ハンジの好奇心で始まった酒の席は、名前の笑顔を中心に大いに盛り上がっていた。
最新のテレビゲーム機を持っていた名前が、ケイジにセットをお願いすれば、すぐに対戦が始まった。
そして結局、ハンジ達は酔っぱらって眠ってしまい、リビングで雑魚寝となった。
気付けば、もう夜中の2時を過ぎていた。

「面白い人達ですね～。すごい楽しかった～。」

床に転がる空き缶や食べ散らかされたお菓子の袋を拾いながら、名前が明るく言った。
ハンジ達と一緒に何も考えずに遊んでいるようで、名前がタイミングを見て食器を片付けておいてくれたおかげで、後始末も楽だった。
テーブルを拭いていた俺は、一度手を止めてから、名前に訊ねた。

「…嫌じゃなかったのか。」
「何がですか？」
「いきなり知らねぇ奴が大勢でやって来て、飯まで作らされて。
　普通嫌がるだろ。」
「リヴァイさんの大切な人達ですから、知らない人ではないですよ～。
　それに、料理は好きだし、大勢で食べるのは楽しいですしね。
　まぁ、リヴァイさんを独り占め出来なかったのは残念だったので、今夜はギューして寝てくれたらー。」
「却下だ。」
「アハハ、やっぱり～。」

ヘラヘラと笑いながら言うから、どこまで本気なのか分からなかった。
狸寝入りをしていたらしいハンジは、ずっと後になってから、このときの名前は嘘を吐いていたようには思えなかったと言っていた。
でも、俺は分からなくてー。
だから、この後、そう遠くない日に、俺は名前にヒドイことを言って、傷つけてしまうことになるのだ。
そんなこと当然まだ知りもしない名前は、翌日も誰よりも早く起きて朝食を作り、俺の大切な人だと表現したハンジ達を笑顔で見送っていた。