◇29ページ◇ひたすら一途な瞳が向かう先
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リビングのソファに腰を降ろした俺は、缶に入った酒を飲みながら、スマホを確認した。
少し前にファーランからLINEが届いていたようだった。
メッセージには、名前を駅まで送ったと書いてある。
家まで送らせてもらえなかったことを嘆いている文章を読みながら、名前が俺に気を遣ったことを知った。
今夜は、久しぶりにコンビニ弁当を食べた。
濃い味付けのそれを食べながら、こんなに味気ないものだったのかと驚いて、無理やり口に突っ込むように完食した。
ファーランは本気のようだし、きっとこれから、今までの経験で手に入れたテクニックのすべての力を注いで、名前を口説き落としにかかるのだろう。
顔良し、スタイル良し、医師として成功して人望も厚く、経済力もある。
落とせない女がいるとは思えない。
だからきっと、名前も、俺よりも魅力的な男は他にもいるのだということにすぐに気づくだろう。
(もうすぐ、名前の飯は食えなくなるのかもな。)
ふ、とそんなことを考えた。
もし、ファーランと付き合うことになったら、当然、名前はこの家を出て行くことになる。
せいせいするはずだったのに、胸がズシリと重たくなった。
酒の缶が空になった頃、玄関の鍵が開く音がした。
リビングにやってきた名前は、ソファに座って酒の缶を持つ俺の方に真っすぐに向かって来た。
そして、俺の前に立つと、ただ真っすぐに俺を見て、口を開いた。
「ファーランさんに、好きだって言われました。」
「…へぇ。」
あまり、驚かなかった。
今夜、名前を食事に誘いたいと言われたときから、なんとなく分かっていた。
これだと決めたら真っすぐにいく男だ。
そもそも、勇気が出ないからと名前のことを遠くで見ているだけだったことの方が、驚きなのだ。
「リヴァイさん、ファーランさんの気持ち知ってて、私のこと紹介したんですよね。
だから、遠い親戚だって言ったんですね。」
俺をまっすぐに見下ろす名前の声は、丁寧ながらも非難が含まれていた。
「それに、映画だって、この間の飲み会の後に、
リヴァイさんが急に連れて行ってくれるって言いだして、驚いたけど、
すごく…、すごく嬉しかったんですよ。私は…、リヴァイさんと行きたかった…!」
「映画なんて、誰と一緒に行っても同じだろ。
ガキみたいなことを言うんじゃねぇーよ。」
「いつも私のことをガキって言うのは誰ですか。」
「ファーランは、名前を最高にいい女だと思ってるみたいだ。
お前に救われたらしい。心が綺麗だって褒めてたぞ。
あと、可愛くて綺麗で、お前のいる場所は空気が澄んでてー。」
「そんな風に誤魔化すのは止めてください。
褒めたら喜ぶと思ってるんですか。
リヴァイさん以外の男の人に言われたって、嬉しくありません。」
名前が悔しそうに俺を睨みつけた。
本気で怒っているのだと、このとき、初めて気づいた。
いつも笑っていたから、名前に怒るという感情があったことにも驚いてしまった。
でも、声を荒げるでもなく、ただ静かに言葉で責めてくるところが余計に、名前の怒りの大きさを表しているみたいだった。
「私の気持ち、知ってるくせに…、どんな気持ちで親友に紹介したんですか…?
そんなの、ファーランさんにも、失礼です…!」
名前は俺を責めた。
きっと、正しいのは名前だ。
でも、俺は、親友の恋を応援する以外の選択肢を持たなかった。
ファーランがショックを受けると分かっているのに、名前は俺に惚れていて、今は一緒に暮らしているなんて言えるわけがない。
だから、嘘を吐くしかなかったのだから、仕方ないじゃないかー。
俺はこのとき、本気でそう信じていたのだ。
「リヴァイさんが…、私のことをなんとも思ってないことは知ってます…。
でも…、こんな仕打ちは…、あんまりです…っ。ヒドいです…っ。」
名前はそう言うと、唇を噛んだ。
必死に涙を堪えて、俺を責めるその姿はひどく痛々しかった。
そうさせているのは他の誰でもなく自分で、俺は名前から目を反らして、手元の酒の缶を見ながら口を開いた。
「ファーランはいい奴だ。年上がタイプなんだろう?
