◇55ページ◇実家
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実家の喫茶店の扉を開けると、カランコロンと鈴の音が鳴った。
扉にあった貼紙の通り、年末年始は休みの店内はシンと静まり返っていた。
相変わらず、こじんまりとした喫茶店だ。
ここを『落ち着くから』と気に入って通っている常連客もいるようで、なんとか潰れずに続けていられている。
自分の実家の喫茶店だという贔屓目ではなく、ここの紅茶の葉は絶品で、年に数回は必ず訪れている。
「わぁ…!可愛い喫茶店ですねっ。」
喫茶店に入った途端に、名前は目を輝かせた。
母のクシェルの趣味で集めたアンティーク調の家具や雑貨が、また増えたようだった。
最近では、空いた時間に自分でも雑貨を作って売っているらしく、若い客もやって来るようになったとケニーがご機嫌に話していた。
「どんどんゴチャゴチャしていくな。
アイツ等は、物を増やすばっかりで掃除はちゃんとしてんのか。」
「なんだかリヴァイさん、姑みたいですね。」
窓のサッシに触れた俺を見て、名前が面白そうに笑った。
似たようなことを母親にも言われたことがある。
身に覚えのないそれに訝しくしながら、名前を喫茶店の奥に案内した。
喫茶店のカウンター奥にあるキッチンが自宅と繋がっている造りになっている。
数泊するつもりで用意してきた荷物を持って、キッチンの奥にある扉を開いた。
自宅側の正面玄関とは違い、とても簡易的で狭い玄関だ。
そこで靴を脱いで、まずはリビングに名前を連れて行った。
「おう、来たか。」
ソファに座って新聞を読んでいたケニーが、顔を上げた。
その声に気づいて、リビング奥のキッチンにいた母が、エプロンで手を拭きながら駆けて来た。
「いらっしゃいっ、待ってたのよっ。また会えて嬉しいわっ。」
嬉しそうに言った母の視線は、息子の俺を通り越して斜め後ろにいる名前に向けられていた。
俺はそれが、とても嬉しかった。
「お店の方から来たの?玄関から入ってくればいいのに。」
「名前が喫茶店を見てみてぇと言うから、そっちから来た。」
「まぁ、それなら、喫茶店で美味しい料理でも作って待っていたのに。
いつもリヴァイは何も言ってくれないんだから。
-名前ちゃん、いらっしゃい。」
俺に対して小さな声で文句を言った母は、名前にふわりと微笑んだ。
隣に立つ名前の緊張に強張った顔は視界の端に見えていた。
だが、母に声をかけられた途端に、名前の背筋がピンと伸びて緊張が張りつめた。
「お正月にお招き頂き、ありがとうございます。
明けましておめでとうございます。」
綺麗なお辞儀をして、新年の挨拶をした名前に、母は目を丸くしていた。
「こちらこそ、あけましておめでとう。
そんなにかしこまらなくていいのよ。我が家だと思って寛いでね。」
「いえ…!そんな!!リヴァイさんの生家を我が家だとは思えません!!
