◇20ページ◇思わぬ薬の効能
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簡易的だが、臨床実験は成功した。
ついに、治療薬が完成した。
本当の成功は、母親に投与して、結果が出たときではあるわけだが、ひとまずは一旦ゴールということにしても問題ないはずだ。
「今日はもう帰っていいぞ。」
薬品入れのバッグに、出来上がったばかりの治療薬を入れながら、俺はエルド達に帰宅の指示を出した。
今から、この治療薬を病院に持って行く。
この治療薬の効能等を主治医のナイルに説明し、許可を貰えたら、漸く母親に投与が出来る。
とりあえず、明日、血液検査をしてもらって、薬の効き目が出ていることを祈ることくらいしか、俺達にはもう出来ることはない。
俺に帰宅の許可を貰えて、オルオは分かりやすくガッツポーズをした。
エルド達も、嬉しそうな顔をして、長い息を吐いた。
2週間と少しだが、とても長く感じた。それくらいに力を入れて、全員で頑張ったのだと思う。
正直、本当に出来上がるか自信がなかったし、こんなに早く治験出来るまでの治療薬が完成するなんて思ってもいなかった。
これも全て、知恵と手を貸してくれた彼らがいてくれたおかげだ。
実験道具や試薬品のサンプルを片付け始めたエルド達の表情もどこか明るい。
「俺に付き合わせて悪かったな。」
「いいえ、リヴァイさんのお母さんの為ですから。
それに、むしろ、今までよりだいぶ早く帰れてましたよ。」
「そうですよ。最近は俺が、起きてるうちに帰ってくるからって
彼女が喜んでて、リヴァイさんにすげぇ感謝してました。」
エルドが苦笑しながら言った。
なんとなく不思議に思って、治療薬をバッグに詰めていた手を止めて、俺は顔を上げた。
「恋人ってのは起きて待ってるもんじゃねぇのか?」
「いやいや、さすがに、0時過ぎに帰るときは
起きて待たせるわけにはいかないですからね。」
エルドが、ありえないと言う顔をして首を横に振った。
そういえば、アンと同棲しているときも、俺が遅くに帰ってくるときには、先に寝ていた。
それで、一緒に住んでいても、結局、会う時間をとれずにすれ違いの生活になってしまったのだ。
アンと生活していた日々のことは、まるでトラウマのように俺の身体と心に纏わりついていたはずだった。
それなのに、名前との生活になじみ過ぎて、すっかり、忘れていた。
そのことに、俺はひどく驚いた。
「・・・・・・もしかして、名前ちゃんっていつも起きて待ってるんですか?」
動きを止めていた俺に、エルドが訊ねた。
「今は宿泊棟に泊ってるから、アイツが何時に寝てるかは知らねぇが。
それまでは、俺が遅くに帰っても、いつも起きてたから、そういうもんかと思ってしまった。」
「いつもって、リヴァイさん、宿泊棟に泊るようになるまで
3時過ぎに帰ってましたよね?それで、5時には起きてたんですよね?
そのときも起きて待ってたんですか?」
「起きてた。」
「もしかして、先に起きて朝ご飯も作ってくれてたんですか?」
「あぁ、作ってた。」
「・・・・・なんて言うか…、すごい尽くされてるんですね。」
「さぁ、分からねぇが。」
あまりにも自然に名前がすべてをしてくれていたから、俺はそれを普通に受け入れていた。
たぶん、俺はすごく鈍感で、女性と付き合うということに関しての才能が、地を這うレベルに低かったのだ。
過去に付き合ったことのある女性も1人しかいなかったし、そのときもきっと今のように、うまくしてやることが出来ていなかったのだと思う。
『言わなくたって分かってよ!恋人でしょ!!』
アンはよくそう言って怒っていた。
言わないと分からないのが普通だと思うのだけれど、まぁ、そういうことなのだろう。
何と言っていいか分からないというよな困った顔をエルドにされてしまったことも、グンタ達が口を大きく開けて絶句して俺を見ている意味も、全く分からなかった。
「私、ずっと思ってたんですけど…。」
部屋中の視線が、俺を見たまま固まった後、最初に口を開いたのはペトラだった。
「なんだ?」
「ずっと、名前ちゃんの優しさに甘えていて、今さら言うのはズルい気がするんですけど…。」
言い淀むペトラに、いいから言ってみろと促した。
ペトラは、エルド達をチラリと見た後に、意を決したように、もう一度、ゆっくりと口を開いた。
「名前ちゃんって、いつ寝てるんですか…?」
「…?好きなときに寝てんじゃねぇのか。」
「好きな時っていつですか?」
「それは…。」
考えてみたけれど、俺は答えが出ずに言い淀む。
なんとなく、ペトラ達が言いたいことが、分かって来た気がした。
「朝早く起きてお弁当作って、バイトにも行って、
その合間にリヴァイさんのお母さんの様子を見に行って、
またお昼と夜にお弁当作って、夕飯の後はここで私達のお手伝いもしてくれてましたよね。」
「俺も思ってたんですけど…、宿泊棟のリヴァイさんの部屋の掃除とか洗濯もしてるんですよね?」
「…あぁ、してもらってた。」
「しかも、リヴァイさんが寝ないで研究しないように、寝るまで見張ってるんだって言ってたし。
それから家に帰ってから、きっと論文探したりしてたんですよね?