アイツなら、優しいし、気も利くし、それにー。」
「私は…!!」
語気を強めて、名前が俺の言葉を遮った。
思わず名前を見れば、バッグを握りしめる細い小さな手は、震えていた。
「私は…っ、年上だから、リヴァイさんが好きなんじゃない…っ。
リヴァイさんだから、好きなんです…っ。」
俺をまっすぐに見つめる名前の傷ついた瞳から、堪えられなかった涙が一粒、零れ落ちた。
名前の一途な想いを踏みにじって、俺はヒドイことをして傷つけた。
それでも、悔しそうにしながらも、名前はただ真っすぐに俺を見つめていた。
そんな名前の頬を、幾つもの涙が伝って落ちていく。
俺のためだけに流れている涙だと分かっていたのに、俺は何も言ってやれなかった。
カーペットに幾つかの涙の染みが出来た頃、名前は諦めたように目を伏せた。
「もう、いいです…。ファーランさんは、リヴァイさんの大切な親友だから、
ちゃんと映画には行きます。でも、もうこれっきりにしてください。
私は、好きでもない男の人と2人きりになっても平気な女じゃありませんから…!」
名前は目を伏せたまま早口で言うと、寝室へと走って行った。
バタンっと少し強めに扉が閉まった音が、静かなリビングに響いた。
この日から、名前は俺の目を見なくなった。
ただ真っすぐに俺を見つめた君の瞳を
今度は俺が、ただ真っすぐに見つめるよ
だからこっちを向いて…
日記さん、今日は最低な日だった
リヴァイさんにバイト先を知られてしまったし、本当に私のことを何とも思ってないことを思い知らされた。
リヴァイさんのそばにいられるのなら、どんなことでも堪えられると思ってたけど、さすがにこれはきついみたい
泣いたって、何かが変わるわけじゃないのに、涙が止まらない
愛の数だけ涙が流れるのなら、私はきっと永遠が終わっても泣き続けるんだわ
そして、明日、鏡の向こうにいる泣き止んだ私に言ってあげるの
ほら、あなたの王子様は彼じゃないんだから当然よって
少し前にファーランからLINEが届いていたようだった。
メッセージには、名前を駅まで送ったと書いてある。
家まで送らせてもらえなかったことを嘆いている文章を読みながら、名前が俺に気を遣ったことを知った。
今夜は、久しぶりにコンビニ弁当を食べた。
濃い味付けのそれを食べながら、こんなに味気ないものだったのかと驚いて、無理やり口に突っ込むように完食した。
ファーランは本気のようだし、きっとこれから、今までの経験で手に入れたテクニックのすべての力を注いで、名前を口説き落としにかかるのだろう。
顔良し、スタイル良し、医師として成功して人望も厚く、経済力もある。
落とせない女がいるとは思えない。
だからきっと、名前も、俺よりも魅力的な男は他にもいるのだということにすぐに気づくだろう。
(もうすぐ、名前の飯は食えなくなるのかもな。)
ふ、とそんなことを考えた。
もし、ファーランと付き合うことになったら、当然、名前はこの家を出て行くことになる。
せいせいするはずだったのに、胸がズシリと重たくなった。
酒の缶が空になった頃、玄関の鍵が開く音がした。
リビングにやってきた名前は、ソファに座って酒の缶を持つ俺の方に真っすぐに向かって来た。
そして、俺の前に立つと、ただ真っすぐに俺を見て、口を開いた。
「ファーランさんに、好きだって言われました。」
「…へぇ。」
あまり、驚かなかった。
今夜、名前を食事に誘いたいと言われたときから、なんとなく分かっていた。
これだと決めたら真っすぐにいく男だ。
そもそも、勇気が出ないからと名前のことを遠くで見ているだけだったことの方が、驚きなのだ。
「リヴァイさん、ファーランさんの気持ち知ってて、私のこと紹介したんですよね。
だから、遠い親戚だって言ったんですね。」
俺をまっすぐに見下ろす名前の声は、丁寧ながらも非難が含まれていた。
「それに、映画だって、この間の飲み会の後に、
リヴァイさんが急に連れて行ってくれるって言いだして、驚いたけど、
すごく…、すごく嬉しかったんですよ。私は…、リヴァイさんと行きたかった…!」
「映画なんて、誰と一緒に行っても同じだろ。
ガキみたいなことを言うんじゃねぇーよ。」
「いつも私のことをガキって言うのは誰ですか。」
「ファーランは、名前を最高にいい女だと思ってるみたいだ。
お前に救われたらしい。心が綺麗だって褒めてたぞ。
あと、可愛くて綺麗で、お前のいる場所は空気が澄んでてー。」
「そんな風に誤魔化すのは止めてください。
褒めたら喜ぶと思ってるんですか。
リヴァイさん以外の男の人に言われたって、嬉しくありません。」
名前が悔しそうに俺を睨みつけた。
本気で怒っているのだと、このとき、初めて気づいた。
いつも笑っていたから、名前に怒るという感情があったことにも驚いてしまった。
でも、声を荒げるでもなく、ただ静かに言葉で責めてくるところが余計に、名前の怒りの大きさを表しているみたいだった。
「私の気持ち、知ってるくせに…、どんな気持ちで親友に紹介したんですか…?
