◇87話◇過ちの後の朝
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悲しい夢を見ていたのだ。
銃で撃たれた身体では私を守れないと覚悟したリヴァイが鏡を割ってしまって、もう二度と会えない世界に引き裂かれてしまうなんて悪夢だ。
なんて残酷な悪夢だろう。
そんなの夢ですら見たくないのにー。
少しずつ夢から覚めてきた私は、世界で一番安心する胸板に頬を寄せた。
後頭部に乗った手が優しく頭を撫でては、髪を指に絡めてすくっては落とすー。
懐かしいその仕草が心地よくて、私はまた夢の世界へと誘われてしまう。
今度は、幸せな夢を見られそうだ。
たとえば、リヴァイが私を守って銃に撃たれてしまったのも、鏡が割れてしまったのも、すべて嘘で本当はまだパラレルワールドで幸せに暮らしてるという夢とかー。
(・・・・ん?)
何かが頭に引っかかって、殆ど夢の世界へ行きかけていた思考が現実世界に留まろうとしてくる。
考えようとするのだけれど、うまくいかない。
「痛、い…。」
ガンガンとする頭の痛みに顔を顰めて、額を押さえる。
頭も痛いのだけれど、腰も痛い。
身体が気怠いー。
昨日の夜は何をしていたんだっけー。
そういえば、リヴァイに抱き尽くされた気がする。
何度も、何度もー。
(…あぁ、それが夢か…。)
思い出した。
昨日は、リコの独身最後の飲みだと言って行きつけのバーでお酒を飲んでー。
つい飲み過ぎてしまったのだ。
それで、リコが結婚してしまうのは寂しいから私と結婚してくれと無謀なプロポーズをしたところまでは覚えているー。
それからどうしたんだっけー。
首を傾げた私は、見覚えのある鎖骨を見つける。
それは私のものではなくて、リヴァイのものだった。
あぁ、リヴァイと一緒に寝たのか。
じゃあ、バーで眠ってしまった私をリヴァイが迎えに来てくれたのかもしれない。
調査兵団の兵士長に仕事を増やしてしまった。
ちゃんと謝らないとー。
(・・・・・・!!)
ハッとして勢いよく身体を起こした。
肩までかかっていた掛布団が腰の辺りに落ちて、裸の上半身が晒される。
鎖骨や胸の辺りには、昨日まではなかったはずの赤い痕が幾つもあった。
どう考えなくても、かろうじて隠れている腰から下も何も身に着けていないのだろう。
認めたくないけれど、直接、肌にシーツが触れているのを感じている。
残念ながら、この部屋は、向こうの世界のリヴァイの寝室ではない。
余った部屋らしいベッドがあるだけの無機質な部屋だ。
ここは、私がこの世界の彼の好意で居候させてもらっている部屋で、いつもは1人で寝ているはずのベッドの隣には、今日は人の気配を感じる。
さっき、寝ぼけた目で見えたのは、見覚えのあるとても綺麗な筋肉質な身体だった。
でも、この世界にリヴァイはいなくてー。
恐る恐る、隣に目をやった。
あぁ、色のない冷たい三白眼と目が合った。
私が急に起き上がるから、起こしてしまったのかもしれない。
失敗した。
「…言っておくが、誘ったのはお前だからな。」
突き放すように彼は言う。
驚きはしない。
むしろー。
「だよね…。」
そうだろう、と納得する。言われなくたって、分かっていた。
とりあえず、落ちてしまった掛布団を持ち上げて胸元を隠すと、そのまま折り曲げた膝に額を乗せて顔を伏せた。
あぁ、もう最悪だ。
昨日の夜、リコに相談した最悪の事態が、あっという間に起こってしまった。
とんでもないことをしでかした。
部屋を貸してくれている男を襲って、食べてしまうなんてー。
野獣だ。
飢えた野獣だー。
「ギャーギャー喚かねぇんだな。」
意外だとでも言いたげな声がした後、彼が動いた気配を感じた。
彼も身体を起こしたようだ。
「…むしろ、喚かれるくらいの迷惑をかけた自覚はあるから…。」
「へぇ、分かってんのか。」
「…本当に、ごめんなさい…。
もう追い出してくれて構わないよ…。私の顔なんて、見たくないよね。
あぁ…、本当に…、ごめん。」
恥ずかしかったけれど、謝罪のために顔を上げた。
ベッドの縁に腰を降ろしていた彼は、私に背を向けたまま、下着を身につけながら何でもないことのように言う。
「お互いにガキじゃねぇんだ。これくらいなんでもねぇだろ。
別にお前のことも何とも思ってねぇ。」
彼は立ち上がると、床に散らばる自分の服を拾い上げていく。
昨日、彼が着ていた服なことに気づいて、彼も飲み会の後そのままこういう流れになったのだと分かった。
「先にシャワー浴びる。お前も後で浴びろよ。
あとシーツ換えとけ。」
結局、彼は一度も私のことを見ないまま部屋を出て行く。
本当に、何とも思っていないようだ。
裏社会でずっと生きていたみたいだし、彼はモテるし、こういう一夜限りの関係なんていうのもよくあったのかもしれない。
ホッとした。
これでお互いに意識し合うようなことになってしまったら困るし、リヴァイと同じ顔の彼に嫌われてしまうのも出来れば避けたい。
そう、だから、ホッとした。
ホッと、したのだー。
ただ少しだけ、焦ったのも、困ったのも、私だけだと思うと寂しかっただけー。
無意識に、私は胸元に持ち上げた掛布団を強く握りしめていた。
銃で撃たれた身体では私を守れないと覚悟したリヴァイが鏡を割ってしまって、もう二度と会えない世界に引き裂かれてしまうなんて悪夢だ。
なんて残酷な悪夢だろう。
そんなの夢ですら見たくないのにー。
少しずつ夢から覚めてきた私は、世界で一番安心する胸板に頬を寄せた。
後頭部に乗った手が優しく頭を撫でては、髪を指に絡めてすくっては落とすー。
懐かしいその仕草が心地よくて、私はまた夢の世界へと誘われてしまう。
今度は、幸せな夢を見られそうだ。
たとえば、リヴァイが私を守って銃に撃たれてしまったのも、鏡が割れてしまったのも、すべて嘘で本当はまだパラレルワールドで幸せに暮らしてるという夢とかー。
(・・・・ん?)
