◇62ページ◇エルヴィン
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母校である帝都大学は、相変わらず堂々とした佇まいだった。
古くも威厳のある建物に、まるで、最初からすべて高みの見物をしていたのだと見下ろされているようだった。
学生達が行き交う活気に満ち溢れたキャンパスを、俺は全速力で駆け抜けた。
学生時代に所属していたサークルはそのまま残っていて、部屋も変わっていないらしい。
今から行けば、多分そこにいるはずだとアルミン達から聞いていた。
見慣れた階段を駆け上がって、目的のフロアの古めかしい廊下を走った。
途中、見覚えのある残念な助手が「廊下を走るな!」と怒鳴っていたが当然無視をした。
漸く目的の場所にたどり着いた俺は、サークルの部屋の扉を勢いよく開いた。
中にいたのは数名の学生と、ナナバだった。
ナナバは俺と同期で、卒業後に就職した俺とは違って、そのまま大学に残り、今は学生時代に所属していたこのサークルで、顧問の助手をしていた。
彼らは、いきなりやって来た俺に驚いた顔をした。
「エルヴィンはどこにいる。」
睨むように俺が言えば、ナナバは驚いて見開いていた目を細めた。
ナナバはすぐに俺の用件が何かを悟ったようだ。
「さっきまで会議だったんだ。まだ部屋にいると思う。
待ってればここに来るだろうけど、
あっちの部屋の方がゆっくり話せるだろうから案内するよ。」
「分かった。」
ついて来いという背中を追いかけて、俺は今来たばかりの部屋を出た。
「よくここに辿り着いたね。結構、念入りだったと思うんだけどな。」
廊下を歩きながら、ナナバが言った。
「アルミン達に吐かせた。」
「そっか。可哀想に。」
ナナバが困ったように眉尻を下げたけれど、口の端は上がっていた。
研修の手配をしたのはナナバだったらしく、せっかく演技指導までしたのだけれど、と可笑しそうに笑った。
それが嬉しそうに見えて、俺は眉を顰めた。
自分の素性が俺にバレないように裏工作をしていた名前を知っていたのなら、俺にバレたと知れば焦ってもよさそうなのに、妙だ。
「さぁ、ここだよ。」
ナナバが連れて来たのは、俺も知っているエルヴィンの部屋だった。
わざわざ一緒に来たのはきっと、俺が殴りこんだりしないようにという見張りの意味もあったのだと思う。
それくらいに俺は、エルヴィンに腹が立っていたから。
「助かった。ありがとう。」
俺の礼の意味を理解出来るだけの勘のいいナナバは「いいよ。」と苦笑を返した。
そして、そっと俺の肩に手を乗せると、どこか切なそうに微笑んだ。
「きっと君ならガラスの靴なんてなくてもシンデレラを見つけられるよ。
世界一素敵な魔法使いさん。」
含みのある笑みを浮かべてそう言って、ナナバは俺に背を向けた。
古くも威厳のある建物に、まるで、最初からすべて高みの見物をしていたのだと見下ろされているようだった。
学生達が行き交う活気に満ち溢れたキャンパスを、俺は全速力で駆け抜けた。
学生時代に所属していたサークルはそのまま残っていて、部屋も変わっていないらしい。
今から行けば、多分そこにいるはずだとアルミン達から聞いていた。
見慣れた階段を駆け上がって、目的のフロアの古めかしい廊下を走った。
途中、見覚えのある残念な助手が「廊下を走るな!」と怒鳴っていたが当然無視をした。
漸く目的の場所にたどり着いた俺は、サークルの部屋の扉を勢いよく開いた。
中にいたのは数名の学生と、ナナバだった。
ナナバは俺と同期で、卒業後に就職した俺とは違って、そのまま大学に残り、今は学生時代に所属していたこのサークルで、顧問の助手をしていた。
彼らは、いきなりやって来た俺に驚いた顔をした。
「エルヴィンはどこにいる。」
睨むように俺が言えば、ナナバは驚いて見開いていた目を細めた。
ナナバはすぐに俺の用件が何かを悟ったようだ。
「さっきまで会議だったんだ。まだ部屋にいると思う。
待ってればここに来るだろうけど、
あっちの部屋の方がゆっくり話せるだろうから案内するよ。」
「分かった。」
ついて来いという背中を追いかけて、俺は今来たばかりの部屋を出た。
「よくここに辿り着いたね。結構、念入りだったと思うんだけどな。」
廊下を歩きながら、ナナバが言った。
「アルミン達に吐かせた。」
「そっか。可哀想に。」
ナナバが困ったように眉尻を下げたけれど、口の端は上がっていた。
研修の手配をしたのはナナバだったらしく、せっかく演技指導までしたのだけれど、と可笑しそうに笑った。
それが嬉しそうに見えて、俺は眉を顰めた。
自分の素性が俺にバレないように裏工作をしていた名前を知っていたのなら、俺にバレたと知れば焦ってもよさそうなのに、妙だ。
「さぁ、ここだよ。」
ナナバが連れて来たのは、俺も知っているエルヴィンの部屋だった。
わざわざ一緒に来たのはきっと、俺が殴りこんだりしないようにという見張りの意味もあったのだと思う。
それくらいに俺は、エルヴィンに腹が立っていたから。
「助かった。ありがとう。」
俺の礼の意味を理解出来るだけの勘のいいナナバは「いいよ。」と苦笑を返した。
そして、そっと俺の肩に手を乗せると、どこか切なそうに微笑んだ。
「きっと君ならガラスの靴なんてなくてもシンデレラを見つけられるよ。
世界一素敵な魔法使いさん。」
含みのある笑みを浮かべてそう言って、ナナバは俺に背を向けた。