そんなの、ファーランさんにも、失礼です…!」
名前は俺を責めた。
きっと、正しいのは名前だ。
でも、俺は、親友の恋を応援する以外の選択肢を持たなかった。
ファーランがショックを受けると分かっているのに、名前は俺に惚れていて、今は一緒に暮らしているなんて言えるわけがない。
だから、嘘を吐くしかなかったのだから、仕方ないじゃないかー。
俺はこのとき、本気でそう信じていたのだ。
「リヴァイさんが…、私のことをなんとも思ってないことは知ってます…。
でも…、こんな仕打ちは…、あんまりです…っ。ヒドいです…っ。」
名前はそう言うと、唇を噛んだ。
必死に涙を堪えて、俺を責めるその姿はひどく痛々しかった。
そうさせているのは他の誰でもなく自分で、俺は名前から目を反らして、手元の酒の缶を見ながら口を開いた。
「ファーランはいい奴だ。年上がタイプなんだろう?
アイツなら、優しいし、気も利くし、それにー。」
「私は…!!」
語気を強めて、名前が俺の言葉を遮った。
思わず名前を見れば、バッグを握りしめる細い小さな手は、震えていた。
「私は…っ、年上だから、リヴァイさんが好きなんじゃない…っ。
リヴァイさんだから、好きなんです…っ。」
俺をまっすぐに見つめる名前の傷ついた瞳から、堪えられなかった涙が一粒、零れ落ちた。
名前の一途な想いを踏みにじって、俺はヒドイことをして傷つけた。
それでも、悔しそうにしながらも、名前はただ真っすぐに俺を見つめていた。
そんな名前の頬を、幾つもの涙が伝って落ちていく。
俺のためだけに流れている涙だと分かっていたのに、俺は何も言ってやれなかった。
カーペットに幾つかの涙の染みが出来た頃、名前は諦めたように目を伏せた。
「もう、いいです…。ファーランさんは、リヴァイさんの大切な親友だから、
ちゃんと映画には行きます。でも、もうこれっきりにしてください。
私は、好きでもない男の人と2人きりになっても平気な女じゃありませんから…!」
名前は目を伏せたまま早口で言うと、寝室へと走って行った。
バタンっと少し強めに扉が閉まった音が、静かなリビングに響いた。
この日から、名前は俺の目を見なくなった。
ただ真っすぐに俺を見つめた君の瞳を
今度は俺が、ただ真っすぐに見つめるよ
だからこっちを向いて…
日記さん、今日は最低な日だった
リヴァイさんにバイト先を知られてしまったし、本当に私のことを何とも思ってないことを思い知らされた。
リヴァイさんのそばにいられるのなら、どんなことでも堪えられると思ってたけど、さすがにこれはきついみたい
泣いたって、何かが変わるわけじゃないのに、涙が止まらない
愛の数だけ涙が流れるのなら、私はきっと永遠が終わっても泣き続けるんだわ
そして、明日、鏡の向こうにいる泣き止んだ私に言ってあげるの
ほら、あなたの王子様は彼じゃないんだから当然よって