◇75話◇彼女の黒子とお味噌汁は彼のもの
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リヴァイに気持ちが届いてから、しばらくが経った。
今までは、生き返ったなまえとして、コソコソと隠れて生活していた私だったけれど、最近は、兵舎の外に出ることも許可してもらえるようになった。
危険だからと、調査兵の誰かがついていないとダメなのだけれど、とりあえず、他人の目から隠される日々は終わった。
リヴァイが、調査兵達に、私はなまえではないと説明してくれたおかげだ。
さすがに信じないだろう、とパラレルワールドの話はしていない。
ただの似ている女、ということになっている。
死に別れた婚約者とそっくりの女と恋仲になったリヴァイのことを『冷たい男』『薄情』『最低』と言う調査兵の声を聞いたことがある。
私も直接、『代わりなんて可哀想だね。』と言われたこともある。
彼らにそんなことを言わせたのは、私がなまえのフリをして彼らに接していたせいだと思う。
それでも、ほとんどの調査兵達は、尊敬する兵士長が漸く恋人の死と向き合って前を向いてくれたと安心しているようだった。
彼は本当に、仲間に恵まれ、愛されているのだと、日々の生活で私も実感している。
「今日は飯作ってんのか。」
今月の食事担当の班の調査兵達と一緒に、食堂の調理場で夕飯の準備をしているとリヴァイがやってきた。
漸く、自分自身としてこの世界で生きていけるようになった私は、エルヴィン団長に、何か調査兵団の中で仕事が欲しいとお願いをしていた。
でも、調査兵として戦う力なんてあるわけもなく、この世界の常識もほとんど知らない私に出来る仕事なんて限られ過ぎている。
今は、調査兵達の好意で、雑用の手伝いをさせてもらっている。
昨日は、ミケの分隊と一緒に大量のシーツを干したし、その前はネス班のみんなと薬品を買いにトロスト区の街まで出かけた。
本当にちょっとしたことだけれど、何かさせてもらえることがある毎日は、とても充実している。
「ゲルガーの班のときは味が悲惨だからお願いするって、
ミケとナナバに頭を下げられたの。」
「それは助かる。」
クスクスと笑う私に、リヴァイは心底真面目に頷いた。
ゲルガーが味見をして出来上がる料理は、普通の味はしないのだそうだ。
どんな味なのだろうと好奇心も湧くけれど、絶対に試さない方がいいらしい。
とは言っても、この世界の料理は品数もあまり多くはない。
夕飯もパンとスープとサラダくらいだ。
でも、調査兵団全員分だから、同じものを大量に作るのはそれなりに重労働だ。
私はスープ作りをさせてもらっている。
「ちょうど出来上がったところだったの。
リヴァイ、味見してくれる?」
「おぉ、そりゃいいところに来たな。」
表情はあまり変わらないリヴァイだけれど、声色は嬉しそうだ。
スープの入れた皿を渡すと、彼は不思議そうに首を傾げた。
初めての茶色のスープに戸惑っているその様子が可笑しくて、可愛い。
「泥水…?」
思わずその頭を叩いた。
食べ物に対して、失礼な人だ。
文句を言おうとするリヴァイをキッと睨みつける。
「大丈夫、泥じゃないから。」
「…分かった。」
意を決したように、リヴァイが皿を口に運んだ。
彼の唇にスープが触れる。
飲んでくれるだろうかー。
この世界の人間が好んでくれる味なのかは自信がない。
不安に思いながら見ていると、リヴァイの片眉がピクリと上がった。
そして、そのまますべて飲み干してくれた。
「なかなか美味ぇな。初めての味だ。」
「よかった~。お味噌汁って言うスープなのよ。」
「オミソシル?」
「本当は、お味噌って調味料で作るから、正確には似てるだけで、ちょっと違うんだけどね。
今日の料理当番を私がするって知ったモブリットに
オミソシルが飲みたいって言われたから、挑戦しちゃった。」
「どうしてアイツが向こうの世界の食いもん知ってるんだ。」
「前に作ってあげたことがあるの。
美味しかったし、疲れがとれる味だったから、
調査兵達にも飲ませてあげたいって。」
「…へぇ。」
リヴァイは小さく言って、私に皿を返す。
