視して、俺の心と身体を操った。