◇61ページ◇会いたい
Name change
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あれから俺は、空いた時間のすべてを名前の行方を捜すために使った。
週末は、2人で出かけた場所にも、そうではない場所にも、ありとあらゆる場所へ行ってみた。
そんな俺の姿は、何かに取り憑かれたように見えていたのかもしれない。
ファーランやハンジ達は、存在しない女を探すのはもうやめろと繰り返した。
それでも俺は止めなかった。
どんなカラクリがあって、俺以外のすべてから名前という存在を消したのかは分からないが、あの日々は幻ではないことだけは確かだったからだ。
窓辺に残されていたハートはもう消えてしまったけれど、あれは名前があの日あのとき、あの場所にいたという証拠に違いないのだ。
きっと、名前の痕跡を消そうとした誰かが、アレだけは見つけられなかったのだろう。
俺から名前を引き剥がしたい人間には心当たりだってあった。
名前には親が決めた婚約者がいたし、親も俺とのことを認めていないようだった。
もしくは、最後に魔法をかけると言った名前がこの状況を生み出したということなら、あのハートはメッセージかもしれないとも思った。
もしそうなら、あれはきっと、自分を忘れないでくれという名前の声だ。
自分に都合のいい解釈だとも思う。
でも、掃除だって料理だって抜かりなかった名前が、自分で書いたハートのことを忘れるとはどうしても思えなかった。
名前のフルネームすら知らない捜索では何の手掛かりも掴めないまま、気が付けば3ヵ月が過ぎ、季節は春になっていた。
まだ諦めきれない俺は、カフェのテラス席に座って、紅茶を飲みながら街行く人達を凝視していた。
もしかしたら、名前がいるかもしれないー。
そんな奇跡にかけるくらいしか、俺にはもう出来ることが残されていなかったのだ。
そうしていると、見覚えのある2人組がテラスの少し離れた席に座った。
金髪の小柄な男と背の高いショートカットの女だ。
知っているはずだが、誰だったかー。
少し考えてすぐに思い出した。
去年、研究所に研修でやって来た学生だ。
確か、名前は、アルミンとミカサだったか。
凄くバカなのが混ざっていたが、ミカサはとても優秀だったのを覚えている。
『名前ちゃんってどこの大学の医学生ですか?
すごく優秀なんでしょうね。』
前に、母の病を治すための治療薬の研究をしているとき、雑用を手伝ってくれた名前のことをペトラ達が医学部の学生だと勘違いしていたのを思い出した。
薬の評価やレポートを上手にまとめて、医学英語ばかりの文献を何でもないことのように読むのは、医学の知識がないと無理だとも言っていた。
あのとき、確かに、俺もそう思ったのだ。
もしかして、名前は本当に医学部の学生だったのだろうか。もしくは、医学に関係する仕事についていたのかもしれない。
ティーカップをソーサーの上に置いた俺は、アルミンとミカサの元へ向かった。
名前がもし、帝都大学の医学部生だったのなら、アルミン達と知り合いかもしれない。
そうではなくても、研究所のエースであるペトラ達に『優秀』と言わせた名前のことを、医学部のアルミン達は知っているかもしれない。
(同じ歳だし…。)
彼らと名前を繋ぐ共通点なんて、正直それくらいしか見つけられなかった。
それでも、手がかりをすべて失った俺には、藁をもすがる思いだったのだ。
「なぁ、お前ら。」
挨拶もなしに、俺はアルミンとミカサに声をかけた。
注文した飲み物が来るのを待ちながらお喋りをしていた2人は、驚いた顔をして俺を見上げた。
「リ…っ、リヴァイさん…!?なんで、ここに…!?」
アルミンはとても狼狽えていた。
急に話しかけて驚くのは分かるが、ここまで怯えられるほどに怖い顔をしているだろうか。
そんなことを考えたが、名前を見つけなければと必死になっている俺は、顔が怖いとファーランとハンジにも言われていたから、心当たりもあったし、それほど訝しくも思わなかった。