訓練の帰りに寄っただけだから、まだ自分の班員達に指導が残っているらしく、そのまままた訓練場へと戻って行った。
今までは、生き返ったなまえとして、コソコソと隠れて生活していた私だったけれど、最近は、兵舎の外に出ることも許可してもらえるようになった。
危険だからと、調査兵の誰かがついていないとダメなのだけれど、とりあえず、他人の目から隠される日々は終わった。
リヴァイが、調査兵達に、私はなまえではないと説明してくれたおかげだ。
さすがに信じないだろう、とパラレルワールドの話はしていない。
ただの似ている女、ということになっている。
死に別れた婚約者とそっくりの女と恋仲になったリヴァイのことを『冷たい男』『薄情』『最低』と言う調査兵の声を聞いたことがある。
私も直接、『代わりなんて可哀想だね。』と言われたこともある。
彼らにそんなことを言わせたのは、私がなまえのフリをして彼らに接していたせいだと思う。
それでも、ほとんどの調査兵達は、尊敬する兵士長が漸く恋人の死と向き合って前を向いてくれたと安心しているようだった。
彼は本当に、仲間に恵まれ、愛されているのだと、日々の生活で私も実感している。
「今日は飯作ってんのか。」
今月の食事担当の班の調査兵達と一緒に、食堂の調理場で夕飯の準備をしているとリヴァイがやってきた。
漸く、自分自身としてこの世界で生きていけるようになった私は、エルヴィン団長に、何か調査兵団の中で仕事が欲しいとお願いをしていた。
でも、調査兵として戦う力なんてあるわけもなく、この世界の常識もほとんど知らない私に出来る仕事なんて限られ過ぎている。
今は、調査兵達の好意で、雑用の手伝いをさせてもらっている。
昨日は、ミケの分隊と一緒に大量のシーツを干したし、その前はネス班のみんなと薬品を買いにトロスト区の街まで出かけた。
本当にちょっとしたことだけれど、何かさせてもらえることがある毎日は、とても充実している。
「ゲルガーの班のときは味が悲惨だからお願いするって、
ミケとナナバに頭を下げられたの。」
「それは助かる。」
クスクスと笑う私に、リヴァイは心底真面目に頷いた。
ゲルガーが味見をして出来上がる料理は、普通の味はしないのだそうだ。
どんな味なのだろうと好奇心も湧くけれど、絶対に試さない方がいいらしい。
とは言っても、この世界の料理は品数もあまり多くはない。
夕飯もパンとスープとサラダくらいだ。
でも、調査兵団全員分だから、同じものを大量に作るのはそれなりに重労働だ。
私はスープ作りをさせてもらっている。
「ちょうど出来上がったところだったの。
リヴァイ、味見してくれる?」
「おぉ、そりゃいいところに来たな。」
表情はあまり変わらないリヴァイだけれど、声色は嬉しそうだ。
スープの入れた皿を渡すと、彼は不思議そうに首を傾げた。
初めての茶色のスープに戸惑っているその様子が可笑しくて、可愛い。
「泥水…?」
思わずその頭を叩いた。
食べ物に対して、失礼な人だ。
文句を言おうとするリヴァイをキッと睨みつける。
「大丈夫、泥じゃないから。」
「…分かった。」
意を決したように、リヴァイが皿を口に運んだ。
彼の唇にスープが触れる。
飲んでくれるだろうかー。
この世界の人間が好んでくれる味なのかは自信がない。
不安に思いながら見ていると、リヴァイの片眉がピクリと上がった。
そして、そのまますべて飲み干してくれた。
「なかなか美味ぇな。初めての味だ。」
「よかった~。お味噌汁って言うスープなのよ。」
「オミソシル?」
「本当は、お味噌って調味料で作るから、正確には似てるだけで、ちょっと違うんだけどね。
今日の料理当番を私がするって知ったモブリットに
オミソシルが飲みたいって言われたから、挑戦しちゃった。」
「どうしてアイツが向こうの世界の食いもん知ってるんだ。」
「前に作ってあげたことがあるの。
美味しかったし、疲れがとれる味だったから、
調査兵達にも飲ませてあげたいって。」
「…へぇ。」
リヴァイは小さく言って、私に皿を返す。
訓練の帰りに寄っただけだから、まだ自分の班員達に指導が残っているらしく、そのまままた訓練場へと戻って行った。