◇58ページ◇午前0時の鐘の音がする雷鳴
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週末に一度止んだ雨は、週が明けるとまた思い出したように降り出した。
しかも、研究所に着いた途端、だ。
窓を叩く真っ白い雨粒のせいで、外の様子はすぐによく見えなくなった。
窓を殴りつけ、そのままガラスを割って研究所の中まで入り込もうとしているんじゃないかと疑いたくなるくらいの土砂降りの大雨に、俺も含めて班員達は揃って眉を顰めた。
季節外れの台風のようなそれは、今度こそ数百年に一度の大災害級の大雨だとネットニュースに上がっているとグンタが教えてくれた。
どこからか救急車の音も聞こえていた。
この大雨が原因で、何かあったのかもしれないと思うと、これ以上雨がひどくなる前に帰った方がいい気がしてくる。
同じことを思ったらしいペトラが、今日の勤務についてどうするかをザックレーに確認しに走った。
「それにしてもすごい雨ですね…。
もう少し来るのが遅かったらびしょ濡れになってたところでした。」
「なんだよ、それは俺への嫌味か!?当てつけか!?」
困ったように眉尻を下げたエルドに、頭の先からつま先までびしょ濡れのオルオが食って掛かった。
グンタが注意しようとしたとき、大きな雷鳴が鳴り響いた。
その途端に、オルオがつんざくような悲鳴を上げてデスクの下に身を隠した。
大雨になってから、雷が鳴ったのはそれが初めてだった。
せめて、雷さえ鳴らなければ、そう思っていたのは、オルオだけじゃない。
【大丈夫か?】
心配になって、名前にメッセージを送った。
名前のバイトの時間は11時からで、家を出るのは10時頃だと聞いている。
だから、まだ家にいるはずだ。
まるでメッセージを待っていたように、送った瞬間に既読になった。
返事が来るかと思ったら、スマホが名前からの着信を知らせた。
仕事中だと分かっていて名前から電話が来るのは珍しい。
何かあったのかもしれない。
そう思って、俺はすぐに電話に出た。
「何かあー。」
≪リヴァ…っ、さん…っ。≫
電話に出た途端に、名前は涙声で俺の名前を呼んだ。
それはひどく弱々しくて、悲しみに満ちているように聞こえた。
≪ごめ…っ、なさい…っ。約束…っ、守れな…っ。≫
名前は泣きじゃくっている上に、声の途中途中で苦しそうな息遣いを挟んでいた。
さらに、スマホの向こうからは大きな雷鳴まで聞こえていて、名前が何を言っているのかよく聞こえなかった。
「おい、どうした?!何があった?!」
俺はスマホを痛いくらいに耳を押しつけて、少し大きめの声で言った。
焦るような俺の様子に、エルド達も何があったのかと心配そうに近寄って来ていた。
≪最後に、私から魔法を…っ、かけます、ね…っ。みんな、忘れて、くれるから…っ。≫
「おい、何言ってんだ!?忘れるって何だ!」
≪リヴァイさん、も、早く、忘れて…っ。幸せに、なって、ください…っ。≫
「どうして最後みたいなこと言ってんだ…!俺はー。」
≪会えて、よかった…。大好き、でした…っ。ずっと。さよ…っ、なら…ー。≫
「待て!!切るな!!おい!!」
通話が切れた虚しい電子音に向かって、俺は怒鳴るように続けていた。
終始泣きじゃくって、息苦しそうにしていた名前の話は要領を得ていなかった。
でも、これを最後にしようとしていたことだけは、嫌というほどに分かってしまった。
「帰宅困難者が出る前に、今日はこのまま帰るようにとザックレー社長がー。」
帰宅許可が出たことだけ理解した俺は、白衣を脱ぎ捨てて研究室を飛び出した。
しかも、研究所に着いた途端、だ。
窓を叩く真っ白い雨粒のせいで、外の様子はすぐによく見えなくなった。
窓を殴りつけ、そのままガラスを割って研究所の中まで入り込もうとしているんじゃないかと疑いたくなるくらいの土砂降りの大雨に、俺も含めて班員達は揃って眉を顰めた。
季節外れの台風のようなそれは、今度こそ数百年に一度の大災害級の大雨だとネットニュースに上がっているとグンタが教えてくれた。
どこからか救急車の音も聞こえていた。
この大雨が原因で、何かあったのかもしれないと思うと、これ以上雨がひどくなる前に帰った方がいい気がしてくる。
同じことを思ったらしいペトラが、今日の勤務についてどうするかをザックレーに確認しに走った。
「それにしてもすごい雨ですね…。
もう少し来るのが遅かったらびしょ濡れになってたところでした。」
「なんだよ、それは俺への嫌味か!?当てつけか!?」
困ったように眉尻を下げたエルドに、頭の先からつま先までびしょ濡れのオルオが食って掛かった。
グンタが注意しようとしたとき、大きな雷鳴が鳴り響いた。
その途端に、オルオがつんざくような悲鳴を上げてデスクの下に身を隠した。
大雨になってから、雷が鳴ったのはそれが初めてだった。
せめて、雷さえ鳴らなければ、そう思っていたのは、オルオだけじゃない。
【大丈夫か?】
心配になって、名前にメッセージを送った。
名前のバイトの時間は11時からで、家を出るのは10時頃だと聞いている。
だから、まだ家にいるはずだ。
まるでメッセージを待っていたように、送った瞬間に既読になった。
返事が来るかと思ったら、スマホが名前からの着信を知らせた。
仕事中だと分かっていて名前から電話が来るのは珍しい。
何かあったのかもしれない。
そう思って、俺はすぐに電話に出た。
「何かあー。」
≪リヴァ…っ、さん…っ。≫
電話に出た途端に、名前は涙声で俺の名前を呼んだ。
それはひどく弱々しくて、悲しみに満ちているように聞こえた。
≪ごめ…っ、なさい…っ。約束…っ、守れな…っ。≫
名前は泣きじゃくっている上に、声の途中途中で苦しそうな息遣いを挟んでいた。
さらに、スマホの向こうからは大きな雷鳴まで聞こえていて、名前が何を言っているのかよく聞こえなかった。
「おい、どうした?!何があった?!」
俺はスマホを痛いくらいに耳を押しつけて、少し大きめの声で言った。
焦るような俺の様子に、エルド達も何があったのかと心配そうに近寄って来ていた。
≪最後に、私から魔法を…っ、かけます、ね…っ。みんな、忘れて、くれるから…っ。≫
「おい、何言ってんだ!?忘れるって何だ!」
≪リヴァイさん、も、早く、忘れて…っ。幸せに、なって、ください…っ。≫
「どうして最後みたいなこと言ってんだ…!俺はー。」
≪会えて、よかった…。大好き、でした…っ。ずっと。さよ…っ、なら…ー。≫
「待て!!切るな!!おい!!」
通話が切れた虚しい電子音に向かって、俺は怒鳴るように続けていた。
終始泣きじゃくって、息苦しそうにしていた名前の話は要領を得ていなかった。
でも、これを最後にしようとしていたことだけは、嫌というほどに分かってしまった。
「帰宅困難者が出る前に、今日はこのまま帰るようにとザックレー社長がー。」
帰宅許可が出たことだけ理解した俺は、白衣を脱ぎ捨てて研究室を飛び出した。