雑念を払うべく、俺は頭に三角巾を結んで、大掃除に励んでいた。
名前が帰って来たときに綺麗な部屋で迎えられるし、一石二鳥だ。
そんなことを考えながら掃除を始めて気づけば数時間が経っていた。
普段から掃除に抜かりのない家は、隅々まで綺麗になった。

(汗かいたな…。)

掃除に夢中になりすぎて汗を掻いた身体をサッパリさせるために、風呂場へ向かおうとした時だった。
玄関の扉の鍵が開く音がした。

「名前！！」

気付けば俺は、名前の名前を叫んで玄関へ走っていた。
開いた扉から入って来たのは、ずっと待っていた名前だった。
走ってきた俺を見てびっくりした名前の顔が一瞬だけ見えたけれど、すぐに俺の腕の中に閉じ込められて見えなくなった。
それでもよかった。
腕の中に、名前がいる。名前の温もりがある。
それだけで、俺は安心して、幸せが心と身体を満たしていくのを感じていた。

「リヴァイさん…っ。」

俺の名前を呼んだ名前の声は震えていた。
背中にまわして、俺のシャツを握りしめる手は、必死に俺にしがみついて、まるで縋っているようだった。