◇84話◇彼の知らない海の底のバー
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定時で仕事を終えた私とリコは、一緒にエレベーターに乗り込んだ。
今夜はリコと独身最後のお祝いをするために、行きつけのバーに飲みに行く予定なのだ。
数階下がったエレベーターの扉が開く。
待っていたのは、彼とファーラン、ハンジだった。
私とリコを見つけて、少し驚いた顔をした彼だったけれど、何も言わずにエレベーターに乗り込んだ。
「…帰るときは必ず連絡しろ。迎えに行く。」
私に背を向けて立った彼は、振り向きもしないで言う。
でも、たぶん、私に言った言葉で間違いないと思う。
「いいよ。企画調査部も今夜はエレンくん達の歓迎会でしょ。
私のことは気にしないで、楽しんでよ。」
「俺はコイツらに無理やり参加させられるだけだ。
楽しむ気はねぇ。」
「え~、リヴァイ、ひどいなぁ~。一緒に楽しもうよ~。」
「臭ぇ、寄るな。クソ眼鏡。」
甘えるように腕を掴んだハンジを、彼はウザそうに追い払う。
その様子を隣でファーランが可笑しそうに見ている。
ハンジとじゃれ合う姿も、向こうの世界のリヴァイと同じだ。だからきっと、ファーランが生きていれば、こんな風に優しい目で彼らを見ていたのだろう。
きゅっと胸が苦しくなって、私は彼らから目を反らすために、エレベーター上の階数表示を確認する。
それにすぐに気が付いたのは、ファーランだったようだけれど、私が知ることはない。
チラリとリコがそんな私達を見て、ため息を呑み込んでいたことも、知らない。
もうそろそろフロントの1階だー。
「家の鍵もコンシェルジュのグスタフに伝えてあるから、
開けてもらえるし大丈夫だよ。それより、女を家に連れ込むことになったら
すぐに私に連絡してね。そのときは、どこか近くのホテルに泊まるから。」
「あぁ?俺はー。」
「他の女の人とお楽しみしてるあなたの顔は見たくないの。…お願い。」
エレベーターの扉が開いて、私はリコの手を引いて先に降りた。
私の事情に彼を巻き込み過ぎだと、自覚はしている。
でも、彼の家を追い出されるのは構わなくても、リヴァイと同じ顔で他の女を抱いてる姿を見る羽目になるのは、絶対に嫌だ。
数メートル進んでから、笑顔を作って振り向く。
「ザルだからって飲みすぎちゃダメだよ~!」
手を振って、彼に悪戯っぽく忠告する。
彼が顔を顰めたのが見えた。
何か言われる前に、私はクルリと背を向けた。
「クソが。なんで俺がザルだって知ってんだよ。」
小さくなる背中を睨みつけて、彼がそんなことを呟いていたなんて、知らないし、私は知ろうともしなかった。
「ねぇ、ファーラン。なまえってリヴァイが好きなの?」
「好きなのは、パラレルワールドのリヴァイ。」
「は?なにそれ、どういうこと?
それって、もしかして彼女が行方不明になってたのと関係がー。」
「おい、ファーラン、クソうるせぇやつに余計なこと言ってんじゃねぇよ。」
「…悪い。」
「ねぇ、その話詳しく聞かせてよ~~!!」
騒がしい声がしたかと思ったら、すぐそばを彼とファーランが風を切って駆け抜けて行った。
その後ろをハンジが何かを喚きながら、目をキラキラさせて追いかけていく。
一体、このほんの数秒の間に何があったというのだ。
だから彼らは、変人ばかりだと言われるのだ。
思わず、吹き出して笑ってしまった。
今夜はリコと独身最後のお祝いをするために、行きつけのバーに飲みに行く予定なのだ。
数階下がったエレベーターの扉が開く。
待っていたのは、彼とファーラン、ハンジだった。
私とリコを見つけて、少し驚いた顔をした彼だったけれど、何も言わずにエレベーターに乗り込んだ。
「…帰るときは必ず連絡しろ。迎えに行く。」
私に背を向けて立った彼は、振り向きもしないで言う。
でも、たぶん、私に言った言葉で間違いないと思う。
「いいよ。企画調査部も今夜はエレンくん達の歓迎会でしょ。
私のことは気にしないで、楽しんでよ。」
「俺はコイツらに無理やり参加させられるだけだ。
楽しむ気はねぇ。」
「え~、リヴァイ、ひどいなぁ~。一緒に楽しもうよ~。」
「臭ぇ、寄るな。クソ眼鏡。」
甘えるように腕を掴んだハンジを、彼はウザそうに追い払う。
その様子を隣でファーランが可笑しそうに見ている。
ハンジとじゃれ合う姿も、向こうの世界のリヴァイと同じだ。だからきっと、ファーランが生きていれば、こんな風に優しい目で彼らを見ていたのだろう。
きゅっと胸が苦しくなって、私は彼らから目を反らすために、エレベーター上の階数表示を確認する。
それにすぐに気が付いたのは、ファーランだったようだけれど、私が知ることはない。
チラリとリコがそんな私達を見て、ため息を呑み込んでいたことも、知らない。
もうそろそろフロントの1階だー。
「家の鍵もコンシェルジュのグスタフに伝えてあるから、
開けてもらえるし大丈夫だよ。それより、女を家に連れ込むことになったら
すぐに私に連絡してね。そのときは、どこか近くのホテルに泊まるから。」
「あぁ?俺はー。」
「他の女の人とお楽しみしてるあなたの顔は見たくないの。…お願い。」
エレベーターの扉が開いて、私はリコの手を引いて先に降りた。
私の事情に彼を巻き込み過ぎだと、自覚はしている。
でも、彼の家を追い出されるのは構わなくても、リヴァイと同じ顔で他の女を抱いてる姿を見る羽目になるのは、絶対に嫌だ。
数メートル進んでから、笑顔を作って振り向く。
「ザルだからって飲みすぎちゃダメだよ~!」
手を振って、彼に悪戯っぽく忠告する。
彼が顔を顰めたのが見えた。
何か言われる前に、私はクルリと背を向けた。
「クソが。なんで俺がザルだって知ってんだよ。」
小さくなる背中を睨みつけて、彼がそんなことを呟いていたなんて、知らないし、私は知ろうともしなかった。
「ねぇ、ファーラン。なまえってリヴァイが好きなの?」
「好きなのは、パラレルワールドのリヴァイ。」
「は?なにそれ、どういうこと?
それって、もしかして彼女が行方不明になってたのと関係がー。」
「おい、ファーラン、クソうるせぇやつに余計なこと言ってんじゃねぇよ。」
「…悪い。」
「ねぇ、その話詳しく聞かせてよ~~!!」
騒がしい声がしたかと思ったら、すぐそばを彼とファーランが風を切って駆け抜けて行った。
その後ろをハンジが何かを喚きながら、目をキラキラさせて追いかけていく。
一体、このほんの数秒の間に何があったというのだ。
だから彼らは、変人ばかりだと言われるのだ。
思わず、吹き出して笑ってしまった。