聖地です!伝説の場所です!!手を合わせたいくらいです!!」
名前が勢いよく首を横に振った。
俺に対して真っすぐな愛を向けてくるのには慣れたし、笑える。
だが、それを母や叔父の前でされると、ひどく恥ずかしかった。
思った通り、ケニーは腹を抱えて笑った。
「相変わらず名前はそのクソガキにベタ惚れだな。」
「はい!もちろんです!!リヴァイさんほど素敵な人はこの世に存在しませんから!」
馬鹿にされたことにも気づかず、名前が胸を張る。
ついには母まで可笑しそうにクスリと笑うから、俺はいたたまれない気持ちになった。
「おい、そんなことはいいから。土産を渡すんじゃなかったのか。」
「あ、そうでした…!」
話を逸らすのに成功して、ハッとした名前は紙袋からお菓子の箱を取り出した。
「あの、これ…!お菓子を作ってきたんです。」
「まぁ、名前ちゃんの手作りなの?」
「はいっ。クシェルさんがおせちを作って待ってくれているとリヴァイさんに聞いたので、
おせちの後に食べてもらえたらと思って。」
「あらあら、まぁ。気を遣わなくてよかったのに。
でも、嬉しいわ。ありがとう。」
「よかった。」
素直に受け取ってくれた母に、名前はホッとしたように頬を緩めた。
扉にあった貼紙の通り、年末年始は休みの店内はシンと静まり返っていた。
相変わらず、こじんまりとした喫茶店だ。
ここを『落ち着くから』と気に入って通っている常連客もいるようで、なんとか潰れずに続けていられている。
自分の実家の喫茶店だという贔屓目ではなく、ここの紅茶の葉は絶品で、年に数回は必ず訪れている。
「わぁ…!可愛い喫茶店ですねっ。」
喫茶店に入った途端に、名前は目を輝かせた。
母のクシェルの趣味で集めたアンティーク調の家具や雑貨が、また増えたようだった。
最近では、空いた時間に自分でも雑貨を作って売っているらしく、若い客もやって来るようになったとケニーがご機嫌に話していた。
「どんどんゴチャゴチャしていくな。
アイツ等は、物を増やすばっかりで掃除はちゃんとしてんのか。」
「なんだかリヴァイさん、姑みたいですね。」
窓のサッシに触れた俺を見て、名前が面白そうに笑った。
似たようなことを母親にも言われたことがある。
身に覚えのないそれに訝しくしながら、名前を喫茶店の奥に案内した。
喫茶店のカウンター奥にあるキッチンが自宅と繋がっている造りになっている。
数泊するつもりで用意してきた荷物を持って、キッチンの奥にある扉を開いた。
自宅側の正面玄関とは違い、とても簡易的で狭い玄関だ。
そこで靴を脱いで、まずはリビングに名前を連れて行った。
「おう、来たか。」
ソファに座って新聞を読んでいたケニーが、顔を上げた。
その声に気づいて、リビング奥のキッチンにいた母が、エプロンで手を拭きながら駆けて来た。
「いらっしゃいっ、待ってたのよっ。また会えて嬉しいわっ。」
嬉しそうに言った母の視線は、息子の俺を通り越して斜め後ろにいる名前に向けられていた。
俺はそれが、とても嬉しかった。
「お店の方から来たの?玄関から入ってくればいいのに。」
「名前が喫茶店を見てみてぇと言うから、そっちから来た。」
「まぁ、それなら、喫茶店で美味しい料理でも作って待っていたのに。
いつもリヴァイは何も言ってくれないんだから。
-名前ちゃん、いらっしゃい。」
俺に対して小さな声で文句を言った母は、名前にふわりと微笑んだ。
隣に立つ名前の緊張に強張った顔は視界の端に見えていた。
だが、母に声をかけられた途端に、名前の背筋がピンと伸びて緊張が張りつめた。
「お正月にお招き頂き、ありがとうございます。
明けましておめでとうございます。」
綺麗なお辞儀をして、新年の挨拶をした名前に、母は目を丸くしていた。
「こちらこそ、あけましておめでとう。
そんなにかしこまらなくていいのよ。我が家だと思って寛いでね。」
「いえ…!そんな!!リヴァイさんの生家を我が家だとは思えません!!
聖地です!伝説の場所です!!手を合わせたいくらいです!!」
名前が勢いよく首を横に振った。
俺に対して真っすぐな愛を向けてくるのには慣れたし、笑える。
だが、それを母や叔父の前でされると、ひどく恥ずかしかった。
思った通り、ケニーは腹を抱えて笑った。
「相変わらず名前はそのクソガキにベタ惚れだな。」
「はい!もちろんです!!リヴァイさんほど素敵な人はこの世に存在しませんから!」
馬鹿にされたことにも気づかず、名前が胸を張る。
ついには母まで可笑しそうにクスリと笑うから、俺はいたたまれない気持ちになった。
「おい、そんなことはいいから。土産を渡すんじゃなかったのか。」
「あ、そうでした…!」
話を逸らすのに成功して、ハッとした名前は紙袋からお菓子の箱を取り出した。
「あの、これ…!お菓子を作ってきたんです。」
「まぁ、名前ちゃんの手作りなの?」
「はいっ。クシェルさんがおせちを作って待ってくれているとリヴァイさんに聞いたので、
おせちの後に食べてもらえたらと思って。」
「あらあら、まぁ。気を遣わなくてよかったのに。
でも、嬉しいわ。ありがとう。」
「よかった。」
素直に受け取ってくれた母に、名前はホッとしたように頬を緩めた。