「そこで飲んでたらお前らを見つけた。聞きてぇことがあるんだが。」
「え、ぼ、ぼぼぼぼ、僕達にですか?えっと、それは…っ。」
「とりあえず、ここを出よう。
近くの…、そう、そこのコンビニのトイレで話すのがいい。」
ミカサは無表情でそう言って立ち上がった。
話をするのにカフェのテーブル席はとても都合がいいと思うのは俺だけのようで、狼狽えて口ごもっていたアルミンも「それはいい!」と立ち上がった。
コンビニのトイレなんて、用がないと行きたくない。
それに、そんなところで立ち話をしている人間なんて、見たこともない。
さすがにそれには、俺も訝しく眉を顰めた。
「ここでいいだろ。俺はまだ紅茶を飲んでる途中だ。」
「私達は注文したばかりです。それでもいいと言ってるんだから、
今すぐコンビニにー。」
「おーい!今日は俺が一番乗りだと思ったんだけどな~!」
コンビニへ行く、行かないとしているところへ、長身長髪の男が手を振ってやって来た。
その男にも見覚えがあった。
エレンだ。
名前と子供の頃からの友人だと言っていた、エレンだ。
「あ~…、来ちゃった…。」
アルミンが片手に額を乗せて、首をもたげた。
「いつも30分以上遅刻するくせに、なぜこんなときだけ5分前行動。」
「それはこの前、ゲームに夢中になって1時間以上遅刻したエレンに
ブチギレたミカサがゲーム機を破壊したからだと思うよ。」
「チッ。」
ミカサが、イラついた様子で舌打ちをした。
俺達のいるテーブルまでやって来たエレンはそこで初めて、俺も一緒にいることに気が付いたようだ。
そして、あからさまにマズいという顔をした。
もうそれで、俺は確信するしかなかった。
「そういうことか。ここが繋がってたんだな。」
3人を睨みつけた俺に、エレン達は観念したように項垂れた。
週末は、2人で出かけた場所にも、そうではない場所にも、ありとあらゆる場所へ行ってみた。
そんな俺の姿は、何かに取り憑かれたように見えていたのかもしれない。
ファーランやハンジ達は、存在しない女を探すのはもうやめろと繰り返した。
それでも俺は止めなかった。
どんなカラクリがあって、俺以外のすべてから名前という存在を消したのかは分からないが、あの日々は幻ではないことだけは確かだったからだ。
窓辺に残されていたハートはもう消えてしまったけれど、あれは名前があの日あのとき、あの場所にいたという証拠に違いないのだ。
きっと、名前の痕跡を消そうとした誰かが、アレだけは見つけられなかったのだろう。
俺から名前を引き剥がしたい人間には心当たりだってあった。
名前には親が決めた婚約者がいたし、親も俺とのことを認めていないようだった。
もしくは、最後に魔法をかけると言った名前がこの状況を生み出したということなら、あのハートはメッセージかもしれないとも思った。
もしそうなら、あれはきっと、自分を忘れないでくれという名前の声だ。
自分に都合のいい解釈だとも思う。
でも、掃除だって料理だって抜かりなかった名前が、自分で書いたハートのことを忘れるとはどうしても思えなかった。
名前のフルネームすら知らない捜索では何の手掛かりも掴めないまま、気が付けば3ヵ月が過ぎ、季節は春になっていた。
まだ諦めきれない俺は、カフェのテラス席に座って、紅茶を飲みながら街行く人達を凝視していた。
もしかしたら、名前がいるかもしれないー。
そんな奇跡にかけるくらいしか、俺にはもう出来ることが残されていなかったのだ。
そうしていると、見覚えのある2人組がテラスの少し離れた席に座った。
金髪の小柄な男と背の高いショートカットの女だ。
知っているはずだが、誰だったかー。
少し考えてすぐに思い出した。
去年、研究所に研修でやって来た学生だ。
確か、名前は、アルミンとミカサだったか。
凄くバカなのが混ざっていたが、ミカサはとても優秀だったのを覚えている。
『名前ちゃんってどこの大学の医学生ですか?
