◇96話◇賭けの行方
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一歩踏み込む度に、白い砂が沈んで足跡を作っていく。
寄せては返していく波だけが音を作る、静かな海。
手を繋いで歩く2人に言葉はなく、ただひたすら、砂浜に足跡を残し続けていた。
リヴァイが隣を見れば、なまえは足跡を作っていく自分の足元を、なんだかとても楽しそうに見下ろしている。
海に行こうー。
なまえがそう言いだしたのは、会社を出て、近くのカフェで昼食を食べた後だった。
それくらいなら向こうの世界から来た男だとバレることもないだろうと了承して、またなまえの運転で家から少し遠い海へやって来ていた。
夏になったら海に行こうー。
そう約束していたからだとなまえは言っていた。
昔、そんな約束をなまえとしたことがある。
壁の中の世界に閉じ込められ、まだ海という存在を見たこともなかった頃だ。
いろんなデートをしようと2人で楽しい計画を幾つも立てた。
水族館も映画館も、今なら連れて行ってやれる。
ゲームセンターというやつも、いつか出来るかもしれない。
でもきっと、お決まりのデートコースだというそれは、この世界のリヴァイがもうとっくに連れて行ってやっているのだろう。
なまえが自分のことを愛してくれていたのは、もう、遠い、遠い昔なのだー。
「ねぇ、リヴァイ。」
「ん?」
不意に口を開いたなまえに、優しく首を傾げる。
なまえは、足跡を作り続けていく自分の足元を眺めながら言う。
「私がこの世界に帰って来てから、2年が経つね。」
「あぁ、そうだな。」
「いろんなことがあったね。リヴァイはいつも私を守ってくれた。
いつもそばにいてくれて、大事にしてくれた。
だから、私は今日まで生きて来られたよ。」
「…そうか。」
「リヴァイには、心から感謝してる。
この2年、私は幸せだった。ちゃんと、幸せだったよ。
だからもう、心配しないでね。」
「あぁ、分かった。」
「うん、よかった。」
なまえが、嬉しそうに柔らかく微笑む。
あの頃のまま、何度見ても変わらない、愛おしい笑顔だ。
胸が引き裂かれそうな痛みなら、とっくに感じていた。
だから不思議と、なまえが過ごした2年間が、幸せだったと知って良かったと思えた。
彼女のこの笑顔を、あの男が守ってくれたのか。
傷をつけるなー、そう言った約束を守ってくれたのだと思うことにしよう。
「そろそろ空が赤くあるね。」
なまえが立ち止まり、空を見上げる。
リヴァイも足を止めて、色を変えていこうとしていく空を一緒に見上げた。
「帰ろうか。」
「あぁ、帰ろう。」
リヴァイはなまえの手を強く握り直す。
来た道を辿りながら歩き出した2人の背中を赤い夕陽が照らし始める。
永遠の別れの時間は、刻一刻と近づいてきていたー。
寄せては返していく波だけが音を作る、静かな海。
手を繋いで歩く2人に言葉はなく、ただひたすら、砂浜に足跡を残し続けていた。
リヴァイが隣を見れば、なまえは足跡を作っていく自分の足元を、なんだかとても楽しそうに見下ろしている。
海に行こうー。
なまえがそう言いだしたのは、会社を出て、近くのカフェで昼食を食べた後だった。
それくらいなら向こうの世界から来た男だとバレることもないだろうと了承して、またなまえの運転で家から少し遠い海へやって来ていた。
夏になったら海に行こうー。
そう約束していたからだとなまえは言っていた。
昔、そんな約束をなまえとしたことがある。
壁の中の世界に閉じ込められ、まだ海という存在を見たこともなかった頃だ。
いろんなデートをしようと2人で楽しい計画を幾つも立てた。
水族館も映画館も、今なら連れて行ってやれる。
ゲームセンターというやつも、いつか出来るかもしれない。
でもきっと、お決まりのデートコースだというそれは、この世界のリヴァイがもうとっくに連れて行ってやっているのだろう。
なまえが自分のことを愛してくれていたのは、もう、遠い、遠い昔なのだー。
「ねぇ、リヴァイ。」
「ん?」
不意に口を開いたなまえに、優しく首を傾げる。
なまえは、足跡を作り続けていく自分の足元を眺めながら言う。
「私がこの世界に帰って来てから、2年が経つね。」
「あぁ、そうだな。」
「いろんなことがあったね。リヴァイはいつも私を守ってくれた。
いつもそばにいてくれて、大事にしてくれた。
だから、私は今日まで生きて来られたよ。」
「…そうか。」
「リヴァイには、心から感謝してる。
この2年、私は幸せだった。ちゃんと、幸せだったよ。
だからもう、心配しないでね。」
「あぁ、分かった。」
「うん、よかった。」
なまえが、嬉しそうに柔らかく微笑む。
あの頃のまま、何度見ても変わらない、愛おしい笑顔だ。
胸が引き裂かれそうな痛みなら、とっくに感じていた。
だから不思議と、なまえが過ごした2年間が、幸せだったと知って良かったと思えた。
彼女のこの笑顔を、あの男が守ってくれたのか。
傷をつけるなー、そう言った約束を守ってくれたのだと思うことにしよう。
「そろそろ空が赤くあるね。」
なまえが立ち止まり、空を見上げる。
リヴァイも足を止めて、色を変えていこうとしていく空を一緒に見上げた。
「帰ろうか。」
「あぁ、帰ろう。」
リヴァイはなまえの手を強く握り直す。
来た道を辿りながら歩き出した2人の背中を赤い夕陽が照らし始める。
永遠の別れの時間は、刻一刻と近づいてきていたー。