何かが頭に引っかかって、殆ど夢の世界へ行きかけていた思考が現実世界に留まろうとしてくる。
考えようとするのだけれど、うまくいかない。
「痛、い…。」
ガンガンとする頭の痛みに顔を顰めて、額を押さえる。
頭も痛いのだけれど、腰も痛い。
身体が気怠いー。
昨日の夜は何をしていたんだっけー。
そういえば、リヴァイに抱き尽くされた気がする。
何度も、何度もー。
(…あぁ、それが夢か…。)
思い出した。
昨日は、リコの独身最後の飲みだと言って行きつけのバーでお酒を飲んでー。
つい飲み過ぎてしまったのだ。
それで、リコが結婚してしまうのは寂しいから私と結婚してくれと無謀なプロポーズをしたところまでは覚えているー。
それからどうしたんだっけー。
首を傾げた私は、見覚えのある鎖骨を見つける。
それは私のものではなくて、リヴァイのものだった。
あぁ、リヴァイと一緒に寝たのか。
じゃあ、バーで眠ってしまった私をリヴァイが迎えに来てくれたのかもしれない。
調査兵団の兵士長に仕事を増やしてしまった。
ちゃんと謝らないとー。
(・・・・・・!!)
ハッとして勢いよく身体を起こした。
肩までかかっていた掛布団が腰の辺りに落ちて、裸の上半身が晒される。
鎖骨や胸の辺りには、昨日まではなかったはずの赤い痕が幾つもあった。
どう考えなくても、かろうじて隠れている腰から下も何も身に着けていないのだろう。
認めたくないけれど、直接、肌にシーツが触れているのを感じている。
残念ながら、この部屋は、向こうの世界のリヴァイの寝室ではない。
余った部屋らしいベッドがあるだけの無機質な部屋だ。
ここは、私がこの世界の彼の好意で居候させてもらっている部屋で、いつもは1人で寝ているはずのベッドの隣には、今日は人の気配を感じる。
さっき、寝ぼけた目で見えたのは、見覚えのあるとても綺麗な筋肉質な身体だった。
でも、この世界にリヴァイはいなくてー。
恐る恐る、隣に目をやった。
あぁ、色のない冷たい三白眼と目が合った。
私が急に起き上がるから、起こしてしまったのかもしれない。
失敗した。
「…言っておくが、誘ったのはお前だからな。」
突き放すように彼は言う。
驚きはしない。
むしろー。
「だよね…。」
そうだろう、と納得する。言われなくたって、分かっていた。
とりあえず、落ちてしまった掛布団を持ち上げて胸元を隠すと、そのまま折り曲げた膝に額を乗せて顔を伏せた。
あぁ、もう最悪だ。
昨日の夜、リコに相談した最悪の事態が、あっという間に起こってしまった。
とんでもないことをしでかした。
部屋を貸してくれている男を襲って、食べてしまうなんてー。
野獣だ。
飢えた野獣だー。
「ギャーギャー喚かねぇんだな。」
意外だとでも言いたげな声がした後、彼が動いた気配を感じた。
彼も身体を起こしたようだ。
「…むしろ、喚かれるくらいの迷惑をかけた自覚はあるから…。」
「へぇ、分かってんのか。」
「…本当に、ごめんなさい…。
もう追い出してくれて構わないよ…。私の顔なんて、見たくないよね。
あぁ…、本当に…、ごめん。」
恥ずかしかったけれど、謝罪のために顔を上げた。
ベッドの縁に腰を降ろしていた彼は、私に背を向けたまま、下着を身につけながら何でもないことのように言う。
「お互いにガキじゃねぇんだ。これくらいなんでもねぇだろ。
別にお前のことも何とも思ってねぇ。」
彼は立ち上がると、床に散らばる自分の服を拾い上げていく。
昨日、彼が着ていた服なことに気づいて、彼も飲み会の後そのままこういう流れになったのだと分かった。
「先にシャワー浴びる。お前も後で浴びろよ。
あとシーツ換えとけ。」
結局、彼は一度も私のことを見ないまま部屋を出て行く。
本当に、何とも思っていないようだ。
裏社会でずっと生きていたみたいだし、彼はモテるし、こういう一夜限りの関係なんていうのもよくあったのかもしれない。
ホッとした。
これでお互いに意識し合うようなことになってしまったら困るし、リヴァイと同じ顔の彼に嫌われてしまうのも出来れば避けたい。
そう、だから、ホッとした。
ホッと、したのだー。
ただ少しだけ、焦ったのも、困ったのも、私だけだと思うと寂しかっただけー。
無意識に、私は胸元に持ち上げた掛布団を強く握りしめていた。