◇71ページ◇忘れたくない人
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新薬の共同開発のため、エルディア病院に併設してある研究棟に研究室が移って数か月が経った。
変わった出勤先も車通勤もすっかり慣れて、いつもの日常に組み込まれている。
職員専用の駐車場に車を停めた俺は、エンジンを切ると大きく息を吐きだした。
昨晩はミケに勧められるままにいろんな名前のカクテルを飲まされたせいで、完全に二日酔いだ。
まだ頭がガンガンする。
仕事用のバッグを持った俺は、のろのろと車から出た。
外来患者や入院患者の家族達が出入りする正面玄関から離れたエリアに研究棟はある。
夏も真っただ中で緑が生い茂る中庭を歩いていても、すれ違うのは主に研究を担当している職員ばかりだ。
俺は、バッグからスマホを取り出した。
着信履歴には、エルディア病院の名前が幾つも並んでいる。時々、アンカの名前もあった。
時間は全て真夜中の2時過ぎだ。
新薬のことでアンカから連絡があるとも思えないが、彼女からの用件は仕事以外に考えられなかった。
今、開発中の新薬の件で何か問題でもあったのか。
研究棟で白衣に着替えたら、入院病棟へ行って確認した方が良さそうだ。
「おはようございます!!」
後ろからバカでかい声が聞こえて来て、俺は頭を押さえて振り返った。
毎朝、飽きもせずに手を振って駆け寄ってくるのはオルオだ。その隣には、今朝もペトラが一緒にいる。
エルディア病院の研究棟に研究室が移ったことで、職場が近くなったペトラの家にオルオが転がり込んできたと聞いている。
この夏の魔法で漸くオルオの願いが届き、2人は恋人同士になったのだそうだ。
「おはようございます、リヴァイさん。」
「おはようございます!!今日も1日!!リヴァイさんのお役に立てるようにー。」
「オルオ、声がデケぇ。頭が痛ぇ。」
とりあえず黙って欲しくて、眉間に皴を寄せた俺は、頭を押さえながら声を絞り出した。
昨晩、ミケのバーに来ていたオルオとペトラは、俺がミケとファーランに死ぬほど呑まされていたのを知っていたから、すぐに事情を察したらしかった。
「二日酔いっすか!?大丈夫っすか!?俺、何か飲み薬買って来ましょうか!?」
焦ったように叫び出したオルオは、余計に騒がしくなってしまった。
失敗した。
チッと舌打ちをして睨むと、空気を読んだペトラがオルオの耳を摘まんで連れて行ってくれた。
「はぁ…。」
もう何に対してのため息なのか、自分でも分からない。
騒がしい声を上げながら連行されていくオルオの後ろから、ゆっくりとした足取りで研究棟へ向かった。
それからすぐ、また騒がしい声が俺の名前を呼んだ。
「リヴァイ!!リヴァイ、リヴァイ、リヴァイ!!!」
馬鹿の一つ覚えみたいに俺の名前を連呼した声の主は、ファーランだった。
今度は何だ―。
ため息を呑み込んで後ろを振り返ると、顔色を真っ青にしたファーランが、焦った様子で走って来ていた。
二日酔いで頭がぼんやりする俺でも、何か良からぬことが起こったことはすぐに分かった。
そもそも、医師であるファーランが研究棟にやって来ること自体が珍しいのだ。
「どうした?」
「名前が!!昨日、救急車でうちの病院に運ばれたって!!」
ファーランが焦ったままで叫ぶように言った。
二日酔いでぼんやりとした頭が、一瞬で目覚めた。
変わった出勤先も車通勤もすっかり慣れて、いつもの日常に組み込まれている。
職員専用の駐車場に車を停めた俺は、エンジンを切ると大きく息を吐きだした。
昨晩はミケに勧められるままにいろんな名前のカクテルを飲まされたせいで、完全に二日酔いだ。
まだ頭がガンガンする。
仕事用のバッグを持った俺は、のろのろと車から出た。
外来患者や入院患者の家族達が出入りする正面玄関から離れたエリアに研究棟はある。
夏も真っただ中で緑が生い茂る中庭を歩いていても、すれ違うのは主に研究を担当している職員ばかりだ。
俺は、バッグからスマホを取り出した。
着信履歴には、エルディア病院の名前が幾つも並んでいる。時々、アンカの名前もあった。
時間は全て真夜中の2時過ぎだ。
新薬のことでアンカから連絡があるとも思えないが、彼女からの用件は仕事以外に考えられなかった。
今、開発中の新薬の件で何か問題でもあったのか。
研究棟で白衣に着替えたら、入院病棟へ行って確認した方が良さそうだ。
「おはようございます!!」
後ろからバカでかい声が聞こえて来て、俺は頭を押さえて振り返った。
毎朝、飽きもせずに手を振って駆け寄ってくるのはオルオだ。その隣には、今朝もペトラが一緒にいる。
エルディア病院の研究棟に研究室が移ったことで、職場が近くなったペトラの家にオルオが転がり込んできたと聞いている。
この夏の魔法で漸くオルオの願いが届き、2人は恋人同士になったのだそうだ。
「おはようございます、リヴァイさん。」
「おはようございます!!今日も1日!!リヴァイさんのお役に立てるようにー。」
「オルオ、声がデケぇ。頭が痛ぇ。」
とりあえず黙って欲しくて、眉間に皴を寄せた俺は、頭を押さえながら声を絞り出した。
昨晩、ミケのバーに来ていたオルオとペトラは、俺がミケとファーランに死ぬほど呑まされていたのを知っていたから、すぐに事情を察したらしかった。
「二日酔いっすか!?大丈夫っすか!?俺、何か飲み薬買って来ましょうか!?」
焦ったように叫び出したオルオは、余計に騒がしくなってしまった。
失敗した。
チッと舌打ちをして睨むと、空気を読んだペトラがオルオの耳を摘まんで連れて行ってくれた。
「はぁ…。」
もう何に対してのため息なのか、自分でも分からない。
騒がしい声を上げながら連行されていくオルオの後ろから、ゆっくりとした足取りで研究棟へ向かった。
それからすぐ、また騒がしい声が俺の名前を呼んだ。
「リヴァイ!!リヴァイ、リヴァイ、リヴァイ!!!」
馬鹿の一つ覚えみたいに俺の名前を連呼した声の主は、ファーランだった。
今度は何だ―。
ため息を呑み込んで後ろを振り返ると、顔色を真っ青にしたファーランが、焦った様子で走って来ていた。
二日酔いで頭がぼんやりする俺でも、何か良からぬことが起こったことはすぐに分かった。
そもそも、医師であるファーランが研究棟にやって来ること自体が珍しいのだ。
「どうした?」
「名前が!!昨日、救急車でうちの病院に運ばれたって!!」
ファーランが焦ったままで叫ぶように言った。
二日酔いでぼんやりとした頭が、一瞬で目覚めた。