◇12ページ◇病
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一晩中続いた雷雨は、明け方頃に漸く勢いを弱め、隣の部屋からスマホのアラームが聞こえ始める頃には、もうすっかり止んだようだった。
真っ暗だったはずのクローゼットの中も、扉の隙間から差し込む朝日のおかげで薄っすらと明るくなっている。
いつまでも止めてもらえないアラームがしつこく俺を呼んでいるのが聞こえていたが、早めの時間をセットしてあるから、このままもう少しはここにいても遅刻はしないだろう。
諦めた様にそう思ったのは、俺が身動きが出来ない状態にいたせいだ。
弱々しく縋りついていただけだったはずの名前が、俺の腰を両腕でがっしりと捕まえていて、立ち上がれなかったのだ。
無理やり引き剥がすことも出来ないわけではなかった。
でも、いつも俺よりも先に起きて朝食の準備をしていた名前の初めての寝坊くらい、許してやってもいいかという気になっていた。
少しずつ、身体中で愛を叫ぶ名前にほだされていたのかもしれない。
だが、毎朝早起きをしていた名前も、壁の向こうから聞こえてくるアラームの音とクローゼットの中にまで漏れてくる光に、すぐに起こされたようだった。
「ん~…。」
俺の胸元に少し強めに頬を押しつけながら、名前は眠たそうな声を漏らした。
そして、ほんの一瞬だけ、俺を抱きしめる腕に力を込めた後、スッと力を失くしたかと思ったら、胸元に寄り掛かっていた身体を勢いよく起こした。
「寝坊した…!!」
焦った様子で、寝起きからデカい声を上げた名前は、俺と目が合うと、一瞬だけ固まった。
でも、すぐに昨晩のことを思い出したようだった。
そして、寝ぼけた頭で、状況だけは瞬時に把握したらしい。
顔色を真っ青にした後、消え入りそうな声で続けた。
「…切腹、します…。」
「どこの侍だ。そんなくだらねぇことしなくていいから、飯作れ。」
「あ、待ってください…!」
立ち上がった俺の手首を、名前が焦ったように掴んだ。
そして、振り返った俺に、おずおずと訊ねた。
「…私、出て行かなくて…、いいんですか?」
「雷を怖がるガキだからか?」
「寝坊…、しちゃったから…。」
「そうだな。今日、俺が遅刻したら追い出してやる。
それが嫌なら、すぐに飯の準備を始めやがれ。」
「は、はい…!猛ダッシュで!!」
気合を込めて返事をした名前は、前のめりで勢いよく起き上がってクローゼットから飛び出した。
でも、すぐに戻ってきて、クローゼットから出た俺にキスをした。
「おはようございます!」
それはもう、いつものほんの一瞬触れるだけのおはようのキスで、名前はいつもの無邪気な笑顔に戻っていた。
まるで、昨日の夜のすべてを雷と雨が洗い流してしまったような、そんな気がしたのを、俺は覚えている。
真っ暗だったはずのクローゼットの中も、扉の隙間から差し込む朝日のおかげで薄っすらと明るくなっている。
いつまでも止めてもらえないアラームがしつこく俺を呼んでいるのが聞こえていたが、早めの時間をセットしてあるから、このままもう少しはここにいても遅刻はしないだろう。
諦めた様にそう思ったのは、俺が身動きが出来ない状態にいたせいだ。
弱々しく縋りついていただけだったはずの名前が、俺の腰を両腕でがっしりと捕まえていて、立ち上がれなかったのだ。
無理やり引き剥がすことも出来ないわけではなかった。
でも、いつも俺よりも先に起きて朝食の準備をしていた名前の初めての寝坊くらい、許してやってもいいかという気になっていた。
少しずつ、身体中で愛を叫ぶ名前にほだされていたのかもしれない。
だが、毎朝早起きをしていた名前も、壁の向こうから聞こえてくるアラームの音とクローゼットの中にまで漏れてくる光に、すぐに起こされたようだった。
「ん~…。」
俺の胸元に少し強めに頬を押しつけながら、名前は眠たそうな声を漏らした。
そして、ほんの一瞬だけ、俺を抱きしめる腕に力を込めた後、スッと力を失くしたかと思ったら、胸元に寄り掛かっていた身体を勢いよく起こした。
「寝坊した…!!」
焦った様子で、寝起きからデカい声を上げた名前は、俺と目が合うと、一瞬だけ固まった。
でも、すぐに昨晩のことを思い出したようだった。
そして、寝ぼけた頭で、状況だけは瞬時に把握したらしい。
顔色を真っ青にした後、消え入りそうな声で続けた。
「…切腹、します…。」
「どこの侍だ。そんなくだらねぇことしなくていいから、飯作れ。」
「あ、待ってください…!」
立ち上がった俺の手首を、名前が焦ったように掴んだ。
そして、振り返った俺に、おずおずと訊ねた。
「…私、出て行かなくて…、いいんですか?」
「雷を怖がるガキだからか?」
「寝坊…、しちゃったから…。」
「そうだな。今日、俺が遅刻したら追い出してやる。
それが嫌なら、すぐに飯の準備を始めやがれ。」
「は、はい…!猛ダッシュで!!」
気合を込めて返事をした名前は、前のめりで勢いよく起き上がってクローゼットから飛び出した。
でも、すぐに戻ってきて、クローゼットから出た俺にキスをした。
「おはようございます!」
それはもう、いつものほんの一瞬触れるだけのおはようのキスで、名前はいつもの無邪気な笑顔に戻っていた。
まるで、昨日の夜のすべてを雷と雨が洗い流してしまったような、そんな気がしたのを、俺は覚えている。