◇65ページ◇魔法使い(1)
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エルディア病院には研究棟があった。
そこでは、系列の研究所と連携して、薬の研究をしている。
建物自体は古いが、研究室には最新機材が揃っていた。
「最近、毎日ここに来てるな。」
薬の調合をしていた俺に、ファーランが声をかけて来た。
腕時計を確認すれば、もう外来が終わった時間だった。
外来診療が終わって、顔を見せに来たようだ。
「そうだな。気が散るから、話しかけないでくれるか。」
薬の評価を確認しながら、冷たく言う。
一応、俺は、医学部だが、薬についても学んでいるし、友人で恩師でもあるエルヴィンが薬剤の研究が得意で、よく話を聞かされたり、手伝わされたりしていたから、薬剤の調合には自信がある。
でも、夜勤の研修医と交代して研究室に来てから、何時間もずっと籠っているのに、良さそうな薬はまだ出来上がらない。
そんなことをもう5日も続けていた。
今日は夜勤もあるというのに、このまま寝られそうにない。
相手をしない俺に、ファーランはつまらなそうにしながら、近くのパイプ椅子にドカリと腰をおろした。
「そんなにあのお嬢様のことが気になるのかよ。」
「…どうしてだろうな。」
プリントアウトした評価の結果を確認しながら、俺は呟くように言った。
自分でも、どうしてこうも必死に薬を作ろうとしているのかが分からなかった。
ただ、大切な人達を傷つけたくないと泣いていたあのコが、頭から離れなかった。
もしかしたら、せっかく助けた命の彼女には、笑って生きていてほしいと思っているのかもしれない。
それに、あのCTやMRIの画像を見たとき、出来るかもしれないと構成された薬があったのも大きいと思う。
「まさか…ロリコン?」
「バカか。」
「冗談だよ。笑えよ。目が怖ぇんだよ、お前。
外来の患者も言ってたぞ。すげぇ怖い研修医がいる曜日には行きたくねぇって。
それ、絶対、お前だからな。」
ファーランがため息交じりに言った。
薬の調合を始めていた俺の手がピタリと止まる。
俺は元々、人付き合いが上手い方ではない。
子供の頃から、普通にしていても俺を怖がって逃げて行く背中を何度も見たことがある。
だから、自分が優しい顔立ちではないことだって自覚済みだ。
でもー。
【リヴァイ先生:黒かみ。清けつ感があって、優しい目をしてるお兄さん。こう茶のかおりがする。】
あの少女の日記帳に書かれていた俺は、とても優しそうな青年になっていた。
少女の目には、他の人間が見ている俺とは違う俺が見えているうらしかった。
毎日、馬鹿の一つ覚えみたいに病室に訪れる俺に「こんにちは。」と笑顔で挨拶をした彼女は、覚えていないはずの俺のことを「リヴァイ先生だ!」と嬉しそうに当てるのだ。
あの日から、少女は、朝起きると、母親と一緒に日記帳の中を確認して、自分の病室を訪れる人間の特徴を覚えるようにしたのだそうだ。
でもきっと、ファーランが、あの日記帳に書かれた俺の特徴を見ても、俺だとは思わないに決まっている。
でも、少女は可愛らしい笑顔で、俺の名前を呼ぶのだ。
それが、本当はすごく嬉しい。
「あんまりひとりの患者に肩入れしすぎるなって、ナイルも言ってたぞ。」
俺の肩をポンポンと叩き、ファーランは研究室を出て行った。
その通りだと思いつつ、俺は疲れた目をこすりながら、薬の調合を続けた。
そこでは、系列の研究所と連携して、薬の研究をしている。
建物自体は古いが、研究室には最新機材が揃っていた。
「最近、毎日ここに来てるな。」
薬の調合をしていた俺に、ファーランが声をかけて来た。
腕時計を確認すれば、もう外来が終わった時間だった。
外来診療が終わって、顔を見せに来たようだ。
「そうだな。気が散るから、話しかけないでくれるか。」
薬の評価を確認しながら、冷たく言う。
一応、俺は、医学部だが、薬についても学んでいるし、友人で恩師でもあるエルヴィンが薬剤の研究が得意で、よく話を聞かされたり、手伝わされたりしていたから、薬剤の調合には自信がある。
でも、夜勤の研修医と交代して研究室に来てから、何時間もずっと籠っているのに、良さそうな薬はまだ出来上がらない。
そんなことをもう5日も続けていた。
今日は夜勤もあるというのに、このまま寝られそうにない。
相手をしない俺に、ファーランはつまらなそうにしながら、近くのパイプ椅子にドカリと腰をおろした。
「そんなにあのお嬢様のことが気になるのかよ。」
「…どうしてだろうな。」
プリントアウトした評価の結果を確認しながら、俺は呟くように言った。
自分でも、どうしてこうも必死に薬を作ろうとしているのかが分からなかった。
ただ、大切な人達を傷つけたくないと泣いていたあのコが、頭から離れなかった。
もしかしたら、せっかく助けた命の彼女には、笑って生きていてほしいと思っているのかもしれない。
それに、あのCTやMRIの画像を見たとき、出来るかもしれないと構成された薬があったのも大きいと思う。
「まさか…ロリコン?」
「バカか。」
「冗談だよ。笑えよ。目が怖ぇんだよ、お前。
外来の患者も言ってたぞ。すげぇ怖い研修医がいる曜日には行きたくねぇって。
それ、絶対、お前だからな。」
ファーランがため息交じりに言った。
薬の調合を始めていた俺の手がピタリと止まる。
俺は元々、人付き合いが上手い方ではない。
子供の頃から、普通にしていても俺を怖がって逃げて行く背中を何度も見たことがある。
だから、自分が優しい顔立ちではないことだって自覚済みだ。
でもー。
【リヴァイ先生:黒かみ。清けつ感があって、優しい目をしてるお兄さん。こう茶のかおりがする。】
あの少女の日記帳に書かれていた俺は、とても優しそうな青年になっていた。
少女の目には、他の人間が見ている俺とは違う俺が見えているうらしかった。
毎日、馬鹿の一つ覚えみたいに病室に訪れる俺に「こんにちは。」と笑顔で挨拶をした彼女は、覚えていないはずの俺のことを「リヴァイ先生だ!」と嬉しそうに当てるのだ。
あの日から、少女は、朝起きると、母親と一緒に日記帳の中を確認して、自分の病室を訪れる人間の特徴を覚えるようにしたのだそうだ。
でもきっと、ファーランが、あの日記帳に書かれた俺の特徴を見ても、俺だとは思わないに決まっている。
でも、少女は可愛らしい笑顔で、俺の名前を呼ぶのだ。
それが、本当はすごく嬉しい。
「あんまりひとりの患者に肩入れしすぎるなって、ナイルも言ってたぞ。」
俺の肩をポンポンと叩き、ファーランは研究室を出て行った。
その通りだと思いつつ、俺は疲れた目をこすりながら、薬の調合を続けた。