◇17ページ◇飼い犬の手のひらの上
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美味そうな匂いにまんまと釣られて、目を覚ました。
睡眠不足と溜まった疲れのおかげか、夢も見ないくらいにどっぷりと眠っていた。
閉め切ったカーテンの向こうからは、眩しいくらいの太陽の光が漏れていた。
大雨は止んだようだった。
壁掛けの時計を確認すると、10時を過ぎていた。
心底、驚いた。
普段からあまり睡眠時間はとらない方で、こんなに長い間寝たのは初めてだった。
それだけ疲れていたということなのだろう。
昨日までの俺なら、寝過ぎてしまったと焦っていたに違いない。
でも、軽くなった身体とスッキリとした頭が戻って来たことを感じていた俺は、これは必要な睡眠時間だったと、そのときにはもう理解していた。
睡眠欲が満たされた俺の身体は、忘れていた食欲を思い出したようだった。
情けないくらいに腹が鳴っていて、ベッドから降りた俺は、寝室を出た。
リビングは、カーテンも開いて、とても明るかったけれど、シンと静まり返っていた。
ここ数日、ずっと掃除が出来ていなくて見る度に憂鬱な気持ちになっていた床は、ピカピカに光っていた。
名前が掃除をしてくれたようだった。
そんなところにも、名前が帰って来たのだということを実感した。
無意識に緩んだ頬は、綺麗になったリビングに対してだったのか、名前が帰って来てくれたことが嬉しかったのか。
今も時々考えるけれど、このときの俺の気持ちは、正直分からない。
でも、名前にも言った通り、俺は名前のことが嫌いじゃなかった。
勝手に押しかけて来た名前のことを、最初からずっと嫌いだと思ったことは、一度だってなかったのは今でも不思議だ。
美味そうな匂いに引き寄せられた俺は、ダイニングへ向かった。
ダイニングテーブルの上には、俺の好物と消化に良さそうな食事がズラリと並んでいた。
1品1品の量はそれほど多くはないのだが、品数がとても多くて、これだけで3日分の夕飯にはなりそうだと思った。
(名前はどこ行ったんだ…?)
ダイニングにもキッチンにも名前の姿はなかった。
洗濯物でも干しているのかとベランダに出てみると、確かに洗濯物は干してあったが名前はいなかった。
とにかく、部屋中を探してみたけれど、風呂場もトイレも、どこにも、名前はいなかったのだ。
綺麗になった部屋とベランダに干された洗濯物、ダイニングテーブルの上に並んだ美味そうな料理。
目に見えるものすべてが、名前がこの家に存在した痕跡を残しているのに、肝心の名前の姿だけが、まるで魔法が解けたみたいに消えていた。
でも、まさか本当に人間が消えてしまうわけがない。
俺は、もう一度、ダイニングに戻ることにした。
そして、さっきは気づかなかったが、ダイニングテーブルの上に1枚のメモが置いてあるのを見つけた。
≪おはようございます。おはようのキスをしてあげられなくてごめんなさい。
少し出かけてきます。
お食事を用意したので、好きなものを好きなだけ食べてください。
残った分は、私が食べるので気にしないでください。
炊飯器にご飯もありますし、お鍋にはお味噌汁とスープを用意してます。
すぐに帰りますから、研究施設に行くのは少しだけ待っていてください。
お願いします。
名前 ≫
行くところなんてないようなことを言っていたのに、どこへ行ったのだうか、とは思ったけれど、とにかく消えたわけではないことが分かって安心した。
幼馴染の男の家にでも行ったのかもしれないし、自分のプライベートに口を挟むなと言った俺が、名前の行動をいちいち詮索するようなことはしたくない。
俺は、メモにある通り、ダイニングで食事をとることにした。
名前が出て行く前から、俺はただ食事を口に運ぶだけだったから、凄く久しぶりの味がした。
食事を取り出してすぐに玄関の鍵が開く音がした。
帰って来たようだった。
睡眠不足と溜まった疲れのおかげか、夢も見ないくらいにどっぷりと眠っていた。
閉め切ったカーテンの向こうからは、眩しいくらいの太陽の光が漏れていた。
大雨は止んだようだった。
壁掛けの時計を確認すると、10時を過ぎていた。
心底、驚いた。
普段からあまり睡眠時間はとらない方で、こんなに長い間寝たのは初めてだった。
それだけ疲れていたということなのだろう。
昨日までの俺なら、寝過ぎてしまったと焦っていたに違いない。
でも、軽くなった身体とスッキリとした頭が戻って来たことを感じていた俺は、これは必要な睡眠時間だったと、そのときにはもう理解していた。
睡眠欲が満たされた俺の身体は、忘れていた食欲を思い出したようだった。
情けないくらいに腹が鳴っていて、ベッドから降りた俺は、寝室を出た。
リビングは、カーテンも開いて、とても明るかったけれど、シンと静まり返っていた。
ここ数日、ずっと掃除が出来ていなくて見る度に憂鬱な気持ちになっていた床は、ピカピカに光っていた。
名前が掃除をしてくれたようだった。
そんなところにも、名前が帰って来たのだということを実感した。
無意識に緩んだ頬は、綺麗になったリビングに対してだったのか、名前が帰って来てくれたことが嬉しかったのか。
今も時々考えるけれど、このときの俺の気持ちは、正直分からない。
でも、名前にも言った通り、俺は名前のことが嫌いじゃなかった。
勝手に押しかけて来た名前のことを、最初からずっと嫌いだと思ったことは、一度だってなかったのは今でも不思議だ。
美味そうな匂いに引き寄せられた俺は、ダイニングへ向かった。
ダイニングテーブルの上には、俺の好物と消化に良さそうな食事がズラリと並んでいた。
1品1品の量はそれほど多くはないのだが、品数がとても多くて、これだけで3日分の夕飯にはなりそうだと思った。
(名前はどこ行ったんだ…?)
ダイニングにもキッチンにも名前の姿はなかった。
洗濯物でも干しているのかとベランダに出てみると、確かに洗濯物は干してあったが名前はいなかった。
とにかく、部屋中を探してみたけれど、風呂場もトイレも、どこにも、名前はいなかったのだ。
綺麗になった部屋とベランダに干された洗濯物、ダイニングテーブルの上に並んだ美味そうな料理。
目に見えるものすべてが、名前がこの家に存在した痕跡を残しているのに、肝心の名前の姿だけが、まるで魔法が解けたみたいに消えていた。
でも、まさか本当に人間が消えてしまうわけがない。
俺は、もう一度、ダイニングに戻ることにした。
そして、さっきは気づかなかったが、ダイニングテーブルの上に1枚のメモが置いてあるのを見つけた。
≪おはようございます。おはようのキスをしてあげられなくてごめんなさい。
少し出かけてきます。
お食事を用意したので、好きなものを好きなだけ食べてください。
残った分は、私が食べるので気にしないでください。
炊飯器にご飯もありますし、お鍋にはお味噌汁とスープを用意してます。
すぐに帰りますから、研究施設に行くのは少しだけ待っていてください。
お願いします。
名前 ≫
行くところなんてないようなことを言っていたのに、どこへ行ったのだうか、とは思ったけれど、とにかく消えたわけではないことが分かって安心した。
幼馴染の男の家にでも行ったのかもしれないし、自分のプライベートに口を挟むなと言った俺が、名前の行動をいちいち詮索するようなことはしたくない。
俺は、メモにある通り、ダイニングで食事をとることにした。
名前が出て行く前から、俺はただ食事を口に運ぶだけだったから、凄く久しぶりの味がした。
食事を取り出してすぐに玄関の鍵が開く音がした。
帰って来たようだった。