人類最強のイケメンはいかがですか~Levi~
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失恋で傷ついて、私が昨日までの私じゃなくなったからと言って、私が調査兵団の兵士ではなくなるわけではない。
もちろん、私なんかのメンタルを考慮して巨人が手加減してくれるわけもない。
だから、どんなにツラくたって、泣き腫らした目で前がよく見えなくたって、私は戦わなければならない。
ちゃんと生きて帰るためにー。
あぁ、私、生きて帰らなきゃいけないのかー。
彼が新しい彼女と幸せに暮らしている壁の中の世界へー。
「-そう思ったら、アンカーを巻き取れなくなっちゃって…。」
夜闇の静けさの中で、萎んでいく私の声をリヴァイ兵長はただじっと聞き逃さないようにしてくれていた。
それが余計に情けなくて、目の前に座るリヴァイ兵長の顔が見れなくて目を伏せた。
壁外調査も明日の最終日を残すだけとなった今日、私は初めて巨人の手の中で死を覚悟した。
戦死数が格段に多い調査兵団の中で、運よく生き残ったおかげで、班長という責任も負わせてもらえるようになっていた私が、生きることを放棄したのだ。
最低だ。
新兵を加えたばかりの班は、私を失くしてしまえば混乱を極めることくらい、経験上、嫌というほどに知っているはずなのにー。
あのとき、リヴァイ兵長が、私の班の異変に気づいて助けに来てくれなかったらー。
間一髪のところでリヴァイ兵長が私のことを助けてくれなかったら、私は大切な仲間を危険に晒すところだった。
今このとき、壁外で仲間の命があることは奇跡だ。そして、その奇跡を守ることが、私の何よりも大切な任務なのにー。
今さら、恐くなって、私の身体は小刻みに震え出す。
なんてことを、してしまったのだろうー。
今回の失敗で落ち込む私を連れ出したリヴァイ兵長は、見張りから少し離れた芝生の上で向き合って座ると、どうしてあんな危険な真似をしたのかを諭すように訊ねてくれた。
初めは謝るばかりだった私が、ちゃんと話し出すのをじっと待って、そしてー。
しばらくの沈黙の後、リヴァイ兵長は長く息を吐いた。
呆れられてしまった。
情けなさと、悔しさ、恥ずかしさで、泣いてしまいそうで私は芝生の上に落とされていた拳を握りしめた。
「お前が恋人の…、あー、元恋人のことを大切に思っていたのは、
いつも見てたからよく知ってる。」
「…はい。」
リヴァイ兵長は、わざわざ『元恋人』と言い直して、私のまだ新しい傷をえぐる。
悪気はないのだろう。分かってる。
正直なのだ、良くも悪くもー。
でも、今度は違う理由で泣いてしまいそうで、私はギュッと目を閉じた。
そうすると、瞼の裏に浮かんでくるー。
新しい彼女が出来たから別れて欲しいと切り出した彼の悪びれもしない顔と巨人に喰われそうになっている班長の姿を前に絶望的な悲鳴を上げる新兵の顔が交互に現れて、私を襲う。
「要は、壁内に帰って会いてぇと思う男がいれば、
お前は生きるために諦めねぇで戦ってくれるってことだな。」
「・・・・・・はい。」
別にそういうわけではないけれど、肯定の返事をした。
瞼の裏の光景は私を打ちのめそうとしていたし、なんとなくリヴァイ兵長には何を言っても理解してもらえない気がした。
恋とか愛とか、そういうのに興味なさそうだしー。
「なまえ。」
名前を呼ばれたときにはもう、リヴァイ兵長に顎を掴まれて強引に上を向かされていた。
思わず目を開いてしまった私は、悲劇と絶望の光景から逃れられた代わりに、至近距離で切れ長の瞳で視界がいっぱいになった。
その意味も理解できないまま、切れ長の瞳がゆっくりと薄く閉じていくー。
そして、唇が重なったのと同時に、私の時間も止まった。
意外と柔らかいリヴァイ兵長の唇の感触は確かに感じるのだけれど、まるで他の誰かの身体に入ってしまったような戸惑いの中、そっと唇が離れて行った。
それでも、なんとか唇が触れない程度の距離のままで、リヴァイ兵長は私をまっすぐに見つめて口を開く。
「これで、俺はお前の男だ。
これからは、俺に会うために生きて帰れるようにせいぜい励め。」
「…?」
「返事は。」
「…はいっ。」
意味も分からないまま、いつもの癖で、返事をしてしまった。
でも、それで満足したらしいリヴァイ兵長は、口の端を僅かに上げた。
「ならいい。」
もう一度、リヴァイ兵長は、まるで恋人がするみたいに私に軽くキスをしてから立ち上がった。
もう寝るとかなんとか言いながら立ち去ろうとする背中を呆然と見ていれば、何かを思い出した様子で、リヴァイ兵長がすぐに振り返った。
そしてー。
「心配するな。俺はいつも通り、生きて帰る。」
「…でしょうね。」
戸惑っている理由はそれじゃない感が凄すぎて、私は思わず答えてしまった。
だって、人類最強の兵士が生きて壁内へ帰れない未来なんて、きっと誰も想像したこともないはずだ。
「…俺はいつも通り、なまえに会いたくて生きて帰る。
だから、心配するな。」
リヴァイ兵長は少しだけ早口で言ってから、やっぱりまた寝るからどうのと言いながら立ち去って行く。
その背中を目で追いかけながら、私はまだ夢か現実かもわからず、ぼんやりとしていた。
どうやら大失恋の後、
