◇92話◇彼女のためなら耐えられる痛みとそうじゃない痛み
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無機質な白い壁とベッドがあるだけの狭い処置室に、医療道具を乗せたシルバーのワゴンを持って夜勤の女医が戻って来た。
思ったよりも深く左の前腕を切られていたらしい。
適当に押さえてれば止まると思っていた血がいつまでもダラダラと、血だまりを作り続けていたのはそのせいだったようだ。
「腕をここにおいてくださいね。」
女医に言われて、処置台の上に素直に腕を乗せる。
これから、数針は縫われる予定だ。
「エルヴィンに面倒起こすなって言われといて、早速、これかよ。」
「うるせぇ。」
止まらない血にパニックになったなまえから連絡を受けたファーランが、すぐに車で駆けつけ、そのまま病院へ連れて行かされた。
さっき、ファーランから警察に連絡もしておいてくれたそうだ。
聴取がどうのと言われたらしいが、今日は精神的に無理だと断ってくれたと聞いてホッとした。
病院からも警察に連絡は行くだろうが、今夜はなまえを早く家に帰してやりたいし、怖い思いをしたのにわざわざ思い出させるような話はさせたくない。
勝手にファーランに連絡なんてしやがってー。
心の中でなまえにチッと舌打ちをしたリヴァイだったけれど、こうして駆けつけてくれる友人がいる自分が恵まれていることは理解している。
だから、なまえが、向こうの世界のリヴァイとは違うのだと言うのだということもー。
「でも、恋人のために命を張って助けるなんてなかなか出来ないわよ。
カッコいいわね。」
リヴァイとファーランのやりとりに、クスクスと笑った女医が、とても感心したように言う。
そして、とてもウットリした顔で続ける。
「もちろん、女医としては、自分の命も大切にしなさいと言いたいけど、
女性としては、こんな風に守ってくれる恋人がいて彼女が凄く羨ましいな。」
「…恋人じゃねぇよ。」
「そうそう、恋人でもなんでもないの。
そんな女のために命張る男じゃなかったんだけどな~。むしろ、冷たい悪い男だよ、コイツ。
俺は昔から、女性に優しいけどね。だから、コイツより俺なんてどう、お姉さん?」
ふざけたことを言いだしたファーランをリヴァイがひと睨みする。
そんな2人のやりとりを聞きながら、女医はずっと可笑しそうに笑っていた。
「でも、彼女もあなたのことを愛してると思うけどなぁ~。」
「は?そんなわけー。」
「絶対に助けてくださいっ、死なせないでっ、て泣きながら
救急棟に走り込んできたんだもの。何があったのかってビックリしちゃったわ。
とっても愛されてるのね。」
「…それは、アイツの頭が残念なだけだ。
恥ずかしくて仕方なかった…。」
「だな。笑いそうで仕方なかったわ。」
「そうかなぁ?」
女医は、楽しそうにクスクスと笑いながら、左腕にぱっくりと開いた傷を縫い合わせていく。
こんな風に心の傷をー、なんてことは思わない。
でも、たとえば、一度切られてしまった縁を縫い合わせることが出来る針と糸があればいいのにー。
そんな女々しいことを考えてしまった。
思ったよりも深く左の前腕を切られていたらしい。
適当に押さえてれば止まると思っていた血がいつまでもダラダラと、血だまりを作り続けていたのはそのせいだったようだ。
「腕をここにおいてくださいね。」
女医に言われて、処置台の上に素直に腕を乗せる。
これから、数針は縫われる予定だ。
「エルヴィンに面倒起こすなって言われといて、早速、これかよ。」
「うるせぇ。」
止まらない血にパニックになったなまえから連絡を受けたファーランが、すぐに車で駆けつけ、そのまま病院へ連れて行かされた。
さっき、ファーランから警察に連絡もしておいてくれたそうだ。
聴取がどうのと言われたらしいが、今日は精神的に無理だと断ってくれたと聞いてホッとした。
病院からも警察に連絡は行くだろうが、今夜はなまえを早く家に帰してやりたいし、怖い思いをしたのにわざわざ思い出させるような話はさせたくない。
勝手にファーランに連絡なんてしやがってー。
心の中でなまえにチッと舌打ちをしたリヴァイだったけれど、こうして駆けつけてくれる友人がいる自分が恵まれていることは理解している。
だから、なまえが、向こうの世界のリヴァイとは違うのだと言うのだということもー。
「でも、恋人のために命を張って助けるなんてなかなか出来ないわよ。
カッコいいわね。」
リヴァイとファーランのやりとりに、クスクスと笑った女医が、とても感心したように言う。
そして、とてもウットリした顔で続ける。
「もちろん、女医としては、自分の命も大切にしなさいと言いたいけど、
女性としては、こんな風に守ってくれる恋人がいて彼女が凄く羨ましいな。」
「…恋人じゃねぇよ。」
「そうそう、恋人でもなんでもないの。
そんな女のために命張る男じゃなかったんだけどな~。むしろ、冷たい悪い男だよ、コイツ。
俺は昔から、女性に優しいけどね。だから、コイツより俺なんてどう、お姉さん?」
ふざけたことを言いだしたファーランをリヴァイがひと睨みする。
そんな2人のやりとりを聞きながら、女医はずっと可笑しそうに笑っていた。
「でも、彼女もあなたのことを愛してると思うけどなぁ~。」
「は?そんなわけー。」
「絶対に助けてくださいっ、死なせないでっ、て泣きながら
救急棟に走り込んできたんだもの。何があったのかってビックリしちゃったわ。
とっても愛されてるのね。」
「…それは、アイツの頭が残念なだけだ。
恥ずかしくて仕方なかった…。」
「だな。笑いそうで仕方なかったわ。」
「そうかなぁ?」
女医は、楽しそうにクスクスと笑いながら、左腕にぱっくりと開いた傷を縫い合わせていく。
こんな風に心の傷をー、なんてことは思わない。
でも、たとえば、一度切られてしまった縁を縫い合わせることが出来る針と糸があればいいのにー。
そんな女々しいことを考えてしまった。