すごく優秀なんでしょうね。』
前に、母の病を治すための治療薬の研究をしているとき、雑用を手伝ってくれた名前のことをペトラ達が医学部の学生だと勘違いしていたのを思い出した。
薬の評価やレポートを上手にまとめて、医学英語ばかりの文献を何でもないことのように読むのは、医学の知識がないと無理だとも言っていた。
あのとき、確かに、俺もそう思ったのだ。
もしかして、名前は本当に医学部の学生だったのだろうか。もしくは、医学に関係する仕事についていたのかもしれない。
ティーカップをソーサーの上に置いた俺は、アルミンとミカサの元へ向かった。
名前がもし、帝都大学の医学部生だったのなら、アルミン達と知り合いかもしれない。
そうではなくても、研究所のエースであるペトラ達に『優秀』と言わせた名前のことを、医学部のアルミン達は知っているかもしれない。
(同じ歳だし…。)
彼らと名前を繋ぐ共通点なんて、正直それくらいしか見つけられなかった。
それでも、手がかりをすべて失った俺には、藁をもすがる思いだったのだ。
「なぁ、お前ら。」
挨拶もなしに、俺はアルミンとミカサに声をかけた。
注文した飲み物が来るのを待ちながらお喋りをしていた2人は、驚いた顔をして俺を見上げた。
「リ…っ、リヴァイさん…!?なんで、ここに…!?」
アルミンはとても狼狽えていた。
急に話しかけて驚くのは分かるが、ここまで怯えられるほどに怖い顔をしているだろうか。
そんなことを考えたが、名前を見つけなければと必死になっている俺は、顔が怖いとファーランとハンジにも言われていたから、心当たりもあったし、それほど訝しくも思わなかった。
「そこで飲んでたらお前らを見つけた。聞きてぇことがあるんだが。」
「え、ぼ、ぼぼぼぼ、僕達にですか?えっと、それは…っ。」
「とりあえず、ここを出よう。
近くの…、そう、そこのコンビニのトイレで話すのがいい。」
ミカサは無表情でそう言って立ち上がった。
話をするのにカフェのテーブル席はとても都合がいいと思うのは俺だけのようで、狼狽えて口ごもっていたアルミンも「それはいい!」と立ち上がった。
コンビニのトイレなんて、用がないと行きたくない。
それに、そんなところで立ち話をしている人間なんて、見たこともない。
さすがにそれには、俺も訝しく眉を顰めた。
「ここでいいだろ。俺はまだ紅茶を飲んでる途中だ。」
「私達は注文したばかりです。それでもいいと言ってるんだから、
今すぐコンビニにー。」
「おーい!今日は俺が一番乗りだと思ったんだけどな~!」
コンビニへ行く、行かないとしているところへ、長身長髪の男が手を振ってやって来た。
その男にも見覚えがあった。
エレンだ。
名前と子供の頃からの友人だと言っていた、エレンだ。
「あ~…、来ちゃった…。」
アルミンが片手に額を乗せて、首をもたげた。
「いつも30分以上遅刻するくせに、なぜこんなときだけ5分前行動。」
「それはこの前、ゲームに夢中になって1時間以上遅刻したエレンに
ブチギレたミカサがゲーム機を破壊したからだと思うよ。」
「チッ。」
ミカサが、イラついた様子で舌打ちをした。
俺達のいるテーブルまでやって来たエレンはそこで初めて、俺も一緒にいることに気が付いたようだ。
そして、あからさまにマズいという顔をした。
もうそれで、俺は確信するしかなかった。
「そういうことか。ここが繋がってたんだな。」
3人を睨みつけた俺に、エレン達は観念したように項垂れた。