人類最強の恋人が出来たようです
数分後、事態を把握した私の驚きの声が夜の草原に響いた。
もちろん、私なんかのメンタルを考慮して巨人が手加減してくれるわけもない。
だから、どんなにツラくたって、泣き腫らした目で前がよく見えなくたって、私は戦わなければならない。
ちゃんと生きて帰るためにー。
あぁ、私、生きて帰らなきゃいけないのかー。
彼が新しい彼女と幸せに暮らしている壁の中の世界へー。
「-そう思ったら、アンカーを巻き取れなくなっちゃって…。」
夜闇の静けさの中で、萎んでいく私の声をリヴァイ兵長はただじっと聞き逃さないようにしてくれていた。
それが余計に情けなくて、目の前に座るリヴァイ兵長の顔が見れなくて目を伏せた。
壁外調査も明日の最終日を残すだけとなった今日、私は初めて巨人の手の中で死を覚悟した。
戦死数が格段に多い調査兵団の中で、運よく生き残ったおかげで、班長という責任も負わせてもらえるようになっていた私が、生きることを放棄したのだ。
最低だ。
新兵を加えたばかりの班は、私を失くしてしまえば混乱を極めることくらい、経験上、嫌というほどに知っているはずなのにー。
あのとき、リヴァイ兵長が、私の班の異変に気づいて助けに来てくれなかったらー。
間一髪のところでリヴァイ兵長が私のことを助けてくれなかったら、私は大切な仲間を危険に晒すところだった。
今このとき、壁外で仲間の命があることは奇跡だ。そして、その奇跡を守ることが、私の何よりも大切な任務なのにー。
今さら、恐くなって、私の身体は小刻みに震え出す。
なんてことを、してしまったのだろうー。
今回の失敗で落ち込む私を連れ出したリヴァイ兵長は、見張りから少し離れた芝生の上で向き合って座ると、どうしてあんな危険な真似をしたのかを諭すように訊ねてくれた。
初めは謝るばかりだった私が、ちゃんと話し出すのをじっと待って、そしてー。
しばらくの沈黙の後、リヴァイ兵長は長く息を吐いた。
呆れられてしまった。
情けなさと、悔しさ、恥ずかしさで、泣いてしまいそうで私は芝生の上に落とされていた拳を握りしめた。
「お前が恋人の…、あー、元恋人のことを大切に思っていたのは、
いつも見てたからよく知ってる。」
「…はい。」
リヴァイ兵長は、わざわざ『元恋人』と言い直して、私のまだ新しい傷をえぐる。
悪気はないのだろう。分かってる。
正直なのだ、良くも悪くもー。
でも、今度は違う理由で泣いてしまいそうで、私はギュッと目を閉じた。
そうすると、瞼の裏に浮かんでくるー。
新しい彼女が出来たから別れて欲しいと切り出した彼の悪びれもしない顔と巨人に喰われそうになっている班長の姿を前に絶望的な悲鳴を上げる新兵の顔が交互に現れて、私を襲う。
「要は、壁内に帰って会いてぇと思う男がいれば、
お前は生きるために諦めねぇで戦ってくれるってことだな。」
「・・・・・・はい。」
別にそういうわけではないけれど、肯定の返事をした。
瞼の裏の光景は私を打ちのめそうとしていたし、なんとなくリヴァイ兵長には何を言っても理解してもらえない気がした。
恋とか愛とか、そういうのに興味なさそうだしー。
「なまえ。」
名前を呼ばれたときにはもう、リヴァイ兵長に顎を掴まれて強引に上を向かされていた。
思わず目を開いてしまった私は、悲劇と絶望の光景から逃れられた代わりに、至近距離で切れ長の瞳で視界がいっぱいになった。
その意味も理解できないまま、切れ長の瞳がゆっくりと薄く閉じていくー。
そして、唇が重なったのと同時に、私の時間も止まった。
意外と柔らかいリヴァイ兵長の唇の感触は確かに感じるのだけれど、まるで他の誰かの身体に入ってしまったような戸惑いの中、そっと唇が離れて行った。
それでも、なんとか唇が触れない程度の距離のままで、リヴァイ兵長は私をまっすぐに見つめて口を開く。
「これで、俺はお前の男だ。
これからは、俺に会うために生きて帰れるようにせいぜい励め。」
「…?」
「返事は。」
「…はいっ。」
意味も分からないまま、いつもの癖で、返事をしてしまった。
でも、それで満足したらしいリヴァイ兵長は、口の端を僅かに上げた。
「ならいい。」
もう一度、リヴァイ兵長は、まるで恋人がするみたいに私に軽くキスをしてから立ち上がった。
もう寝るとかなんとか言いながら立ち去ろうとする背中を呆然と見ていれば、何かを思い出した様子で、リヴァイ兵長がすぐに振り返った。
そしてー。
「心配するな。俺はいつも通り、生きて帰る。」
「…でしょうね。」
戸惑っている理由はそれじゃない感が凄すぎて、私は思わず答えてしまった。
だって、人類最強の兵士が生きて壁内へ帰れない未来なんて、きっと誰も想像したこともないはずだ。
「…俺はいつも通り、なまえに会いたくて生きて帰る。
だから、心配するな。」
リヴァイ兵長は少しだけ早口で言ってから、やっぱりまた寝るからどうのと言いながら立ち去って行く。
その背中を目で追いかけながら、私はまだ夢か現実かもわからず、ぼんやりとしていた。
どうやら大失恋の後、
人類最強の恋人が出来たようです
数分後、事態を把握した私の驚きの声が夜の草原に響いた。
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