そんなことしてたらー。」
「なんだそれ、寝る時間なくね?」
思わず心の声が漏れてしまったというような最後のオルオの一言が、俺の頭を殴った。
どうして、今まで気づかなかったのだろう、俺はー。
ついに、治療薬が完成した。
本当の成功は、母親に投与して、結果が出たときではあるわけだが、ひとまずは一旦ゴールということにしても問題ないはずだ。
「今日はもう帰っていいぞ。」
薬品入れのバッグに、出来上がったばかりの治療薬を入れながら、俺はエルド達に帰宅の指示を出した。
今から、この治療薬を病院に持って行く。
この治療薬の効能等を主治医のナイルに説明し、許可を貰えたら、漸く母親に投与が出来る。
とりあえず、明日、血液検査をしてもらって、薬の効き目が出ていることを祈ることくらいしか、俺達にはもう出来ることはない。
俺に帰宅の許可を貰えて、オルオは分かりやすくガッツポーズをした。
エルド達も、嬉しそうな顔をして、長い息を吐いた。
2週間と少しだが、とても長く感じた。それくらいに力を入れて、全員で頑張ったのだと思う。
正直、本当に出来上がるか自信がなかったし、こんなに早く治験出来るまでの治療薬が完成するなんて思ってもいなかった。
これも全て、知恵と手を貸してくれた彼らがいてくれたおかげだ。
実験道具や試薬品のサンプルを片付け始めたエルド達の表情もどこか明るい。
「俺に付き合わせて悪かったな。」
「いいえ、リヴァイさんのお母さんの為ですから。
それに、むしろ、今までよりだいぶ早く帰れてましたよ。」
「そうですよ。最近は俺が、起きてるうちに帰ってくるからって
彼女が喜んでて、リヴァイさんにすげぇ感謝してました。」
エルドが苦笑しながら言った。
なんとなく不思議に思って、治療薬をバッグに詰めていた手を止めて、俺は顔を上げた。
「恋人ってのは起きて待ってるもんじゃねぇのか?」
「いやいや、さすがに、0時過ぎに帰るときは
起きて待たせるわけにはいかないですからね。」
エルドが、ありえないと言う顔をして首を横に振った。
そういえば、アンと同棲しているときも、俺が遅くに帰ってくるときには、先に寝ていた。
それで、一緒に住んでいても、結局、会う時間をとれずにすれ違いの生活になってしまったのだ。
アンと生活していた日々のことは、まるでトラウマのように俺の身体と心に纏わりついていたはずだった。
それなのに、名前との生活になじみ過ぎて、すっかり、忘れていた。
そのことに、俺はひどく驚いた。
「・・・・・・もしかして、名前ちゃんっていつも起きて待ってるんですか?」
動きを止めていた俺に、エルドが訊ねた。
「今は宿泊棟に泊ってるから、アイツが何時に寝てるかは知らねぇが。
それまでは、俺が遅くに帰っても、いつも起きてたから、そういうもんかと思ってしまった。」
「いつもって、リヴァイさん、宿泊棟に泊るようになるまで
3時過ぎに帰ってましたよね?それで、5時には起きてたんですよね?
そのときも起きて待ってたんですか?」
「起きてた。」
「もしかして、先に起きて朝ご飯も作ってくれてたんですか?」
「あぁ、作ってた。」
「・・・・・なんて言うか…、すごい尽くされてるんですね。」
「さぁ、分からねぇが。」
あまりにも自然に名前がすべてをしてくれていたから、俺はそれを普通に受け入れていた。
たぶん、俺はすごく鈍感で、女性と付き合うということに関しての才能が、地を這うレベルに低かったのだ。
過去に付き合ったことのある女性も1人しかいなかったし、そのときもきっと今のように、うまくしてやることが出来ていなかったのだと思う。
『言わなくたって分かってよ!恋人でしょ!!』
アンはよくそう言って怒っていた。
言わないと分からないのが普通だと思うのだけれど、まぁ、そういうことなのだろう。
何と言っていいか分からないというよな困った顔をエルドにされてしまったことも、グンタ達が口を大きく開けて絶句して俺を見ている意味も、全く分からなかった。
「私、ずっと思ってたんですけど…。」
部屋中の視線が、俺を見たまま固まった後、最初に口を開いたのはペトラだった。
「なんだ?」
「ずっと、名前ちゃんの優しさに甘えていて、今さら言うのはズルい気がするんですけど…。」
言い淀むペトラに、いいから言ってみろと促した。
ペトラは、エルド達をチラリと見た後に、意を決したように、もう一度、ゆっくりと口を開いた。
「名前ちゃんって、いつ寝てるんですか…?」
「…?好きなときに寝てんじゃねぇのか。」
「好きな時っていつですか?」
「それは…。」
考えてみたけれど、俺は答えが出ずに言い淀む。
なんとなく、ペトラ達が言いたいことが、分かって来た気がした。
「朝早く起きてお弁当作って、バイトにも行って、
その合間にリヴァイさんのお母さんの様子を見に行って、
またお昼と夜にお弁当作って、夕飯の後はここで私達のお手伝いもしてくれてましたよね。」
「俺も思ってたんですけど…、宿泊棟のリヴァイさんの部屋の掃除とか洗濯もしてるんですよね?」
「…あぁ、してもらってた。」
「しかも、リヴァイさんが寝ないで研究しないように、寝るまで見張ってるんだって言ってたし。
それから家に帰ってから、きっと論文探したりしてたんですよね?
そんなことしてたらー。」
「なんだそれ、寝る時間なくね?」
思わず心の声が漏れてしまったというような最後のオルオの一言が、俺の頭を殴った。
どうして、今まで気づかなかったのだろう、俺はー。